contents~もくじ~
ここは、人間とドラゴンが共存する世界・・・
これは、とある1つの大きな町で起こった、ほんの小さな物語(ストーリー)。
contents・・・・
「灰色の願い事~lost color of wish~」あとがき
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ここは、人間とドラゴンが共存する世界・・・
これは、とある1つの大きな町で起こった、ほんの小さな物語(ストーリー)。
contents・・・・
「灰色の願い事~lost color of wish~」あとがき
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・・・・・・・・・。
「それじゃ母さん、行って来るね」
「ああ、気を付けてね」
・・・澄み渡る空の下、1人の少年が少し駆け足で出て行った。
「フォー、行って来るね」
「フォー!」
ドラゴンのフォーにも挨拶を交わし学校へ・・・。
「やぁカイト君、今日も元気だね」
「カイト君ー、事故には気を付けてね」
「ボーゥ」
「はい、行って来ます」
いつも通りの賑やかな朝、近所の人達にも挨拶を交わした。
少しだけ落ち着いた様子の少年、彼の名前はカイト。
・・・・・・。
「そんじゃ、4時に別校舎で」
「ああ、分かった」
風が止んでいた。
学校では、約一週間後迫っていた学園祭の準備に追われていた。
「さて、一旦荷物を置いて・・・」
広い草原を出た所で、人の姿が見えた。
それは、1人の女の子だった。
少し背丈は小さく、さり気なく見て少しだけ幼げに見えた。
(見たことの無い女の子だなぁ・・・ここに引っ越してきたのかなぁ・・・?)
カイトは急いでいたので、チラッと見てその場を後にした。
・・・・・・・・・。
「じゃ、また明日な」
「ああ」
・・・気が付けば夕日は沈んでいた。
家までの道を少し急ぎ足で帰宅していた。
その時・・・ふと、通り過ぎた時に見かけた1人の女の子がいた。
(あっ・・・)
その女の子は、最初に見た場所からあまり動いていないようで・・・。
(何をしてるんだろう・・・?)
その女の子はずっと、空を見ているようだった。
カイトは気になりながらも、そこから動く事が出来ずにただ、見ている事しか出来なかった・・・。
・・・・・・。
・・・。
(あの子は今日もいるのかなぁ・・・?)
今日も、学園祭の準備で、別校舎に向かう途中の道を歩いていた。
いつからか、昨日の姿を探して・・・。
「・・・・・・・・・」
・・・昨日の女の子は立っていた。
その姿はまるで、空に向かって祈りを捧げてるように見えた。
今度は、声をかけようと思って・・・いたのに、何だか邪魔をしてはいけない雰囲気にカイトはまた動けずにいた。
いつの間にか、カイトは女の子のその姿に見惚れていた・・・。
「・・・・・・?」
女の子はふと、カイトの方を見た。
「・・・君は誰なの?」
「・・・!?」
呆然と立っていたカイトは、突然の声に急に我に返った。
「え、えーと、君はこの町じゃ見かけないけど、ここに引っ越してきたの・・・?」
少し、取り繕う感じでカイトは女の子に話し掛けた。
「うん、3日前にこの町に着いたんだよ」
離れた場所から見てた時は、少しだけ大人びていて・・・でも、物悲しくもあった。
実際に話してみると、女の子らしく明るい雰囲気があった。
「あ、そういや自己紹介がまだだった・・・俺はカイト。君は・・・」
そう女の子に話し掛けると、嬉しそうな顔で話し始めた。
「私は・・・ミナギってゆうの」
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「ミナギ・・・」
ふと、頭の中でその名前を響かせてみた・・・・・・。
・・・ミナギ・・・
「カイト・・・?」
「・・・え?」
気が付いたら、ミナギが側に立っていた。
「どうしたの?・・・急に黙っちゃって・・・」
「え?・・・ううん、何でも・・・」
カイトは話を進める事にした。
「ただ、ミナギはここで何をしていたのかなって・・・」
「私・・・?」
少しの沈黙の後、ミナギはカイトに話し始めた。
「空に向かって願いをかけてたの」
・・・心地よい風が、一瞬だけ通り過ぎた。
・・・願い・・・
「願い、聞いてもいいのかな?」
「うん、いいよ」
2日も何を願っていたんだろう・・・?
カイトは少なからず気になってた。
・・・・・・・・・。
ミナギは、少し息を吸い込んでから話し始めた。
「この町で、私の大切な人に再会出来ますようにって」
大切な人・・・
カイトの頭の中で少しだけ鳴り響いた。
「大切な人、誰か聞いてもいい?」
少しの沈黙の後、ミナギは顔を上げて話した。
「・・・私の命を救ってくれた人」
「え・・・命を、救った?」
ミナギのその言葉に、カイトは胸がズキンとした。
「うん。・・・私、消えてしまう命だったの。医者がお姉ちゃんに話してたの聞いちゃって・・・もう私、死んじゃうんだって・・・」
「え・・・」
一瞬、時が止まったような感覚に襲われた。
ミナギは、その場に座り込んで、再び話し始めた。
「それで、何もかも嫌になっちゃって・・・医者やお姉ちゃんの言う事も聞かずに外に出てたの」
「その・・・ごめん。やっぱり聞かない方が良かったかな?」
カイトは、ミナギの聞いてはいけない過去を聞いたようで、反動で謝っていた。
「ううん、大丈夫。話しても平気だから・・・」
「・・・・・・」
ミナギは、少し動揺していたカイトに笑顔でそう言った。
「もう死んじゃうからって・・・誰の顔も見たくないと思っていた時に・・・出会ったの」
「命の恩人に?」
ミナギは静かに頷いた。
「名前は思い出せないけど、私と同じ年・・・だったと思う・・・男の子で」
「同じ年・・・?」
カイトは、大人が助けたのだと思ってたので、同じ年と聞いて驚いていた。
「その男の子が、私の顔を見て凄く悲しそうな顔をして「どうして泣いてるの?」って、言ってくれて・・・」
ミナギは、ほんの少し涙目になりながらも話を続けた。
「その時に私、泣いてるんだって初めて気が付いて・・・でも、その男の子に構わないでって・・・冷たく言っちゃったの・・・」
「それで、その男の子はどうしたの?」
カイトは静かに訊ねた。
「それでも私の側を離れなくて・・・心配そうな顔をして見てたの。それで私・・・もうすぐ私が死ぬって事をその男の子に話したの・・・」
・・・止んでいた風が吹き始めた。
カイトは、痛々しそうに話してるミナギを見ていられなくなり、一瞬目を逸らしそうになったが、一番辛いのは話してるミナギなんだと・・・。
カイトは、ミナギの隣に座った。
「ミナギ、ゆっくりでいいよ。気持ちが落ち着いてから話していいから・・・」
カイトは、今にも泣き出してしまいそうなミナギにそっと話し掛けた。
「・・・うん、ありがと、カイト」
ミナギは、少しだけ笑ったように見えた。
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・・・・・・・・・。
どれくらいの時間が経ったのだろうか?
カイトは、学園祭の準備に行く事を忘れてただ、ミナギの側にいた。
ただ、何をするわけでもなく。
・・・・・・。
・・・しばらくして、カイトから話し始めた。
「ミナギ、少しは落ち着いた?もう少しこのままでいようか?」
カイトはミナギにゆっくり話し掛けた。
「うん、ごめんね・・・カイト。もう、大丈夫だから」
「それで、その男の子は?」
「「ちょっと待ってて」って、私に言ってどこかに走って行ったの・・・」
「それで、ミナギはその男の子を待ってたの?」
・・・少しの沈黙の後、ミナギは再び話し始めた。
「うん。しばらくして、その男の子がアイスを買ってきて「ここのアイス凄く美味しいから」って私にくれたの」
「うん・・・」
カイトは無理に話を進めようとはせずに、ミナギの気持ちが落ち着くのを待った。
「私、その男の子に「どうして私に構うの?私、もうすぐ死ぬんだよ?・・・私、もうすぐここからいなくなるんだよ?」って、言っちゃったの・・・」
女の子が言うにはあまりにも辛く、痛々しい言葉だった。
「・・・・・・」
カイトは、今にも泣き出しそうなミナギの頭をそっと撫でた。
「ぐす・・・えへっありがと・・・カイト。何だか落ち着いたよ」
くすぐったかったのか、ミナギは少しだけ顔を赤く染めていた。
でも、嫌ではなさそうだった。
「そしたら、その男の子がこう言ったの。「・・笑ってほしいんだ。君に笑ってほしいから・・・君が泣いてたら、周りにいる人が皆、悲しくなっちゃうよ・・・自分にはこんな事しか出来ないけど・・・君の笑顔が見たい・・・ダメ・・・かな?」って・・・それを聞いて、こんな私なのに・・・いいのかなって・・・何だか今まで強がってた事が馬鹿馬鹿しくなっちゃって・・・」
少しだけ、ミナギが笑った・・・カイトはそう思った。
「それから、その男の子とはどうしたの?」
・・・さっきまで心地よく吹いていた風がまた静かに止んだ。
「それからね、その男の子とね色んな場所に連れてってもらったり、美味しいものを二人で食べたり・・・今まで落ち込んでいたのが嘘みたいで・・・」
「ミナギは、その男の子から色々な物をもらったんだね。笑顔とか元気とか」
「うん。本当に楽しかったよ。私が病気だって事を忘れさせる位に」
ミナギは嬉しそうな顔でカイトにそう話した。
「・・・でも、それでミナギの病気が治ったの?・・・その男の子に笑顔や元気以外にもらったのって・・・」
カイトは、不意にミナギの病気の事が気に掛かって聞いてみた。
「・・・それでも、私の病気は消えてくれなくて・・・ある日、私ね高熱を出しちゃって・・・もうすぐ私・・・死ぬんだって・・・」
「ミナギ・・・」
カイトは、ミナギの震える手をそっと握った。
「大丈夫?ミナギ・・・もう少しこうしていようか?」
「うん、もう大丈夫、大丈夫だから・・・」
カイトは、本当に大丈夫なのか心配だったが、ミナギがそう言ってるのだから信じてみる事にした。
「意識も曖昧になって、男の子がね私に何度も話し掛けてくれるのに、何にも私・・・答えられなくて・・・」
カイトは何て言葉をかけていいか分からなかった・・・。
「でも、なぜか気持ちは楽だったんだよ。今までは、消えてしまうからって人の目さえも見れなくなってたのに・・・」
・・・ミナギは少し頭を下げて小さく息を吐いた。
「そしたら、男の子がね「君を死なせない、君の笑顔が見たいから」って、病室を飛び出して行ったの」
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「・・・それで、その男の子はどうしたの?」
「辺りも暗くなりかけて、1人になりたいって周りの人に言ってしばらく窓の外を見てたの。そしたら男の子が、小さなビンを持って戻ってきて「薬だよ。これを飲んで元気になって」って、私にくれて・・・その薬は白く光ってて凄く綺麗だったんだ・・・熱で記憶が曖昧だったのに・・・そこははっきりと覚えてたの」
白く光る、薬・・・
「白く光る薬・・・その男の子はどこから持ってきたの?」
カイトはふと、気になる事を聞いた。
「後から聞いたら、親戚のお医者さんから分けてもらったんだって。それで私、男の子からもらった薬を飲んで・・・そしたら、飲んだ瞬間に熱が嘘みたいに引いちゃって・・・次の日にお医者さんに見てもらったらね「もう大丈夫」だって言ってくれたの。周りの大人達は「奇跡だ」って驚いて」
「一瞬で・・・?」
カイトは、驚きを抑えながらミナギに聞いた。
「うん、とっても不思議な感じで・・・体全体が軽くなってゆくのが分かったの」
「・・・・・・・・・」
カイトはふと、お医者さんが手に負えない病気を何で男の子の持ってきた薬であっさり良くなったのだろうと思った。
「・・・・・・」
一体・・・何で・・・・・・?
「・・・カイト?」
「・・・え?」
「どうしたの?何だかボーっとしてるよ・・・」
「え?いや、何でもないって。ただ・・・」
「ただ・・・?」
「その男の子の親戚のお医者さんが、よくそんな凄い薬を持っているなぁ・・・って、驚いちゃって」
カイトはミナギにそう話した。
「うん、私も。その男の子に出会えたのも奇跡だって思うし・・・こうして元気に動き回れるのもあの男の子のおかげ・・・本当、感謝してるんだ」
「ああ、そうだね。その男の子がいなかったら、こうしてミナギに会う事も無かったしね」
「えへ、そうだね。・・・でも、カイトって何だか・・・あの男の子みたい」
「え??そうかな・・・」
ミナギが笑顔でそう話すと、カイトは少しだけきょとんとした。
その顔を見てミナギが再び笑顔で交わした。
「うん、微かにしか覚えてないけど・・・何となくカイトに似ていたよ・・・」
「そうなんだ・・・俺達、今日会ったばかりなのに・・・」
「えへ、そうだね」
初めてなのに、何だか懐かしいような・・・不思議な感覚だった。
・・・・・・。
少しして、カイトから話し始めた。
「それで、その男の子とはその後どうしたの?」
「それから1週間後にお姉ちゃんの住んでる町に行く事が決まって・・・」
「それで、その男の子と別れたんだ・・・」
「うん。せっかく友達になれたのにって、泣いちゃって・・・そしたら男の子がね「この町にずっといるから、待ってるよ」って、言ってくれて・・・私、きっとこの町に戻りたいって決めたの」
ミナギは、どこか強さを秘めた目でカイトに話した。
「その男の子に会えるといいね」
「うんっ。・・あれから大分時が経っちゃったけどね・・・」
ミナギは少し淋しそうに話した。
「ミナギは、その男の子が住んでた場所って分かる?」
カイトはとりあえず、ミナギに見つかるきっかけを作った。
「・・私、その男の子と決まった場所で待ち合わせして、そこで別れてたから・・・その・・・男の子の家・・・知らないの、私」
「あ・・・・・・」
いきなり手がかりを無くしてしまったようだった。
「うーん・・・せめて名前を思い出せればいいのにな・・・」
「うん、そうだね・・・。何で私、忘れちゃったんだろうって・・・」
カイトとミナギは少しだけ途方に暮れていた。
「きっと、その内に思い出すよ。ミナギが大切に思ってる男の子だったら絶対に」
「うん、そうだね。私の命を救ってくれた恩人で、大切な友達だもんね」
カイトの言葉に、ミナギは元気をもらったように、笑顔でカイトに交わした。
・・・・・・・・・。
カイトが空を見上げると、もうすぐ夕日も消えかかろうとしていた。
「わぁ・・・もうこんな時間かぁ・・・」
「うん、そうだね。話をしていたらあっとゆう間だね」
「うーん・・・」
カイトは、少し参ったなって感じで髪の毛を掻いていた。
「え?どうしたの、カイト・・」
「えっと、実は今日学校の学園祭の準備が別校舎であったんだけど・・・」
「あ・・・ごめん、カイト。私の話が・・・」
ミナギがそう言おうとして、カイトは慌てて、気にしないでと言うように首を横に振った。
「いや、いいんだミナギ・・・。昨日もここでミナギを見かけた時から話し掛けようと思ってて・・・」
「昨日から見てたんだ・・・やっぱりおかしいよね・・・2日も、ここから一歩も動かずに願いをしてるなんて・・・」
ミナギは、少し照れたような感じで話した。
「ううん、別におかしくないよ。会いたい人の為に願う事はとても大事だし、それに・・・ミナギが願ってる姿に少しだけ見惚れてたし・・・」
「えへっ、ありがと・・・カイト。何だか嬉しいよ」
カイトの思いがけない言葉に、ミナギは思わず照れているようだった。
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「あっ、そーだ、今度の土日にうちの学校でその学園祭やるから遊びに来てよ。せっかくこうして知り合えたんだし・・・どうかな?」
カイトは、ダメ元でミナギを誘ってみた。
ほんの少しして・・・
「うん、絶対行くから」
カイトの急な誘いにミナギは喜んで返事した。
「楽しみにしててよ。この町一番の秋のイベントだから」
「うん、期待してるね」
カイトはふと、空を見上げた。少し赤み掛かった空が今までの時間の経過を表していた。
「もう、こんな時間かぁ・・・一緒に帰ろっか、ミナギ」
「え?・・・学園祭の準備はいいの?カイト・・・」
「まぁ・・・良くないけどね、もう今から行っても何も出来ないだろうし・・・それに女の子をこんな所に1人に出来ないしさ」
カイトはミナギの反応を待った。
・・・・・・。
「うん、ありがと。私の家はここから近いけど、今日はカイトと一緒に帰るね」
ミナギは少しだけ照れていたみたいだった・・・。
・・・・・・。
ミナギはカイトの隣を歩き始めた。
「何だか・・・前からこうしてカイトと一緒にいるみたいだね」
「うん、そうだね。今日、初めて会って話したのにね」
初めてなのに・・・どこか懐かしい・・2人はそんな感覚を感じていた。
「あっ、そー言えば・・・」
「ん、なぁに、カイト?」
「ミナギって、今何年生?・・・高校生なんだよね・・・?」
「うん。今、私17歳だから」
「そっか・・・じゃ、俺と同じ二年生だね」
「あっ・・・・・・」
カイトのその言葉に、ミナギは言いにくそうに話し始めた。
「・・・でも、カイトと同じ学年じゃないと思うよ」
「えっ・・・どうして?」
「私・・・病気で小学校の時、殆ど休みがちで・・・その時、出席数も足りなかったから・・・」
「あっ・・・」
カイトは肝心な事を忘れていた・・ミナギは病気がちだった事を・・。
「いや、その・・・ごめん。気付いてやれなくて・・・」
「ううん、気にしなくても大丈夫だよ。病気は男の子のおかげで今はもう完治したし、学年が違うといっても一年だけだし・・・」
「一年違いなんだね、良かった」
「え・・・?」
「あ、いや、せっかく知り合えたのにもし、中学生だったらあまり会えないような気がして・・・」
カイトは少し照れを隠すように早口で話した。
「えへ、通うのは少し先だけどよろしくね、カイト」
ミナギはカイトの手を握った。
・・・・・・・・・。
「今日は本当にありがと、カイト。私の話を聞いてくれて・・・本当、気持ちが楽になったよ」
カイトとミナギは家の前に立っていた。
「話してるミナギが何だか辛そうに見えたから・・・ちょっと心配だったけどね」
「でも、聞いてもらう方がいいかな、私は・・・黙ってる方がかえって辛いし・・・」
そんのものなんだろうか・・・と、カイトは思ったが、ミナギの飾りのない笑顔を見てそう信じる事にした。
「それじゃ、ミナギ」
「うん、カイト・・・またね」
ミナギに別れを告げて、カイトは再び空を見上げた・・・
さっきまでは赤みを帯びていた空はあっとゆう間に星空へと変わっていた。
「さてと・・・」
カイトは少し急ぎ足で家路へと急いだ。
・・・・・・・・・。
・・・。
#1「空色~そらいろ~」end.
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「ただいま、フォー」
「フォー!」
カイトが家に辿り着くと、真っ先にフォーが迎え入れてくれた。
「ごめんな、フォー。あんまり構ってやれなくて・・・学園祭が終わったら遊ぼうな」
「フォー♪」
カイトは、今まで構ってやれなかった分、フォーとじゃれあった。
・・・・・・。
「ただいま」
「おかえり、カイト。もうすぐご飯だから手を洗って着替えてきなさいね」
「はーい」
カイトは、急いで洗面所で手を洗って、自分の部屋に戻って着替えた。
・・・・・・。
「いただきまーす」
夕飯はシチューだった。
「学園祭の準備は上手くいってるの?」
「うーん・・・ギリギリかなぁ・・・?」
「明日も早いから、早く寝なさいね」
「はーい」
何気ない会話・・・どこの家にもある風景だった。
・・・・・・。
・・・。
カチャ。
「さて・・・」
風呂から上がり、自分の部屋に戻ったカイトはゆっくりベッドに腰掛けた。
「・・・・・・」
ふと、カイトは今日会ったミナギの事を考えた。
ミナギの命を救った、大切な人への強い思い・・・自分と同い年のはずなのに・・・
誰よりも強い意志を持ってる・・・
とても、自分なんかじゃ決してマネ出来ない・・・強い思い・・・
絶対に、会えるといいな・・・ミナギの大切な人・・・
「・・・・・・」
と、カイトは話をしてる途中で、心の中の引っ掛かりが気になっていた。
「ミナギかぁ・・・」
ふと、カイトはミナギの名前を何度となく言ってみた・・・
幾度となく心に引っかかるような感じ・・・
いつの間にかカイトは、小さい頃に一緒に遊んだ事のある女の子と影を重ねていた・・・。
「・・・そんなわけないか。ミナギとは初めて会ったんだし・・・」
そう考えてる途中で、カイトは段々と睡魔に襲われてきたので、明かりを消して布団に潜った。
「おやすみ・・・」
辺りは静寂に包まれた。
・・・・・・・・・。
・・・。
(・・・・・・に・・・・・・い・・・)
(・・・・・・の・・・に・・・おい・・・・・・で)
「・・・・・・」
(・・・・・・たし・・・の・・・とこ・・・・・・おいで・・・)
「・・・・・・」
(・・・たし・・・の・・・ところ・・・に・・・)
「・・・・・・うう・・・」
(・・・わたしの・・・ところ・・・に・・・)
「!?」
誰かが呼んでる・・・?
意識が遠くなりかけて不意に目が覚めた。
「はぁ・・・はぁ・・・」
久しぶりの不快な感覚だった。
「う・・・げほっ、げほっ」
カイトは胸を押さえながら、リュックから薬を取り出して一粒飲んだ。
「はぁ・・・はぁ・・・」
辺りはまだ薄暗くまだ夜は明けていなかった・・・。
「あれから一週間か・・・何とか保った方かな・・・?」
カイトは胸が苦しくなったら薬を飲む、そんな生活をあの日から続けていた。
そう・・・あの日から・・・・・・。
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・・・・・・。
「おはよ、母さん」
「おはよう、カイト」
焼きたてのパンの匂い・・・いつもの朝、カイトは心の中でほっとした。
「・・・カイト」
「ん、何?・・・母さん・・・」
不意に母さんが話し掛けてきた。
「少し顔色が悪いみたいね・・・大丈夫?」
「え??・・・そう?・・・ちょっとだけ眠れなかっただけだから・・・大丈夫だって」
やっぱり母親である。
挨拶の時は気付かれないようにと、平然としていたのに・・・。
「学園祭の準備で大変なのね・・・今日は休んだらどう?」
母はカイトに優しく言った。
「大丈夫だって。もうすぐ学園祭始まるんだし・・・疲れてるってもちょっとだけだから」
カイトは、笑って誤魔化した。
・・・・・・。
「んじゃ、母さん行ってきます」
「カイト、本当に大丈夫なの?」
「だ、大丈夫だって、じゃっ」
母はまだ心配そうな顔をしていたが、昨日は準備に行ってなく、さすがに今日も休む訳にはいかなかった。
あまり母親の目を見てると引き止められそうだったので早々と玄関を出た。
「じゃっ、フォー行って来るから」
「フォー・・・?」
「え?どうしたの、フォー・・?俺の顔に何か付いてるの?」
カイトがフォーの顔を見ると、とても悲しそうな顔をしていた。
「どうしたんだよフォー、そんな顔で俺を見て・・・」
「フォー・・・」
フォーはそれでも悲しい表情でカイトを見ていた。
「・・・もう時間が無いから行くよ、もう・・・って、フォー?」
フォーは、カイトの持ってるカバンを口で咥えて引き戻そうとしていた。
「フォー、何をしてるの、フォー、放せって、フォー」
フォーは、決して放そうとしなかった。
よく見ると、フォーはとても心配そうな顔をしていた。
何で、お前もそんな顔で・・・見るの?
どうして・・・?
俺に行くなって事・・・なのか??
「フォー・・・お前・・・」
フォーはカバンを咥えながら首を横に振っていた。
「フォー・・・俺は大丈夫だから、帰ったら遊ぼうな」
カイトは、心配してるフォーを落ち着かせるように頭を撫でながら話した。
「フォーゥ・・・」
ようやく咥えていたカバンを放してくれたが、フォーはまだ心配そうな顔をしていた。
(フォーまで・・・そんなに俺の顔色が悪いのかな・・・?)
カイトは、息が整わないままで、少し早足で学校に向かった。
途中、挨拶を交わしたときの親戚の表情を気にしながら・・・。
・・・・・・。
カイトは、少しふらつきながらようやく教室に入った。
「おはよ、シンジ。昨日はごめんな」
「カイト、昨日はどうし・・・」
「え・・・?」
カイトの顔を見た友人達の表情が変わった。
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「・・・カイト、お前・・・どうしたんだよ?・・・凄く顔色が悪いよ」
まるで、変わり果てたものを見たかのように友人達を始め、クラスの皆が驚いていた。
「皆、そんなに驚かなくても・・・あはは」
「あはは・・・じゃないだろうよ、カイト・・・」
カイトはいつも通りを装っていたが、友人達は気が気でないらしい・・・。
「よく、そんな状態で学校に来れたなぁ・・・」
「無理しないで今日はもう帰った方がいいって」
「でも・・・学園祭の準備が・・・」
「そんなのは俺達で先に進めておくから・・・今日はいいって」
「カイト君、先生には私達が休むって言うから・・・」
カイトは、クラスの皆にそう促されて家に帰る事にした。
「・・・うん、分かったよ。先生によろしく伝えてよ・・・」
「おう。今、無理して本番でダメになったらシャレにならないしな」
どうやら、自分が思ってる以上に顔色が悪いらしい・・・。
「また明日」
「家まで送ってくよ」
シンジはそうカイトに言うと、カイトは「いや、大丈夫だから」と断った。
カイトは不安定な足取りで教室を後にした。
「さっきまでは平気だったのになぁ・・・」
今朝見た夢が原因なのは間違いなかった。
でも・・・たかが夢で、ここまで・・・・・・。
・・・・・・・・・。
重い足取りでカイトは何とか家に辿り着いた。
「・・・ただいま、フォー・・・」
「フォー!」
フォーはカイトのその変わり果てた姿を見て、涙目でカイトの側に寄り添った。
「フォー、こめんな。お前の言うとおり行かない方が良かったよ・・・」
カイトは、泣きそうなフォーの頭を優しく撫でた。
それに答えるかのように、フォーはカイトの頬に顔を寄せた。
「ありがと、フォー・・・」
カイトは、少しだけ元気になれた・・・そんな気がした。
・・・・・・。
「ただいま、母さん」
「おかえり、カイト。大丈夫なの?」
「うん・・・あんまし良くないみたい・・・やっぱし母さんの言うとおり休んだ方が良かったかも・・・」
「今、部屋の布団を敷き直すから居間で待ってなさいね」
「うん・・・」
母親は、カイトの部屋に向かった。
・・・・・・・・・。
コンコン。
「・・・入っていいよ、母さん」
カチャ。
「調子はどうなの?・・・カイト」
「うん、今朝に比べたら大分楽になったよ・・・」
母親は持ってきた昼食を机に置いて、カイトのおでこに手を当てた。
「今朝に比べて顔色も良くなったし、熱も無いみたいだし大丈夫だと思うけど・・・無理しないのよ」
「うん・・・」
カイトは母親の言うとおり、もう少し大人しくしようと思った。
母親の作ってくれた昼食を机に座って食べた。
昼食は食べやすい雑炊だった。
・・・・・・。
やがて、カイトは軽くなった体を起こして、普段着に着替えてから外に出かける準備をした。
「行ってきます、母さん」
「体は大丈夫なの?カイト」
「うん、今は平気。ちょっと、外の空気を吸ってこようかなって・・・」
「無理はしちゃだめよ」
「うん、分かってる」
カイトのそんな姿を見て少しだけ安心したのか、居間の方にゆっくり戻っていった。
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・・・・・・。
パタン。
「フォー、行こう」
「フォー!」
カイトの少しだけ元気を戻した顔を見たフォーは、どこか安心したような表情で見ていた。
カイトは普段より遅めに歩き始めた。
・・・・・・。
・・・。
バサッ、バサッ・・・。
一瞬だけ風を切った。
「フォー!」
大きく翼を広げ、フォーは空の起動に乗った。
「今日はゆっくり行こう、フォー!」
「フォー♪」
フォーは、少しずつ速度を落としていった。
カイトは学園祭の準備であまりフォーの相手を出来なかったので、こんな時間も悪くないと思った。
こうして、フォーと一緒に出掛けるのも久しぶりだった。
・・・・・・・・・。
家路を抜けて、商店街をしばらく歩くと、いつもの通学路に出た。
「もう少し・・・かな?」
カイトとフォーが、行く場所は大体決まっていた。
「・・・あれ?」
向こうの道から、女の子が歩いてきた。
姿がはっきりするにつれて誰なのかはっきりと分かった・・・・・・ミナギだった。
「ミナギー!」
「カイト・・・?」
カイトに呼ばれて、ミナギは嬉しそうに近寄った。
「ミナギは、今日は何してたの?」
「私は隣町まで買い物だよ」
ミナギの手元を見ると、小さな袋を持っていた。
「隣町までわざわざ・・・この町じゃ売ってなかったんだ・・・?」
「うん、どこの店に行っても置いてなくて・・・色々お店の人に聞いたら隣町にあるって・・・」
この町は、隣町に比べても遥かに大きく、他の町から買い出しに来る人が多い程なのに・・・
この町で手に入らない物・・・一体、何だろう?
