#8「試験」

#8「試験~しけん~」1

「ハルー!」

「あっ、カイト君、ミナギちゃん、フォーも。いらっしゃい」

今日は、ハルのドラゴンブリーダーとしての試験の日だった。

その応援にと、カイト達は特設の試験会場へとやってきた。

もうすでにシンジや他の友達、クラスの仲間も着いていた。

「よっ、カイト」

「おっ、シンジ」

カイトとシンジは、いつものようにハイタッチを交わした。

「こんにちはミナギ。カイトとはどう?」

「えっ・・・どうって・・・」

シンジの突然の質問にミナギはどう答えていいか困っていた。

コツッ。

「あたっ」

ミナギとシンジのやり取りを見て、カイトは即効軽いツッコミを入れた。

「あんま茶化すなよ、シンジ」

「あはは、わりぃわりぃ・・・」

あまり悪気があるようには見えなかった。

シンジは女の子は絡んでくると、面白がって真っ先に飛びつく事が多かった。

いつもの事だったので、カイトは全く気にする事無くさらっと話を流す感じでやり過ごした。

「皆、私の為にありがと」

ハルは、カイト達に感謝の思いを伝えた。

「この試験が受かればハルは、別の町に行っちゃうんだね・・・」

「そうだね、皆と別れてしまうのは辛いけど・・・小さい頃からの夢だったから」

「ハル、行っちゃうの?」

カイト達の会話を聞いたミナギが驚いて駆け寄ってきた。

「うん・・・」

ハルは、言い難そうにミナギに話した。

「せっかく友達になれたのに・・・」

「ごめんね、ミナギちゃん・・・でも、私の夢だから・・・ドラゴンブリーダーになる事が・・・」

「うん、そうだね・・・」

ハルの叶えたかった夢・・・引き止めちゃいけないのは分かってるけれど、別れるのは辛い・・・そんなミナギの姿を見て、カイトは辛くなりそうだった。

「受験者の皆さん、そろそろ試験を開始しますので準備を始めてください」

スピーカーから、試験開始のアナウンスが流れた。

いよいよ試験が始まるようだった。

「それじゃ、行ってくるね」

「落ち着いてね、ハル」

「ハル、頑張ってね・・・」

「いつもどうりのハルで行けよ」

他の友達やクラスの仲間から声援をもらって、ハルはありがとの代わりに笑顔で交わした。

そして・・・

試験が開始された。

最初は、ドラゴンとどれだけ意思の通じ合いが出来るか採点される。

今回、試験を受けるのは16人・・・

その中で受かるのは3人だけだった。

最初の試験を突破出来るのは10人・・・

カイト達は、スタンドでハルを見守っていた。

ハルは、少しだけ緊張していたようだったが、持ち前の器用さで難なくこなした。

こうして一次試験は終了した。

・・・・・・。

「ふぅー・・・」

「おつかれ、ハル」

「えへ、ありがと」

控え室にハルが戻ると、今までの空気が嘘みたいに軽くなった。

カイトの励ましの言葉にハルは笑顔で答えた。

「見てて何となく、危なっかしかったなぁ・・・」

「途中までは緊張してたけどね・・・皆が応援してくれてるって思ったら、何とか調子が戻ったよ」

ハルは、シンジに精一杯の笑顔で話した。

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#8「試験~しけん~」2

少しして・・・

「お待たせしました、一次通過者の発表です」

スピーカーから発表の知らせが来た。

廊下に出ると、張り紙が貼ってあった。

紙に書かれた10人の名前、そこにハルの名前は・・・

「あったぁー・・・」

そこには、ハルの名前がしっかりと書かれてあった。

「やったね」

「次も頑張ってね、ハル」

「うん、ありがと。次も頑張るね」

皆に励まされて、ハルは笑顔で話した。

・・・・・・。

いよいよ二次試験が始まった。

二次はドラゴンとのコンビネーションの審査だった。

二次で残るのは6人だった・・・。

カイト達が固唾を呑んで見守る中、ハルは無事に課題をこなした。

こうして、二次試験は終了した。

・・・・・・。

「ただいまー」

「お帰り、ハル」

「おつかれー、ハル」

「ハル、かっこ良かったよ」

「皆、ありがと」

少しだけ和やかな空気で包まれた。

たとえ、落ちたとしても後悔はしないからと・・・

試験の始めに話したハル・・・

夢に向かっているハルが、いつもより輝いていて・・・でも・・・

淋しい気持ちさえもあった・・・

皆と笑顔で話してるハルを見て、カイトはそう考えてしまった。

でも・・・引き止める事は出来ない・・・

それが、ハルの決めた道だから・・・

・・・・・・。

そして、二次試験の発表の知らせが来た。

ハル達は、発表を見る為に廊下に出た。

廊下に貼り出された二次通過者の名前・・・

二次通過者は6人・・・

「・・・・・・」

ハルは緊張の中、張り紙を見つめた・・・

「あったぁ・・・」

ハルは自然と笑顔が零れていた。

「いよいよ最終試験だね、ハル」

「いつもの調子で頑張れよ」

「ハル・・・頑張って・・・」

「ありがと・・・皆・・・私、頑張るから」

最終試験の前に、約1時間の休憩が入った。

ハルは今までの緊張を解すかのように、皆と話していた。

泣いても、笑っても・・・これが・・・

最後だから・・・

・・・・・・。

「あれ?ミナギちゃん」

「えっ、何?ハル・・・」

「カイト君は?」

ハルは、話してる途中でカイトがいなくなってる事に気が付いてミナギに聞いた。

「カイトは今さっき、洗面所の方に行ったよ」

「ありがと、ミナギちゃん」

ハルはそう言って洗面所に向かった。

・・・・・・。

「・・・はぁ・・・はぁ・・・」

誰もいない洗面所の奥で、カイトは苦しそうに首を下げていた。

「うっ、げほっ、げほっ・・・」

せめて、今日だけは保ってほしかったと思いながら、少し落ち着いた所でカイトはポケットから薬を取り出して一粒飲んだ。

「はぁ・・・」

ようやく気持ちが落ち着いたカイトは、洗面所を後にした。

「あっ、カイト君」

「わっ、ハル・・・」

カイトがちょうど出た所で、ハルにばったりと会った。

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#8「試験~しけん~」3

「カイト君・・・」

「えっと、どうしたのハル・・・?」

カイトは、いきなりハルに出会って少しだけ焦った。

「カイト君、何か顔色が・・・」

「え?う、うん、ちょっとだけ気分が悪くなっただけだから」

「大丈夫なんだよね?カイト君」

「う、うん」

カイトは、作り笑いで誤魔化した。

「カイト君・・・ちょっといいかな?」

「え?うん、いいよ」

カイトとハルは人気の無い廊下に移動した。

・・・・・・。

「いよいよだね、ハル」

「う、うん・・・」

「・・・怖くない?」

「少しだけ・・・かな?」

壁に寄り掛かっているカイトのその横で、ハルはしゃがんでいた。

「・・・これが受かったら本当に行ってしまうんだね?」

「・・・うん」

カイトの話にハルは静かに頷いた。

「いなくなっちゃうのは淋しいけどね・・・でも、ハルの夢だから・・・こんな俺に出来るのはハルの応援だけだけど・・・」

「うん、ありがと・・・カイト君。私、絶対合格するね」

「ハルならきっと、大丈夫だよ・・・」

ハルは小さく頷いた。

・・・・・・。

カイト達が見守る中、いよいよ最終試験が始まろうとしていた。

最終試験は実践だった。

ドラゴンと協力して目的地にある紋章を持ってここに戻ってくる事・・・

もちろん、行く手にはいくつもの難関が待ち構えている。

バーン!とゆう音と同時にそれぞれの空へと羽ばたいて行った。

少しして、モニターにハル達が映された。

1つ目の大地の関門、2つ目の湖上の関門と無事に突破し、3つ目の関門の高い空へと向かっていた。

そこには審査員のドラゴンが行く手を阻んでいた。

6対3だったが、束でかかっても適う感じではなかった。

「うっ!」

一体のドラゴンと受験者が吹っ飛ばされて地面に叩きつけられた場面を見てカイト達は目を反らしてしまった。

そして、もう一体のドラゴンと受験者が審査員のドラゴンに掴まれて地面の方へ投げつけられた。

ドラゴンブリーダーの道・・・

予想していた以上にハードな試験だった。

それでも・・・ハルはなりたいって言った。

モニターに映し出されたハル達の真剣な眼差し・・・