カイトは気になったが、何だか聞いてはいけないような気がした・・・。
「カイト、学校は?・・・今日は休みなの?」
ミナギはふと、思った事をカイトに訊ねた。
「うん・・・行った事は行ったんだけど・・・」
「・・・?」
「今朝、クラスの皆に凄く顔色が悪いって言われて、今日はいいって言われてすぐに早退しちゃって・・・」
「え!?」
カイトがそう話して、ミナギははっとカイトの顔をじっと見た。
「本当・・・昨日よりも大分顔色が悪いよ・・・」
カイトの顔を見て、ミナギは表情が少し曇った。
「はは・・・やっぱしミナギにもそう見えるんだね・・・」
「本当に大丈夫なの?・・・カイト」
ミナギは心配そうに訊ねた。
「さっきまで寝ていたから・・・朝よりは大分楽になったよ」
「そう、ならいいんだけど・・・」
カイトにそう言われて、ミナギは少しだけほっとした感じだった。
「こうしてフォーと散歩に出掛けるのもいいかなって思って・・・」
「フォー・・・?」
ミナギは、一瞬カイトしかいないのに誰の事を言ってるのかと思い、少しだけきょとんとした。
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「あっ、そっか・・・ミナギにまだ紹介してなかったっけ・・・」
カイトは空を見上げた。
大きく息を吸って・・・
「フォー、ここに降りてきて!」
カイトがそう空に向かって叫ぶと、フォーがゆっくりと二人の目の前に降りてきた。
「フォー」
「わぁ・・・」
ミナギは、少し背の高いフォーを見て少しだけ驚いているようだった。
「紹介するよ。ドラゴンのフォーだよ、フォー、俺の友達のミナギだよ」
そうカイトに言われて、フォーはそっとミナギを見つめた。
「フォー」
「・・・・・・・・・」
ミナギは少し緊張してるのか、フォーの顔を見て固まっているようだった。
「大丈夫だよ、ミナギ。フォーの頭をそっと撫でてみて」
カイトはミナギの緊張を解くようにフォーの頬を撫でてみた。
「フォー♪」
ミナギは、そんなカイトとフォーの様子を見てちょっとだけ安心したようだった。
「・・・うん」
ミナギはフォーを見つめた。
フォーの優しい瞳に、心を許すように頭を優しく撫でてみた。
「フォー♪」
フォーも、ミナギの優しさを受け取るように笑顔で交わした。
「えへ、よろしくねフォーちゃん」
カイトは、ミナギとフォーの穏やかなやり取りを見てほっとした。
「ミナギはこれからどうするの?」
カイトはふと、ミナギに訊ねた。
「私はもう用事は済ませたから、特に予定は・・・」
「じゃ、今から一緒に行かない?いつもフォーと一緒に場所があるんだ」
カイトは、ミナギに話を持ち掛けた。
「うん、いいよ。フォーちゃんの事、もっと知りたいし」
「それじゃ、決まりだね。フォー、行こう」
「フォー♪」
フォーはゆっくり翼を広げて、やがて空に向かって飛んだ。
「行こうか?ミナギ・・・」
「うんっ」
カイトとミナギはゆっくり歩き出した。
「ねぇ、カイト・・・」
「ん?何、ミナギ・・・」
「カイトとフォーちゃんがいつも行ってる場所って・・・遠いの?」
「えっとね・・・もう少しかな・・・?」
カイトとミナギはゆっくりとフォーの後を追った。
・・・・・・・・・。
・・・。
「さぁ、着いたよ」
「うわぁー・・・」
着いた場所は、どこまで行っても果てが無いかのような・・・
なだらかな斜面のある草原だった。
「この町に、こんな場所があったんだ・・・」
ミナギはただ、辺りを見回していた。
「ミナギ、ほら、あそこに見えるのが俺が通ってる学校だよ」
カイトの指差す方向には、手の中にすっぽりと納まりそうな程に小さく写る学校の建物があった。
「凄くいい眺めだね・・・」
ミナギは圧倒されそうな風景に思わず見惚れていた。
カイトは、静かに息を吸って吐いていた・・・。
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・・・・・・・・・。
「フォー♪」
心地よい風が吹いていた。
カイトとミナギは草原に座って、フォーの飛んでる姿を見ていた。
「フォーちゃん、何だかとっても楽しそう」
「学園祭の準備が忙しくて、フォーの事本当に構ってやれなくて、学園祭が終わったら思い切りフォーと遊ぼうと思って・・・でも、今日学校を休んでしまったから・・・」
カイトは、フォーを遠くから見ながらミナギに話した。
「でも、カイトが休んだおかげで今日、こうしてカイトとフォーちゃんと一緒にいられるから・・・私は良かったかな・・・?」
ミナギは、ぽんっと立ち上がってカイトの方を見た。
「あはは・・・朝、学校でクラスの皆が血相を変えて休んだ方がいいって言われた人間があまりこうして外に出てるのもおかしいけどね・・・」
カイトは、少しだけ苦笑いしながらミナギに話した。
「あ・・・カイト、体の方は本当に大丈夫なの?」
ミナギはまた心配そうな顔をして聞いた。
「まぁ、何とか。あんまし万全な状態じゃないけど・・・何だか外に出たくって・・・」
「ふふ、気持ちは分かるよ、だって・・・私も昔、病室にずっといるのが嫌でいつも外に出ていたから」
「はは、ミナギもなんだ・・・」
しばらく吹いていた風が止んだ。
「ねぇ、カイト」
「何?ミナギ・・・」
「フォーちゃんとはいつ出会ったの?」
ミナギはふと、気になった事をカイトに聞いた。
「出会い・・・かぁ・・・・・・」
カイトは、ゆっくり立ち上がって静かに息を吸った。
「・・・ふぅ」
カイトは、静かに息を吐いて空を飛んでいるフォーを見上げた。
「俺が中学一年の時かな・・・?」
カイトはゆっくりと歩き始め、少しずつ思い出すように話し始めた。
ミナギもその後をついて行く。
・・・少しだけ歩いた所で、カイトは立ち止まった。
「授業が終わって、ちょっとこの辺りかな・・・血みたいのが飛び散ってて・・・」
「え・・・?」
ミナギは、カイトの言葉に一瞬、驚いた。
「何だろうと思って、跡を追ってみたんだ・・・そしたら、今より半分以下の大きさだったフォーが血だらけここに横たわっていたんだ・・・」
「・・・・・・」
ミナギは、カイトの言葉に凍り付いたように表情が固まった。
「今すぐ、助けないと大変だって思って近寄ったんだ。・・・そしたら、フォー・・・凄く怯えていて、俺がフォーの側に行く程に警戒の目で俺を見始めて・・・その時に、フォーは人間に襲われたんだって思って・・・」
「フォーちゃんに・・・そんな事があったなんて・・・」
ミナギは、少し心を痛めてるようだった・・・。
「早く手当てをしないと死んじゃうって思って、フォーを抱き上げて町の方へ走ったんだ。
・・・フォーは凄く嫌がってたけど・・・」
「誰がフォーちゃんを襲ったの・・・?」
カイトは何も言わずに、静かに首を横に振った。
「可哀相だよ・・・いくら何でも、そんなの・・・」
「・・・・・・」
カイトは、泣きそうになっていたミナギの頭をそっと撫でた。
「・・・・・・」
カイトは静かに目を閉じ、少しずつ過去を追ってゆくように再び話し始めた。
「町に辿り着いて、手当たり次第病院に行ったんだけど・・・」
「・・・だけど?」
「どこに行っても・・・その子はもう助からないよって・・・相手にもしてくれなくて・・・」
カイトはあの時の事を思い出し、少しだけ怒り混じりに話した。
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「何か・・・酷い話だよ」
ミナギは、あまりの辛い話に涙目の顔を少し伏せた。
「それで、途方に暮れた時にあの人にお願・・・」
「・・・?」
カイトは途中で言いかけて止めた。
「カイト、どうしたの?急に話を止めちゃって・・・」
「あ・・・いや、知り合いのお医者さんに泣きながら頼んで・・・それでようやく見てもらったんだ・・・」
「良かったよ・・・そのお医者さんがいなかったら、フォーちゃんが・・・」
ミナギは、また泣き出しそうになっていた。
「その・・・ごめん、ミナギ。ちょっとこの話は辛すぎるかな・・・?」
カイトは、ミナギのそんな姿を見て急に我に返った。
「ううん、カイトとフォーちゃんの事、もっと知りたいから・・・いいよ、続き話しても」
「あ・・・うん。それで何とか助かって・・・しばらく自分の家で看病して・・・羽も飛ぶ事が出来ないんじゃないかって位に傷付いてて・・・診ていてとても痛々しかったよ」
ミナギは、少し涙目になりながらもカイトの話を聞いていた。
・・・・・・・・・。
少しして、吹いていた風が止みだした。
一瞬だけ、辺りが沈黙に包まれたようだった。
再びカイトはフォーの飛んでる方向へ歩き出し、ミナギもその後をついていった。
「ふぅ・・・。それで、フォーは俺が食べ物をあげても何も口にしてくれなくて・・・「食べないと死んじゃうよ」って言っても、何も答えてくれずにただ、俯くだけだったんだ・・・」
「フォーちゃん、まだカイトの事・・・怖がってたんだね・・・」
「うん、俺が人間だからやっぱり怖かったと思う・・・それから4日後かな?フォーがやっと食べ物を口にしてくれたのは」
カイトは、あの時の事を頭の中で映像化しながらミナギに話した。
「・・・うん」
「いつも側にいて、看病して・・・それから一か月程かな・・・?やっと歩き回れるくらいまで回復したのは」
カイトは、歩くのを止め、一息置いてから遠くの町を眺めた。
風で草木の揺れる音だけが静かに流れていた。
「ようやく俺や母さんにも心を開くようになって、笑ってくれる回数が増えて・・・嬉しかったんだ。このままフォーが心開いてくれなかったら・・・って、考えると・・・」
「カイトって、優しいね」
ミナギは、カイトの隣に立ってカイトの顔を覗いた。
「えっ、そうかなぁ・・・?」
「うんっ、そうじゃなかったらフォーちゃん・・・心開いてなかったよ」
ミナギは笑顔で話した。
・・・・・・・・・。
・・・。
「フォー♪」
「・・・・・・・・・」
ミナギは、楽しそうに飛んでるフォーの姿を見て、どこかもの悲しい気持ちになった。
「フォー、あんまり遠くまで行くなよー!」
「フォー♪」
カイトがそう言うと、フォーは迂回して近くを飛び始めた。
「それで、フォーに早く空を飛べるようになってほしくて、一緒に色んな所に連れて行ったり、この場所で俺がこうして飛ぶんだよって・・・」
そう言って、カイトは両手を広げてバサバサとやった。
「・・・くすっ」
「あっ、ひどいなぁミナギ・・・笑わなくてもいいじゃん」
「えへ、ごめんねカイト・・・だってあまりにもおかしかったから」
気が付いたら、ミナギは笑っていた・・・さっきまでの悲しい顔を忘れる程に・・・。
「カイト、ありがと」
「ん、どうしたのミナギ?急に・・・」
「私、また泣きそうになったから・・・笑わせてくれて、悲しい気持ち、吹っ飛んじゃった・・・」
「あー、ひどいなぁ・・・」
「くすす」
カイトは、心から笑ってるミナギを見て自分も笑うしかなかった。
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「それから、少しずつ飛べるようになったんだけど、まだ危なっかしくて・・・」
「うん・・・」
「怪我が治りたての頃は大体1メートル位は飛べたんだけど、すぐに落っこっちゃって・・・草の無い場所では俺が何とか受け止めたけど・・・」
カイトは、動きを交えながらフォーとの思い出を話した。
「飛べなくなっちゃう位に傷を負っちゃったんだね・・・」
「うん。でも、少しずつ飛べるようにはなって・・・半年程かな?・・・フォーも少しだけ大きくなって・・・」
「半年も・・・」
半年・・・カイトとフォーはとてつもなく辛く長い日々だったのかなと、ミナギは少し言葉に詰まった。
「フォーに元気出して欲しくて「今日こそ飛ぼうな」って言ったんだ。その時だけ風が大人しくなって・・・フォーが思いっきり叫んで翼を大きく広げたんだ。俺はその時、今度こそフォーは飛べるって、思ったんだ」
「うんっ・・・」
ミナギは静かに息を飲んだ。
カイトは、ゆっくりとフォーの飛んでる後を歩きながら話し始めた。
「次の瞬間、フォーが凄く高い所まで飛んで・・・「やったな、フォー!」って言ってた。フォーも嬉しそうに飛んでたよ」
カイトは、大きく翼を羽ばたかせて飛んでるフォーの姿を見ながらフォーに手を振った。
「良かったよ、飛べないかもしれなかったのにね・・・」
ミナギは、何だかほっとした顔をしていたようだった。
「フォーがやっと飛んでくれて、これで大丈夫だって・・・そう思って」
カイトはそう言って一息置いた。
「カイト・・・?」
「あの時から決めていた事があって・・・フォーが空を自由に飛べるようになったら・・・」
「・・・?」
ミナギは、カイトの言い方が気になったがカイトは話を続けた。
「フォーが空を飛べて、一週間ぐらいかな?・・・フォーとここに来て、フォーに話したんだ」
「・・・・・・・」
「「フォー、もう大丈夫だよな・・・もう仲間や家族の所に行けるよなって」ってフォーに言って・・・」
「え・・・?」
「ここで別れようって・・・フォーに」
カイトはあの時の思い出を再現するように動き回りながらミナギに話した。
「カイト・・・どうしてそんな事フォーちゃんに言ったの?」
「あの時は、フォーにだって家族や仲間だっている。このままここにいたら戻れなくなると思って・・」
カイトは、高く飛んでるフォーの姿を見ながらあの時の思いを話した。
「それは、そうだけど・・・でも、せっかく仲良くなれたのに、もう別れなんて・・・」
「それに・・・」
「それに?」
カイトはミナギに背を向けたまま話し始めた。
「「フォー、お前を襲ったのは、俺と同じ人間・・・そんな人間の側にいつまでも一緒にいちゃいけない」って・・・そうフォーに言った」
「・・・・・・・・・」
同じ人間・・・フォー襲ったのも、助けたカイトも同じ人間・・・その言葉にミナギは言葉が出なかった。
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「そう言って、俺がこの場を離れようとしたら、フォーが俺の目の前で飛んできてしきりに首を横に振るんだ・・・。だから、俺は「来るな!お前は俺より大切な家族や仲間がいるんだから・・・これでさよならにするよ、いいね」って、言ったんだ」
カイトはあの時の事を思い出して、少しだけ顔を下に向けた。
「・・・でも、フォーはそれでも俺から離れようとはしなかったんだ・・・。急に俺の目の前に倒れ込んで、泣いてた俺の顔を舐めてきて・・・「何でだよ?俺は人間なんだぞ、お前をあんな酷い目に合わせた同じ人間なんだぞ!」って言ってもフォーは首を横に振って・・・」
カイトは、少し照れを隠すように話を続けた。
「そうしたら、フォーと別れる事が出来なくなっちゃって・・・「いいのか?俺や母さんやこの町の皆と一緒にいてくれるのか?」ってフォーに言ったらフォーも涙を流しながら・・・」
「くす、カイトはカイトだから・・・そうフォーちゃんは思ったんだよ。カイトは優しいから・・・」
ミナギは笑顔でカイトにそう話した。
「そうなのかなぁ・・・?・・・まぁ・・・それで今もこうしてフォーと一緒にいられる・・・出会いは凄く辛かったけど、こうしてフォーと・・・」
「あっ・・・」
「え・・・どうしたの?・・・ミナギ」
カイトは、ミナギの見てる後ろを振り向くとかなり近くまでフォーが来ていた。
「フォー♪」
「わっ!」
いつから側にいたのか・・・話に夢中でカイトとミナギはフォーが近くにいる事に気が付かなかった。
「フォー♪」
「あはは、やめろってフォー、くすぐったいよ・・・」
「くすすっ」
カイトとフォーのじゃれあってる姿を見て、ミナギはほっとしたように笑ってい。
・・・・・・・・・。
・・・。
「フォーゥ・・・」
カイトとミナギは、フォーが飛んでいる後を歩いていた。
「フォーちゃん、本当に楽しそう」
「今日、ここに来て良かったよ。フォーも凄く喜んでるし」
「くすっ、そうだね」
「フォー、もっと近くまで来いよー!」
「フォー♪」
フォーは、ゆっくりとカイトとミナギの側に寄った。
・・・・・・・・・。
・・・・・・。
「風が心地よいね・・・」
「ふぅー・・・」
「私達の町が、あんなに小さく・・・」
カイトとミナギは、一番高い場所に立っていた。そして、その後ろにフォーがいた。
「今日はありがと、カイト」
「うん、ミナギにフォーを紹介できたし、遊び相手が出来て良かったな、フォー」
「フォー♪」
フォーはとても嬉しそうに答えた。
「明日から学園祭の準備、頑張らないとな・・・今日は休んじゃったし・・・」
「今度の日曜だね」
「あっ、一応土曜から開催されるんだ・・・俺は土曜日は忙しくて案内できないけど・・・」
カイトは付け加えるようにミナギに話した。
「あっ、そうなんだ・・・でも、せっかくだから土曜日も見たいな・・・」
「いいけど・・・うちの学校、結構広いから・・・1人だと迷うかも・・・当日は家族か友達とでも・・・」
「大丈夫だよ、カイト・・・私だってそのくらいは・・・」
何となく、ミナギは拗ねてるようだった・・・。
「あんまし会えないと思うけど・・・絶対楽しい学園祭にするから」
「うん、すっごく楽しみにしてるよ」
ミナギは土曜日が来るのが待ち遠しかった・・・。
#2「竜翼~りゅうのつばさ~」end.
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「犬、猫の写真館はこっちですよー!」
「いらっしゃいませー!出来立てのパンやコーヒーはいかがですか?」
「私達と一緒にぬいぐるみを作りませんかー?」
「わぁー・・・」
今日は雲一つ無い天気で、絶好の学園祭日和だった。
この町で、秋一番の大きなイベントは他の学校の生徒や一般人の来客も多かった。
ミナギは、初めて目にする光景に胸がわくわくしていた。
しばらくして・・・アナウンスが入った。
「ただいまから、第一体育館にて劇団「光の旅人」を開演いたします。なお、席が無い場合は立ち見にてご了承下さいませ」
「劇団・・・どんな事やるのかな・・・?」
ミナギは見に行きたかったが、第一体育館の場所が分からず回りをきょろきょろしていた。
「君、どうしたの?」
「・・・え?」
ミナギは、不意に声を掛けられて少しだけ戸惑った。
「あっ、驚かすつもりはなかったんだけど・・・誰か探しているのかな・・・?」
ミナギは制服を見て慌てて笑顔で答えた。
「えっと、さっきのアナウンスの・・・」
「ああ、第一体育館だね。案内するからついてきて」
「あっ、はい」
生徒に案内されてようやく辿り着いた。
「えっと、ありがとうございました」
笑顔で案内してくれた生徒と別れて、ミナギは第一体育館に入っていった。
・・・・・・・・・。
ミナギは体育館に入ると、もうすでに始まるのを今か今かと待ってる人でいっぱいだった。
「わぁ・・・座る所あるかなぁ・・・?」
ミナギは空いてる席を探して前へ進んだ。
「あっ・・・」
前から3番目の列に1つだけ空席があった。
「あの・・・すみません・・・」
「うん、どうしました?お嬢さん」
見るからにお金持ちのような、少し年のいったおじさんだった。
「その席、空いてますか・・・?」
「ああ、どうぞどうぞ。本当は孫が座るはずだったんじゃが、風邪を引いてしまって・・」
「あっ・・・」
ミナギは、おじさんが少し悲しそうな顔で話してるのを見て、その席に座るのは申し訳ないと思った。
「私、立ち見で・・・」
「いいえ、私に構わなくていいんだよ。ちょうど君と同じくらいの年でね・・・」
「女の子なんですか?」
ミナギがそう尋ねると、おじさんは嬉しそうに頷いた。
「ちょうど隣の席が淋しかったし、君を見てるとまるで孫といるみたいじゃし・・・遠慮はいらんよ」
「はい、ありがとうございます」
ミナギは少しだけほっとして、空いてる席に座った。
・・・・・・・・・。
しばらくして・・・
「お待たせしました、間もなく開演です」
幕がゆっくりと開いていった・・・。
ミナギは少しだけ胸がドキドキしていた。
・・・・・・・・・・・・。
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ついに劇が始まった。
「おはよう、母さん」
「おはよう、シンヤ」
食卓を母親と少年2人が囲む。暖まる会話・・・何気ない風景だった。
・・・と、突然バックのオーケストラが激しく音を奏で始めたと思ったら、辺りが赤く包まれた瞬間、暗闇に変わった。
一瞬の出来事で、周りはどよめきだした。
場面が変わり、赤く燃え盛る中で倒れた母親をシンヤが泣きながら抱き抱えていた。
「母さん!・・・しっかりして!」
「・・・シンヤ、よく聞いて。あなただけでも逃げなさい。私の事は構わずに・・・」
「嫌だー!母さんと置いてなんて・・・」
「シンヤ!母の言う事は聞きなさい!・・・私を置いて行きなさい、いいですね・・・」
シンヤは顔を伏せたままその場を走り去った。
「うう・・・わあぁー!」
母親と息子の悲しい別れ・・・
周りからすすり泣く声がしていた。ミナギも泣きそうになっていたが何とか堪えていた。
やがて、場面が変わり森の中をあても無くシンヤは歩いていた。
「僕は、これからどうすれば・・・」
その時、シンヤの周りを魔物が取り囲んだ。
「ウウ・・・血ガ・・・オマエノ血ガ・・・」
激しいバックのオーケストラが鳴り響く中、緊張の時だった。
シンヤは剣を構えるが、1対4では誰がどう見ても勝てる感じじゃなかった・・・。
「イヒヒヒ・・・ヤリナッ!」
2体がシンヤに飛びかかろうとした時、少年と少女が駆け足でシンヤに駆け寄り加勢した。
「大丈夫?」
「1人でこの森を歩くなんて無茶だよ」
「・・・カイト?」
ミナギは、普段と違うカイトの姿に少し驚いていた。
「さっ、私達が・・・」
「相手してやるよっ!」
魔物が一斉に3人に襲い掛かる・・・
流れるようなバックの音楽が、より緊張感のある戦闘シーンを盛り上げていた。
ミナギも固唾を呑んで見守っていた・・・。
やがて・・・
3人は力を合わせて魔物達を倒した。
「ありがとう」
「ううん、気にしないで」
「そうそう、困った時はお互い様だって」
「僕はシンヤ」
「僕はミサキだよ」
「私はララ、よろしくね」
舞台の3人の様子に思わず拍手が零れていた。
やがて舞台は変わり、大きな町のレストランのような店のシーンになった。
「シンヤはどうして1人で危険な森へ?」
「僕の村が襲われて、行く宛ても無くなってたんだ・・・お母さんも・・・」
「そうだったの・・・」
会話は次第にララとミサキがどうして旅してるのか・・・経緯についてシンヤに話した。
「シンヤの村を襲った奴らは、恐らく僕達が倒さなければならない黒竜の手先だと思うんだ」
「ええ、私とミサキの村も・・・奴らに・・・」
「そうだったんですか・・・」
そこで、カイトが演じるミサキが一緒に旅をしないかと提案した。
シンヤは少し考えて・・・
「でも、僕なんかじゃ・・・何にも力になれないって・・・」
「全然構わないよ、シンヤ」
「歓迎するわ」
シンヤは、2人のその励ましに後押しされるように承諾した。
「これからさらに危険な旅になるかもしれないけど、3人いればきっと・・・」
「ええ、誰にも負けない」
「そうだね、きっと・・・」
・・・・・・・・・。
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こうして3人の旅が始まった。
次々と魔物達に襲われてる村や町を救いながら、やがて廃墟と化した村に3人は辿り着いた。
観客は皆、目にも止まらない展開に吸い込まれるように見ていた。
「ここはね、私の生まれた村だったの・・・でも、まだ小さかった時に・・・」
ララを演じる女の子が、この村の事について静かに話し始めた。
もの悲しいバックの音楽が静かに耳の中に伝うと、ミナギは自然と涙が零れていた。
・・・・・・・・・・・・。
そして、劇はいよいよクライマックスへと向かっていた。
3人は黒竜の待つ城跡へと辿り着いた。
「とうとう・・・」
「ここまで来たのね・・・」
「死んでしまった人達の為・・・」
「行こう!」
3人は静かに歩き始めた。
やがて場面が変わり、祭壇のような場所に辿り着いた。
そして・・・
薄気味悪い笑い声と、ともに、薄暗い照明に照らされた黒竜が現れた。
「フッフッフッ、私ノカワイイ子供達ヲ倒シタノガコンナガキ達トハナ・・・私モ落チタモノダナ」
見るも明らかに3人よりもでかい黒竜が睨み下していた。
「黒竜!お前には永遠に眠ってもらう!」
「愛する家族と村、そして多くの人達の仇・・・」
「今、ここで決着をつける!」
バックのオーケストラの激しさが増してゆく中、最後の戦いが始まった。
「食らえー!」
「私達に、力を・・・」
「母さんの・・・」
戦いがさらに激しさを増してゆく中、ララとミサキが負傷して倒れ、シンヤだけとなった。
「シンヤ、この剣を使ってくれ!」
カイト演じるミサキが、最後の力を振り絞ってシンヤに剣を投げた。
シンヤが剣を手にした瞬間、剣から光が溢れ出した。
「ウアアー、ナンダー、コノ光ワアァー!」
黒竜はそのあまりの眩しさに目を細めた。
「凄い、まるで皆の力が僕の中に溢れてくるようだ・・・」
「ナ、ナゼダ、コンナガキ如キニ・・・ソンナチカラガアル訳ガ・・・」
「これは、皆の力・・・全ての人々の思い・・・今こそ、お前に・・・」
シンヤは、真っ直ぐ黒竜の心臓目掛けて剣を突き刺した。
「ガハッ・・・・・・」
シンヤが剣を突き刺した瞬間、黒竜はその場で崩れ始めた。
「フフ・・・私ガコンナガキ如キ二・・・グハッ・・・・・・」
黒竜だったその姿は完全に崩れ去り、黒竜は永遠の眠りについた。
・・・・・・・・・。
やがて、場面が変わり港のシーンになった。
「シンヤはこれからどうするの?」
「僕の村を再建するよ。死んでしまったお母さんや村人達の帰る場所を作りたいんだ」
「そうか・・・」
「頑張ってね」
「ミサキとララも頑張ってー!」
ミサキとララは新たなる場所へと旅立つ船へと乗った。
シンヤはありがとうと手を振った・・・いつまでも。
・・・・・・・・・・・・。
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劇が終了した。
幕が静かに降り始めて、会場から惜しみない拍手が鳴り響いた。
ミナギは少し余韻に浸っていた。
今まで見た事の無かったカイトの姿もそうだったが、あっとゆう間の1時間で何も言葉にならない程の感動を覚えていた。
「本当に良かった」
隣に座っていたおじさんも、同じ気持ちであるかのようにミナギに嬉しそうに話した。
「はい、凄く感動しちゃった」
「孫に見せたかったわい・・・」
おじさんは、少しだけ淋しそうな表情で語った。
「・・・風邪じゃ仕方ないですよ。夜にでも話してあげたらどうですか?」
「おお、そうじゃな。お嬢さん、今日は本当にありがとう。まるで孫と一緒に見てるようじゃったよ」
「はいっ」
ミナギはおじさんに会釈をして会場を後にした。
・・・・・・・・・。
ミナギはカイトに会いたかったが、まだ忙しいのかもと思い先生や生徒に聞くに聞けなかった。
「・・・・・・・・・」
とりあえず、じっとしていても仕方ないのでミナギは学校の校内を見て回る事にした。
・・・・・・・・。
初めて入る校内・・・
これから毎日通うけれど、ミナギはいつもと違うウキウキな気分だった。
「ここがこれから通う学校かぁ・・・」
学園祭で全く違う雰囲気もあって、ミナギは少しだけ浮き足気味になっていた。
「ふぅー・・・・・・」
ミナギは少し緊張した感じで校内に入った。
・・・・・・。
校内はとても整備されていて思った以上に広かった。
ミナギはとりあえず、一回り見て回る事にした。
生徒達のギャラリー、オシャレに飾った喫茶店、不思議な感じの占いの館、生徒主催のゲーム大会、先生だけで作ったアート展・・・。
とても一日で回れる数じゃなく、ミナギはどこから見ていいのか迷っていた。
「どうしようかなぁ・・・?」
・・・と、少し歩き回っている内に何だかお腹が空いてきたので、ミナギはたまたま近くでやっていた飲食店に入った。
「あっ・・・」
すると、偶然食事をしていたカイトに出会った。
「ミナギ?」
「カイト・・・」
ミナギはカイトに会えたのは良かったが、何を話していいか分からずつい固まってしまった・・・。
「ミナギ・・・えっと、良かったらここに来て座っていいよ」
「えっ、いいの?」
「うん。ちょうど休憩してたとこなんだ」
ミナギは、カイトのその言葉を聞いて安心して隣の席に座った。
「えへっ、カイト・・・さっきの劇、とっても良かったよ」
「あはは・・・さっきの見てたんだ」
カイトは少し照れを隠すように話した。
「うん、感動しちゃった」
「あまり見せられる感じじゃなかったけどね・・・」
カイトは照れを誤魔化すようにミナギに笑って話した。
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少しして・・・
ミナギの注文したトーストとホットティーが来た。
「ふぅー・・・おいしい・・・」
カイトはミナギが食べてる所を見ながら、ホットミルクティーを飲んでいた。
「ねぇ、カイト・・・」
「ん、どうしたの?ミナギ・・・」
ミナギは飲んでいたコップを置いて話し始めた。
「カイトが言っていた準備ってあの劇の事だったんだね?」
ミナギは嬉しそうにカイトに話した。
「うん、劇もそうなんだけど、午後からやる店の打ち合わせなんかもやってて・・・」
「本当に、今日はカイトは忙しいんだね」
ミナギは少しだけ感心したように話した。
「うん・・・でもまだ時間はあるからここで休憩してたんだ」
カイトはそう話した後に再びホットミルクティーを飲んだ。
「そういえば、カイトの店って何をするの?」
ミナギはふと、気になってカイトに聞いた。
「えっとね・・・」
「カイトー!」
カイトが言いかけた所で、カイトの友人らしき生徒が入って話し掛けてきた。
「おっ、シンジ」
「もう少しで店が始まるからな」
「はは、分かってるよ」
シンジはカイトの肩を軽く叩きながら話した。
「あれ・・・?」
シンジはカイトの横にいるミナギに気が付いた。
「カイト、その子は?」
「えっと、紹介するよ。ミナギって言うんだ。ここに引っ越してきたばっかりで・・・たまたま知り合って・・・」
カイトはさらりとミナギを紹介した。
「えっと・・・初めまして、ミナギです」
ミナギは少し緊張した様子でシンジに挨拶をした。
「へぇー・・・」
「な、何だよ?シンジ・・・」
カイトは、シンジの言い方が気になって聞き返した。
「別に・・・ただ、知り合ったばっかなのに随分仲良いなって・・・」
「はは、別に普通じゃん」
カイトは軽く聞き流すようにシンジに言った。
「うーん、そっかなぁー?・・・何かさ」
「な、何だよ・・・」
シンジは少しにやけたような表情で・・・
「俺には、まるで付き合ってるように見えるけどな」
「えっ・・・?」
「なっ・・・」
カイトとミナギは、シンジの思いがけない言葉に一瞬だけ固まった。
「なっ、何言ってるんだよシンジ」
「いやー・・・何となくな」
シンジのしてやったりの言葉にカイトは顔の周りが熱くなりそうだった。
「ミナギと知り合ってまだ一週間も経ってないってのに・・・いきなり何言い出すんだよ」
「いやー、その割りには・・・かな?」
「バカな事言ってないで、先に店に行ってろよ。お前は先に準備しなきゃなんないんだろ?」
「はいはい、お邪魔虫は向こうに行ってますよ」
シンジは、半分ふざけた感じに言ってから店を後にした。
「・・・・・・・・・」
「えっと、ごめんミナギ。シンジっていつもあんな感じなんだ。気を悪くしちゃったかな・・・?」
カイトは、俯きかけてるミナギに慌てて話した。
「ううん、気にしてないから大丈夫だよ。ただ、いきなりあんな事言われたからびっくりしちゃって・・・」
「あははは・・・」
カイトは何とも言えない雰囲気に笑うしかなかった・・・。
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・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
カイトの少し後ろを、ミナギが気恥ずかしそうに歩いていた。
「・・・・・・」
あれから、どう言葉を交わしていいか分からず互いに沈黙が続いていた。
少しして・・・
カイトがミナギに話し掛けた。
「あ、あのさ、ミナギは気にしなくていいよ。あんましそんな事気にしてたら、逆に意識して話し難くなっちゃうし・・・」
「うん・・・」
「あ・・・えっと・・・」
変に意識してしまってるのか、ミナギは少し返事に困っていた。
「あ、そういえば俺のやる店の事、まだ言ってなかったよね?」
カイトは、話題を変えるべくミナギにそう話した。
「あ、そうだったね。カイトの店って何をやるの?」
「マンガ喫茶・・・っていっても、学校の本も混ざってるけどね」
「へぇー・・・何か面白そう」
ミナギは興味深そうに聞いていた。
「うーん・・・そうかなぁ?・・・俺は違うアイデアを出したんだけど、結局それに決まっちゃって・・・」
「カイトはどんなアイデアを出したの?」
「俺はね、手軽にガラス作品を作れる店にしようって言った」
「カイトの出したアイデアの店・・・見たかったな・・・」
ミナギは少しだけ残念そうな顔で話した。
「まっ、しょうがないよ」
「ねぇ、マンガ喫茶は誰のアイデアなの?」
ミナギはふと、気になった事をカイトに聞いた。
「・・・・・・シンジ」
「くすっ、そうなんだ」
気が付いたら、さっきまでの空気が少しだけ和んだ気がした。
・・・・・・・・・。
少し歩いて、途中の階段の所で一旦別れる事にした。
「それじゃ、ミナギ」
「うん、後で店に行くから」
「まっ、あんまし大した物は無いけどね・・・」
「くすっ、カイトがやる店なのに」
「あまり期待しないでもいいよ。そうそう、店は南校舎の二階でやってるから」
いつの間にか、普段どうりのカイトとミナギに戻っていた。
「初めてここの校舎に入ったけど、とっても広いね。通う前に来れてちょっと新鮮かな?」
ミナギは嬉しそうにカイトに話した。
「あっ、そうか。ミナギはまだ通ってなかったっけ・・・いつからミナギは通うの?」
「来週の火曜日だよ。月曜日は休みだってお姉ちゃんに聞いて」
「あっ、そうか・・・学園祭で振り替え休日だった・・・月曜日は」
カイトは思わず口に出していた。
「え?知らなかったの、カイト・・・」
「えっと・・・忘れてた」
「・・・・・・・・・くすっ」
カイトはついやってしまったと、ミナギの笑顔を見て苦笑いをした。
やがて、カイトとミナギは一旦別れた。
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「えっと・・・どこを回ろっかな・・・?」
ミナギはとりあえず、近くの店から見て回る事にした。
・・・・・・・・・。
ミナギは一通り見て、二階に着いた。
「えっと・・・」
ミナギはカイトのやってる店を探した。
・・・・・・・・・。
「・・・ここだ」
教室の前の看板には大きく「マンガ喫茶シン」と、書かれていた。
「マンガ喫茶・・・シン」
ミナギはその看板を2、3回読んでみた。
「・・・・・・・・・」
ミナギは、何となくシンジらしい店の名前だと思った。
カタッ・・・
扉を開けると、シンジが入り口で待っていた。
「いらっしゃいませ、マンガ喫茶シンへようこそ」
「あっ・・・シンジ・・・?」
「おっ、あなたはカイトの恋人のミナギ様ですね?」
「えっ・・・?」
ミナギはシンジの言葉に少し動揺した。
「あなた様には特別にカイ・・・」
ぽかっ。
「あたたた・・・」
「なーに、茶化してるんだよ?」
カイトは、今のやり取りで困っていたミナギを見て、勢いでシンジをお盆で叩いた。
「あは、カイト・・・」
「お客さんが困ってるだろ?」
「別にいいじゃんよ、お前達を見れば誰だって・・・」
ぽかっ。
カイトは、表情1つ変えずにシンジにツッコミを入れた。
「いってぇー・・・」
「だから、それはもういいっての」
「・・・・・・・・・」
ミナギは、唖然と2人のやり取りを見ているしかなかった・・・。
「ほぅら、シンジ。次のお客さんが来たよ、行った行った」
「あっ、お、おいっ、そんなに押すなって・・・」
カイトは、なるべくミナギから離すべく別の方へ無理やり押しやった。
「・・・・・・」
少ししてカイトが戻ってきた。
「さっお客さん案内いたしますよ」
カイトはそう言ってミナギの手を引いた。
・・・・・・。
ミナギは窓際の真ん中辺りに案内された。
「・・・その、ごめんミナギ。シンジは女の子と話してるだけでああして茶化すんだ」
「ううん、いいよ。ありがと、カイト」
「いえいえ、どういたしまして」
カイトは、ちょっとだけ紳士っぽく言ってみた。
「くすっ、何か・・・おかしいよカイト」
「うーん、そっかな?」
「うん、あんまり似合わないよ」
「あっ、ひどいなぁ・・・」
「くすす」
ミナギは、笑いを堪えるのに必死だった。
「ちぇっ、まぁいいや・・・。ミナギ、何か飲みたいものはある?」
カイトはそう言って、ミナギにメニューを渡した。
「えっとね・・・オレンジジュース」
「オッケー。作ってくるからミナギは本を選んでてよ」
カイトはカウンターに戻っていった。
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・・・・・・・・・。
「えっと・・・」
ミナギは本棚にある本を眺めていた。
ギャグ物、ラブコメ物、昔話、小説、歴史の書・・・
カイトの言うとおり学校の本も混ざっていた。
「あっ・・・」
ミナギはその中で一冊の気になる本を見つけた。
『羽をください』
その本を取り出してみると、表紙には羽が片方しかない人が白い空を見上げてる絵が描かれていた。
「どんな話なんだろう・・・?」
ミナギはその本を持ってテーブルに戻ると、頼んだオレンジジュースが置いてあった。
ミナギは椅子に座って、ジュースを半分飲んでから読み始めた。
・・・・・・。
「うわぁ・・・」
・・・・・・・・・。
「うん、うん・・・」
・・・・・・・・・・・・。
「・・・はぁ・・・」
一時間程でミナギは全部読み終えて、少しだけ涙ぐんでいた。
・・・・・・・・・・。
「・・・ナギ」
「ふぅ・・・」
「ミナギ?」
「・・・え??」
ミナギは、誰かが呼んでると思ったとたんに我に返った。
「ミナギ、大丈夫?」
「カイト・・・」
「いや・・・邪魔しちゃ悪いかなって思ったんだけど・・・」
カイトは、少し言いにくそうに話した。
「・・・うん」
「その・・・はいっ」
カイトはそう言って、ミナギにハンカチを渡した。
「あ・・・」
ミナギは頬の辺りを触ってみて、初めて自分が泣いてる事に気が付いた。
「ミナギって涙もろいね。見ててこっちが痛くなったよ」
「えー、そんな事ないよ・・・」
カイトにそう言われて、思わずミナギは拗ねていた。
「あっ、これを読んだのか・・・」
カイトはミナギの涙の訳をすぐに理解した。
「『羽をください』か・・・俺も2回程読んだよ。俺もつい、涙が止まらなかったんだ・・・」
「えへ、カイトもそうだったんだ・・・」
ミナギは涙を拭きながら笑顔で話した。
「・・・・・・・・・」
カイトはミナギの顔を見ると、少し無理をして笑顔を作ってるように見えた。
「ミナギ・・・無理して笑わなくてもいいよ。ごめん、邪魔しちゃったね」
カイトはそう言ってその席を離れた。
「あっ・・・」
ミナギはまだカイトと話したかったけど、さっきの本の話を思い出してしまい、また涙が零れた。
・・・・・・・・・。
「ふぅ・・・」
あれから約10分、涙も止まり心も落ち着いてきて店の外の窓からの風景を眺めていた。
これ以上他の人、特にカイトに涙を見せると余計な心配をかけてしまうと思い、ミナギは店を後にしていた。
今は心から笑いたかった・・・今までも泣いてる所を見られて、色々人に心配をかけてきたミナギはとにかく心から笑いたかった・・・。
「・・・・・・・・・」
気持ちを切り替える為にとりあえず、まだ見て回ってない店を見て回る事にした。
そうして・・・前夜祭が終わる頃には、ミナギは自然と笑顔が零れていた。
・・・・・・・・・。
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「・・・・・・・・・・」
ミナギはいつもの場所に立っていた。この道をカイトが通る事を願って・・・
約束をした訳ではなかったので、カイトがこの道を通るかどうかは分からなかった・・・
でも、何となくこの場所で待っていたかった・・・たとえカイトがこの場所を通らなくても・・・。
辺りはもう、夕日から夜空へと変わり始めた時間だった。
「やっぱり・・・来ないよね」
きっと、カイトはまだ明日の準備をしている・・・そうミナギは思い、帰る準備をした。
「ふうー・・・」
また明日、会えるといいな・・・ミナギは心の中でそう思った。
・・・・・・・・・。
「んじゃ、また明日な、カイト」
「うん、シンジ明日な」
辺りもすっかり暗くなり、カイトは少しだけ急ぎ足になっていた。
「ミナギ、大丈夫かなぁ・・・?」
カイトは、あの時のミナギが心配だった。
出来れば日にちが変わる前に会って話をしたかった。
「もう、家に帰ってるよなぁ・・・」
カイトは、こんな日の落ちた時間までミナギがいる訳無いなぁ・・・と思った。
「まっ、きっとまた明日に・・・?」
・・・そう思った時、いつも通る丘に見慣れた姿を見かけた。
「ミナギー?」
カイトはまさかと思い、声を掛けてみた。
「え??」
ミナギは不意に自分の名前を呼ばれて振り返った。
「カイト!?」
ミナギはまさかカイトに会えるとは思ってなかったので、喜ぶよりも先に駆け足になっていた。
「もう、家に帰ってると思ってたよ・・・」
「うん、ちょうど帰るとこだったんだよ」
ミナギは嬉しそうにカイトに話した。
「ちょっと、心配だったんだ・・・」
「ごめんね、何も言えなくて・・・」
「気にしなくていいよ。せっかくだしさ、一緒に帰ろうか?」
「うんっ」
ミナギはカイトの後をゆっくり歩き始めた。
「今日の前夜祭はどうだった?」
「楽しかったよ。特にカイトが出ていた劇が」
カイトとミナギは、ゆっくり歩きながら今日の学園祭の事を話した。
「うーん、実は前日までギリギリだったんだ・・・俺が何回もNGを出しちゃって・・・」
カイトは少し苦い顔をして話した。
「えー、でもカイト、堂々としてたよ」
「はは・・・結構緊張してたけどね・・・。練習中に皆に別な人に交代してくれって泣きそうになったり・・・」
「ふふっ・・・でも私は、ミサキの役はカイトで良かったと思うよ」
ミナギは飾りの無い笑顔でカイトに話した。
「あはは・・・皆にもそう言われたよ・・・ミサキはカイトじゃなきゃダメだって・・・。でも、無事に終わって良かったよ・・・本当に」
「くすす」
カイトはあの時の辛かった練習の日々を思い出しながら話した。
「明日は、午後まで頑張ればもう自由時間だし・・・」
「まだ私、半分くらいしか見てないよ・・・」
「この町一番の秋のイベントだからね・・・二日かけないと全部見られないよ・・・」
「うんっ、明日もたの・・・カイト?」
カイトが急に地面にしゃがみ込んだ。
「・・・・・・」
「カイト、大丈夫!?」
ミナギは心配になってカイトに触れようとした時・・・
「大丈夫だよ!」
「えっ・・・?」
ミナギは、カイトの突然の大声に一瞬だけ固まった。
「あっ・・・」
カイトはミナギの驚いた声に、我に返った。
「あっ・・・いや、その・・・ごめんミナギ」
カイトは立ち上がってミナギの方を振り返ると、ミナギは立ち止まったままで硬直していた。
「あははは・・・本当にごめん。驚かすつもりは・・・」
「・・・ううん、大丈夫。本当にびっくりしちゃった・・・」
一瞬だけ気まずい空気が流れた。カイトはその場を取り繕うようにミナギに笑顔で話した。
「カイト・・・大丈夫なの?何だか顔色が・・・」
「だ、大丈夫だって。今日は色々やって疲れてるだけだから・・・」
カイトは笑ってミナギに話した。
「うん、そうだね。カイト・・・今日は劇をやったり、お店をやったりで忙しかったもんね」
カイトがそう言うと、ミナギは納得したように答えた。
「明日、俺は昼過ぎからもう自由行動だからどこかで合流しない?」
「うん、どこがいいかな?」
「そうだなぁ・・・真ん中の噴水辺りでいいかな?」
「うん、分かったよ。明日も楽しみにしてるね」
「んじゃ、俺はもう帰るから。早く寝て明日に備えないと・・・」
「うん、カイト。また明日ね」
カイトとミナギは手を振って別れた。
・・・・・・・・・。
「・・・はぁ、はぁ・・・・・・」
カイトは誰もいない路地裏に入って胸の辺りの苦しさを押さえていた。
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・・・・・・・・・。
「ただいま・・・」
「おかえり、カイト」
カイトは手を洗ってから自分の部屋に向かった。
カチャ。
「はぁ・・・」
カイトは荷物をベッドに放り投げて腰掛けた。
・・・なるべく人前では見せないように、今までは何とかその場を誤魔化してきたけど・・・。
「ミナギ、俺の事怖くなったかな・・・?」
それでも、この胸の辺りを触れられたら、きっと・・・。
「カイトー、そろそろご飯だから来なさい」
「はーい、今行くから」
カイトは普段着に着替えて部屋を出た。
・・・・・・。
夕飯は魚の煮付けだった。
「今日の劇はどうだったの?」
「うん、何とか無事に終わったよ。ちょっとだけ失敗しかけたけど・・・」
「ごめんね、カイト・・・見に行けなくて」
「ううん、いいよ母さん。あまり無理するとまた体を壊すから」
「ありがとう・・・カイト」
カイトの母親は生まれつき体が弱く、いつも薬を飲んだり、病院の生活だったと昔、父さんに聞いた事があった。
今は大分、動けるまで回復したがあまり人込みの中とかは長くいられなかった。
「あまり無理しちゃだめよ、カイト」
「うん、大丈夫。あとは明日だけだから」
どこにでもあるありふれた団欒・・・カイトはいつまでも続いてほしいと思った・・・。
・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・ん」
・・・・・・。
「・・・・・・ん」
・・・・・・。
「はぁ・・・」
布団に入って約1時間、カイトは中々寝付けずにいた。
「星が・・・」
カイトは暗い部屋の窓から外を眺めると、ゆったりと空に星が流れていた。
「・・・・・・」
カイトは、側にあった上着を羽織ってそっと外を出た。
「・・・ふう」
家の近くにある丘に上がってカイトは小さく息を吐いた。
「・・・・・・・・・」
カイトは、座り込んで空を眺めていた。
今日は出来る事ならいつまでも空を眺めていたい・・・そんな気分だった。
・・・・・・。
とすっ。
「・・・?」
カイトは、近くに誰かの気配を感じた・・・と思っても、足音ですぐに分かったが・・・。
「フォー・・・」
「フォー、どうした?お前も眠れないのか?」
「フォーゥ・・・」
「ここに来て座ろ、フォー」
カイトが手招きすると、フォーは近くまで来てしゃがむ感じに座った。
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・・・・・・・・・。
しばらくカイトとフォーは、星空を眺めていた。
今日は少しだけ寒かったが、フォーの温もりが心地よかった。
「なぁ・・・フォー・・・」
「フォー・・・?」
少しして、カイトがフォーに話し掛けた。
・・・・・・。
「・・・俺、ミナギを怖がらせてしまったかもしれないんだ」
「フォー・・・?」
風の無い星空の下、カイトはフォーに静かに話し始めた。
「今日、帰りにミナギと話してたんだ。そしたら、また胸が苦しくなってきて・・・」
「フォー!?」
話を聞いていたフォーの表情が変わった。
「その時に、ミナギが心配してくれたんだけど・・・この胸近くを触れられるのが怖くて「大丈夫だよ」って大声を出しちゃって・・・」
「フォー・・・」
「俺のこの胸の事、知ってるのはフォーだけだけど・・・こんな事、誰にも言えない・・・母さんにだって言えないのに・・・ミナギに話したらきっと・・・俺の事・・・」
「フォーゥ・・・」
フォーはカイトが悲しそうに話しているのを聞いて、フォーも悲しげに鳴いた。
少しして、急にカイトが静かになって・・・
「・・・・・・」
「フォー・・・?」
いつの間にか、カイトは眠っていた。
「フォーゥ・・・」
フォーはカイトの頬に優しく触れた。
・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・」
(・・・・・・・・・)
「・・・・・・・・・」
(・・・・・・めだよ・・・)
「・・・・・・」
(・・・ちゃ、だめだよ・・・)
「・・・・・・」
(・・・逃げちゃ、だめだよ)
「・・・・・・?」
(・・・大丈夫、きっと大丈夫だよ。きっと・・・)
「・・・・・・え?」
(・・・君の素直な気持ち・・・あの子に伝えて・・・)
「・・・・・・え?え?」
カイトは、不意に誰かに話し掛けられた感じがしたと思ったら急に意識が戻った。
「・・・眠ってたのか?」
辺りを見渡してみても、カイトの近くにいるのはフォー以外誰もいなかった。
「フォー・・・?」
「フォー、ごめん。俺、寝ちゃってたね」
「フォーゥ・・・」
カイトはフォーに優しくそっと話した。
それにしても・・・夢を見ていた・・・のだろうか?
さっきの声・・・一体、誰だったのだろうか?
ミナギ・・・ではなかった。声の感じからして別だった。
母さん・・・でもなかった。
ハル・・・でもない・・・・・・。
カイトは、心当たりを考えてみたが、思い当たる声は無かった・・・。
・・・とても、優しい声・・・聞いた事無いはずなのに・・・なぜか心地が良かった。
「・・・・・・」
カイトは、少しだけフォーの温かさに安らぎを覚えていた。
「そろそろ戻ろっか、フォー・・・」
「フォー」
カイトとフォーは家に戻っていった。
・・・・・・。
「フォー、ありがと。一緒にいてくれて」
「フォー♪」
カイトはそっと玄関を開けてフォーと別れた。
「ふぅー・・・」
カイトは、静かに扉を閉めてベッドに仰向けになった。
「・・・逃げちゃ、ダメだよ・・・大丈夫だよ、きっと・・・か」
カイトは、その言葉に少しだけ落ち着きをもらった気がした。
「・・・おやすみ」
カイトは静かに眠りについた。
・・・・・・・・・。
・・・。
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「・・・・・・」
学園祭2日目、今日は薄く白い雲がかかった青空だった。
昨日とはまた違った劇を見終わった頃にはちょうどお昼時になっていた。
ミナギは、昨日約束した噴水の前で座ってカイトを待っていた・・・。
・・・・・・。
約10分位して、カイトが少し急ぎ足でやっていた。
「ミナギお待たせー、どの位待っちゃった?」
「うーん、ほんの少し・・・かな?」
ミナギは笑顔でカイトに話した。
「それじゃ、行こうかミナギ」
「あっ、カイト・・・」
「・・・えっ?」
カイトは、急にミナギに呼び止められた。
「昨日は大丈夫?何だか・・・」
「あ、大丈夫。昨日は早めに寝たから今日は元気だよ」
カイトは、ミナギが言い終わる前に返事を返した。
「うん、今日は顔色もいいみたいだね・・・」
ミナギはカイトの顔を見て少しだけほっとしたようだった。
「何だかミナギに余計な心配かけちゃったなぁ・・・あ、ミナギはお昼って食べたの?」
「まだだよ。カイトと一緒に食べようと思って・・・」
「あっ、じゃっ俺が出すから学食で食べない?今日しかないメニューがあるし、学年が違うからあまり会えないかもしれないし・・・」
カイトはミナギに提案した。
「えっ、いいの?」
「あんまし高いものじゃなければ・・・」
「えへっ、ありがとカイト」
カイトとミナギはゆっくりと歩き始めた。
・・・・・・・・・。
やがて、2人は学食に着いた。
「ほらミナギ、ここがうちの学校の食堂だよ。まっ、これからお世話になると思うけどね」
「へぇー・・・結構大きいね」
学園祭とゆう事もあってか、生徒よりも一般人の方が多かった。
「えっと・・・俺はチキンバスケットとジンジャーエールで」
「うーん、どうしようかなぁ・・・?」
思ってたよりメニューが多く、ミナギは少し迷っていた。
「今日は普段よりメニューが多いから、結構迷うよね」
「うん・・・ごめんね、カイト」
「気にしなくていいよ、まだ時間はあるから」
カイトは笑ってミナギに話した。
「えっと・・・私はオムライスとオレンジで」
「かしこまりましたー」
カイトはポケットから財布を取り出して2人分を会計した。
「じゃ、席に着こうか?」
「うんっ」
カイトとミナギはちょうど2人座れる席に着いた。
「ねぇ、カイト・・・」
「ん?何、ミナギ」
「どうして今日は学食にしたの?他にも食べる場所がたくさんあるのに・・・」
ミナギは何となく、気になった事をカイトに聞いてみた。
「えっ、えっとね・・・」
「・・・?」
「ほら、これから同じ学校に通うたって・・・学年も違うし、あまりこうして食べる事無いかもしれないしさ・・・」
「そうかなぁ・・・?お昼だったら会えると思うけど・・・」
「ほら、あれだよ・・・あんまし学校でこうしてると変に茶化されるし・・・ミナギだってあんましシンジみたいなのにからかわれるのって嫌だろ?」
カイトはあえてシンジを話のダシにして話した。
「うんっ、そうだね」
そのカイトの意見にミナギはあっさり納得した。
「そう、そう・・・だから今日くらいは」
カイトはちょっとだけ安心していた。
「ちょっと淋しい・・・かな?」
「えっ?」
「あっ、ううん、何でもないよ」
ミナギは思わず思ってた事をぼそっと口にしてしまい、慌ててその場を取り繕った。
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・・・・・・。
約10分後、注文したものがカイト達のテーブルに届いた。
「おまたせー」
「あっ、来た来た」
カイトがウエイトレスの姿を見ると、思い切り馴染みのある顔だった。
「あれ?カイト君?」
「えっ、今日はハルが店をやってたんだ・・・確か、昨日じゃなかったっけ・・?」
カイトはちょっと気になってハルに聞いた。
「本当は昨日だったんだけどね、急に入れ替わっちゃって・・・あれ、カイト君その子は?」
ハルはカイトの正反対に座ってるミナギにすぐ目がいった。
「えっとね・・・」
カイトは今日は自分のクラスじゃない人が店をやってると思って食堂にしたのに・・・
失敗だったと思った。
「紹介するよ、ミナギだよ。うちの近くにたまたま引っ越ししてきて、たまたま知り合って、それでうちの学校で学園祭やるから来てよって話してて・・・それで今日俺が案内してたんだ」
カイトは、ハルならあんまし茶化さないだろうと思いさらっと話した。
「紹介するよ、うちのクラスのハルだよ」
「えっと、ハルさん初めまして・・・ミナギです」
「うん、ミナギちゃんよろしくね」
カイトは、ハルに挨拶してるミナギを見てまだどこか緊張してるような感じに見えた。
「へぇ~・・・カイト君・・・」
「な、何?」
「あんたやるじゃん!彼女なんて」
カイトは、予想どうりのハルの反応にただ苦笑いするしかなかった・・・。
「違うよ、俺はただの案内人だし・・・ちょうどこの時期にミナギがこの町に引っ越してきたばっかりだったし、せっかくだからこの大きなイベントでもって思って誘っただけだし・・・」
カイトは表情一つ変えずにさらっとハルに話した。
「ふぅ~ん・・・」
「何だよ?その顔は・・・」
ハルの笑いを抑えてる顔を見て、カイトはそっけなく言葉を返した。
「結構、お似合いだと思うけどなぁ・・・カイト君とミナギちゃん」
「ハールゥー・・・」
「まぁ、まぁ・・・2人でごゆっくり・・・大丈夫よ、クラスの皆には黙っておくから♪」
怒りかけてるカイトをかわすように、ハルは悪戯っぽく笑ってその場を後にした。
「・・・・・・・・・」
カイトはそんなハルを見てただ笑うしかなかった・・・。
「カイト・・・?」
「んっ、な、何?ミナギ」
「大丈夫?顔・・・真っ赤だよ」
「・・・・・・」
カイトはハルに言われた事を考えてる内に、顔の周りが熱くなってゆくのが分かった。
「・・・カイト?」
「さっ、やっと来たんだし早く食べないと冷めちゃうよ」
「う、うん・・・」
カイトは、何事も無かったかのようにミナギの話を逸らした。
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・・・・・・・。
「カイトの友達、楽しい人ばっかりだね」
「ん、どうしたの?ミナギ・・・急に」
半分ほど食べ終わった所で、ミナギがカイトに話し掛けた。
「くすっ・・・だって、私達を見てすぐに恋人に見えるって言うんだもん」
「あはは、そうゆう話うちのクラス好きなの多いからなぁ・・・」
カイトは半ば呆れるようにミナギに話した。
「ねぇ、カイト・・・」
「えっ、どうしたの?」
ミナギは少しだけ俯きかけてカイトに話し始めた。
「カイトは、付き合ってる女の子っているの?」
「えっ!?・・・急にどうしてそんな事聞くの?」
「その・・・何となく・・・」
ミナギの突然の質問にカイトは少しだけ驚いた。
「う~ん・・・いないなぁ」
「そうなの?」
カイトは少し笑って話し始めた。
「俺はそうゆう話に疎くて、クラスの皆がそうゆう話で盛り上がっていても自分から参加する事もなくて・・・まぁ、ただ単に鈍感なだけかもしれないし・・・」
「そうなんだ・・・」
「ミナギはそうゆう話は好きな方なの?」
「私もあんまり・・・いつも病気がちで殆ど学校に行ってなかったし・・・」
「は、早く食べようよミナギ。食べたら色々案内するからさ」
カイトはミナギが悲しい顔になりかけているのを見て、途中で話を止めた。
「う、うん・・・」
「あ、あのさミナギ・・・」
「え、何?カイト・・・」
カイトは、少しだけ俯きかけてるミナギに話し始めた。
「こんな俺で良かったら、今日だけでもミナギの恋人になってもいいよ・・・」
「えっ・・・?」
カイトの思いもしなかった言葉にミナギはちょっと驚いた。
「あっ・・・ごめん、まぁ・・・その・・・」
ミナギに笑ってほしい・・・そう思ってつい、思いついた勢いでカイトは話していた。
「えへ、いいよカイト」
「えっ・・・いいの?」
「嬉しいよ、カイト・・・ちょっとだけびっくりしたけど」
一瞬だけの重い空気が少しだけ晴れたような気がした。
ミナギのその笑顔にカイトは思わず照れていた。
・・・・・・・・。
「うーんと・・・これからどうしようっか?」
「えっと・・・」
「昼食を食べ終えた2人はゆっくりと廊下を歩いていた。
「あと、見てない所ってどの辺り?ミナギ・・・」
カイトは、とりあえずミナギがまだ行って無い所を聞いた。
「えっと、まだ西校舎の方は行ってないかな・・・?」
「それじゃ、決まりだね。案内するから行こう、ミナギ」
「うんっ」
カイトとミナギは、少し急ぎ足で歩き始めた。
・・・・・・・・・。
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「っと、ここが西校舎だよ」
「景色が綺麗だね・・・」
カイトとミナギは、時間を忘れて楽しんでいた。
時々、カイトのクラスメイトを見かけると照れてるのか、カイトはミナギを連れて一般客に紛れて隠れたりした。
その光景を見ながら側にいたミナギは微笑ましく笑っていた。
こうして、あっとゆう間に学園祭の時間は過ぎていった。
・・・・・・・・・。
「それじゃ、俺は後片付けがあるからここで」
「うん、ここで」
辺りはもう、すっかり夕日が沈みかけていた・・・
校内では学園祭終了を告げる音楽が流れていた。
「とっても楽しかったよ」
「俺も・・・。何かこんな気持ち久しぶりだったかな・・・?」
カイトとミナギは校門の前で今日の事を振り返っていた。
「火曜日から学校でもカイトに会えるね」
「うん、そうだね。まぁ、なるべくあまり人目の付かない所で・・・」
「くすっ、カイト照れてる」
「な、んな事ないよ」
ミナギの悪戯っぽい笑顔にカイトは思わず照れていた。
夕日に照らされた2人の影が静かに揺れていた。
・・・・・・・・・。
「んじゃ、カイト、ハル」
「ああ、またな」
「おつかれー」
学園祭の後片付けで辺りはすっかり暗く、空には星が見えていた。
帰り道の違うシンヤと途中で別れた。
やがて、カイトとハルはゆっくりと歩き始めた。
「ねーえ、カ・イ・ト・君~♪」
少しして、ハルがカイトに話し掛けてきた。
「ん、何?ハル・・・」
「まーたまた、とぼけちゃってぇ~・・・ほうら、ミナギって子の事よ」
「あっ・・・」
カイトはついにその話が来たかと思った。
「まだミナギと知り合って一週間も経ってないし、普通に友達だよ」
「へぇー、本当にそんなに経ってないんだ・・・」
「まっ、だから・・・ハルが期待してるような事は全然無いから」
あまりミナギの事を言うと、何となく墓穴を掘りそうだったのでカイトはさらっとハルに話した。
「ふぅ~ん・・・」
「な、何だよ?」
「出会ってそんなに経ってないのに、あんなに仲良く出来るのかなって思って・・・」
ハルはそんな事では引き下がらないとばかりに、カイトにさらに聞いてきた。
「あはは、そんなもんだって。変に期待し過ぎだよ・・・ハルは」
カイトはまた、さらっと流した。
「う~・・・」
「んじゃ、俺はここで・・・」
カイトは角の所で急に早足になった。
「あーっ!」
カイトは、振り向かずにハルに手を振った。
「後でちゃんとミナギちゃんの事、聞かせなさいよー、約束だからねー!」
カイトは、やれやれと思いながら家路を急いだ。
#3「祭日~さいじつ~」end.