見守って応援する事・・・今はそれしか出来ないけど・・・

「うっ!」

その時、グライドが審査員のドラゴンに掴まれた。

「ハル、グライドー!」

大きさも二倍ほどある審査員のドラゴン相手に敵わず、ハルとグライドは投げ出されたが地面すれすれで留まった。

「いっくよー、グライド!」

ハルは反動で審査員のドラゴンに向かった。

グライドは審査員のドラゴンに近付くにつれて加速していった。

顔の辺りを掠り、一体のドラゴンが仰向けになって地面に倒れた。

やがて、倒された受験者も這い上がってもう一体の審査員のドラゴンに向かった。

そして、一体、もう一体のドラゴンが地面へと倒れていった。

スタンドから歓声の声が溢れた。

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#8「試験~しけん~」4

受験者達は目的地にある紋章を手にして後は、このグラウンドに戻るだけとなった。

後半戦は受験者達の戦いだった。

受験者はハルを含めて6人・・・

ブリーダーとしての資格を手に出来るのは僅か3人・・・

カイト達はモニターでただ、静かにハルの帰りを待った。

水辺を抜けて、森林を抜けると後は、長い崖を抜けるだけだった。

帰りのルートは複雑で、スピードを出し過ぎると衝突の恐れが強かった。

ハル達はギリギリのスピードの中、何とか障害をかわして行った・・・

「あっ!」

その時、1人の受験者が細い曲がり角を曲がり切れずに衝突してしまい地面に叩きつけられた。

「・・・っ!」

その場面をモニターで見たミナギは思わず顔を伏せた。

その衝突で、落ちてきた岩にもう1人の受験者のドラゴンに当たり、バランスを失って落ちてゆく・・・

その間を2人の受験者が抜けて、追うか追われるかの接戦を繰り広げていた。

そんな中、ハルも後をしっかりとついてきていた。

その時・・・

「えっ・・・?」

何か、地震のような揺れが向こうの方・・・ハル達の方向から大きな振動が来たようだった。

「わっ!」

やがて、その揺れは会場全体をも襲い、モニターは一瞬だけ乱れが走った。

揺れは止んでそして、この会場に待機していた審査員とドラゴンが一斉にハル達のいる場所へと向かった。

一転、辺りがざわめきだした・・・

「あの方向・・・ハル達は大丈夫かな?」

カイトの言葉にミナギは心配になってきた。

「カイト・・・」

「きっと、大丈夫だよ、きっと・・・」

カイトは、ミナギにただ、大丈夫と繰り返した・・・

ハルが笑顔で、皆が無事に戻って来る事を願って・・・

・・・・・・・・・。

「・・・・・・・・・う・・・」

「ハル・・・」

「・・・カイト君?」

「良かった、ハル・・・気が付いて」

意識を戻したハルを見て、カイトはほっとした表情でハルを見つめた。

「ここは・・・?」

「病院だよ。ハル達皆手当てをしてもらったんだよ」

「どうして・・・私、ここに・・・?」

まだ状況が分かってないらしく、ハルはカイトの腕にしがみついていた。

「ハル達が戻ってくる途中で大きな地震があって、その時に崖崩れがあって・・・」

「そうなんだ・・・」

ハルは小さくため息を吐いた。

「カイト君、試験は・・・どうなったの?」

「中断されたよ・・・こんな緊急な事態じゃ試験どころじゃないって話になって・・・」

「はは・・・」

ハルは泣きそうな顔で笑った。

「大丈夫だよ、ハル・・・また後日に改めて最終試験をやるって・・・」

「本当に??」

「先生から後で連絡があると思うけどね・・・」

カイトの言葉にハルは安心したのか、ハルは力が抜けたようだった。

「カイト君、グライドは大丈夫?」

「少しだけ怪我してたけど、今は眠っているよ。ハルも今日はゆっくり休んだ方がいいよ」

「うん・・・」

ハルがふと横を向くと、ミナギが小さい寝息を立てて眠っていた。

「ミナギちゃんも・・・」

「うん、俺と一緒にハルを看病したいって・・・」

「くすっ、眠ってるミナギちゃん、かわいい」

ハルは、眠ってるミナギを見ながら笑顔で話した。

「ほら、ハルも・・・あまり無理するといけないから・・・」

「うん、カイト君、ありがと・・・ミナギちゃんも」