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「うーん、いい気持ち」
今日は、空を見上げればどこまでも飛んで行きたくなるような青空だった。
ミナギは背伸びをしながらこの時、空を飛べたらどんなに気持ちいいのだろうと考えていた。
明日から学校に通うので、あまりもう明るい内に外に出れなくなると思い、朝からミナギは出歩いていた。
「・・・あれ?」
少しして、丘の下でドラゴンがじっと動かずに立っている姿を見かけた。
よく見ると、特徴的な優しい目、淡い青色の姿、黄色いマフラー・・・・・・フォーだった。
「フォーちゃん」
「フォー♪」
ミナギに呼ばれて、フォーは嬉しそうに返事を返した。
ミナギはゆっくりと丘を降りてフォーの側に寄った。
「フォーちゃん、こんな所でどうしたの?・・・カイトは?」
「フォーゥ・・・」
ミナギはフォーに尋ねると、静かにある方角を向いた。
「え・・・・・・・?」
フォーの向いた先には、少し淋しい林があった。
ミナギの目の前に、小さなたて看板が刺さっていてこう書かれていた・・・
『この先、フェル墓地』
「あ・・・・・」
この先にあるのは・・・墓地だった。
・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・」
カイトは、墓の前で静かに両手を合わせていた。
そのカイトの前にある墓には『ハイネ ここに永眠』と、書かれていた。
「・・・父さん、久しぶりだね。ごめんね、あまり来れなくて・・・」
ハイネ・・・それは、カイトの父親の名前だった。
「・・・・・・」
カイトはその場でしゃがんでしばらく呆然としていた。
やがて・・・
一息置いて、ゆっくりと立ち上がった。
「それじゃ、もう行くから」
カイトは静かにこの場所を後にした。
・・・・・・・・・。
「・・・・・・カイト?」
林の向こうから、カイトがゆっくりと歩いてきた。
「カイトー」
「・・・・・・」
カイトは気付いていないのか、少し俯いた状態だった。
「カイトー!」
「・・・えっ?」
カイトはやっと気が付いて声の方へ顔を上げた。
「あっ、ミナギ・・・」
「カイト・・・どうしたの?」
カイトはまだ呆然としているようだった。
「カイト・・・泣いてるの?」
「えっ!?」
カイトはミナギに言われて、慌てて目を擦った。
「いや、目にゴミが入っちゃって・・・あはは」
カイトはとっさに誤魔化したつもりだったが、ミナギの悲しそうな表情を見て手遅れだと思い・・・すぐに笑うのを止めた。
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「・・・カイト、誰の墓参りに来てたの?」
ミナギは少しだけ重くなりそうな空気をかき消すように小さな笑顔でカイトに話し掛けた。
「父さん。しばらく来てなくて・・・久しぶりに来て、少しだけ悲しくなっちゃったかな・・・?」
「そう・・・なんだ」
カイトは、ハイネの墓がある方向を向きながら話した。
「もう終わったから、帰るとこだったんだ。ミナギは?」
「私は、朝から散歩だよ。ここでたまたまフォーちゃんに会って」
「そうだったんだ・・・もう用事は済んだから行こうか?ミナギ」
「う、うん」
カイトに言われて、ミナギは慌てて返事を交わした。
「いこ、フォー」
「フォー・・・」
カイトは、フォーの横を通り過ぎながら言った。
ミナギとフォーもその後をついていった。
少しだけ、周りを淋しい空気が包んだ。
・・・・・・・・・。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
カイトとミナギが会ってからそんなに時間は経っていなかった。
でも、まるで1分が10分に感じるほどに空気が重かった。
しばらくして・・・
「ミ、ミナギはこれからどうするの?」
最初に沈黙を破ったのはカイトだった。
「わ、私はもう少しだけ町を回っていようかな・・・?」
ミナギは、少し硬い表情で話した。
「そっか・・・じゃっ、俺はここで・・・」
「あっ、待って!」
ミナギはとっさにカイトを呼び止めた。
「えっ?」
カイトは、ミナギに突然呼び止められて呆然としていた。
「カイト・・・えっと・・・」
ミナギはなぜ、カイトを呼び止めたのか分らなかったが、とにかくカイトを呼び止めたかった。
「どうしたの?ミナギ・・・」
少しして・・・
「・・・カイト、体の方は大丈夫なの?」
「えっ?今日は平気だよ。急にどうしたの?そんな事を聞いて・・・」
カイトは不意に体の事を聞かれて、少し首を傾げていた。
「えっとね・・・カイト何か最近顔色が悪かったり、二日前も倒れかけたし・・・心配だったから・・・」
「あ・・・」
ミナギに少し心配かけちゃってる・・・そう考えがよぎってカイトは少し表情を濁した。
「カイト?」
「だ、大丈夫だって。ただ、学園祭で忙しくて疲れてただけだったし・・・」
「うん・・・」
カイトのその答えにミナギは小さく頷いたが、まだ心配そうな表情だった。
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「何か・・・ミナギに余計な心配かけちゃって・・・ごめん」
「えっ・・・?」
「男の子なのにな・・・ミナギにみっともない所ばっかり見せちゃって・・・」
カイトは、今までの事を吹き飛ばすかのように笑ってミナギに話した。
「ううん、そんな事ないよ・・・カイト」
そんなカイトの表情を見て、ミナギも少しだけ笑って言った。
「さっ、帰ろうか・・・フォー」
「フォーゥ・・・」
カイトがフォーに言うと、フォーは悲しげな表情で鳴いていた。
「フォーちゃん、どうしたの?」
ミナギはフォーの表情を見て、再び悲しそうな表情で鳴いていた。
「フォー、どうしたんだよ?そんな悲しい顔をして・・・」
「フォーゥ・・・・・・」
カイトがフォーに話し掛けると、フォーは何かを訴えかけるような悲しい目がカイトの目に入った。
「あ・・・・・・」
カイトは、今までの事が頭の中を過ぎっていた・・・誰にも言えない、この胸の・・・
「カイト・・・?」
「え?何・・・ミナギ」
「ううん・・・・・・」
「・・・・・・」
カイトには分っていた。これ以上自分の胸の事を隠していてもいつかは、ばれてしまう事も・・・・・・でも・・・・・・
(・・・逃げちゃ、だめだよ・・・)
「・・・・・・?」
(きっと、大丈夫だよ・・・)
「・・・・・・」
(素直な気持ち・・・あの子に・・・)
「・・・・・・」
不意にカイトの頭の中にあの夜の言葉が響いた。
「・・・・・・」
カイトは、1つの決意をするかのように小さく目を閉じた。
「カイト・・・?」
「ちょっとだけ歩こうよ、ミナギ」
カイトは、ミナギとフォーに背中を向けてゆっくりと歩き始めた。
「・・・・・・・・・」
しばらく歩いて、ミナギと最初に出会った草原に辿り着いた。
「確か、ここでミナギの事を見かけて・・・」
「うん、そうだね・・・」
カイトは、あの時の場所に再び立っていた。
「・・・・・・・・・」
「・・・カイト?」
しばらくの沈黙の後、カイトはゆっくりと口を開いた。
「・・・もしかしたら、この事を話したら・・・俺の事を怖がって誰も近寄らなくなるんじゃないかって思って・・・誰にも話せなくて・・・」
カイトは、ミナギとフォーに背を向けたまま静かに話した。
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「カイト・・・」
ミナギは、カイトの背中を不安そうに見ていた。
「それでも、ミナギは聞いてくれるのかな・・・?」
カイトは、ゆっくりと振り向きながらミナギに話した。
「・・・・・・」
ミナギは聞くのが怖かった・・・もしかしたら、これでカイトとは二度と・・・
でも、聞いてあげたい・・・私の話を聞いてくれたカイトの話を今度は私が聞いてあげたいと・・・ミナギは思った。
「うん、カイト・・・私に話して。私、怖がらない・・・だって、今のカイト見てるの辛いから・・・いいよ、私に話しても」
「・・・分かったよ、今まで誰にも言えなかった事・・・今からミナギに話すよ」
ミナギのその言葉に後押しされるように、カイトは答えた。
「フォーゥ・・・」
そんな2人のやり取りを、フォーは心配そうに見ていた。
「ミナギ・・・俺のここに触れてみて」
カイトは自分の心臓に近い場所を指差した。
「・・・うん」
ミナギは、カイトの側に寄ってそっとカイトの指差した場所に触れた。
「・・・えっ!?」
ミナギが触れた瞬間、体全体を寒気が襲った。
「凄く・・・冷たい」
まるで触れた瞬間、凍り付いてしまう程に・・・冷たかった。
「どうして?・・・こんなに冷たいの?・・・普通じゃないよ」
ミナギは、驚きと戸惑いがごちゃごちゃした気持ちになっていた。
「ふぅ・・・・・・」
カイトは、小さく息を吐いて静かに話し始めた。
「この心の破片と引き替えに願いを叶えたんだ・・・」
「願い・・・?」
一瞬、時が止まった。
「願いって・・・カイト、どんな願いを・・・?」
ミナギは、心を落ち着かせるように自分の胸に手を当てながらカイトに聞いた。
「・・・母さん。家の母さん、生まれつき体が弱くて、ずっと病院に行きながらの生活だったって父さんに聞いて・・・」
「カイトのお母さんが・・・」
「うん・・・普通に生活するのも大変なのに、俺を生んだ事で母さんますます弱ってしまって・・・」
「カイト・・・」
ミナギは、話してるカイトを真っ直ぐ見る事が辛かった。
「そんな母さんを見て、つい父さんにそんな事を話したら「お前はそんな事気にしなくていいんだ」って、怒られたけどね」
カイトは、あの時の事を思い出して少しだけ笑いながら話した。
「私も・・・カイトのお父さんとお母さんはカイトが生まれてくれて良かったって、心から思ってるはずだよ。あまり、そんな事話したら・・・カイトのお父さんとお母さんは悲しむよ・・・」
ミナギにそう言われて、カイトは「そうだね」と小さく頷いた。
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「それで、ある日父さんが母さんの病気を治す薬を買う為に外国に行ったんだ・・・」
「・・・・・・」
「その、途中で事故に遭って・・・亡くなったって手紙が・・・」
「そんな事が・・・」
ミナギは、何もかける言葉が見つからなかった。
「その手紙を先に母さんが読んでしまって・・・ショックで母さん寝たきりになって・・・」
「・・・うん」
ミナギは静かに頷いた。
「このままじゃ、母さんまで死んじゃうって・・・父さんが死んで、まだ吹っ切れてないのに母さんまで死んじゃったら・・・」
「・・・・・・」
ミナギは何も言葉が出なかった。
「そんな時、小さな頃に出会った事のある人で「もし、何か困った時に私の所へ来なさい」って言う話を思い出して・・・ここから大分離れてる人里離れた山奥に住んでる人に・・・すがる思いで行ったんだ」
「カイト、その人って・・・?」
ミナギは、不意に気になる事を聞いた。
「どんな願い事も叶えてくれる・・・『灰色の願い人』と、呼ばれる人・・・」
「あっ・・・」
カイトのその言葉に、ミナギは表情を曇らせた。
灰色の願い人・・・噂では聞いた事があった。
その人は、どんな願い事でも叶えてくれる・・・
でも、それと引き替えに払いきれないお金を請求されたり、引き替えに叶えた者の命が奪われたり、その願い人の手を借りた事で周りの人に不幸を招き入れたりなど・・・
その殆どが触れてはいけない噂話ばかりが色々な人達から流れていた・・・。
ミナギも、誰からかその話を聞いて夜、眠れなかった事があった程に・・・。
「ミナギも、やっぱり聞いた事があるんだね・・・灰色の願い人の噂話を・・・」
カイトは、表情1つ変えずにミナギに聞いた。
「うん・・・噂だけ」
ミナギは少しだけぎこちない感じで答えた。
そんなミナギを見てカイトは、何も聞かずに話を続けた。
「その人はアステルさんって名前で、最初は怖いって感じだったけど話してみたらとても優しい人だったよ」
雲がゆったりと流れていた。カイトは一息置いてから話を続けた。
「俺がアステルさんに「お願い、母さんを助けて」って話して、そうしたらアステルさんはついて来なさいと言って・・・俺が「願いを叶えるにはお金が必要なんですか?」って聞いたら「お金はいい」って言われて・・・アステルさんが「お前の心の欠片が必要だ」って言われて・・・」
「心の・・・破片?」
ミナギは、不安定な気持ちを抑えながらカイトに聞いた。
「うん、母さんの病気が治るのなら・・・ってアステルさんにお願いして」
「そんな事って・・・」
「信じられないよね、そんな話・・・」
ミナギは、静かに首を横に振った。
「それで、俺の心の欠片と引き替えに手に入れた薬を母さんに飲ませたんだ。そしたら嘘みたいに良くなって・・・今は動けるまで回復したんだ」
カイトは、ミナギにそう話した。
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「カイトのお母さんはその事、知らないんだよね・・・?」
カイトは静かに頷いた。
「その薬・・・何て言ってお母さんに渡したの?」
「「父さんが買った薬がさっき届いたよ」って嘘吐いて・・・」
「カイト・・・」
ミナギは、カイトのその姿が痛々しくて真っ直ぐ見られなかった。
「母さんに話したらきっと・・・ショックでまた寝込んでしまうって思って」
「気持ちは分かるけど、でも・・・」
ミナギのその言葉にカイトは何も言わずに小さく頷いた。
「少しこの胸が冷たくなったけど・・・母さんが元気になってくれたから良かったって思って・・・」
「・・・たった1つの願いでそんなに冷たくなるなんて・・・」
「・・・・・・・・・」
ミナギがそう言うと、カイトは言葉を濁らせた。
「カイト・・・?」
「叶えてもらった願いは1つじゃないんだ・・・」
「えっ・・・?」
カイトのその言葉にミナギは言葉を失った。
「もう1つの願いは・・・フォーに」
「フォーちゃんに・・・・・・あっ」
ミナギは不意に、あの時の事が頭の中を過ぎった。
・・・死んでしまうフォーを助けなければと言う話の途中でカイトが言葉を詰まらせた事を・・・。
「あの時・・・カイトがフォーちゃんを助けるって親戚の・・・」
「うん・・・親戚に診てもらったっていうの・・・嘘なんだ」
「・・・・・・」
「フォーゥ・・・」
あの時の記憶が浮かんできたのか、フォーも悲しげな声で鳴いていた。
「アステルさんに「これ以上の願い事はお前自身の命を奪う」と、忠告されたけど・・・フォーを死なせたくなかったから・・・アステルさんに無理を言って願いを・・・」
「そんな・・・」
ミナギは、涙目でカイトを見つめていた。
「はぁー・・・」
カイトは一通り話して、ため息を吐いた。
「カイト・・・」
ミナギは、何て言っていいのか分からずにカイトの名前を呼んだ。
「願いを叶えてもらった後は、しばらくボーっとしてて・・・アステルさんに「お前は本当に無茶をし過ぎた・・・これで生きてるのは奇跡だ」って言われて・・・」
「カイト・・・本当に大丈夫なの?それは本当に・・・」
ミナギは、何を聞いていいのか分からずにただ、大丈夫とカイトに繰り返し言っていた。
「・・・アステルさんに「このままではお前の命の火が消えるのも時間の問題だろう」って言われて、アステルさんに薬をもらったんだ。「胸が苦しくなったり、体が急激に冷えてきたら飲みなさい」って・・・今はそれで何とか体は保ってるんだ」
「その薬を飲めば助かるんだよね?」
ミナギは、カイトの答えを待った。
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「・・・分からないよ。とりあえず、今は・・・」
「・・・・・・・・・」
「フォーゥ・・・」
辺りは再び、重い空気に包まれた。
「これで・・・俺が話せる事は全部だよ。ごめん、ミナギ・・・こんな話に付き合わせてしまって」
カイトは、空を見上げながらミナギに話した。
「カイト・・・私・・・」
「俺の事が、怖くなっただろ?・・・色々な人に恐れられてる灰色の願い人の助けを借りたこの俺を・・・」
カイトは空を見上げたまま、ミナギに話した。
それはどこか全てを受け入れるかのように・・・。
「カイト・・・、私はカイトの事信じるよ。カイトは大切に思ってる人を助ける為にしたんだって・・・その話を聞いて最初は怖かったけど、もし私もカイトと同じ立場だったら・・・きっと、私も・・・」
「ミナギ・・・」
ミナギのその言葉にカイトは呆然としていた。
「私は、例え他の人がカイトを怖がっても、一緒にいたい。カイトと笑っていたいから・・・」
「フォー・・・」
ミナギは、涙を抑えるようにカイトに話した。
「・・・・・・ありがとう」
カイトはそう言って、ゆっくりと歩き始めた。
「カイト・・・?」
「フォー・・・?」
ミナギとフォーの呼び声に振り向かずに・・・
「もう、俺には関わらない方がいいよ。こんな話、もし他の人に知られたら・・・一緒にいるミナギにまで辛い思いをさせてしまう・・・それに、ミナギの大切な人まで巻き込んでしまうから・・・だから・・・」
カイトはミナギとフォーに背中を向けたままで歩き・・・
「・・・・・・・・・・っ!」
ミナギはカイトの所まで走って、後ろから抱きついた。
「えっ・・・?」
そのあまりの出来事にカイトは一瞬だけ言葉を無くした。
「嫌だよ!私・・・」
「ミナギ・・・?」
「カイトだって、私の大切な人だよ・・・たとえ、その願い事の話が原因でカイトが嫌われても・・・一緒にいるよ」
「・・・・・・・・・」
「私じゃ、力になれないのかな?こんな私でも・・・」
カイトは、ミナギの思いもしなかった行動に驚いて言葉が出なかった。
「たとえ、力になれなくても側にいたい。私の我儘でも・・・」
「ありがと、ミナギ・・・」
カイトは、涙目になってるミナギの頭をそっと撫でた。
「えへっ」
「・・・・・・・・・」
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「フォー」
いつの間にか、目の前に立っていたフォーにカイトは頬擦りをされていた。
「あはは、フォー、くすぐったいよ・・・」
今までの重い空気が今、ようやく晴れた気がした。
・・・・・・・・・。
「ミナギ、今日は本当にありがとう。ミナギに話して良かったよ・・・これで怖がられるって思ってたから・・・」
「ううん、聞いてて辛かったけど・・・嬉しかったよ。こんな私に話してくれて」
いつの間にか、辺りは夕日に染まっていた。
色々な人から恐れられてる・・・灰色の願い人の噂・・・それは、自らの心の欠片を願い事に変えるとゆう・・・あまりにも現実から遠くかけ離れたものだった。
それでも、ミナギは信じてくれて、怖がるどころか側にいてくれると言ってくれた・・・
その気持ちだけでもカイトには嬉しかった。
だけど・・・
これから・・・
どうすれば・・・
カイトは、夕日で赤く染まった町を丘の上で座って見ていた。
その横でミナギとフォーも一緒に景色を見ていた。
カイトは、この景色をいつまで見ている事が出来るのだろうと・・・心の隅で思っていた。
きっと、もうそんなに長くは・・・
「ねぇ、カイト」
「ん、どうしたの?ミナギ・・・」
「きっと、カイトが助かる方法はあるよ。だって、カイトは・・・お母さんやフォーちゃんを助ける為に願いを・・・」
「ミナギ・・・」
ミナギは、無理して言葉を繋げて話してるように見えた。
でも、元気を出して欲しくて話してるんだってカイトはそう感じた。
「そうだね・・・きっとあると思う。そうだよな、諦めちゃダメだよな・・・ミナギ、ありがと」
「私、何にも出来ないかもしれないけど・・・きっと、きっと大丈夫だよ・・・」
「そうだね」
「フォー♪」
カイトとフォーとミナギは、それぞれの叶えたい思いを交わし別れた。
#4「願事~ねがいごと~」end.
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「ふぁ~・・・」
今日は少し曇りがちな天気だった。
昨日は色々な事があって、カイトはあまり眠れなかった。
「よっ、カイト」
「おっ、シンジ」
カイトとシンジはいつもどうりに挨拶代わりにハイタッチを交わした。
「ふぁ~」
「何だカイト、寝てないのか?」
「昨日はね、色々あってね・・・」
「もしかして、ミナギと・・・」
「違うって。昨日は朝から父さんの墓参りに行ったり、買出しに行ったりしてたかな・・・?」
「・・・そっか」
カイトの事情を大体知っていたシンジは、言葉少なめに交わした。
「疲れてたはずなのに・・・中々寝付けなくて本を読んでたんだ」
「本ってエッチなやつか?」
「ちーがーうーよっ!」
カイトは、ぽかっと軽くシンジの頭を叩いた。
「あっ、いてぇ・・・」
「お前と一緒にするなっての」
カイトは半ば呆れ気味にシンジの方を振り向いた。
「あーあ、相変わらずねぇ・・・2人は」
「あっ、ハルおはよー」
「よっ、ハル」
後ろからハルが呆れ顔で歩いてきた。
「何か、3人揃うって珍しいね」
「あっ、そーいえば・・・」
「そうね・・・」
普段は、1人か2人で朝から3人揃う事はあまり無かった。
短い登校時間だけど、カイトはその何気ない時間が大切に思えた・・・
何も、他愛も無い話をしながら間もなく3人は教室に着いた。
・・・・・・。
時を同じくして、1年のクラスで先生が転校生としてミナギを紹介していた。
・・・・・・・・・・・・。
間もなく、昼休みに入った。
カイトは学食に向かっていた。
「おーい、カイトー!」
「どうしたんだよシンジ?そんな慌てて・・・」
カイトは声の方に振り向くと、シンジが駆け寄ってきた。
「いや、何か1年で転校生が来たってゆうからさっ、見に行ってたんだ」
「お前、わざわざ何で1年の転校生の事、気にしてんのさ?」
カイトはシンジの呆れる位の行動に逆に感心してしまう程だった・・・。
「あれぇ、気になんない?」
「学年も違うしなぁ・・・」
カイトは、さらっと流すように言葉を交わした。
「まっ、それでな、誰が転校してきたと思う?」
「あっ・・・」
カイトは、シンジに言われて思い出した・・・
今日からミナギがこの学校に通うって事を・・・。
「あれ?お前知ってるの?」
「いや、全然・・・それで誰が転校してきたの?」
カイトはどうせ知ってると言えば、シンジに茶化されるのは分かってるのでさらっと言った。
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「ほら、学園祭でお前と一緒にいた・・・」
「ミナギ?」
カイトは、今さっき気が付いたふりをして答えた。
「そっ。いやー、制服姿も可愛かったなぁ・・・それが今はもうカイトの恋人なんてな・・・」
ぽかっ。
「いってぇ・・・」
「何でお前は女の子と話してるだけでそう思うんだよ?」
カイトは、やれやれと言わんばかりに学食に向かった。
「カイト待てよー、俺も行くわー」
「いいよ、お前は1人で転校生を見に行ってろよ・・・」
「あー、冷てぇーなぁ・・・」
2人は何一つ変わらない感じのやり取りを交わしながら学食に向かった。
・・・・・・。
やがて、カイトとシンジは学食に着いた。
「えっと、俺はAランチ」
「俺はね・・・Cランチでいーや」
注文したものを受け取り、カイトとシンジは近くの席に座った。
「なぁ、カイト・・・」
「なーに、シンジ?」
「ほら、あそこ・・・」
「ん・・・?」
カイトはシンジの指差した所を見ると、1年生2人がランチを持って席に着いたとこだった。
「あ・・・」
ミナギだった。さっそく友達が出来たのか、仲は良いように見えた。
「カイト、ミナギを呼んでこようか?」
「いいよ、何でわざわざそんな事すんだよ?」
カイトはシンジの言葉に慌てて言葉を返した。
「だって、お前ミナギとつき・・・」
ぽかっ。
「いったぁ・・・」
カイトはシンジが言わんとしてる事を言い終わる前にツッコミを入れた。
「んだから、いつ付き合ってるって言ったんだよ?」
カイトは半分呆れ顔になっていた。
「ん~・・・どう見たってあの時の雰囲気は・・・」
シンジのしてやったりのにやけ顔にカイトは苦笑いをするしかなかった。
「まっ、仮に俺がミナギの恋人だったとしても、あの2人の邪魔はしたくないから」
カイトは、ミナギが友達と楽しそうに話してる姿を見てそう話した。
「あーあ、相変わらすだなぁ・・・お前も」
「な・・・何だよ?」
「そうゆうのに鈍感つうか・・・」
「あはは、ほっとけ」
カイトはシンジの見透かされたような言葉にカイトは、はいはいとシンジに手を振った。
「まっ、それがカイトらしいんだけどな・・・」
「・・・・・・・・・」
シンジのその言葉にカイトは笑うしかなかった。
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・・・・・・・・・。
カーン・・・コーン・・・。
「はい、今日の授業はここまで」
「ふう・・・」
今日も無事に授業が終わった。
帰りの準備をしてる人、ほうきを持って掃除を始める人、部活の道具を持って教室を出て行く人・・・いつもの風景、何も変わらぬ日常・・・
カイトはノートを鞄に詰めながら安心していた。
「それじゃ、明日」
「ああ」
「明日ね、カイト」
カイトは教室を出て、真っ直ぐ図書室に行った。
・・・・・・。
「えっと・・・」
すでに何人かの生徒が来ていて、本を読んだり勉強をしていた。
「あった・・・」
カイトは前から探していた本を取り出した。
「さてと・・・」
図書カードに名前を書く為に受付に向かう途中、一冊の本が目に入った。
「あ・・・」
カイトはその本を取り出した。
「『羽をください』か・・・久しぶりに見ようかな・・・?」
カイトはその本を見て、あの時のミナギの姿が浮かんできた。
「・・・・・・・・・」
また、自分も泣いてしまうんだろうか・・・?
カイトは受付で名前を書いてる時、そう思った。
「さ、どうしよっかな・・・?」
学校を出たカイトはゆっくりと歩き始めた。
「カイトー」
・・・と、聞き覚えのある声にカイトは後ろを振り返った。
「ミナギ?」
同じ時間に終わったのか、玄関からミナギが駆け足でカイトの側にやってきた。
「えへ、カイト一緒に帰ろっ♪」
「ああ」
2人はゆっくりと歩き始めた。
「ミナギ、どうだった?ここでの初めての授業は・・・」
「うん、学校で授業なんて1か月ぶりだったから楽しかったよ。まだ全然授業が追いつかないから大変だけど・・・」
カイトは、ミナギが笑顔で楽しそうに話してる姿を隣で歩きながら見ていた。
「まっ、それは友達や隣の人とかに聞けば何とかなるかな・・・?」
「うんっ、色々教えてもらってるよ」
「ミナギって友達作るの上手いよね。学食で見かけたけど、もうあんなに仲良しになってるし・・・」
カイトは、昼間の事を話した。
「う~ん、そうかなぁ・・・?」
「俺なんか、本当に仲良いのって、小さい頃からの付き合いが殆どだし・・・」
「そうなんだ・・・」
「俺って、そうゆうの得意じゃないんだ。今みたいに友達が出来たのも殆どシンジのおかげだし・・・」
「うん・・・」
ミナギは、カイトが少しだけ淋しい感じで話してる顔を見てミナギは少し言葉を控えた。
「あっ、その友達はどうしたの?・・・一緒じゃないんだ・・・」
「部活だって。「一緒にやらない?」って誘ってくれたんだけど、運動は苦手って断っちゃった・・・」
「そっか・・・」
カイトは、ミナギのそんな姿に言葉少なめに交わした。
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「そういえば、カイトは部活をやってないの?」
ミナギは、ふと思った事をカイトに聞いた。
「うん、やってない。俺はバイトをやってるから」
「何か欲しいものがあってバイトしてるの?」
「えっと・・・」
カイトは、少し言い難そうにミナギに話し始めた。
「ほら、俺の家父さんいないし・・・母さんもあまり外で働けないから・・・」
「あっ・・・」
カイトにそう言われた、ミナギは気が付いた。
「えっと、その・・・ごめんねカイト・・・」
「いや、謝らなくてもいいよミナギ。そこから小遣いも手に入ってるし、結構楽しいんだ」
カイトは、申し訳なさそうな感じに話していたミナギをフォローするようにすぐに言葉を交わした。
「色々大変なんだね・・・カイトって」
「そうかなぁ・・・?まぁ、来年になったらあまりバイトも出来なくなっちゃうし、今のうちに受験料貯めとかないとって思ってて・・・」
「そっか、カイト来年受験生なんだね・・・」
「まあね・・・だから今のうちかな・・・?」
2人は、昨日までの出来事をまるで忘れてしまう位の笑顔で会話を交わしていた。
「今日はバイトが休みだから、図書室に行って本を借りてきたんだ。家に帰って見ようと思って」
「へぇー、どんな本を借りてきたの?」
「えっとね・・・医学の事についての本・・・医者になりたいって思ってて」
カイトは、そうミナギに話した。
「へぇー・・・カイトは医者になりたいんだね」
「うん、医者になって病気で困ってる人達を助けたいんだ」
「カイトって偉いね。私なんて将来何をやりたいのかあまり考えた事無いのに・・・」
「きっとミナギのやりたい事見つかるよ」
「うんっ」
ミナギは笑顔で答えた。
「あっ・・・そうだミナギ」
「ん、何?カイト・・・」
「ミナギの命の恩人・・・少しでも思い出したのかなって・・・」
ふと、カイトは前から聞こうと思ってた事をミナギに聞いた。
「ううん、あまり・・・一緒にいた事は覚えてるのに・・・その男の子の名前と顔が・・・思い出そうとすればするほど思い出せなくなりそうで、何だか怖くて・・・」
ミナギは、少し淋しい顔をしてして話した。
「・・・そうだね、無理に思い出そうとしない方がいいかもしれないね、ごめんミナギ」
「ううん、きっと会えるって信じてるから」
ミナギの強い思いさえ感じるその言葉にカイトは小さく頷いた。
「ねぇ、カイト・・・他に借りた本ってあるの?」
「えっと、もう1冊借りた」
「どんな本を借りたの?」
ミナギにそう言われてカイトは鞄から本を取り出してミナギに渡して見せた。
「あっ・・・『羽をください』・・・私、この話好き」
「何だか久々に読んでみたくなって・・・」
「思い出すと、また涙が出そうになっちゃうけど・・・」
「うん・・・ちょっと悲しいけどね」
カイトは、少しだけ無理して笑ってミナギに話した。
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・・・・・・・・・。
「うーん・・・」
「よっと」
しばらくして、カイトとミナギは丘の上に着いた。
町を見下ろすと沢山の人が行き交い、ドラゴンが人と一緒に歩いてたり遠くの空を飛んでいた。
「ここっていい町だね。この丘から見た町の眺めもいいし・・・」
「うん、そうだね。俺はあまりこの町から出た事無いからあまり他の町は知らないけど・・・ここはいい町だって思うよ」
カイトとミナギは、そんな町の景色を眺めながら話した。
「私、お姉ちゃんからこの町に引っ越すって聞いた時にはとっても嬉しくて・・・それに、カイトや色々な人達に出会えて・・・この町来て良かったって・・・」
ミナギは余程この町に住める事が嬉しかったのか、終始飾りの無い笑顔でカイトに話していた。
「ミナギのお姉さんはどうして、この町に引っ越しを決めたの?」
カイトは、ふと気になった事をミナギに聞いた。
「私がこの町に住みたいって、何度も我儘言っちゃって・・・お姉ちゃんの都合も考えずに何度も困らせちゃって・・・それでも、お姉ちゃんが仕事先に頼んでこの町にしてもらったって・・・」
「ミナギは本当にあの男の子に会いたかったんだね・・・ミナギのお姉さんって凄いね」
強い思い・・・それさえあればいつかは叶えてしまうものなのだろうか・・・?
・・・話してるミナギを見てカイトはそう思った。
「えへっ、お姉ちゃんに大分迷惑かけちゃったけど・・・こうして今はあの男の子の住んでる町にいるし・・・お姉ちゃんにはとても感謝してるんだ」
「あっ・・・ミナギ」
「え、何?カイト・・・」
「そういえば、ミナギのお父さんとお母さんは・・・?」
カイトはふと、気になった事をミナギに聞いた。
「・・・・・・」
「ミナギ?」
ミナギは、少し空を見上げて静かに話し始めた。
「いなくなっちゃった・・・私が小さい頃に」
「えっ?」
カイトは驚いてミナギの方を向いた。
「いなくなったって・・・亡くなったって事・・・?」
ミナギは、何も言わずに静かに頷いた。
「私、お父さんとお母さんの側にいたのに、いなくなった時の事覚えていなくて・・・それで、後からお姉ちゃんに聞いて・・・」
「あっ・・・・・・・・・」
カイトは何て言っていいか分からなかった。
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「・・・・・・」
「・・・・・・」
2人は空を見ていた。
カイトはミナギの触れてはいけない過去にまた触れてしまったと思い、話すに話せずにいた。
「ねぇ・・・カイト」
その沈黙を、ミナギが先に破った。
「え、何?ミナギ・・・」
カイトは少しぎこちない感じで答えた。
「空を飛べたらいいなって考えた事ある?」
「えっ?」
ミナギの唐突な質問に、カイトは一瞬だけ驚いた。
「私ね、もし空を飛べるならどこまでも飛んで行けるのにって・・・」
「・・・昔は飛んでみたいって思ってたけど、今はあまり考えないかな?」
「えっ?どうして?」
「俺は人間だし、羽根は無いから鳥やドラゴンのように自由に大空を飛べたらいいなって考えてたけど・・・今は違うのかなって思って。それは自分は飛ぶ事の辛さを知らない鳥やドラゴンじゃないからって思って・・・羽根を失ったら何も出来なくなる鳥やドラゴンじゃないからって・・今はそう思ってて・・・」
カイトは、空を羽ばたいてるドラゴンを遠くから見つめながらミナギに話した。
「・・・私、あの時自分が死ぬんだって分かった時に悲しかったけど、もし死んで天使になって羽根がもらえたら空の上にいるお父さんやお母さんにきっと会えるって・・・」
「ミナギ・・・」
カイトは、笑って話しながらも涙を堪えながら話してるミナギを見ていられなかった。
「・・・確かに、ミナギの父さんと母さんに会えるかもしれないけど・・・残されるミナギのお姉さんはどう思うのかなって・・・」
カイトは、なるべくミナギを傷付けないように言葉を選んで話した。
「うん・・・それはやっぱり間違いだったって、今は思うよ。今、こうして生きているから色々な人に出会えたし、男の子にだって・・・カイトにだって会えたし・・・」
「でも、ミナギの気持ちは分かるんだ。もし、俺もミナギと同じ立場だったらそう考えてたって思ってるし・・・」
「うん・・・」
カイトは、過去の自分自身にも当てはめるようにミナギに話した。
「俺もそんなに強くはないからね・・・父さんが死んだ時も部屋で1人泣き続けたし・・・母さんまで死んでしまったら・・・って考えたくもなかったし」
「えへっ、私達何か似てるね」
「そう・・・かもな」
2人は再び空を見上げた。
空を飛ぶ事が出来たら、どこまでも飛んでゆきたくなりそうな空だった。
「あっそうだ!」
「えっ、どうしたの?カイト・・・」
カイトの突然の声にミナギはちょっとだけ驚いた。
「今度、本当に空を飛んでみない?」
カイトはミナギに話を持ち出した。
「えっ?」
「今度の休みの日に」
「くすっ、カイトいきなり何言ってるの?・・・私達人間なのに」
ミナギはカイトが冗談を言ってると思い、思わず笑っていた。
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「空の上に行く事は出来るよ・・・フォーと一緒に」
「えっ?」
「前に何回かフォーに乗せてもらった事があるけどね・・・最初はちょっと怖かったかな・・・?」
「う、うん・・・」
ミナギは、カイトの「怖かった」とゆう言葉に少し顔が引きつった。
「でも、怖いのは初めて乗った時だけで気が付けば空の上から町を見下ろしてて・・・凄く気持ちよかったんだ」
「へぇー・・・空の上、行ってみたいな・・・」
空を飛ぶ事が出来る・・・カイトの話を聞いてミナギは少しだけ胸がドキドキしていた。
「相手はフォーだし、フォーは優しいから大丈夫だと思うんだ」
「うん、そうだね。一度でいいから空の上から町を見てみたい」
「それじゃ、決まりだね?・・・後はその日が晴れで風が荒れてなければ大丈夫かな・・・?」
「うん、凄く楽しみ」
ミナギは笑顔でカイトに答えた。
「ミナギはこれからどうするの?」
「えーっとね・・・」
「カイト君ー」
「え?」
不意に名前を呼ばれたカイトは、後ろを振り向いた。
「やぁ、ハル」
「あっ、ハルさん」
カイトとミナギの姿を見て、ハルが少し含み笑いをした。
「あらあら、2人して何してるのかな~?」
「別に普通に会話してたよ」
カイトは素っ気無くハルに話した。
「相変わらずね、カイト君は」
「まぁね、ハルは部活は終わったんだ」
「うん、今日はね。ところで2人は何話してたの?」
ハルはカイトに聞いた。
「今度の休みに空を飛ばないかって・・・ミナギに話してた」
「うん」
カイトがハルに話した後で、ミナギが小さく頷いた。
「へぇー、そうなんだぁ・・・」
「なーに、にやけてるんだよ?ハル」
「ううん、べぇつにぃー♪」
カイトとハルの和やかなやり取りにミナギはくすっと笑っていた。
「あ、そうだ・・・ハル」
「えっ、何?カイト君」
「もし予定が無かったら、一緒に付き合ってほしいかなって思うんだけど・・・」
「えっ、私もいいの?」
カイトの提案にハルはちょっと驚いていた。
「うん、何となく俺だけじゃ不安なんだ。ハルの方がドラゴンの気持ち分かるしね」
「まっね♪」
カイトにそう言われて、ハルは少しだけ得意げに返した。
「へぇー、ハルさんってドラゴンの気持ちが分かるんですね・・・凄ーい」
「ハルは一人前のドラゴンのブリーダーを目指してるからね。ハルがいれば心強いって思うんだ」
カイトはそうミナギに話した。
「そうゆう事ならいいよ。何とか予定は空けとくね」
「うん、よろしくね。グライドにも久しぶりに会いたいなぁ・・・」
「もちろん連れてくるよ。あの子もカイト君やフォーに会いたがってたしね」
「それじゃ、日時が決まったら言うよ」
「うん、分かったよ。それからミナギちゃん」
ハルは、ミナギに話し掛けた。
「はい、ハルさん」
「私も”ハル”でいいよ。何か”さん”って付けられるとくすぐったいから・・・」
ハルは、少し気恥ずかしそうにミナギに話した。
#5「羽根~はね~」end.
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「えへっ、今日がいい天気で良かったよ」
「うん、そうだね」
「フォー♪」
待ち合わせで合流し、カイト達はハルの待つ草原まで歩いていた。
「俺も久しぶりに乗りたいなぁ・・・」
「カイトはあまりフォーちゃんに乗ってないの?」
ミナギはふと、気になってカイトに聞いた。
「高一まではよく乗ってた・・・高二になってから学費も稼ごうと思って、他のバイトも入れ始めてそれで・・・」
「そっか、カイトのお母さん外で働けないから・・・」
ミナギはカイトの家族事情を察して控えめに話した。
「まぁ・・・その無理が祟って、倒れちゃって・・・その後、学費は何とか親戚の人が出してくれるって話になったんだけど・・・あはは」
カイトはあの時の事を思い出し、苦笑いをしながら話した。
「カイトって、すぐ無茶するんだから・・・困った時には親しい人に頼む事も大事だよ」
「はは・・・そうだね。倒れた時にお母さんに凄く心配かけちゃったし・・・」
ミナギにそう言われてカイトは苦笑いしながら答えた。
「フォーもごめんな、あの時に全然構ってやれなくて・・・」
カイトがフォーに言うと、フォーは静かに首を横に振って答えた。
「あっそーだ、ドラゴンでの飛行で分からない事があったら俺よりもハルに聞いた方がいいかな?」
「うん、分かった」
「あんまし緊張する事ないと思うんだ。乗る方が緊張してるってドラゴンに伝わるとあまり上手くいかないって聞いた事あるから」
カイトは自分なりにミナギに伝わるように話した。
「うん、そうだね」
「まっ、相手がフォーならミナギも大丈夫だと思うけどね」
カイトはそう話しながらフォーの首元をそっと撫でた。
「フォー♪」
「うんっ、よろしくねフォーちゃん」
「フォー♪」
ミナギとフォーの姿を見て、きっと大丈夫だとカイトは思った。
そう話してるうちに、カイト達はハルの待つ草原に着いた。
その先でハルとドラゴンのグライドが待っていた。
「ハルー!」
カイトが呼ぶと、ハルはこっちに手を振った。
「行こうか、ミナギ、フォー」
「うんっ」
「フォー♪」
カイト達は駆け足でハルの元へ行った。
「おはようカイト君、ミナギちゃん。それにフォー、久しぶり」
「フォー♪」
それぞれの挨拶を交わし、ハルの簡単な説明が始まった。
「いい、ミナギちゃん・・・ドラゴンに乗る時はあまり手荒にしないでね。ドラゴンも私達と一緒でそれぞれの気持ちがあるから・・・」
「うん・・・」
ミナギはハルの話を聞きながら、フォーに優しく触れていた。
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「ミナギちゃんとフォーだったら大丈夫だと思うけどね・・・あまり緊張はしないでね。なるべく気持ちを落ち着けるようにね・・・普段どうりに接してあげればいいよ」
「うん・・・・・・」
「・・・・・・」
カイトがミナギの方を見ると、何となく少しだけ緊張してるように見えた。
「ハル、ちょっといいかな?」
「えっ?・・・何、カイト君・・・」
「飛ぶ前に少し遊ぼう。ミナギもフォー達と遊べば緊張も解れるだろうし、俺もグライドと会うのの久しぶりぶりだし・・・」
カイトは皆に提案した。
「うん、そうだね。いきなり飛ぶ所から説明されても疲れるよね・・・いいよ、少しだけ遊ぼう」
「ミナギ、行こうか?」
「うんっ」
少しだけ表情の硬かったミナギも、笑顔でカイトに答えた。
「行こう、フォー」
「フォー♪」
カイト達は心を解放するかのように、思いっきり遊んだ。
天気が良い事もあって夢中になっていて、気が付いた頃にはもう昼になっていた。
「みんなー、そろそろお弁当にしよう」
「うん、分かったよ」
「はーい」
ハルは皆にそう言いながら、持ってきたお弁当箱を出した。
「朝早く起きて作ったんだよ」
ハルはそう言ってお弁当箱のフタを開けた。
「おいしそう・・・」
「凄いね、ハル・・・」
「はい、あなた達のも用意したから」
「グォー!」
「フォー♪」
ハルの本格的なお弁当に皆、揃って笑顔になっていた。
「ハルってこうゆうの得意だね。俺はそうゆうの全然ダメなのに・・・」
「えへっ、私こうゆう事好きだからかなぁ・・・?作ってて凄く楽しいんだよ」
カイトにそう言われて、ハルはとても嬉しそうに答えた。
「私も・・・やってみようかな・・・?ハルさ・・・えっと、ハル・・・今度私にも教えてほしいな・・・」
ミナギは、少し恥ずかしそうにハルに話した。
「うん、いいよ。上手に出来たらぜひカイト君に食べさせてあげてね♪」
ハルは、カイトの顔をちらっと見てから楽しそうにミナギに話した。
「はは・・・ミナギはまだ普通に友達だって。いきなり・・・」
「あら~、照れなくてもいいのよカ・イ・ト・君♪」
「はは・・・」
ハルの中ではもう、ミナギとは恋人になっているらしい・・・カイトは笑うしかなかった。
こうして、お昼はあっとゆう間に過ぎていった。
・・・・・・・・・。
「それじゃ、準備はいい?・・・ミナギちゃん」
「うんっ、大丈夫」
昼食も終えてすっかり心も落ち着いたのか、ミナギは最初の時と比べて大分落ち着いていた。
「あっ、カイト君」
「えっ、何?ハル・・・」
ハルに急に呼ばれて、カイトはハルの所に行った。
「カイト君、ミナギちゃんの後ろに乗って」
「えっ、俺も乗るの?」
「うん、やっぱりドラゴンに乗るのが初めてのミナギちゃんだけじゃ危ないしね・・・」
「あっ・・・」
最初はこの場所で見守っていようと考えていたが、ハルにそう言われてカイトはハッと気が付いた。
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「そうだね、やっぱりミナギ1人じゃ危ないよなぁ・・・俺、フォーが一緒だからちょっと安心してて・・・」
「そっ、さすがに初心者はサポートがないと・・・てなワケでお願いね、カイト君」
ハルにそう言われてカイトは苦笑いをしながら答えた。
「うん、分かったけど・・・フォー」
「フォー?」
カイトはフォーに近寄って聞いた。
「俺も乗って大丈夫?フォー・・・」
「フォーゥ・・・」
カイトがフォーにそう話すと、フォーはゆっくりと腰を下げた。
「よっと」
カイトはミナギの後ろにそっと座って、命綱を握った。
「フォー、大丈夫?重くない?」
カイトがフォーに尋ねると、フォーはいつもの元気な声で「フォー!」と答えた。
大丈夫らしい。
「それじゃ行こっ。ミナギちゃんはしっかり命綱を持ってね。カイト君はミナギちゃんをよろしくね」
「うんっ」
「分かった」
ハルはグライドに乗って準備を整えた。
「グライド、フォー行くよ!」
「グォー!」「フォー!」
風が一瞬だけ止んだ・・・グライドとフォーは翼を大きく広げて地面を蹴った。
バサッ、バサッと音を立てて風を切り、カイト達は雲が近い場所まで一気に飛んだ。
「ミナギ、大丈夫?」
「・・・うん」
まだ怖いのか、ミナギは顔を伏せていた。
「そっと顔を上げてミナギ。俺がいるから」
「うん・・・」
ミナギは静かに顔を上げた。
「うわぁ・・・」
ミナギが辺りを見回すと、そこは見た事の無い世界が広がっていた。
「大丈夫?ミナギ・・・怖くない?」
カイトは心配してミナギに聞いた。
「うん、大丈夫・・・」
ミナギは少し下を見てしまい、一瞬だけ言葉が止まった。
「ミナギ、下を見ないで前だけ見てて。出来るだけ遠くを見る感じで・・・」
カイトはミナギの頭を撫でながら話した。
「・・・・・・」
少しして・・・ようやく落ち着いたのか、ミナギの手の震えが止まった。
「大丈夫ー!?カイト君、ミナギちゃん」
ハルとグライドが心配して少し近付いた。
「何とかー!」
「はーい!」
少しでも大丈夫な所を見せるべく、2人してハルに手を振った。
「ねぇ、そう少し上の方に行ってみないー?」
風が吹いていて聞こえにくいので、互いに叫ぶように会話を交わしていた。
「オッケー!フォー、このまま上昇して!」
「フォー!」
フォーが上昇するのを見て、ハルもグライドに言った。
「私達も行こっ!グライド!」
「グォー!」
グライドもフォーの後をついていった。
・・・・・・・・・。
「凄く・・・綺麗」
カイト達は雲の上を飛んでいた・・・一面に広がる白い雲はまるで雪のようだった。
滅多に見られない景色に、カイト達はしばらく見惚れていた・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
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ゆっくりと翼をはためかせ、フォーとグライドは地面に降り立った。
「ふぅー・・・」
「はぁ・・・」
「よっと」
カイトは久しぶりの感覚に心が満たされていた。ミナギは初めて空を飛んで、言葉にならない程の感動を覚えていた。
「どうだった?ミナギちゃん、初めての空の散歩は・・・」
「えへっ、凄く良かったよ。本当に鳥になったみたい」
ミナギは、少し興奮しながら笑顔でハルに答えた。
「ミナギちゃんにそう言ってもらえると私も嬉しいよ」
「最初は少し怖かったけど・・・カイトのおかげで怖くなかったよ」
「ただ、大丈夫だよってミナギに言っただけだけどね」
ミナギはカイトの顔を見ながら嬉しそうにハルに話した。
「やっぱり、あんた達お似合いね・・・うふふ♪」
ハルにそう言われて、ミナギは恥ずかしそうに少しだけ顔を伏せた。
「いいよ、ハル・・・茶化さなくても・・・」
「あーらあら照れちゃって、もう・・・」
「くすっ」
「あはは・・・」
めったに味わう事のない空気に少し戸惑いながらも、こんな感じも悪くないかもとカイトは思った。
「それじゃ、私はもう1回行って来るね」
ハルはそうカイト達に言って、再びグライドと飛んで行った。
「ふぅー・・・」
カイトははハルの飛んでゆく姿を見送りながら、空を見上げていた。
「えへっ、カイトありがと」
「うん、ミナギが喜んでくれて俺も良かったよ」
「まさか本当に空を飛べるなんて夢みたいだよ」
ミナギは目を輝かせながらカイトに話した。
「フォー♪」
フォーも嬉しそうに答えた。
「うん、俺も久しぶりに空を飛べて嬉しかった・・・」
「カイト?」
「フォー?」
カイトの話し終えた時の感じが気になって、ミナギとフォーは呼び返した。
「え?どうしたのミナギ、フォー?」
「カイト、大丈夫?何か・・・」
「えっ、大丈夫だけど・・・どうしたの?」
「ううん、ならいいんだけど・・・」
「・・・?」
ミナギの少し心配そうな顔にカイトはどう答えていいか分からなかったが・・・
そういえば・・・少し、体の感じが・・・
「ミナギ、もう一度空を飛びたい?」
「うんっ、カイトも一緒に乗るんだよね?」
「うん、それじゃ準備をしよ・・・」
「カイト?」
「あっ・・・」
・・・どさっ。
一瞬だけ、時が止まった感覚に包まれた。
「え・・・?」
「フォー!?」
目の前に、さっきまで話していたカイトが倒れ込んだ。
「カイト!どうしたの?しっかり・・・」
ミナギがカイトに触れた瞬間、凍り付きそうな冷たさに襲われた。
「つ、冷たい・・・」
「フォー!」
「カイト、カイトー!?」
カイトの体は触れる事が辛いほど体温が下がっていた・・・
ミナギはとにかくカイトの体を温めようとしても冷たすぎて出来なかった・・・。
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・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・」
気が付くと、カイトの周りを薄暗い霧が辺りを包んでいた。
ここは一体・・・どこなんだろう・・・?
さっきまでミナギとフォーの側にいたのに、今は人の気配はどこにもなかった。
「ミナギー、フォー、ハルー、グライドー」
カイトは名前を呼んでみたが、返ってはこなかった。
「夢・・・なのかな・・・?」
カイトはさっきまでの状況を思い出そうとしてみるが、何かにかき消されるように思い出せなかった。
(・・・た・・・の・・・に・・・)
「えっ?」
不意にカイトの耳に掻き消えそうな声が聞こえた。
(・・・わ・・・た・・・の・・・に・・・おい・・・)
「誰?誰なの?」
(わた・・・しのと・・・ころに・・・おい・・・で)
その声は段々はっきりとカイトの耳に入ってきた。
「君は誰なの?」
(ふふっ、怖がらなくていいの・・・ただ、私の所まで来てくれたら・・・)
「どうして?」
(あなたはもう、何も考えなくていいの。私が側に・・・いてあげる)
「あっ・・・」
カイトはその声を聞いてる内に、なぜか心地の良い気持ちになっていった・・・
「・・・あなたの所へ行けばいいのですか・・・?」
(そう、何も怖がらなくていいの・・・)
「・・・・・・」
カイトは、声のする方へ引き寄せられるように歩いていた。
(ふふふ、さぁおいで。あなたはもう怖がる事はないから・・・)
「・・・・・・」
(そう・・・)
「・・・・・・」
(永遠に・・・)
「だめー!」
「えっ?」
カイトは不意に、別の声の叫び声を聞いたとたん我に返った。
「カイト、その人の声を聞いちゃ・・・」
「えっ?」
(おっ、お前、私の邪魔をしないでっ!・・・その子は私のもの・・・)
「お願い、カイト!私達の所に戻ってきてー!」
(き、貴様、邪魔を・・・)
「はぁーっ!」
(わ”-っ!?)
「うっ!」
一瞬、辺りが眩しい光に包まれた。
・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・」
「えへっ、良かった・・・無事で」
その声は、泣きそうな感じでカイトに話し掛けてきた。
「君は一体・・・どうして俺の名前を・・・?」
「ごめんなさい・・・今は話せません・・・」
その声はそれ以上カイトに答える事は無かった。
「えっ・・・?」
「ただ、私はいつでもあなたの側で・・・見守ってます」
「君にまた、会えるのかな・・・?」
「いつか、必ず・・・カイト、私の声の方まで・・・歩いてきて」
「うん、分かったよ・・・」
カイトは、その優しい声の方へ歩いてゆく・・・
そして、段々と意識が戻るような感じがした。
もうすぐ・・・・・・。
・・・・・・・・・。
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「・・・・・・」
・・・・・・・・・。
「・・・う・・・ん・・・」
・・・・・・。
「・・・あっ」
「フォー!」
「わっ、あははフォー、やめろって・・・」
カイトが気が付いたと同時にフォーが頬擦りをしてきた・・・
覚めたんだな・・・夢から。
「カイトー!」
「あっ、ミナギ」
ミナギは、カイトが気が付いた喜びで涙目で抱きついた。
「わっ!」
「ぐすっ、良かったカイト・・・気が付いてくれて」
余程カイトの事が心配だったのか、カイトの胸元で泣いていた。
「ごめんミナギ、心配かけちゃって・・・」
そう言って、カイトはミナギの頭を撫でた。
「カイト君ー!」
少しして、ハルが何かを持って駆け足で戻って来た。
手に持っていたのは救急箱だった。
「ハル・・・」
「良かった・・・カイト君、皆心配したんだから」
「皆、ごめん・・・俺は大丈夫だから」
今まで重かった空気が一気に晴れだした。
・・・・・・・・・。
「・・・ふぅ」
カイトは木の柵に寄り掛かっていた。
遠くでミナギとフォーが一緒に遊んでいる姿が見えた。
「・・・・・・」
カイトはふと、夢の中の声が誰なのか考えていた。
前にも一度、聞いた事のある・・・どこか優しげな感じの声・・・
いつでもそばで・・・見守ってます・・・か。
カイトは、空を見上げながらこうして生きてる事をありがたく思った。
「カイト君ー!」
少しして、ハルがカイトの所に戻ってきた。
「あっ、ハル・・・」
「はい、特製のココアを作ったから。これを飲んで元気出してね」
「ありがと・・・ハル」
カイトがココアを口にすると、ついさっきまで体が冷え切っていたとゆう事もあって、心の芯まで温まる感じだった。
「はぁー・・・」
「本当に大丈夫なの?カイト君・・・」
「うん、大丈夫。ごめん・・・心配かけて」
カイトは、本当に申し訳ない顔をしてハルに言った。
「もう、びっくりしたよ。フォーが悲しい顔で私の元に近付いてきて・・・何があったのかと思って戻ってみたらカイト君、いきなり倒れてるんだもん・・・」
あの時の状況をふと、カイトは想像してみていかに皆が心配してくれたのか痛い程に伝わった。
「あの時は大丈夫だったの?乗ってる時とか・・・」
「ハルがもう1回空に飛んでゆく時までは平気だったけどね・・・」
カイトはそう言いながら空を見上げた。
「でも、良かったよ。顔色も大分良くなったし」
「うん、さっきよりも気分はいいよ」
「あっもしかして、あの時も・・・」
ハルは、急に何かを思い出したようにカイトに聞いた。
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「え?あの時って・・・」
「ほら、学園祭の準備の時に・・・」
「あっ・・・」
ハルにそう言われて、カイトは思い出した。
学校に着いた辺りから、急に具合が悪くなった時の事を・・・。
「あの時は朝もちょっとだけ具合悪かったけど、学園祭まで日にちが無かったから・・・皆に会えば元気になるかなって思ってたけどね・・・」
「本当、皆びっくりしてたよ・・・あのままだったら倒れて学園祭どころじゃなくなってたよ」
「はは・・・そうだったかも」
「全く・・・まっ、そこがカイト君らしいんだけどね・・・」
ハルに呆れ顔で言われてカイトは苦笑いした。
「本当に大丈夫なんだよね??」
「大丈夫、大丈夫。今は気分はいいから」
ハルの心配そうな顔を見て、カイトは安心させようと元気な素振りを見せた。
「うん、それだけ元気なら大丈夫だね、えへっ」
「今度はグライドに乗りたいなぁ」
「それじゃ、行こうカイト君」
カイトとハルはミナギ達の所へ行った。
色々あったけど、皆と遊んで心から楽しかった・・・そうカイトは素直にそう思った。
・・・・・・・・・。
「それじゃ、カイト君、ミナギちゃん、フォー」
「今日は本当にありがとうハル」
カイトはハルに今日の事の感謝を伝えた。
「えへへ、どういたしまして♪」
「ハルさ・・・ううんハル、今度料理を教えてね」
「オッケー、今度連絡するね」
ハルはグライドに乗ってゆっくりと上昇した。
「また明日ねカイト君、ミナギちゃん、フォー」
夕日が周りを染めた頃にハル、グライドと別れた。
「さっ帰ろうかミナギ、フォー」
「うんっ」
「フォー」
夕日が赤く染めていた。
昼間とはまた違った草原の風景に思わず見惚れてしまいそうだった。
「ミナギ・・・」
「えっ、どうしたの?カイト・・・」
「ごめんな、色々心配かけちゃって・・・」
カイトは、倒れた事をミナギに改めて謝った。
「ううん、元気になって良かったよ・・・」
「ミナギ?」
ミナギは、話しながら少しずつ震えているような・・・
「凄く心配しちゃったよ・・・もし、このままカイトが目を覚まさなかったらって考えたら・・・」
カイトがミナギの顔を見ると、今にも泣きそうな顔で・・・でも、無理して笑っていた。
「ごめん、本当にごめん」
そう言って、カイトはミナギの頭を撫でた。
「カイト・・・まだ平気なんだよね?・・・死んじゃったりしないよね??」
「・・・うん、大丈夫、大丈夫だから」
・・・本当に大丈夫なのかは分からなかった。
でも、ミナギに余計な心配をかけたくなかったので、カイトはただ大丈夫と繰り返した。
「フォーゥ・・・」
その様子を見て、フォーも心配そうな表情で見ていた。
「フォーにも心配かけちゃったな・・・」
カイトはそう言いながら、フォーの頬をそっと撫でた。
「きっと見つかる・・・そう思ってる。俺だって死ぬのは嫌だしね」
「私に何が出来るのかな・・・?辛いよ、凄く・・・」
ミナギはそう言いながらカイトの右手を握った。
「俺に元気をくれるだけでいいよ。こればかりは俺自身の問題だし・・・ミナギのおかげで探す事に決めたし」
「うん・・・・・・」
ミナギは笑顔で答えた。
少しだけ涙を浮かべて・・・。
#6「空上~そらのうえ~」end.