ハルは静かに眠りについた。

・・・・・・・・・。

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#8「試験~しけん~」5

それから一週間後、最終試験に残った6人による再試験が開始された。

カイト達が見守る中、危なっかしい感じながらも何とか無事に全員グラウンドに戻ってきた。

後は・・・結果を待つだけだった。

・・・・・・・・・。

約1時間後、合格発表を知らせるアナウンスがされた。

押し潰されそうな緊張の中、ハルは名前を呼ばれるのを待った。

1人、また1人と、ゆっくりと名前を呼ばれ、残りあと1人だった・・・

「・・・・・・・・・」

祈るような思い、ハルの緊張がカイト達にも伝わるようだった・・・

そして・・・

「受験番号08、ハル」

「・・・・・・・・・あっ」

名前を呼ばれた瞬間、ハルは嬉しくて喜びよりも先に涙が流れていた。

「おめでとう、ハル」

「おめでと、ハル」

「やったな、ハル」

皆から祝福を受けて、ハルは言葉にならない程の喜びをもらっていた。

ハル・・・おめでとう・・・

これで、夢に一歩近付いたね・・・

離れてしまうのは淋しいけれど・・・

・・・・・・・・・。

それから二週間後、今日はハルの旅立ちの日だった。

ハルはグライドに荷物を乗せて、出発する準備をしていた。

「もう、お別れなんだねハル・・・」

「また、この町に帰ってくるから。・・・皆に会いたいし」

「ハル、頑張ってこいよ」

「うんっ」

別れを惜しむかのように、皆に笑って交わした。

決して泣かないように・・・。

「あれ?カイト君は・・・?」

ハルがふと、辺りを見渡すとカイトの姿が無かった。

「カイトはさっき、洗面所に行くって・・・」

「わたし、カイト君に会ってくるね」

「あっ、私も・・・」

ミナギがそう言おうとした時、ハルは右手でいいよと静止した。

「ごめん、ミナギちゃん。少し2人で話したいの・・・」

「う、うん・・・」

ハルは、ミナギにそう言って洗面所の方へ向かった。

・・・・・・。

「・・・カイト君ー」

ハルはカイトを呼んでみたが、反応が無かった。

「カイト君・・・?」

ハルが洗面所の中を覗いてみてもカイトの姿が無かった。

「・・・けほっ」

「えっ?」

ハルが別の場所を探そうとした時に、誰かが咳き込むような声がした。

「カイト君?」

ハルは洗面所の中に入っていった。

角を曲がるとカイトがいて、何かを飲んでる姿が見えた。

「カイト君・・・?」

「あっ、ハル・・・」

カイトは、突然のハルの登場に一瞬だけ焦った。

「どうしたの、カイト君・・・大丈夫?」

「あっ・・・うん、大丈夫。ちょっとだけ気分が悪くなって・・・」

そう言ってるカイトの表情を見ると、かなり顔色が悪かった。

「カイト君、大変・・・保健室に行った方が・・・」

「え?・・・いや、そこまでしなくても大丈夫だよ・・・」

カイトはとっさにハルとの距離を離した。

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#8「試験~しけん~」6

「だめだよ、そんな顔色じゃ・・・私が手を貸すから・・・」

ハルが心配してカイトに近付いて・・・

「もう大丈夫だよ、さっき薬を飲んだから・・・もう効いてくると思うから・・・ごめんねハル、余計な心配かけちゃって・・・」

カイトは、ハルが近付く前にそう説明した。

「そう・・・本当に大丈夫なんだよね?」

「うん、大丈夫。もう戻るから先に行ってていいよ、ハル」

カイトはハルにそう言って、先に出るように促した。

「うん、分かったよ。先に行っ・・・わっ!」

ハルが洗面所から出ようとした時、つまずいて仰向けに転びそうになった。

「危ない!」

カイトはとっさにハルの側に駆け寄った・・・

どさっ。

「あたた・・・」

カイトがクッションになるようにハルはその上に倒れていた。

「あっ、ごめん・・・カイトく・・・っ!?」

ハルが起き上がる時、ハルの右手がカイトの胸の辺りに触れてしまっていた・・・

「あっ・・・!?」