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カーン、コーン・・・
「はい、今日はここまでにします」
周りはやっと終わったと、それぞれの準備を始めた。
「さてと・・・」
カイトも教科書を鞄に詰め始めた。
「カイトー!」
「おっ、シンジ」
シンジが真っ先にカイトの方に寄ってきた。
「今日は暇かなって、思って・・・」
「えっ、何かやるの?」
カイトは、気になってシンジに聞き返した。
「サッカーでちょっと人手が足りなくて・・・どっかなって思って・・・」
「あっ、ごめんシンジ、俺、今日は行けないわ」
「あ、そっか、今日お前バイトだったっけ?」
「そっ、今日がバイトじゃなかったら行けたけどね・・・」
カイトは、少し残念そうな顔をして話した。
「まっいいよ。今度は来てくれよ」
「オッケー、今度は行くから」
そう会話を交わして、シンジは教室を出て行った。
シンジは去った後に、カイトは残りの教科書とノートを鞄に詰め終わった。
「それじゃ、また明日」
「明日ね、カイト君」
「おう、またな」
カイトは、皆に手を振って教室を後にした。
・・・・・・・・・。
「それじゃナツさん、先に上がります」
「うん、お疲れカイト君」
時計はすでに、夜の7時半を過ぎていた。バイトが終わったカイトは制服に着替えていた。
「いつもどうもね。カイト君のおかげでうちは助かってるよ」
「いえ、こっちこそこんな自分を雇ってくれて・・・」
カイトはナツにかしこまって話した。
「気にしなくていいよカイト君。学校もあって大変なのに」
「家、母さんがあまり外で働けないし・・・少しでも自分が出来る事を自分でしなきゃって思って・・・」
カイトは、なるべく疲れた表情を見せないように笑顔でナツに話した。
「お母さんは元気でやってるの?」
「今は歩けるまで回復はしました。まだ、外に出るのは辛いと言ってますけど・・・」
「大変ねぇ・・・カイト君のお母さん、早く外に普通に歩けるようになるといいね」
「はい」
ナツに励まされて、カイトは少しだけ元気をもらった。
「それじゃ、ナツさん」
「うん、カイト君またよろしくね」
カイトはナツに挨拶をして、バイト先を後にした。
「ふぅ・・・」
カイトはふと、空を見上げると今にも雨が降りそうな雲行きだった・・・。
「早く帰ろう・・・」
カイトは、急ぎ足で家路に向かった。
・・・・・・。
「わーっ!」
さっきまでの天気が嘘みたいに変わって、大雨を降らせていた。
傘を持っていなかったカイトは、途中の店のアーケードに逃げ込んだ。
「うわ・・・やっばいな・・・」
カイトはかなりビジョビジョになっていた。
でも、カイトの家はここからまだ遠かった。
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カイトは、少し雨が落ち着くまでここにいる事にした。
「うー、さむー・・・」
空を見ても、雨が落ち着く気配がなかった・・・
カイトはどっちにしても、もうすでに雨で濡れていたのでこのまま走って家まで帰る事にした。
「いいや、このまま・・・」
カイトは、次のアーケード地点まで走り・・・
「カイトー?」
「えっ?」
ふと、名前を呼ばれてカイトは足を止めた。
「カイトー!」
ふと、カイトが声の方を向くと傘を差したミナギが立っていた。
「ミナギ?」
「カイト・・・凄いビジョビジョだよ。大丈夫?」
「はは・・・まさか雨が降るなんて思ってなくて・・・」
カイトは空を見ながら、ミナギに話した。
「どこに行ってたの?カイトは」
「今日、バイトでちょうど終わって帰るとこだったんだ」
「そっか、バイトだったんだね」
ミナギはカイトの隣で顔を向けて話した。
「傘を買おうと思ったけどね、もうずぶ濡れだったし・・・このまま帰ろうかなと思ってて」
「でも、カイト・・・それじゃ風邪引いちゃうよ・・・」
ミナギは心配そうな顔でカイトに言った。
「大丈夫だって、早く帰ってお風呂に入れば・・・」
「あっ、そうだカイト・・・」
「えっ?どうしたのミナギ・・・」
ミナギが何かを思いついたみたいで・・・
「私の家で雨宿りしよ、ねっ」
「えっ?」
カイトはミナギの提案に少し驚いた。
「やっぱり、そのままじゃ風邪引いちゃうし・・・ここからだったら私の家が近いと思うから・・・」
ミナギの言うとおり、ここからだとカイトの家よりミナギの家の方が全然近かった。
でも、こんな状態でお邪魔するのはさすがにあつかましいとカイトは思った。
「あっ、大丈夫、大丈夫。これくらいで風邪なん・・・くしゅっ!」
カイトは、言ってる側からミナギの隣でくしゃみをした。
「くすっ、ほらっ、ねっ。カイト、一緒に帰ろ」
ミナギは、笑顔でカイトに傘を寄せた。
「あはは・・・」
カイトは笑うしかなかった。
ミナギに促されて、カイトはミナギと帰る事にした。
考えてみたら、ミナギの家に行った事はあっても中に入った事は一度も無かったのでカイトは少しだけ緊張していた。
なるべく・・・普通にしていよう、そうカイトは思った。
「そういえば、ミナギはどこに行ってたの?」
「私は、お姉ちゃんに頼まれた買い物の帰りだよ」
ミナギの持ってる傘に2人で入っていた。
カイトがミナギの方を見ると、背丈の違うミナギが傘を少し高めにして持っていた姿がなぜか微笑ましかった。
「いいよミナギ、傘は俺が持つから」
カイトはミナギにそう言うと、ミナギは「ありがと」と、言ってカイトに傘を手渡した。
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「何を買ってきたの?ミナギは」
「えっとね・・・」
カイトに聞かれてミナギは袋を覗き込んだ。
「えっと・・・お醤油とか野菜とか・・・」
「夕飯の材料?」
「うん。本当はお醤油だけだったんだけど、ついでにって」
ミナギは笑顔でカイトの方を見ながら話した。
「ヘぇー、そうなんだ・・・」
「あっ、ねぇ良かったら一緒に食べよ」
ミナギが嬉しそうな顔でカイトに聞いた。
「え?いや、それは悪いよ」
「えっ、どうして?
「俺の母さんも待っているし・・・それに、ミナギとお姉さんの夕食の邪魔しちゃまずいから・・・」
カイトは、さすがにそこまでお邪魔するのは申し訳ないと思った。
「うん、そうだね・・・」
納得したのかしないのか、ミナギは少し淋しそうな顔をした。
「あ、いや、決して嫌とゆうワケじゃないから・・・」
「うん、分かってるよ。カイトにだって家族があるんだし・・・」
2人は話をしながらミナギの家に向かった。
・・・・・・。
やがて、ミナギの家に辿り着いた。
カチャ。
「ただいまー」
ミナギは早々と靴を脱いで揃えた。
「ちょっと待っててね、カイト」
「うん・・・」
とりあえず、カイトは待つ事にした。
・・・・・・。
少しして、ミナギともう1人の女性が来た。
ミナギのお姉さんのようだった。
「えっと、初めまして」
カイトは、一先ず挨拶をした。
「いらっしゃい、カイト君ね?」
「あっ、はい」
「初めまして。私はミナギの姉で、名前はエリです。カイト君、そのままじゃいけないからお風呂に入って。じゃないと風邪引いちゃうから」
エリは優しい感じでカイトに促した。
「えっ、でも・・・そこまでしなくても・・・ただ、傘を貸してもらえれば・・・」
カイトはすぐに遠慮がちに慌ててエリに話した。
「うん、私もそうした方がいいよ。そのままじゃカイト本当に風邪引いちゃうよ・・・」
ミナギも心配そうにカイトに言った。
「あの、えっと・・・」
エリとミナギの心配そうな顔に、さすがにカイトは遠慮するのも悪いような気がした・・・。
「えっと・・・とりあえず家に電話してもいいですか?母さんに心配かけたくないから・・・その」
少し困った感じでカイトは2人に話した。
「そうね、お母さんに心配かけちゃいけないものね・・・」
エリはそう話した後に、バスタオルを取りに戻ってカイトに渡した。
「ありがとうございます、エリさん」
カイトは、雨で濡れた体をエリが渡してくれたバスタオルで拭き取った。
「カイト君、電話はそこにあるからね」
カイトは、エリの手の指す方向を見て電話の位置を確認した。
「えっと、お邪魔します・・・」
カイトは、少しだけ遠慮がちに入った。
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・・・・・・・・・。
「あっ、カイト」
少し経って、カイトが広間に戻ってきた。
「どうも・・・」
「家にある服、小さくなかった?カイト君」
カイトは、エリに用意してもらった服を着ていた。
「少しだけ・・・でも、ありがとうございます」
「遠慮はいいよ。それにカイト君の服があんな状態じゃ・・・」
カイトがお風呂に入ってる間にエリが洗濯してくれたらしく、すぐに乾くように除湿機の所で乾かしていた。
「洗濯まで・・・何から何まで・・・」
カイトが畏まってると、エリはそんなに気にしなくてもいいよと笑顔で話した。
「カイト、似合ってるよ」
「うーん、そうかなぁ・・・?」
まだ、着慣れてないのか、カイトはぎこちない感じだった。
「うんっ、凄く似合ってる似合ってる♪」
ミナギは、なぜかとても嬉しそうだった。
「カイト君、夕飯は一緒に食べても大丈夫なんだよね?」
「あっはい、さっき母さんに電話で聞いて・・・いいって言ってましたから・・・」
「えへっ、良かった」
「何か嬉しそうだね、ミナギ」
カイトは、普段あまり見ないミナギの姿に少しだけ戸惑っていた。
「だって、この家いつもお姉ちゃんと2人だけだから・・・今日はカイトも一緒だしね」
ミナギの、終始喜んでいる姿を見てカイトはふと思った。
「・・・・・・」
いつも・・・姉と2人っきり・・・
父親も、母親も・・・・・・
ミナギは、どれだけ淋しかったのだろうと・・・
そんな事を考えて、カイトは少し悲しい気持ちになった。
「カイト・・・?」
「えっ?」
「どうしたの?カイト、何かボーっとしてるよ」
「あっ、ううん何でもない」
カイトは考え事をすると、周りが見えなくなるんだなぁと、改めてそう思った。
なるべく、人前では気を付けよう・・・。
「わぁ・・・」
「どうしたの?ミナギ・・・」
「雨がさっきより強くなってるよ・・・」
そう言われてカイトは窓から外を見ると、外の景色が見えない程に雨が強くなっていた。
「うわぁー・・・帰れるかなぁ・・・」
「もう少し弱くなってからでもいいと思うよ・・・カイト」
カイトがふとミナギを見ると、心配とゆうより淋しそうな感じがした・・・
俺にもう少し居てほしいのかな・・・?
「そうだね、もう少し雨が弱くなってからでもいいかな・・・?」
「うん、そうだよ。またずぶ濡れになったら・・・」
「ミナギー、カイト君、ご飯の支度出来たよー」
「はーい」
ミナギが話してる途中で、エリの呼ぶ声が聞こえた。
どうやら、夕飯の支度が出来たらしい。
「行こっ、カイト」
「あっ、う、うん・・・」
ミナギに手を引かれてカイトは一緒に台所へ行った。
夕飯は海老グラタンとサラダボウルだった。
今日はカイトが来たとゆう事で、いつもよりも頑張ったよとエリは笑顔で話した。
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・・・・・・・・・。
夕飯を食べ終わったカイトとミナギは広間に戻った。
「ミナギのお姉さんって、料理上手いんだね」
「うんっ、私もお姉ちゃんの料理大好き」
ミナギは笑顔でカイトに答えた。
「あっ、そういえば前、ハルに料理を教わりたいって言ってたよね・・・」
カイトはふと、気になった事をミナギに聞いた。
「うん・・・」
「お姉さんには料理を教わったりしないの?」
「あ・・・えっと・・・」
「・・・?」
ミナギは、少し気まずい感じに話し始めた。
「前に私、お姉ちゃんがいない時に料理の練習をしようと思って・・・でも、上手く出来なくて・・・その・・・キッチンやフライパンをメチャメチャにしちゃった事があって・・・」
・・・要するに、それが原因でミナギはその日以来キッチンを使わせてもらえないとゆう事らしい・・・。
「あっ、あははは・・・」
カイトは、思わず苦笑いをした。
「う~・・・今度は、ちゃんとハルの言う事は聞いて作るから大丈夫だよ・・・」
・・・まぁ、本当に大丈夫なのか分からないけど、まぁ、ハルと一緒だったら大丈夫と思いたい・・・そうカイトは思った。
少しして、エリも紅茶を持って居間に戻ってきた。
ほんの少し、ゆったりとした時間が流れていた。
・・・・・・。
少ししてカイトが窓を見ると、少しだけ雨が落ち着いたように見えた。
カイトはそろそろ帰ろうかと思い始めた。
「エリさん、俺の制服はどうですか?」
カイトは、エリに制服の乾き具合を尋ねた。
「うーん、まだ乾きは良くないみたいだけど・・・」
「大丈夫です、後は家で乾かしますので・・・」
「カイト、帰っちゃうんだね・・・」
カイトとエリのやり取りを見て、ミナギは少し淋しそうに言った。
「うん、さすがにそこまでお邪魔するのは悪いし、それにもうこんな時間だし・・・」
時計を見ると、22時過ぎようとしていた。
「あっ、もうこんな時間なんだね・・・」
「うん、そろそろ帰らないと母さんも心配するからね」
「そうだね、カイト、玄関まで送るね」
「うん、ありが・・・」
と、突然辺りを光が襲った後に凄い音が響いた。
雷が近くに落ちたようだった。
「わぁー!」
雷の光と音に驚いたミナギが、思わずカイトに抱きついた。
「わっ!」
いきなりの事でカイトはびっくりしたがミナギを見ると、怖いのかカイトの胸でガタガタと震えていた。
「わぁぁ・・・」
「ミナギ、落ち着いて」
カイトは、ミナギを落ち着かせようとした瞬間に再び近くに雷が落ちた。
「うわ!」
ピカッと光った瞬間に、辺りの証明が消えた。
「ああぁぁあぁ・・・」
「ミナギ、大丈夫だよ・・・落ち着いて」
カイトは、ミナギの頭をそっと撫でようと・・・
「・・・いで」
「えっ?」
「・・・らないで」
「何?ミナギ・・・」
様子がおかしい・・・そう思ったカイトはミナギの顔を見た。
「・・・さわら・・・ないで」
「ミナギ、落ち着い・・・」
「い・・・いやあああぁー!」
ミナギは、叫ぶと同時にカイトを突き飛ばした。
「くっ!」
ミナギはカイトを突き飛ばすと、裏口の方へ走っていった。
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「どうしたのー?大丈夫ー?」
エリがライトを持って戻ってきた。
「エリさん、ミナギが・・・」
「え?まさか外に・・・」
カイトは、何も言わずに頷いた。
突然の出来事に、エリも動揺していたようだった。
「俺、ミナギを連れ戻してくる」
そう言って、カイトはミナギが走っていった方向へ向かった。
「あっ、カイト君ー?」
エリが呼び止める間も無く、カイトは飛び出した。
カイトが外に出ると、さっきよりは雨が弱くなり、雷も遠くへ行ったようだった。
「ミナギー、ミナギー!」
走りながら、カイトはミナギを探していた。
まだ、そんなに遠くへは・・・
「あっ・・・」
家から少し離れた薄暗い木の下で、呆然とミナギが立っていた。
「ミナギ・・・」
「こな・・・いで」
「え?」
「来ないで!」
ミナギは、背中を向けたままカイトに叫んだ。
「・・・・・・」
その場から逃げ出そうとしたミナギを、カイトは走ってミナギの腕を掴んだ。
「いや、離して!」
さっきまでのミナギはここにはいなかった・・・
まるで、全てを拒絶してるようだった。
「いや、離さない絶対に」
カイトは、ミナギが逃げ出さないように強く抱きしめた。
「いや、いや、いやぁー!」
ミナギは、カイトの体を駄々をこねるかのように叩いた。
「ミナギ、落ち着いて・・・」
「嫌いだ、皆嫌いだ・・・私に近寄らないでー!」
ミナギは、カイトから離れようとしてカイトの胸辺りを叩き続けた。
「ミナギ、大丈夫、大丈夫だから」
「うっ、うわああぁぁー!」
「もう、大丈夫・・・だから」
カイトはそう言って、ミナギの頭をそっと撫でた。
「あっ・・・」
さっきまで暴れていたミナギが次第に大人しくなった。
「もう、怖がる事はないんだ・・・皆一緒にいるから・・・」
「えへっ・・・」
一瞬だけ、ミナギが笑顔になったような気がした・・・そして、力尽きたのかミナギはカイトに身を委ねた。
「すう・・・」
「ミナギ・・・」
どうやら疲れ切って、そのまま眠ったらしい・・・
カイトは、ミナギをおんぶして家に戻った。
・・・・・・。
「ただいま・・・エリさん」
カイトの声が聞こえたと同時に、エリが慌てて玄関へと来た。
「カイト君、ミナギは?」
「大丈夫です、眠ってるだけです」
エリがミナギの顔を見ると、元の安らかな寝息をしてる姿を見てほっとしたようだった。
「ありがとう、カイト君」
「いえ、それよりもミナギをお願いします」
「うん、部屋に連れて行くから。カイト君は居間に行っててね」
「あ、はい」
カイトは、居間の方へ少し思い足取りで戻った。
・・・・・・・・・。
「カイト君、おまたせー、私の特製スープよ。さっき外に出て体が冷えてるでしょ?」
ミナギの部屋から出てきたエリが、カイトの為にと特製のスープを作ってカイトに手渡した。
「ありがとうございます、エリさん」
「熱いから気を付けてね」
カイトは、エリから受け取ったスープ入りのコップを一口飲んでみた。
「熱っ!」
「くすっ、熱いからって言ったのに」
エリは笑いを抑えながら話した。
「はあー・・・」
さっきの事で体が冷めた事もあって、温かいスープが体全体に染み渡ってゆくようだった。
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「本当にありがとねカイト君。雷が鳴った時に心配になったんだ・・・行こうと思ったら電気が切れちゃって・・・ごめんね」
「いいえ。それよりもエリさん、ミナギは大丈夫なんですよね?」
「うん、一応は・・・」
カイトの質問に、エリは少しぎこちない答え方をした。
「エリ・・・さん?」
「カイト君、ミナギからどうしてうちの両親がいないのか聞いた事ってある?」
「はい。でも、覚えていないって言ってました。側にいたはずなのにって・・・」
カイトがそう答えると、エリは急に目を合わせてきた。
「カイト君・・・私、カイト君にこの話を聞いてもらいたい・・・ミナギと一番仲が良いあなたに」
エリの真面目な顔に、カイトは少し背筋が伸びた。
「は・・・はい」
雷が鳴った時のミナギの急変ぶり・・・
何があっても驚かない・・・そうカイトは覚悟を決めた。
「・・・うちの両親、ちょうどこの雷の日に亡くなったの・・・ミナギの目の前で」
「えっ?」
ミナギの目の前で・・・その言葉にカイトはつい、驚きの言葉を出してしまった。
「私はその時、別の町で働いていたから・・・詳しい事は分からないけど、助けた人の話では雷が落ちた場所から離れた場所で倒れていたんだって・・・」
「はい・・・」
「ショックだったよ・・・ミナギの病気を治す為に出掛けていた両親が雷に撃たれて死んだって電話で聞かされて・・・でもミナギは無事だって聞いて、慌ててミナギの所へ行ったの」
「はい・・・」
カイトは、ただ頷いた。
「病院に着いて私、唖然としちゃった・・・ミナギの変わり果てた姿を見て・・・その時のショックでミナギはその時の記憶を無くして・・・後からミナギからどうして両親がいなくなったのか質問された時に、あなたが小さい時に亡くなったって言って・・・本当の事を言ったらきっと、あんな状態じゃ済まされないって医者に言われて・・・」
「全てを・・・拒絶してました。この俺でさえも」
カイトは、言葉控えめに話した。
「あの時のミナギはもう、誰の手にも負えなかったわ。私さえも・・・ミナギの病気も悪化して・・・もう皆で諦めていたの。もうあの子の好きにさせてあげようって、話になって・・・」
エリの衝撃的な話の内容に、カイトは言葉が出てこなかった。
「その、何日かしてかなぁ・・・?ミナギから笑顔が少しずつ戻ってきて、癇癪も起こさなくなって・・・どうしたのってミナギに聞いたらお友達が出来たんだって私に言ってくれたの」
「男の子ですか?」
カイトは、エリにそう尋ねた。
「うん、そう。名前は知らないけど・・・でも嬉しかった。やっと、いつものミナギに戻ってくれるって・・・あの男の子のおかげだって私も思うよ」
「でも、ミナギも名前を忘れてました・・・思い出そうとすると余計に忘れてしまいそうだって、言ってました」
カイトは、話していたミナギの事を思い出しながらエリに話した。
「私ね、後悔してるんだ。あの時に仕事の都合でこの町を出て行った事に・・・それでも私があの男の子から名前を聞けば良かったって・・・」
エリは悲しげな表情で話した。
「はい・・・」
「でも、どうして医者が治せなかった病気が治ったのかミナギに聞いてびっくりしたの。男の子が持ってきた白く光る薬を飲んだからって・・・」
「はい。ミナギからその話を聞いて、俺も驚いて凄いなって・・・」
「ねぇ、カイト君・・・」
「はい・・・」
「どうして私の家、私とミナギしかいないのにカイト君に貸してる男の子が着るような服を持ってると思う?」
「えっ、それは・・・」
エリの突然の質問に、カイトはどう答えていいか分からなかった。
「すいません、分からないです・・・」
「うん、それはね・・・」
エリは、一息置いてからカイトに話し始めた。
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「弟が・・・いたの。私達に」
「えっ!?」
カイトは、思わず大きい声を出してしまった。
「実は、私もミナギと同じ病気を持ってたの。もう死ぬんだって覚悟を決めてて・・・ベッドの上で空しか見てなくて・・・その時に弟が持ってきてくれたの、その薬を・・・ミナギの話に出てきたものと一緒の」
「エリさんも・・・」
カイトは、エリの話にただ頷く事しか出来なかった。
「その薬を飲んだら奇跡的に良くなったの。弟にあの薬どうしたのって聞いても答えてくれなかったけど・・・」
「それで弟さんは・・・」
「その半年後に、体が冷え切って亡くなったの・・・凄く悲しかった。死ぬ直前に私に言ってくれて・・・お姉ちゃんを助けたくて・・・それで願いをかけたって」
「・・・・・・・・・」
カイトは何も言葉が出なかった。
「私の為にって・・・悲しかった・・・でも、今は私の中で弟は生きてるってそう思ってるよ」
エリは涙目でカイトに話した。
「どうして、そんなエリさんにとって辛くて悲しい話をこんな俺なんかに話してくれたんですか?」
カイトは、気になった事をエリに聞いた。
「似ているの、カイト君・・・あなたを見てると、何だか弟といるみたいで・・・」
「俺が・・・?」
カイトはエリのその答えに少しだけ驚いた。
「カイト君、あなた何か隠し事とかしてない?」
「えっ?」
エリの突然の言葉にカイトは一瞬だけ固まった。
「どうして、そんな事聞くんですか?別に何も隠し事なんて・・・」
カイトは隠し事とゆう言葉に一瞬だけ焦ったが、なるべく表情を変えないように答えた。
「さっきね、カイト君がミナギを連れ戻してきてくれた時に私、少しあなたの胸の辺りに触れて普通じゃない位の寒気がしたの・・・あの時の弟と同じ冷たさで・・・」
「あっ・・・」
まるで、全てを見透かされてるように話すエリに、カイトは一瞬だけ言葉に詰まった。
「きっとそれは、雨に当たって体が冷えたからだと思います・・・」
「誤魔化さなくてもいいよ・・・そんな事でカイト君を嫌ったり怖がったりしないし」
エリは、優しくて落ち着いた表情でカイトに話した。
「・・・・・・」
「カイト君、こんな私でも良かったら話してくれないかな・・・?その冷えた胸の理由を・・・」
そこまで言われて、もう誤魔化すのは無理だとカイトは思い、静かにエリに話し始めた。
「俺、母さんを治したくて・・・願いを叶えてくれる人がいるって聞いて、それで・・・」
「ぐす・・・やっぱり私の弟に似てるよ、カイト君。その優しさも・・・」
エリは涙を流しながらカイトに話した。
「エリさん・・・」
「でも、感心しないよ・・・もし、それでカイト君が死んでしまったらカイト君のお母さんはどう思うかな・・・?」
「・・・・・・」
カイトは、エリの言葉に何も返す言葉が見つからなかった。
「あの時の男の子も、その願い事でミナギを助けたのかなって思ったら何だかとても悲しくなって・・・考えたくないけど、死んじゃってるかもって・・・」
エリは悲しくなって思わず顔を伏せていた。
「エリさん・・・俺・・・」
「ごめんね、カイト君・・・あまりこんな話、しなくても良かったね・・・」
エリは泣きながらカイトに話した。
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「俺は、その男の子は生きているって思います。ミナギはその男の子に会いたいとゆう思いだけでここまで生きてきたって思いますし、その男の子もこの町でミナギの事をきっと待ってるって・・・ただの推測でしかないですけど」
カイトは、ミナギの強い思いを信じてそうエリに話した。
「うん・・・そうだね。まだ会えないからって、死んだって決め付けるのは良くないよね・・・」
エリは、カイトの言葉に笑顔で答えた。
「後は、ミナギが名前を思い出せば・・・」
「うん・・・そうね」
そう言いながら、カイトは時計を見るともう23時を過ぎようとしていた。
「わぁ、もうこんな時間・・・それじゃ、俺はそろそろ帰ります」
「あっ、待ってカイト君」
帰ろうと席を立ったカイトを、エリが引き止めた。
「エリさん・・・?」
「ミナギのあんな姿を見ても、これからも変わらずに仲良くしてくれるかな・・・?」
エリは、落ち着いた表情でカイトに尋ねた。
「もちろんです。こんな俺でも一緒にいられるなら」
「えへっ、ありがとね、カイト君」
カイトは自分の制服を持った・
「その服、良かったらカイト君にあげるね」
「えっ?これはエリさんの大切な・・・」
カイトがそう言いかけて、エリが首を横に振った。
「いいよ・・・ぜひカイト君にもらってほしいんだ。そうしてくれた方が私も嬉しいし、きっと弟も・・・」
「・・・ありがとうございます。こんな俺で良かったら喜んで」
カイトはエリにお礼を言って玄関へと向かった。
「あっ、カイト君・・・」
「はい?エリさん・・・」
「また、遊びに来てね。ミナギも喜ぶし、私も・・」
「エリさん?」
「・・・私もまた、腕によりをかけておいしい料理を作るから」
「は、はい」
カイトは、エリが何か言いかけてたような気がしたが、今は聞くのを止めようと思った。
カイトは、エリにお礼とさよならをして玄関を後にした。
外に出ると、いつの間にか雨は止んでいた。
・・・・・・・・・。
「ただいま・・・」
少し疲れた様子でカイトは家に帰ってきた。
「お帰りカイト・・・ちょっと遅かったのね」
「ごめん、母さん・・・」
「いいのよ、カイトがちゃんと無事に帰ってきてくれたから・・・明日も早いから早く寝なさいね」
カイトの母は、優しい眼差しでカイトに話した。
「はい・・・」
カイトは、すぐ自分の部屋に戻って寝巻きに着替えた。
寝る準備をした後、布団に潜ったカイトはすぐに眠りについた。
・・・・・・・・・。
次の日、ミナギの姿を見かける事は無かった。
きっと、大事をとってエリが休ませたのだろうとカイトは思った。
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・・・・・・・・・。
ミナギの姿を見かけたのはそれから2日後の学食だった。
遠くからミナギと友達が楽しそうに話をしながら食事をしてる姿を見てカイトは安心した。
・・・・・・。
そして、今日も無事に授業を終えて帰ろうと、カイトは下駄箱で上履きに履き替えた。
「カイトー」
カイトは、誰かに呼ばれて振り向いた。
ミナギだった。飾りの無い笑顔でカイトの場所まで走ってきた。
「あっ、ミナギ」
「良かった、まだ校内にいて」
「ミナギ、元気になって良かったよ。昨日は見なかったから心配だったけどね・・・」
カイトは、ミナギの表情をみてもう大丈夫だと思った。
「えへ、一緒に帰ろっ、カイト」
「ああ、いいよ」
ミナギは急いで上履きに履き替えた。
・・・・・・。
「はい、ミナギ」
「わぁ、ありがとカイト」
少しして、町の広場に着いた。
カイトがおいしいアイスがあるからと、少しだけ寄り道をした。
「俺、ここのアイス凄く好きでよく買って食べてるんだ」
「うん、おいしい」
ミナギは、カイトからもらったアイスをおいしいそうに食べていた。
「ミナギって、ここのアイス食べた事あったっけ?」
「うん、あの・・・男の子と」
「そうなんだ」
ミナギの隣にカイトも座った。
「まだ、思い出せないんだよね・・・その男の子の名前」
ミナギは、少し淋しい顔をして頷いた。
「・・・でも私、きっと会えるって信じてるから」
「うん、そう強く信じていればきっと会えるよ」
カイトにそう言われてミナギは笑顔になった。
・・・・・・。
「ねぇ、カイト・・・」
アイスを食べ終わって少しして、ミナギが話し掛けてきた。
「えっ、何?ミナギ」
「この前はごめんね・・・私、また発作を起こしちゃって・・・」
ミナギが悲しげな顔をして話した。
「ううん、いいよ。ちょっとびっくりしちゃったけどね・・・」
「私・・・酷い事しなかった?・・・あの時の事、あまり覚えてなくて・・・」
「い、いや・・・雷の音と光に驚いていただけだったけど・・・」
言ったらきっと、悲しむだろうな・・・
ミナギの目の前で、ミナギの両親が雷に撃たれて死んでしまった事・・・
雷でのショックで、俺の事を拒絶していたなんて事を・・・
とりあえず・・・ミナギの気持ちが真っ直ぐに立ち直るまで黙っている事に決めた。
「そう、なら良かったけど・・・」
「気にする事はないよ、ミナギ。こうして俺の前で元気な姿を見せてくれたしね」
「えへっ、ありがと・・・カイト」
カイトの励ましの言葉にミナギは笑顔で答えた。
2人はしばらく町を眺めていた・・・色々な人が買い物をしたり、女の子と小さなドラゴンがじゃれあってたり、旅行客がいたりと、とても賑やかな光景だった。
「ねぇ、カイト」
「ん、何?ミナギ」
「何だか私達デートしてるみたいだね」
「えっ!?」
ミナギの言葉に、カイトは思わず驚いた。
「えへへ・・・」
「あ・・・えっと・・・」
今まであまりそんな事を意識してはいなかったけど、改めてミナギにそう言われるとカイトは急に恥ずかしくなってきた。
でも、こんな気持ちも悪くないかもとカイトは思った。
#7「雨宿~あまやどり~」end.