「カイト君・・・・・・何で・・・?」

ハルは、カイトの胸のあまりの冷たさに右手を押さえていた・・・ハルの右手は冷たさでまだ凍えていた。

「・・・・・・・・・」

「カイト君・・・どうして?・・・そんなに冷えてるの?」

カイトは、もうハルに隠すのは止めようと心に決めた・・・

もう、これで二度と顔を合わせられなくても・・・

「ごめん、ハル・・・これから君に、今まで言えなかったこの胸の事を話すよ」

カイトはゆっくりと起き上がって、覚悟を決めたようにハルに話し始めた。

・・・・・・・・・。

「はぁー・・・」

大体話し終えて、カイトは小さくため息を吐いた。

「そんな事が・・・あったなんて・・・」

ハルは、カイトに何て言っていいか分からなかった。

「皆に恐れられてる『灰色の願い人』の事・・・誰にも言えなくて・・・」

「お母さんとフォーの為に・・・」

カイトはただ、頷いた。

「私、そんな事があったなんて知らなかったよ・・・カイト君のお母さんの体調の事は知ってたけど、フォーにそんな辛い事が・・・」

ハルは、フォーの笑顔を思い出して余計に涙が零れそうになっていた。

「でも、後悔はしてないんだ・・・俺のこの心の欠片と引き替えにお母さんとフォーが元気になってくれた、それだけで・・・たとえ、俺が何を言われようとどうなろうとも・・・」

「・・・・・・・・・っ!」

カイトがそう言うと、ハルはカイトの胸に抱きついた。

「カイト君のばかっ!・・・カイト君の・・・・・・」

「ハル・・・」

ハルは泣きながら、カイトの胸の辺りを軽く叩いていた。

「何で、そう自分を大事にしないの?・・・そんな事で助かっても、カイト君が死んじゃったら・・・」

「ごめん、ハル・・・」

カイトはただ、ハルに謝る事しか出来なかった。

「ぐす、ごめんね、カイト君・・・取り乱しちゃった」

カイトは、小さく首を横に振った。

「それじゃ、学園祭の準備の時も、皆で大空を飛んだ日も・・・その胸が・・・」

カイトは、静かに頷いた。

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#8「試験~しけん~」7

「ミナギちゃんは、この事知ってるの?」

「うん・・・学園祭が終わった翌日の休日に父さんの墓参りに行ってた帰りにミナギとたまたま会って・・・」

「どうして、ミナギちゃんには話したの?」

ハルは涙を拭きながらカイトに尋ねた。

「ミナギとはまだ出会ったばかりだったし、忘れてくれるならって思って・・・自分で覚悟を決めて話したんだ。でも、ミナギは怖がるどころか側にいてくれるって、言ってくれて・・・」

「・・・・・・」

ハルは少しだけ俯いていた。

「ハル・・・?」

「・・・・・・私にも、話してほしかったな・・・」

「ハル・・・」

ハルは少しだけ笑顔を見せながらカイトに話した。

「怖かったんだ・・・友達を失うのが・・・こんな自分を・・・恐れられてる灰色の願い人の力を借りたって皆に知られるのが・・・」

カイトはそう話しながらも、真っ直ぐにハルの目を見る事が出来なかった。

「カイト君・・・たとえ、色んな人に恐れられてる『灰色の願い人』の力を借りたとしても、カイト君の優しい気持ちは全然変わらないから・・・」

「・・・・・・」

ハルは、真っ直ぐな目でカイトを見つめながら話した。

「カイト君・・・死んじゃったりしないよね?」

「えっ?」

「お願い、それだけははっきり言って、そうじゃないと私、笑顔でこの町を飛び立てないよ・・・」

ハルは泣きそうな顔を伏せながらカイトに聞いた。

「大丈夫、だよ。俺はそんな事でいなくなったりはしないから」

カイトはそう答えると、ハルは笑顔で頷いた。

「・・・・・・」

「私、必ずこの町に帰ってくるから。いつになるかは分からないけど・・・」

「うん、待ってるよ」

ハルは、吹っ切れたような表情で話した。

「カイト・・・」

「え?何、ハル・・・?」

ハルは一息置いてから・・・

「私が帰ってくる前にいなくなったら許さないからね・・・もし、いなくなったら魂になってでもカイト君を連れ戻すから・・・私だけでなくミナギちゃんを悲しませる事なんて・・・絶対に」