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「ハルー!」
「あっ、カイト君、ミナギちゃん、フォーも。いらっしゃい」
今日は、ハルのドラゴンブリーダーとしての試験の日だった。
その応援にと、カイト達は特設の試験会場へとやってきた。
もうすでにシンジや他の友達、クラスの仲間も着いていた。
「よっ、カイト」
「おっ、シンジ」
カイトとシンジは、いつものようにハイタッチを交わした。
「こんにちはミナギ。カイトとはどう?」
「えっ・・・どうって・・・」
シンジの突然の質問にミナギはどう答えていいか困っていた。
コツッ。
「あたっ」
ミナギとシンジのやり取りを見て、カイトは即効軽いツッコミを入れた。
「あんま茶化すなよ、シンジ」
「あはは、わりぃわりぃ・・・」
あまり悪気があるようには見えなかった。
シンジは女の子は絡んでくると、面白がって真っ先に飛びつく事が多かった。
いつもの事だったので、カイトは全く気にする事無くさらっと話を流す感じでやり過ごした。
「皆、私の為にありがと」
ハルは、カイト達に感謝の思いを伝えた。
「この試験が受かればハルは、別の町に行っちゃうんだね・・・」
「そうだね、皆と別れてしまうのは辛いけど・・・小さい頃からの夢だったから」
「ハル、行っちゃうの?」
カイト達の会話を聞いたミナギが驚いて駆け寄ってきた。
「うん・・・」
ハルは、言い難そうにミナギに話した。
「せっかく友達になれたのに・・・」
「ごめんね、ミナギちゃん・・・でも、私の夢だから・・・ドラゴンブリーダーになる事が・・・」
「うん、そうだね・・・」
ハルの叶えたかった夢・・・引き止めちゃいけないのは分かってるけれど、別れるのは辛い・・・そんなミナギの姿を見て、カイトは辛くなりそうだった。
「受験者の皆さん、そろそろ試験を開始しますので準備を始めてください」
スピーカーから、試験開始のアナウンスが流れた。
いよいよ試験が始まるようだった。
「それじゃ、行ってくるね」
「落ち着いてね、ハル」
「ハル、頑張ってね・・・」
「いつもどうりのハルで行けよ」
他の友達やクラスの仲間から声援をもらって、ハルはありがとの代わりに笑顔で交わした。
そして・・・
試験が開始された。
最初は、ドラゴンとどれだけ意思の通じ合いが出来るか採点される。
今回、試験を受けるのは16人・・・
その中で受かるのは3人だけだった。
最初の試験を突破出来るのは10人・・・
カイト達は、スタンドでハルを見守っていた。
ハルは、少しだけ緊張していたようだったが、持ち前の器用さで難なくこなした。
こうして一次試験は終了した。
・・・・・・。
「ふぅー・・・」
「おつかれ、ハル」
「えへ、ありがと」
控え室にハルが戻ると、今までの空気が嘘みたいに軽くなった。
カイトの励ましの言葉にハルは笑顔で答えた。
「見てて何となく、危なっかしかったなぁ・・・」
「途中までは緊張してたけどね・・・皆が応援してくれてるって思ったら、何とか調子が戻ったよ」
ハルは、シンジに精一杯の笑顔で話した。
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少しして・・・
「お待たせしました、一次通過者の発表です」
スピーカーから発表の知らせが来た。
廊下に出ると、張り紙が貼ってあった。
紙に書かれた10人の名前、そこにハルの名前は・・・
「あったぁー・・・」
そこには、ハルの名前がしっかりと書かれてあった。
「やったね」
「次も頑張ってね、ハル」
「うん、ありがと。次も頑張るね」
皆に励まされて、ハルは笑顔で話した。
・・・・・・。
いよいよ二次試験が始まった。
二次はドラゴンとのコンビネーションの審査だった。
二次で残るのは6人だった・・・。
カイト達が固唾を呑んで見守る中、ハルは無事に課題をこなした。
こうして、二次試験は終了した。
・・・・・・。
「ただいまー」
「お帰り、ハル」
「おつかれー、ハル」
「ハル、かっこ良かったよ」
「皆、ありがと」
少しだけ和やかな空気で包まれた。
たとえ、落ちたとしても後悔はしないからと・・・
試験の始めに話したハル・・・
夢に向かっているハルが、いつもより輝いていて・・・でも・・・
淋しい気持ちさえもあった・・・
皆と笑顔で話してるハルを見て、カイトはそう考えてしまった。
でも・・・引き止める事は出来ない・・・
それが、ハルの決めた道だから・・・
・・・・・・。
そして、二次試験の発表の知らせが来た。
ハル達は、発表を見る為に廊下に出た。
廊下に貼り出された二次通過者の名前・・・
二次通過者は6人・・・
「・・・・・・」
ハルは緊張の中、張り紙を見つめた・・・
「あったぁ・・・」
ハルは自然と笑顔が零れていた。
「いよいよ最終試験だね、ハル」
「いつもの調子で頑張れよ」
「ハル・・・頑張って・・・」
「ありがと・・・皆・・・私、頑張るから」
最終試験の前に、約1時間の休憩が入った。
ハルは今までの緊張を解すかのように、皆と話していた。
泣いても、笑っても・・・これが・・・
最後だから・・・
・・・・・・。
「あれ?ミナギちゃん」
「えっ、何?ハル・・・」
「カイト君は?」
ハルは、話してる途中でカイトがいなくなってる事に気が付いてミナギに聞いた。
「カイトは今さっき、洗面所の方に行ったよ」
「ありがと、ミナギちゃん」
ハルはそう言って洗面所に向かった。
・・・・・・。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・」
誰もいない洗面所の奥で、カイトは苦しそうに首を下げていた。
「うっ、げほっ、げほっ・・・」
せめて、今日だけは保ってほしかったと思いながら、少し落ち着いた所でカイトはポケットから薬を取り出して一粒飲んだ。
「はぁ・・・」
ようやく気持ちが落ち着いたカイトは、洗面所を後にした。
「あっ、カイト君」
「わっ、ハル・・・」
カイトがちょうど出た所で、ハルにばったりと会った。
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「カイト君・・・」
「えっと、どうしたのハル・・・?」
カイトは、いきなりハルに出会って少しだけ焦った。
「カイト君、何か顔色が・・・」
「え?う、うん、ちょっとだけ気分が悪くなっただけだから」
「大丈夫なんだよね?カイト君」
「う、うん」
カイトは、作り笑いで誤魔化した。
「カイト君・・・ちょっといいかな?」
「え?うん、いいよ」
カイトとハルは人気の無い廊下に移動した。
・・・・・・。
「いよいよだね、ハル」
「う、うん・・・」
「・・・怖くない?」
「少しだけ・・・かな?」
壁に寄り掛かっているカイトのその横で、ハルはしゃがんでいた。
「・・・これが受かったら本当に行ってしまうんだね?」
「・・・うん」
カイトの話にハルは静かに頷いた。
「いなくなっちゃうのは淋しいけどね・・・でも、ハルの夢だから・・・こんな俺に出来るのはハルの応援だけだけど・・・」
「うん、ありがと・・・カイト君。私、絶対合格するね」
「ハルならきっと、大丈夫だよ・・・」
ハルは小さく頷いた。
・・・・・・。
カイト達が見守る中、いよいよ最終試験が始まろうとしていた。
最終試験は実践だった。
ドラゴンと協力して目的地にある紋章を持ってここに戻ってくる事・・・
もちろん、行く手にはいくつもの難関が待ち構えている。
バーン!とゆう音と同時にそれぞれの空へと羽ばたいて行った。
少しして、モニターにハル達が映された。
1つ目の大地の関門、2つ目の湖上の関門と無事に突破し、3つ目の関門の高い空へと向かっていた。
そこには審査員のドラゴンが行く手を阻んでいた。
6対3だったが、束でかかっても適う感じではなかった。
「うっ!」
一体のドラゴンと受験者が吹っ飛ばされて地面に叩きつけられた場面を見てカイト達は目を反らしてしまった。
そして、もう一体のドラゴンと受験者が審査員のドラゴンに掴まれて地面の方へ投げつけられた。
ドラゴンブリーダーの道・・・
予想していた以上にハードな試験だった。
それでも・・・ハルはなりたいって言った。
モニターに映し出されたハル達の真剣な眼差し・・・
見守って応援する事・・・今はそれしか出来ないけど・・・
「うっ!」
その時、グライドが審査員のドラゴンに掴まれた。
「ハル、グライドー!」
大きさも二倍ほどある審査員のドラゴン相手に敵わず、ハルとグライドは投げ出されたが地面すれすれで留まった。
「いっくよー、グライド!」
ハルは反動で審査員のドラゴンに向かった。
グライドは審査員のドラゴンに近付くにつれて加速していった。
顔の辺りを掠り、一体のドラゴンが仰向けになって地面に倒れた。
やがて、倒された受験者も這い上がってもう一体の審査員のドラゴンに向かった。
そして、一体、もう一体のドラゴンが地面へと倒れていった。
スタンドから歓声の声が溢れた。
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受験者達は目的地にある紋章を手にして後は、このグラウンドに戻るだけとなった。
後半戦は受験者達の戦いだった。
受験者はハルを含めて6人・・・
ブリーダーとしての資格を手に出来るのは僅か3人・・・
カイト達はモニターでただ、静かにハルの帰りを待った。
水辺を抜けて、森林を抜けると後は、長い崖を抜けるだけだった。
帰りのルートは複雑で、スピードを出し過ぎると衝突の恐れが強かった。
ハル達はギリギリのスピードの中、何とか障害をかわして行った・・・
「あっ!」
その時、1人の受験者が細い曲がり角を曲がり切れずに衝突してしまい地面に叩きつけられた。
「・・・っ!」
その場面をモニターで見たミナギは思わず顔を伏せた。
その衝突で、落ちてきた岩にもう1人の受験者のドラゴンに当たり、バランスを失って落ちてゆく・・・
その間を2人の受験者が抜けて、追うか追われるかの接戦を繰り広げていた。
そんな中、ハルも後をしっかりとついてきていた。
その時・・・
「えっ・・・?」
何か、地震のような揺れが向こうの方・・・ハル達の方向から大きな振動が来たようだった。
「わっ!」
やがて、その揺れは会場全体をも襲い、モニターは一瞬だけ乱れが走った。
揺れは止んでそして、この会場に待機していた審査員とドラゴンが一斉にハル達のいる場所へと向かった。
一転、辺りがざわめきだした・・・
「あの方向・・・ハル達は大丈夫かな?」
カイトの言葉にミナギは心配になってきた。
「カイト・・・」
「きっと、大丈夫だよ、きっと・・・」
カイトは、ミナギにただ、大丈夫と繰り返した・・・
ハルが笑顔で、皆が無事に戻って来る事を願って・・・
・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・う・・・」
「ハル・・・」
「・・・カイト君?」
「良かった、ハル・・・気が付いて」
意識を戻したハルを見て、カイトはほっとした表情でハルを見つめた。
「ここは・・・?」
「病院だよ。ハル達皆手当てをしてもらったんだよ」
「どうして・・・私、ここに・・・?」
まだ状況が分かってないらしく、ハルはカイトの腕にしがみついていた。
「ハル達が戻ってくる途中で大きな地震があって、その時に崖崩れがあって・・・」
「そうなんだ・・・」
ハルは小さくため息を吐いた。
「カイト君、試験は・・・どうなったの?」
「中断されたよ・・・こんな緊急な事態じゃ試験どころじゃないって話になって・・・」
「はは・・・」
ハルは泣きそうな顔で笑った。
「大丈夫だよ、ハル・・・また後日に改めて最終試験をやるって・・・」
「本当に??」
「先生から後で連絡があると思うけどね・・・」
カイトの言葉にハルは安心したのか、ハルは力が抜けたようだった。
「カイト君、グライドは大丈夫?」
「少しだけ怪我してたけど、今は眠っているよ。ハルも今日はゆっくり休んだ方がいいよ」
「うん・・・」
ハルがふと横を向くと、ミナギが小さい寝息を立てて眠っていた。
「ミナギちゃんも・・・」
「うん、俺と一緒にハルを看病したいって・・・」
「くすっ、眠ってるミナギちゃん、かわいい」
ハルは、眠ってるミナギを見ながら笑顔で話した。
「ほら、ハルも・・・あまり無理するといけないから・・・」
「うん、カイト君、ありがと・・・ミナギちゃんも」
ハルは静かに眠りについた。
・・・・・・・・・。
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それから一週間後、最終試験に残った6人による再試験が開始された。
カイト達が見守る中、危なっかしい感じながらも何とか無事に全員グラウンドに戻ってきた。
後は・・・結果を待つだけだった。
・・・・・・・・・。
約1時間後、合格発表を知らせるアナウンスがされた。
押し潰されそうな緊張の中、ハルは名前を呼ばれるのを待った。
1人、また1人と、ゆっくりと名前を呼ばれ、残りあと1人だった・・・
「・・・・・・・・・」
祈るような思い、ハルの緊張がカイト達にも伝わるようだった・・・
そして・・・
「受験番号08、ハル」
「・・・・・・・・・あっ」
名前を呼ばれた瞬間、ハルは嬉しくて喜びよりも先に涙が流れていた。
「おめでとう、ハル」
「おめでと、ハル」
「やったな、ハル」
皆から祝福を受けて、ハルは言葉にならない程の喜びをもらっていた。
ハル・・・おめでとう・・・
これで、夢に一歩近付いたね・・・
離れてしまうのは淋しいけれど・・・
・・・・・・・・・。
それから二週間後、今日はハルの旅立ちの日だった。
ハルはグライドに荷物を乗せて、出発する準備をしていた。
「もう、お別れなんだねハル・・・」
「また、この町に帰ってくるから。・・・皆に会いたいし」
「ハル、頑張ってこいよ」
「うんっ」
別れを惜しむかのように、皆に笑って交わした。
決して泣かないように・・・。
「あれ?カイト君は・・・?」
ハルがふと、辺りを見渡すとカイトの姿が無かった。
「カイトはさっき、洗面所に行くって・・・」
「わたし、カイト君に会ってくるね」
「あっ、私も・・・」
ミナギがそう言おうとした時、ハルは右手でいいよと静止した。
「ごめん、ミナギちゃん。少し2人で話したいの・・・」
「う、うん・・・」
ハルは、ミナギにそう言って洗面所の方へ向かった。
・・・・・・。
「・・・カイト君ー」
ハルはカイトを呼んでみたが、反応が無かった。
「カイト君・・・?」
ハルが洗面所の中を覗いてみてもカイトの姿が無かった。
「・・・けほっ」
「えっ?」
ハルが別の場所を探そうとした時に、誰かが咳き込むような声がした。
「カイト君?」
ハルは洗面所の中に入っていった。
角を曲がるとカイトがいて、何かを飲んでる姿が見えた。
「カイト君・・・?」
「あっ、ハル・・・」
カイトは、突然のハルの登場に一瞬だけ焦った。
「どうしたの、カイト君・・・大丈夫?」
「あっ・・・うん、大丈夫。ちょっとだけ気分が悪くなって・・・」
そう言ってるカイトの表情を見ると、かなり顔色が悪かった。
「カイト君、大変・・・保健室に行った方が・・・」
「え?・・・いや、そこまでしなくても大丈夫だよ・・・」
カイトはとっさにハルとの距離を離した。
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「だめだよ、そんな顔色じゃ・・・私が手を貸すから・・・」
ハルが心配してカイトに近付いて・・・
「もう大丈夫だよ、さっき薬を飲んだから・・・もう効いてくると思うから・・・ごめんねハル、余計な心配かけちゃって・・・」
カイトは、ハルが近付く前にそう説明した。
「そう・・・本当に大丈夫なんだよね?」
「うん、大丈夫。もう戻るから先に行ってていいよ、ハル」
カイトはハルにそう言って、先に出るように促した。
「うん、分かったよ。先に行っ・・・わっ!」
ハルが洗面所から出ようとした時、つまずいて仰向けに転びそうになった。
「危ない!」
カイトはとっさにハルの側に駆け寄った・・・
どさっ。
「あたた・・・」
カイトがクッションになるようにハルはその上に倒れていた。
「あっ、ごめん・・・カイトく・・・っ!?」
ハルが起き上がる時、ハルの右手がカイトの胸の辺りに触れてしまっていた・・・
「あっ・・・!?」
「カイト君・・・・・・何で・・・?」
ハルは、カイトの胸のあまりの冷たさに右手を押さえていた・・・ハルの右手は冷たさでまだ凍えていた。
「・・・・・・・・・」
「カイト君・・・どうして?・・・そんなに冷えてるの?」
カイトは、もうハルに隠すのは止めようと心に決めた・・・
もう、これで二度と顔を合わせられなくても・・・
「ごめん、ハル・・・これから君に、今まで言えなかったこの胸の事を話すよ」
カイトはゆっくりと起き上がって、覚悟を決めたようにハルに話し始めた。
・・・・・・・・・。
「はぁー・・・」
大体話し終えて、カイトは小さくため息を吐いた。
「そんな事が・・・あったなんて・・・」
ハルは、カイトに何て言っていいか分からなかった。
「皆に恐れられてる『灰色の願い人』の事・・・誰にも言えなくて・・・」
「お母さんとフォーの為に・・・」
カイトはただ、頷いた。
「私、そんな事があったなんて知らなかったよ・・・カイト君のお母さんの体調の事は知ってたけど、フォーにそんな辛い事が・・・」
ハルは、フォーの笑顔を思い出して余計に涙が零れそうになっていた。
「でも、後悔はしてないんだ・・・俺のこの心の欠片と引き替えにお母さんとフォーが元気になってくれた、それだけで・・・たとえ、俺が何を言われようとどうなろうとも・・・」
「・・・・・・・・・っ!」
カイトがそう言うと、ハルはカイトの胸に抱きついた。
「カイト君のばかっ!・・・カイト君の・・・・・・」
「ハル・・・」
ハルは泣きながら、カイトの胸の辺りを軽く叩いていた。
「何で、そう自分を大事にしないの?・・・そんな事で助かっても、カイト君が死んじゃったら・・・」
「ごめん、ハル・・・」
カイトはただ、ハルに謝る事しか出来なかった。
「ぐす、ごめんね、カイト君・・・取り乱しちゃった」
カイトは、小さく首を横に振った。
「それじゃ、学園祭の準備の時も、皆で大空を飛んだ日も・・・その胸が・・・」
カイトは、静かに頷いた。
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「ミナギちゃんは、この事知ってるの?」
「うん・・・学園祭が終わった翌日の休日に父さんの墓参りに行ってた帰りにミナギとたまたま会って・・・」
「どうして、ミナギちゃんには話したの?」
ハルは涙を拭きながらカイトに尋ねた。
「ミナギとはまだ出会ったばかりだったし、忘れてくれるならって思って・・・自分で覚悟を決めて話したんだ。でも、ミナギは怖がるどころか側にいてくれるって、言ってくれて・・・」
「・・・・・・」
ハルは少しだけ俯いていた。
「ハル・・・?」
「・・・・・・私にも、話してほしかったな・・・」
「ハル・・・」
ハルは少しだけ笑顔を見せながらカイトに話した。
「怖かったんだ・・・友達を失うのが・・・こんな自分を・・・恐れられてる灰色の願い人の力を借りたって皆に知られるのが・・・」
カイトはそう話しながらも、真っ直ぐにハルの目を見る事が出来なかった。
「カイト君・・・たとえ、色んな人に恐れられてる『灰色の願い人』の力を借りたとしても、カイト君の優しい気持ちは全然変わらないから・・・」
「・・・・・・」
ハルは、真っ直ぐな目でカイトを見つめながら話した。
「カイト君・・・死んじゃったりしないよね?」
「えっ?」
「お願い、それだけははっきり言って、そうじゃないと私、笑顔でこの町を飛び立てないよ・・・」
ハルは泣きそうな顔を伏せながらカイトに聞いた。
「大丈夫、だよ。俺はそんな事でいなくなったりはしないから」
カイトはそう答えると、ハルは笑顔で頷いた。
「・・・・・・」
「私、必ずこの町に帰ってくるから。いつになるかは分からないけど・・・」
「うん、待ってるよ」
ハルは、吹っ切れたような表情で話した。
「カイト・・・」
「え?何、ハル・・・?」
ハルは一息置いてから・・・
「私が帰ってくる前にいなくなったら許さないからね・・・もし、いなくなったら魂になってでもカイト君を連れ戻すから・・・私だけでなくミナギちゃんを悲しませる事なんて・・・絶対に」
「ハル・・・」
ハルはそう話した後・・・
「・・・・・・」
「えっ・・・?」
気が付いたら、ハルがカイトの頬にキスを交わしていた。
「私・・・カイトの事、好きだったんだよ・・・」
「え・・・・・・」
ハルは、笑顔でその場を後にした。
「・・・・・・」
カイトは、突然の事に少しだけ呆然としていた。
・・・・・・・・・。
ブリーダーの資格を持った3人と2人の先生が揃って、いよいよ出発の時が来た。
それぞれ別れの挨拶を交わしていた。
「ハル、また会えるよね・・・?」
「うん・・・」
「元気でな」
「うん・・・」
「皆で待ってるから・・・」
「うん・・・」
カイト達は目を潤ませながら、それぞれ挨拶を交わした。
「グライドも元気でな」
「グォー!」
グライドは、カイトに頬擦りをした。
「フォーゥ・・・」
「フォーも元気でね・・・」
「フォーゥ・・・」
「・・・・・・」
カイトはフォーの顔を見ると、とても淋しそうな顔をしているようだった。
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「・・・なぁ、フォー」
「フォー?」
「お前、グライドと一緒に行きたい?」
「フォー?」
カイトは、フォーとグライドの様子を見て1つの思いを決めた。
「フォー、もしグライドと一緒に行きたいなら・・・お前が決めてもいいよ」
「カイト君?」
「カイト?」
カイトの突然の話に皆が驚いていた。
「カイト、お前フォーとはもう家族同然の存在じゃないのか?」
「そうだよ、カイト君・・・フォーだって・・・」
カイトは、一息置いてから・・・
「やっぱりフォーは人間と一緒よりも、より気持ちが分かる分かり合えるドラゴンと一緒の方がいいって・・・フォーを傷付けた同じ人間といるよりは、きっと・・・」
カイトは、あの時のフォーの痛々しい姿を思って、皆に話した。
「カイト・・・」
「カイト、まだそんな事を気にして・・・」
「カイト君・・・そんな事・・・」
ハルがカイトに言いかけた時、先生が前に出てきた。
「分かりました・・・この子に決めてもらいましょう・・・それで良いですね、カイト君?」
先生優しい眼差しでカイトに話した。
「フォーゥ・・・」
フォーは、少し悲しげな表情を見せた。
「前は俺の勝手でフォーと別れようとしたけど、今度はフォーが決めて良いよ・・・もし、俺といたかったらいてもいいんだ、フォー」
カイトの目は真剣だった。
「フォーゥ・・・」
フォーはハル達とカイト達を交互に見ていた。
そして・・・少し経って、フォーは動き始めた。
フォーはゆっくりと・・・
「フォー?」
カイト達の方へ向かって行った。
そして、カイトに近付いて頬擦りをした。
「フォー♪」
「あはは、フォー・・・本当にいいのか?俺と一緒で・・・」
「フォー♪」
フォーは嬉しそうな顔で返事をした。
「えへっ」
「うふふっ」
皆はカイトとフォーの姿を見て微笑んでいた。
・・・・・・。
「それじゃ、行ってくるね」
「ああ、元気でな」
「頑張れよ」
「気を付けてね・・・」
ミナギは泣きそうな顔をしていた。
「ミナギちゃんほら・・・泣かないで。必ず戻ってくるから」
ハルは、ミナギの頭を撫でながら言った。
「うん・・・」
「そろそろ出発しまーす。忘れ物は無いですか?」
「じゃっ!」
ハル達は飛び立って行った。
姿が遠くに消えても見送りを止める事は無かった。
・・・・・・・・・。
「行っちゃったね・・・」
「うん・・・」
「フォーゥ・・・」
カイトとミナギ、フォーは夕焼けを見ながらハルの事を話していた。
「フォー、ありがと。こんな俺だけどよろしくな」
「フォー♪」
「くすす」
カイトとフォーの微笑ましいやり取りに、ミナギは笑顔になっていた。
ハル・・・
立派になって、帰ってきてね・・・
皆で待ってるから・・・・・・。
#8「試験~しけん~」end.
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枯葉が落ち・・・
冷たい風が、冬の始まりを告げた。
授業が終わって、カイト達はほうきを持って掃除をしていた。
「ふぅ・・・」
冬の始まり・・・どこか、もの悲しい・・・気持ちになって・・・
「うっ!」
カイトは急に気分が悪くなってしゃがみ込んだ。
「げほっ、げほっ・・・」
「おい、カイト大丈夫か?」
カイトは、シンジに返事の代わりに手で交わした。
少し急ぎ足でカイトは教室を出た。
・・・・・・。
少しして、カイトは教室に戻ってきた。
「あはは、ごめん皆・・・」
「カイト、本当に大丈夫なのか?」
「だ、大丈夫大丈夫」
カイトは笑って誤魔化した。そして、何事も無かったかのようにカイトは掃除を再開した。
「・・・・・・」
シンジは、カイトの事が気になったが、様子を見て大丈夫そうだったので掃除を続けた。
・・・・・・。
「カイトー、一緒に帰ろうぜ」
「ああ、いいよ」
珍しく、カイトとシンジとで帰る事になった。
「なぁ、カイト・・・」
「ん、何?シンジ・・・」
シンジがカイトの方に首を向けながら話し始めた。
「お前、本当に大丈夫なのか?」
「え?な、何だよ?」
「いや、だってさ・・・最近、よく授業を途中で抜け出す事あるからさ・・・」
シンジは、気になってる事をカイトに聞いた。
「あ、まぁ・・・ちょっと調子崩してる事はたまにあるけど・・・大丈夫だって」
カイトは、何事も無いかのようにシンジに答えた。
「なら、いいんだけど・・・カイト」
「ん?」
「あまり無茶をするんじゃないぞ。学園祭の事もあるんだし・・・」
シンジは、いつもより真剣な表情でカイトに話した。
「うん、分かってるよ・・・お母さんの事もあるし」
「まぁ、何だ、お前は1人じゃないって事・・・何か困った事があったら、俺にでも相談してもいいんだぜ」
シンジがそう話すと、カイトは「はは、大きなお世話だって」と、照れ隠しのように笑って返した。
「おっと、俺はここで・・・」
「それじゃ、シンジ」
「また明日な、カイト」
そうして、カイトとシンジは角で別れた。
「・・・・・・」
カイトはゆっくり歩き始めた。
「・・・・・・はぁ・・・」
カイトは空を見上げた。
最近、胸の辺りが苦しくなる感覚が・・・短くなっている?
もう、隠してる事・・・ばれてしまうかな・・・?
「・・・・・・」
出来る事なら、シンジにだって打ち明けたい気持ちで一杯だった。でも・・・
シンジの友達思いの気持ちが、カイトには逆に辛かった・・・。
カイトは少し不安定な気持ちのままで家に着いた。
「フォー」
「ただいま、フォー」
「フォー♪」
家に着くと、フォーが笑顔で迎え入れてくれた。
「ごめん、フォー・・・今日はちょっと・・・」
「フォーゥ・・・」
カイトはそうフォーに告げて、静かに家に入っていった。
「ただいま」
「おかえり、カイト」
カイトは、母親にただいまを言った後、自分の部屋に向かった。
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パタン。
カイトはベッドに鞄を放り投げて横になった。
「・・・・・・」
カイトは、あの時のミナギを思い出していた・・・
・・・・・・―――
(私は、たとえ他の人がカイトを怖がっても、一緒にいたい。カイトと笑っていたいから・・・)
「・・・・・・」
・・・・・・―――
(カイト・・・まだ平気なんだよね?・・・死んじゃったりしないよね??)
「・・・・・・」
これ以上悲しい気持ちは欲しくない・・・
母さんや、フォーを・・・死なせたくなかったから・・・
こんな自分に出来た事・・・でも・・・
何も失わずにいるなんて・・・
出来ないのかな・・・?
心の欠片と引き替えに手に入れた温もり・・・
でも・・・
俺は皆と、笑う事・・・もう・・・
出来ないかもしれない・・・
「・・・・・・・・・」
色々な事を考えてる内に、カイトは涙を浮かべていた。
皆との、約束・・・
破ってしまうかも・・・
皆・・・・・・ごめん・・・
・・・・・・・・・。
ジリリンと、電話が鳴っていてカイトは受話器を取った。
「もしもし」
・・・・・・。
「はい、分かりました、少しお待ち下さい」
カイトは受話器を置いて母さんを探した。
「母さーん」
「どうしたの?カイト」
台所から母さんの声がした。
「母さん・・・」
カイトは母親に電話の事を伝えた。
「分かったわ。今出るから・・・」
母親はゆっくりと電話の所まで移動した。
「ただいま変わりました」
・・・・・・・・・。
2日後、カイトと母親はバスの停留所に立っていた。
電話の相手は病院からで、カイトの母親の担当の先生だった。
カイトの母親は約一週間程、年に一度の精密検査を受けに少し離れた病院へと行く所だった。
「母さん、気を付けてね」
「家の事よろしくね、カイト・・・」
「うん・・・」
プシューと、バスのドアが閉まりゆっくりとバスは発車した。
カイトは、母親の乗ってるバスが見えなくなるまで手を振っていた。
「・・・・・・」
母さん・・・
もしかしたら、母さんが帰ってくる頃には・・・
もう、俺は・・・
・・・・・・。
ピンポーン。
その日の夕方カイトは、フォーを連れてミナギの家に来ていた。
そして、カイトが玄関のベルを鳴らすと扉が開いた。
カチャ・・・
「カイト?」
「やっ、ミナギ」
あっ、フォーちゃんも」
「フォー♪」
ミナギは、カイトとフォーの訪問に笑顔で交わした。
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「カイト、どうしたの?こんな時間に・・・」
「うんとね・・・実は少しの間だけフォーを預かっていてほしいんだ」
カイトは、フォーの首元を撫でながらミナギに話した。
「え?どうして・・・?」
「実は、お母さんが病院で年に一度の精密検査で約一週間家に誰もいなくなっちゃうから・・・それで」
カイトは、ミナギに手短に話した。
「あっ、迷惑だったらいいんだ。フォーもきっと1人でも大丈夫だと思うし・・・」
「うん、いいよカイト、私の家で預かっても」
ミナギは笑顔で答えた。
「えっ、でも一応エリさんにも話した方が・・・」
「あっ・・・」
カイトにそう言われて、ミナギは慌ててエリがいるらしい居間の方へ戻っていった。
「ちょっと待ってて、今お姉ちゃんに話してくるから」
ミナギは戻りながらカイトに言った。
「フォー・・・」
「フォー、急な事になってごめんな・・・」
カイトは申し訳なさそうにフォーに話すと、フォーは首を横に振った。
少しして・・・ミナギがエリと一緒に戻ってきた。
「こんばんわ、カイト君」
「あっ、エリさんこんばんは」
カイトは改まって、エリに挨拶した。
「ミナギから話は聞いてるわ。家で良かったらフォーを預かってもいいよ」
エリはカイトにそう答えた。
「本当ですか?すみません・・・個人的な我儘で・・・」
「ううん、いいよカイト君。カイト君の家お母さんが病院に一週間泊まりで、誰もいないのでしょう?ちょうど私は今、自宅勤務だから家にいるし・・・フォーの面倒くらいなら大丈夫だから」
エリにそう言ってもらえて、カイトは心から感謝した。
「本当にありがとうございます。何て感謝していいか分かりませんけど・・・」
「気にしなくてもいいよ、カイト君・・・ただいつも通りミナギと仲良くしてくれたら私は嬉しいから」
「私も、一週間だけだけどフォーちゃんと一緒にいられるし・・・カイトも時々家に来てフォーちゃんに顔を出してあげてね」
カイトは、ミナギに笑顔でそう言われた。
「う、うん・・・もちろん」
カイトは、少しだけぎこちない感じに答えた。
「カイト・・・?」
「え・・・?」
目の前にミナギの真っ直ぐな眼差しが入ってきた。
「どうしたの?ボーっとして・・・」
「え?ううん・・・今日はちょっと疲れてて・・・」
カイトは、その場を取り繕う感じで答えた。
「ところでカイト君、夕飯は食べたの?」
エリがカイトに尋ねてきた。
「えっと、まだです。これから家に帰って作ろうかなって・・・」
「カイト君、良かったら家で夕飯食べていかない?」
エリは笑顔でカイトに提案した。
「でも、それはさすがに・・・」
「一緒に食べようよ、カイト」
カイトが遠慮しようとすると、ミナギが割り込んで話に入ってきた。
「いいのかな?・・・本当に」
「私は大歓迎だよ。もちろんお姉ちゃんも・・・」
ミナギは笑顔でエリの顔を覗き込むように見た。
「遠慮はいらないよカイト君、家もこれから晩ご飯を作る所だから。フォーも、ねっ」
「フォー♪」
エリは、笑顔でフォーにも言った。
「それじゃ・・・」
・・・・・・。
それから、カイトはミナギとエリとフォーで夕食を一緒に食べた。
何気ない皆との会話がとても楽しかった。
でも・・・俺にはもう残された時間は・・・
・・・・・・・・・。
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「それじゃ、ミナギ」
「うん、また明日ね。カイト」
「フォーもおやすみ」
「フォー」
カイトは、フォーの頭を撫でてミナギの家を後にした。
・・・・・・・・・。
パタン。
「ふぅー・・・」
カイトは、誰もいない家に明かりを点けて自分の部屋に戻った。
これから、どうすれば・・・
じっとしていても仕方ないので、カイトは自分の部屋の荷物を広げてみた。
がさっ・・・
「あれ?」
上の戸棚を開けると、少し小さめな包みが出てきた。
「何だろ・・・これ?」
カイトはとりあえず開けてみる事にした。
「これは・・・」
包みの中は黄色いリボンだった。
「俺、こんなの買ったかなぁ・・・?」
自分の部屋にあったのだから、自分が買ったのは間違いなかったが・・・いつなのかハッキリと覚えてなかった。
誰かにあげる為・・・?