「ハル・・・」

ハルはそう話した後・・・

「・・・・・・」

「えっ・・・?」

気が付いたら、ハルがカイトの頬にキスを交わしていた。

「私・・・カイトの事、好きだったんだよ・・・」

「え・・・・・・」

ハルは、笑顔でその場を後にした。

「・・・・・・」

カイトは、突然の事に少しだけ呆然としていた。

・・・・・・・・・。

ブリーダーの資格を持った3人と2人の先生が揃って、いよいよ出発の時が来た。

それぞれ別れの挨拶を交わしていた。

「ハル、また会えるよね・・・?」

「うん・・・」

「元気でな」

「うん・・・」

「皆で待ってるから・・・」

「うん・・・」

カイト達は目を潤ませながら、それぞれ挨拶を交わした。

「グライドも元気でな」

「グォー!」

グライドは、カイトに頬擦りをした。

「フォーゥ・・・」

「フォーも元気でね・・・」

「フォーゥ・・・」

「・・・・・・」

カイトはフォーの顔を見ると、とても淋しそうな顔をしているようだった。

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#8「試験~しけん~」8

「・・・なぁ、フォー」

「フォー?」

「お前、グライドと一緒に行きたい?」

「フォー?」

カイトは、フォーとグライドの様子を見て1つの思いを決めた。

「フォー、もしグライドと一緒に行きたいなら・・・お前が決めてもいいよ」

「カイト君?」

「カイト?」

カイトの突然の話に皆が驚いていた。

「カイト、お前フォーとはもう家族同然の存在じゃないのか?」

「そうだよ、カイト君・・・フォーだって・・・」

カイトは、一息置いてから・・・

「やっぱりフォーは人間と一緒よりも、より気持ちが分かる分かり合えるドラゴンと一緒の方がいいって・・・フォーを傷付けた同じ人間といるよりは、きっと・・・」

カイトは、あの時のフォーの痛々しい姿を思って、皆に話した。

「カイト・・・」

「カイト、まだそんな事を気にして・・・」

「カイト君・・・そんな事・・・」

ハルがカイトに言いかけた時、先生が前に出てきた。

「分かりました・・・この子に決めてもらいましょう・・・それで良いですね、カイト君?」

先生優しい眼差しでカイトに話した。

「フォーゥ・・・」

フォーは、少し悲しげな表情を見せた。

「前は俺の勝手でフォーと別れようとしたけど、今度はフォーが決めて良いよ・・・もし、俺といたかったらいてもいいんだ、フォー」

カイトの目は真剣だった。

「フォーゥ・・・」

フォーはハル達とカイト達を交互に見ていた。

そして・・・少し経って、フォーは動き始めた。

フォーはゆっくりと・・・

「フォー?」

カイト達の方へ向かって行った。

そして、カイトに近付いて頬擦りをした。

「フォー♪」

「あはは、フォー・・・本当にいいのか?俺と一緒で・・・」

「フォー♪」

フォーは嬉しそうな顔で返事をした。

「えへっ」

「うふふっ」

皆はカイトとフォーの姿を見て微笑んでいた。

・・・・・・。

「それじゃ、行ってくるね」

「ああ、元気でな」

「頑張れよ」

「気を付けてね・・・」

ミナギは泣きそうな顔をしていた。

「ミナギちゃんほら・・・泣かないで。必ず戻ってくるから」

ハルは、ミナギの頭を撫でながら言った。

「うん・・・」

「そろそろ出発しまーす。忘れ物は無いですか?」

「じゃっ!」

ハル達は飛び立って行った。

姿が遠くに消えても見送りを止める事は無かった。

・・・・・・・・・。

「行っちゃったね・・・」

「うん・・・」

「フォーゥ・・・」

カイトとミナギ、フォーは夕焼けを見ながらハルの事を話していた。

「フォー、ありがと。こんな俺だけどよろしくな」

「フォー♪」

「くすす」

カイトとフォーの微笑ましいやり取りに、ミナギは笑顔になっていた。

ハル・・・

立派になって、帰ってきてね・・・

皆で待ってるから・・・・・・。

#8「試験~しけん~」end.

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