でも・・・誰にあげる為に買ったのだろう・・・?
ミナギ・・・?
でも・・・初めて出会ったのは学園祭の準備をしていた時・・・
小さい時・・・初めての友達・・・
誰だったのかな・・・?
また会おうねと・・・約束、交わしたような・・・
・・・・・・。
しばらく、記憶の中を辿ってみたが、途切れ途切れで上手く思い出せなかった。
何か、大事な事・・・忘れてるような・・・
考えてみても出てこないので、包みは机の上に置く事にした。
「・・・・・・」
やっぱりまた、あの人の所へ相談しに行こう・・・
このまま消えてしまうのを待ってる程、俺は諦めが悪いらしい・・・
たとえ、助かる方法が無くても・・・
これ以上、考えても仕方がないので、明日にする事にした。
「さっ、もう寝ようかな?」
カイトが起き上がろうとした時、急に目の前が一蹴だけ真っ暗になった。
「うっ、ごほっ、ごほっ・・・」
カイトは、慌ててポケットの中の薬を飲んだ。
・・・・・・・・・。
次の日、カイトは学校を休んだ。
「風邪」と、嘘を吐いて・・・。
・・・・・・・・・。
その次の日も、カイトは学校を休んだ。
・・・・・・。
キーン・・・コーン・・・
学校は昼休みに入った。
昼食を食べ終えたシンジはミナギを探していた。
学食、体育館、図書館と見て回り、1年の教室に向かっていた・・・
シンジが教室の窓を覗きながら歩いてると、教室の中で友達と楽しそうに話してるミナギを見かけた。
「ミナギー」
「えっ?」
ミナギは急に名前を呼ばれて振り向いた。
ミナギが振り返ると、教室の外でシンジが手を振っていた。
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「シンジ、どうしたの?」
「あのさ、カイトは大丈夫なのかなって・・・」
シンジは、いつもより真剣な顔でミナギに話した。
「え?カイトがどうかしたの??」
ミナギは、シンジの話に驚いていた。
「あっ・・・ミナギも知らないんだ・・・カイト、2日も休んでるからさ・・・」
「カイトが2日も休んでる・・・?」
ミナギは何も言葉が出てこなかった。
「先生は風邪だって言ってたけどな・・・俺に連絡無いからもしかしたらミナギに話してるかなって思ったんだけど・・・」
「ううん・・・私は何も・・・」
ミナギは小さく首を横に振って答えた。
「そっか・・・邪魔しちゃって悪かったよ」
「ううん・・・いいよ」
そう言って、シンジは教室を後にした。
「カイト・・・・・・」
ミナギは、急にカイトの事が心配になってきた。
・・・・・・・・・。
授業が終わってミナギはカイトの家に向かった。
ピンポーン。
ミナギは、カイトの家に着いて呼び鈴を押した。
・・・何も反応は無かった。
ミナギは何回も呼び鈴を押したが、出てくる気配が無かった。
「いないのかな・・・?」
ミナギはとりあえず、ドアを叩いてみた。
コンコン・・・
「カイトー、いるの?」
何回か叩いてはカイトの名前を呼んでみたが、何も反応は無かった。
「カイト、どこに行っちゃったのかな・・・?」
ミナギは諦めて帰ろうとした時、ドアの奥で音がした。
「カイト?いるの?」
ミナギはもう一度ドアを叩いてみた。
「・・・ミナギ?」
ドアの向こうからカイトの声が聞こえた。よく聞き取らないと分からない程の声で・・・
「カイト?」
「待ってて・・・今開けるから・・・」
カチャと玄関のドアが開いた。
「ミナギ・・・」
「カイト・・・大丈夫?」
2日前に夕飯を食べた時よりも、顔色が悪かったカイトを見てミナギは悲しげに言った。
「あはは・・・あまり良くないかな・・・?」
カイトは、ミナギに無理して笑顔で答えた。
「シンジから聞いたよ・・・風邪で2日も学校を休んでるって・・・」
「うん・・・ミナギ、とりあえず中に入って話そう」
「うん・・・」
ミナギはカイトに案内されて広間に入った。
「ごめんね・・・何も用意できなくて・・・」
「ううん、無理しなくていいよカイト」
ミナギは遠慮がちにカイトに言った。
カイトはミナギが座った後で、カイト自身も座った。
「ねぇ、カイト・・・」
「何?ミナギ・・・」
「嘘、なんだよね・・・風邪で休んでるって・・・」
ミナギは、言い難そうにカイトに聞いた。
「あ、う、うん・・・」
カイトは少し、ぎこちない感じに答えた。
「昨日はアステルさんの所に行ってたんだ。今日もこれから出掛けようと思ってて・・・」
「治るんだよね・・・カイト・・・」
「ああ、う、うん・・・」
カイトは無理に笑って答えた。
「・・・・・・」
「ミナギ?」
「もう・・・どうしようもないの?・・・もうどうする事も出来ないの?」
ミナギは、泣きそうな声でカイトに言った。
「ミナギ・・・」
「私・・・辛いよ、日に日に弱ってゆくカイトの姿を見ているのが・・・」
ミナギは、泣きそうになりながら涙を堪えてカイトに話した。
「・・・俺は、母さんやフォーを助けたくて自分の意思で心の欠片を引き替えにした・・・この胸の冷たさや苦しさは自然の流れに逆らった俺に対する報いだって・・・思うんだ」
カイトはもう、覚悟を決めたような・・・そんな話し方をした。
もう、消えるのは・・・
怖くないから・・・・・・
「・・・嫌だよ」
「ミナギ?」
カイトがミナギの方を見ると、ミナギは泣いていた・・・。
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「父さんも母さんもいなくなって・・・私の前から大切な人がこれ以上いなくなるのは嫌だよ・・・」
「ミナギ・・・」
カイトは、ミナギの泣いてる顔を見ているのが辛くなってミナギの頭を撫でた。
「ぐすっ、ぐすっ・・・」
「ごめんミナギ・・・まだ諦めたわけじゃないよ・・・今からアステルさんの所に行って、何か方法があるかどうか調べに行くから」
カイトは、静かにミナギから離れ・・・
「えっ?」
ミナギの両手はカイトの服を掴んで離さなかった。
「待って、私も行くよ。このままじっとしてるのは嫌だよ・・・」
「うん・・・分かったよミナギ。今から準備するから外で待ってて」
「・・・うん」
カイトにそう言われて、ミナギは外に出て行った。
・・・・・・・・・。
カイトは家の鍵をかけて、ミナギの待つ場所へと向った。
「カイトー」
「ごめん待たせて・・・あれ?フォーも連れてきたのか・・・」
「だって・・・フォーちゃん、カイトに会いたいって・・・目をしたから」
そう言われてカイトがフォーを見ると、淋しそうな表情をしたフォーの目が写し出された。
「フォーゥ・・・」
「フォー、ごめんな・・・お前にまで迷惑をかけたくなかったから・・・」
そう言って、カイトはフォーの頭を撫でた。
「フォー♪」
「それじゃ、行こうミナギ、フォー」
「うんっ」
「フォー!」
カイト達はゆっくりと歩き始めた。
目指す場所はずっと山奥にある一軒家・・・歩いて行くには遠い場所にあった。
「・・・はぁ、はぁ・・・」
「カイト、大丈夫?」
少し経って息が荒くなってるカイトを見て、ミナギが心配そうに話し掛けた。
「大丈夫、これくらいなら・・・」
カイトは、ミナギに余計な心配をかけないように無理して笑って話した。
「フォー・・・」
カイトがそう話してると、フォーがカイトの方を向いた。
「え?どうしたフォー・・・」
カイトが話し掛けると、フォーは腰を下ろした。
「フォー」
「俺に乗れって言ってるのか?フォー・・・」
カイトがフォーに聞くと、フォーはそっと頷いた。
「うん・・・分かったよフォー・・・少し重くなっちゃうけど・・・」
カイトはフォーに言いながら、静かにフォーの背中に乗った。
「急ごう、カイト」
「うん」
カイト達は、再び歩き始めた。
・・・・・・・・・。
町の方では、学校帰りにシンジがぶらぶらと見て回っていた。
「んー・・・」
シンジはふと、昼間の事が頭を過ぎった。
「・・・ミナギにも話してないなんてな・・・カイト大丈夫かな?」
シンジはせめてにと、何かお見舞いになりそうなものを探し始めた。
・・・・・・・・・。
少しして、カイト達は町の中に入った。
「ちょっと、待ってて」
カイトは1つの店の前で、フォーから降りた。
「カイト、この店に用事があるの?」
「ここ、俺がバイトで働いてる店なんだ。昨日休んじゃった事を謝んないと・・・」
「ここが、カイトの働いてるお店なんだ・・・」
ミナギは店の外からどんな店なのか覗いていた。
「はは・・・今度見に来てもいいよ、ミナギ」
カイトがミナギにそう話すと、笑顔でカイトに頷いた。
「それじゃ、行って来るから」
カイトはそう言って、店の中に入っていった。
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「・・・・・・」
カイトがいなくなった後、ミナギは少し俯いた感じになった。
「フォー・・・?」
「あっ、フォーちゃん・・・」
その様子を見ていたフォーがミナギの頬にそっと触れた。
「フォー・・・」
「・・・フォーちゃん・・・」
ミナギは、どうしようもないくらいに悲しい気持ちになってフォーの頬に顔を寄せた。
「私、どうしたらいいの・・・?」
「フォー・・・」
・・・・・・・・・。
「どうしよっかなぁ・・・?」
一方、シンジはカイトの見舞いに何を買おうか一軒一軒店を回っていた。
「あれ・・・?」
シンジは、反対側の歩道にいる1体のドラゴンを見かけた。
「あれは、フォー・・・?」
シンジは気になって、見に行く事にした。
・・・・・・。
「ぐす・・・」
「フォーゥ・・・」
ミナギはカイトに何も出来ないのではと考えてる内に、涙が止まらなくなっていた。
フォーは何とか慰めようとミナギの頬に触れていた。
「おーい、フォー」
その時、反対側から渡って来たシンジがフォーに気が付いて声を掛けてきた。
「あっ・・・」
シンジの声に気が付いて、ミナギは我に返った。
「フォー・・・ミナギ?」
「あっ、シンジ・・・」
ミナギはとっさに笑顔でシンジに答えた。
「ミナギ・・・お前泣いてないか?」
シンジがそう言うと、ミナギは慌てて目を擦った。
「ちょっと、おかしい事があって、笑いすぎて・・・」
誤魔化すには、あまりにも無理のある言い訳だった・・・
「どうして、ミナギとフォーがカイトのバイト先にいるんだよ?・・・カイトは・・・」
シンジがそう尋ねるとミナギは少し言い難そうに・・・
「あの、えっと・・・」
その時、ウイーンと店の自動ドアが開いてカイトが出てきた。
「お待たせ、ミナギ、フォー・・・」
カイトがミナギとフォーに話し掛けたところで、シンジの存在に気が付いた。
「シンジ・・・」
「カイト・・・お前、風邪で休んでたんじゃ・・・?」
カイトの姿にシンジは少しだけ驚いていた。
「シンジ、これはね・・・」
「風邪薬が切れたから、買いに来てたんだ。ちょうどミナギが見舞いに来てくれて、それで俺1人じゃ危ないからって一緒について来たんだ」
カイトは、とっさに思いついた理由をシンジに話した。
「そ、そうなのか・・・?」
シンジがそう言うと、ミナギは何度も頷いた。
「う、うん・・・」
「まだ、調子は良くないけど・・・」
カイトはシンジにそう話した。
そう言われてシンジがカイトの顔を見ると、そのあまりのカイトの顔色の悪さに表情が固まった。
「カイト・・・本当に風邪なのか?そんなに顔色が悪いなんて・・・本当は違う・・・」
「風邪だよ。風邪だから・・・もう俺は帰るから・・・」
カイトはそう言って早々とこの場から・・・
「おい、待てって・・・・・・っ!」
シンジがそう言った時に、はずみでカイトの胸に触れてしまった。
「あっ・・・」
シンジは、そのあまりの冷たさに言葉を失っていた・・・。
「カイト・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
カイトは何も言わずに、フォーの背中に乗った。
「ミナギ、フォー、先を急ごう」
「えっ・・・う、うん」
「フォーゥ・・・」
カイトは顔を下に向けたままでミナギとフォーに話した。
「カイト・・・お前、何があったんだよ・・・?」
シンジが悲しげな顔でカイトに聞くと、カイトは顔を下に向けたままで話し始めた。
「ごめん、シンジ・・・今はまだ話せない・・・」
カイトはシンジにそう話して、フォーに先に進むように言った。
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「カイトー、必ず戻ってくるよなー?二度と会えなくなるなんて事はないよなー!?」
シンジの問いかけに、カイトは何も言わずに小さく頷いた。
「待ってるからなー・・・必ず戻ってこいよー・・・」
シンジは、カイト達が去った後、顔を伏せていた。
溢れかけた涙を隠すように・・・
・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・」
カイト達は、何も言わずに目的地へと進んでいた。
「カイト・・・」
「・・・・・・・・・」
せめてシンジにだけは、知られたくなかった・・・
風邪のままで、誤魔化したかった・・・
でも・・・嘘はいつかは、ばれてしまうから・・・
きっと、今がその時なのかもしれない・・・
カイトは、今まで誤魔化してきた分のツケがこうして回ってきたと、泣きそうになってる気持ちを抑えながら思った。
「カイト・・・」
「フォー・・・」
ミナギとフォーは、カイトの苦しんでる姿を見るのが辛かった。
少し経って・・・
「ミナギ、フォー・・・」
「カイト?」
「フォー?」
カイトの重い口が開いた。
「心配かけてごめん。俺、必ず笑って戻るよ・・・ミナギやフォーに母さん、それにシンジやハルや今まで出会った皆に・・・」
カイトは、顔を上げてミナギとフォーに話した。
「うんっ」
「フォー!」
カイトの背中を押すように、ミナギとフォーも答えた。
「あまり遅くなっちゃうと大変だな・・・ねぇ、フォー・・・」
「フォー?」
「俺とミナギを乗せて、あの山のふもとの近くまで飛ぶ事出来るかな?」
カイトにそう言われてフォーは目的地近くの山の周りを見渡した・・・
一箇所だけ、山道に入る広い歩道があった。
「フォー」
フォーはカイトに小さく頷いた。
「それじゃ、お願いするよフォー」
フォーはそうカイトに言われて、ゆっくりとしゃがんでミナギを乗せる準備をした。
「待ってて、1回降りるから・・・」
カイトが降りようとした時、待ってとミナギは言った。
「私、カイトの後ろでも大丈夫だよ。だから、カイトはそのまま乗ってて」
ミナギはそう言ってカイトの後ろに座った。
「フォー、大丈夫?」
カイトはフォーに尋ねると、大きく頷いた。
カイトとミナギは命綱をしっかりと握り締めた。
「フォー、俺達は大丈夫だから、いつでも飛び立っていいよ」
カイトがそうフォーに話すと、フォーは翼を大きく広げた。
一瞬だけ、風が止んで・・・
「フォー!」
最初はゆっくりと、やがて少しずつ速度を上げて翼を羽ばたかせ、ゆっくりと上昇し始めた。
「フォー!」
少しずつ飛行速度を上げてゆき、何とか風の軌道に乗った。
町から草原を追い越して、あっとゆう間に山の入り口まで辿り着いた。
「フォー」
バサッ、バサッと静かにフォーは地面に降りた。
フォーはゆっくりとしゃがんでから、ミナギはそっと降りた。
「フォー、ありがとう」
カイトは、フォーの体をそっと摩った。
「フォー♪」
「もう少しだよ、ミナギ・・・」
「うん」
カイト達は山奥に入って行った。
明るい内はまだ大丈夫だが、夜になると小さな明かりさえもかき消されてしまいそうな雰囲気だった。
暗くなる前に戻らないと・・・カイト達は急ぎ足で先に進んだ。
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少し歩いて・・・やがて、明るい場所に出ると小さな一軒家が見えた。
「着いたよ」
「ここが・・・」
今まで見た事の無い風景に、ミナギは少し辺りを見回していた。
「フォー、ありがと・・・重くなかった?」
カイトはフォーに尋ねると、フォーは笑顔で首を横に振った。
カイトはゆっくりとフォーから降りた。
「フォー、ここで待っててね」
カイトはフォーの頬を撫でながら話した。
フォーは小さく頷いた。
コンコン。
カイトは扉をノックした。
「入りなさい」
扉の奥から声が聞こえた。カイトは静かに扉を開けた。
「・・・・・・」
ミナギは、少し緊張した感じで中に入った。
中に入ると、沢山の本と薬が置いてあった。
「こんにちは、アステルさん」
「おお、カイトか・・・何だ、連れもいるのか」
アステルとゆう人物が、カイトの後ろにいたミナギの方を見つめた。
「初めまして、アステルさん・・・ミナギといいます」
「おお、礼儀正しい子だな・・・」
アステルは見た目は少しだけ怖い印象だったが、実際に話してみるととても優しい感じがした。
「今日も・・・お願いします」
「ああ、分かった・・・」
アステルは静かに席を立った。
そして、カイトとミナギは奥の部屋に通された。
テーブルの上には、色々な本が山積みになっていた。
「カイトが帰ってから、色々な本で調べてみたが・・・」
「見つかってないのですね?」
アステルの話にカイトは、静かに答えた。
「カイトはもう、助からないのですか・・・?」
ミナギは心配そうな顔で、アステルに聞いた。
「まだ分からん・・・今は薬で症状を抑える事でしか・・・」
「・・・・・・」
アステルの答えに、ミナギは何も言えなかった。
「カイト、私のあげた薬の効果は大丈夫か?」
「少しずつ、薬を飲む感覚が短くなってきています・・・」
「どれくらいの感覚で?」
「今は2日で苦しくなってきます」
アステルの質問に、カイトは淡々と答えた。
「もう、その薬も限界か・・・」
「・・・・・・・・・」
ミナギは、何かカイトの為にしてあげたい・・・でも、何も出来ない・・・
そんなもどかしい気持ちになっていた。
「やっぱり・・・自分の心の欠片を引き替えにして願いを叶えて、自分も助かろうなんて・・・虫が良すぎますよね・・・」
カイトは、自分のした事にもうどうする事も出来ないと思った。
「諦めちゃ・・・だめだよ」
ミナギはそっと、後ろからカイトにしがみついた。
「消えてほしくない・・・絶対に」
「ミナギ・・・」
ミナギは泣きながらカイトの背中に顔を寄せた。
「・・・・・・」
カイトはなんて言っていいか分からなかった。
「・・・・・・」
アステルは、そっと別室に入っていった。
しばらくして・・・アステルが別室から戻ってきた。
「カイト、新しい薬だ。これで胸の体温が少しは上がるはずだ」
アステルは、ピンク色の錠剤入りのビンをカイトに手渡した。
「ありがとうございます」
「また明日来なさい。私はカイトが来るまでに探しておくから」
「アステルさん、色々と迷惑かけてしまってすいません」
カイトは頭を下げてアステルに謝った。
「もう分かったから・・・過ぎてしまった事は仕方ない。もう遅くなるから今日の所は帰りなさい」
「はい。ミナギ、帰ろう」
「うん・・・ごめんカイト・・・私、何も出来なくて・・・」
ミナギはカイトにそう話すと、カイトは何も言わずにミナギの頭を撫でた。
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「気にしなくていいよ、また明日来て・・・」
「カイト?」
カイトはその場にしゃがみ込んで咳き込んだ。
「げほっ、げほっ・・・」
「カイト!しっかりして」
「あああ・・・」
カイトは今にも吐きそうな感じだった。
「いかん!カイトをベッドに寝かせないと・・・ミナギ、こっちへ連れてきなさい」
「は、はいっ」
ミナギとアステルはカイトの肩を持って、ベッドに寝かせた。
「カイト・・・」
ミナギはじっとカイトの手を握った。
「カイト、これを飲みなさい」
アステルはカイトに薬を飲ませた。
「ごほっ、ごほっ・・・」
「これで少し様子を見よう・・・」
「カイト・・・」
ミナギは、泣きそうな顔でカイトの手を握り続けていた。
・・・・・・。
「すぅー・・・」
薬が効いたのか、カイトは静かに眠りについた。
「ミナギ、カイトの事は私に任せてもう帰りなさい。親が心配するから
「はい・・・・・・明日来ます」
ミナギは部屋を後にした。
パタン。
「フォーちゃん、帰ろう・・・」
「フォーゥ・・・」
さっきまでの様子を外から見ていたフォーは、少し悲しげに鳴いた。
ミナギとフォーが森を抜けた所で、ちょうど辺りが暗くなり始めていた・・・
淋しい気持ちのまま、ミナギとフォーは帰宅した。
・・・・・・・・・。
次の日、授業を終えたミナギはすぐに帰宅して再びフォーとアステルの所へ出掛けた。
何よりも、カイトの事が心配だった・・・。
「フォーちゃん、お願い」
「フォー!」
バサッ、バサッとゆっくりと上昇し、風に乗るように森の方へ飛んでいった。
・・・・・・・・・。
コンコン。
「どなたかな?」
「ミナギです」
「ああ、入りなさい」
ミナギはゆっくり扉を開けて入った。
「アステルさん、カイトは大丈夫ですか?」
「カイトは出て行ったよ。用事があるからと、置き手紙を残して・・・私はその体じゃ無理だと言ったのに・・・ご飯を持っていったらいなくなってたよ」
「えっ?」
ミナギは驚いて声を出した。
「カイトはどこに行ったんですか?」
ミナギは泣きそうな顔でアステルに聞いた。
「家に戻るって書いてあった・・・本当にカイトは無茶をする・・・」
「戻ってくるんですか?」
「それは・・・分からん・・・」
「・・・・・・」
ミナギは、カイトを探しに行こうと思ったが思い留まった。
もしかしたら・・・カイトを救えるかもしれない・・・
「アステルさん・・・」
「どうした?ミナギ・・・」
ミナギは、思い切ってアステルに話した。
「私の願い・・・叶えてくれませんか・・・?」
「・・・まさか、カイトにか?」
ミナギは静かに頷いた。
「本当にいいのか?」
アステルは、もう一度ミナギに尋ねた。
「はい」
ミナギは真剣な目でアステルに答えた。
「・・・こっちへ来なさい」
アステルは、右の扉の方に向かった。
ミナギはそっと、後をついて行った。
中に入ると、薄暗いカーテンに囲まれた部屋の下に魔方陣が書いてあり、その上に椅子が置いてあった。
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「そこの椅子に座りなさい」
ミナギはゆっくりと、椅子に座った。
アステルは部屋の奥から魔法の杖を取り出して、ミナギの正面に立った。
「静かに目を閉じて、心の中で願いを唱えなさい」
「・・・・・・」
ミナギは目を閉じて、願いを唱えた。
どうか・・・
カイトを・・・
助けてください・・・・・・
アステルは、杖の先をミナギの心臓に向けた。
「この者の心からの願い事・・・自らの心の欠片と変えて・・・」
「・・・・・・」
「解き放て・・・願いの欠片よ・・・」
「・・・・・・」
ミナギは心から願いを続けた・・・
「・・・だめだ」
アステルは、静かに杖を下ろした。
「えっ?」
ミナギは、アステルの言葉に思わず声を出してしまった。
「残念だが・・・ミナギの願いを叶える事は出来ない・・・」
アステルは諦めて杖を元の位置に戻した。
「どうしてなんですか?・・・私の心が汚れているからですか?」
「そうではない・・・お前はもうすでに誰かの願いによって生きている」
「誰かの・・・願い?」
アステルの思いもしない言葉にミナギは、はっとなった・・・
あの時の・・・
男の子が持ってきてくれた・・・
白く光る薬が・・・・・・
「あ・・・・・・・・・」
ミナギは何も言葉が出てこなかった。
「もし、その願いの欠片を取り出してしまったら・・・願いを叶える前に、ミナギ自身が死んでしまう・・・」
「そ、そんな・・・」
「残念だが・・・」
ミナギは途方に暮れそうになった・・・
「・・・・・・」
誰かの・・・願い・・・?
「アステルさん」
「どうした?ミナギ・・・」
「この私の中にある願い・・・誰の願いか分かりますか?」
ミナギは、願いの欠片の埋まってる部分に右手を置きながらアステルに聞いた。
「知らないのか・・・?」
「忘れてしまって・・・思い出そうとすればする程、忘れてゆくようで・・・」
少し、アステルは考えて・・・
「分かった。こっちへ来なさい」
アステルは庭の方へ移動した。
そこは、さっきと正反対に明るく花壇や鳥達が沢山いた。
「あっ、フォーちゃん」
「フォー♪」
余程この場所が癒されるのか、フォーは嬉しそうな顔をして鳥と会話していた。
「そこの椅子に座りなさい」
「さっきの場所じゃないんですか?」
アステルは、庭を見渡してからミナギに話し始めた。
「忘れた記憶を呼び戻すには、心から落ち着かせる必要がある・・・ここは落ち着かないかな・・・?」
「い、いえ、心からほっとします」
ミナギは慌てて笑顔で答えた。
「では、そこの椅子に座って、目を閉じて肩の力を抜きなさい」
アステルにそう言われて、ミナギは椅子に座って静かに目を閉じた。
「・・・・・・」
アステルは、ミナギの心臓近くに杖を近付けた。
「この者の願いを込めた者・・・忘れ去りし記憶をこの者に甦らせよ」
杖から淡い光がそっと、ミナギを包んでいった・・・
「あっ・・・」
記憶が・・・・・・
・・・・・・――
町の真ん中にある噴水近くのベンチで小さい頃のミナギが座っていた。
その様子を客観的に、今のミナギの幻影が見ていた。
覚えている・・・
あの日の、私自身・・・
あの時の私は・・・もう・・・
「ねぇ・・・」
・・・誰なの?
「どうして、泣いてるの?」
小さい頃のミナギに同じ年位の男の子が話し掛けていた。
あの、男の子は・・・もしかして・・・
そうか・・・これは・・・
初めてあの男の子と出会った日だ・・・。
そっか・・・あの時・・・
私・・・泣いてたんだね・・・・・・。
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「お願い、私の事はほっといて」
小さい頃のミナギは冷たく男の子に言った。
「ううん、泣いてる女の子をほっとけないよ」
男の子は首を横に振って、小さい頃のミナギに話した。
「いいからほっといて・・・私、もうすぐ消えちゃう命だから・・・」
私・・・
「ここで待ってて、良い物持ってくるから」
男の子は小さい頃のミナギにそう言って、どこかに駆けてった。
「え・・・・・・」
小さい頃のミナギはただ、呆然としていた。
少しして、男の子が手に何かを持って戻ってきた。
「はい、ここのアイス凄くおいしいんだよ。これを食べて元気を出して」
男の子は、買ってきたアイスを小さい頃のミナギに手渡した。
「・・・ううっ!」
小さい頃のミナギは、男の子の差し出したアイスを手で払い除けた。
そのアイスは地面に落ちてしまった。
「あっ・・・」
「何で・・・私に構うの?私・・・死んじゃうんだよ?・・・もうすぐここからいなくなっちゃうんだよ?」
小さい頃のミナギは、顔を伏せたままで痛々しい声で男の子に言い放った。
私・・・酷い事、しちゃったね・・・
その様子を見ていた今のミナギは、見ていられなくなり目を反らしていた。
少しして、男の子が手に持っていたアイスを地面に落とし、小さい頃のミナギに話し始めた。
「君に、笑ってほしいんだ。君がいつまでも泣いてたら・・・周りの人まで悲しくなっちゃうよ・・・俺はただ、君の笑顔が見たい・・・ダメ・・・かな?」
「あっ・・・」
小さい頃のミナギが男の子の顔を見ると、涙を流しながら男の子が話していた。
こんな私でも・・・笑って、いいのかな・・・?
気が付けば、小さい頃のミナギは男の子の胸の中で泣いていた。
その様子を遠くから見ていた今のミナギの幻影も、あの頃を思い出して涙目になっていた。
それから・・・毎日、ここの噴水で小さい頃のミナギと男の子は待ち合わせをした。
2人で祭りを見たり、見た事の無い場所へ行ったりおいしいアイスや食べ物を食べたり・・・
本当・・・楽しかった・・・
男の子の顔は、ぼやけていて分からなかったが・・・あの頃の2人の飾りのない笑顔を見て、今のミナギも自然と笑顔になっていた。
でも・・・楽しい時は長くは保たなかった。
心からの笑顔になっていた明くる日の朝に、ミナギは高熱を出した。
「ミナギ、しっかりして!」
「えへへ・・・」
小さい頃のミナギは男の子に何かを言いたかったが、熱で喋る事が出来なかった。
・・・・・・・・・。
私、この時・・・
やっと、楽になれるって・・・
これで、お父さんとお母さんに会えるって・・・思って・・・
「ミナギ・・・ミナギ・・・」
男の子やエリ、お医者さんが見守る中、小さい頃のミナギは、男の子に何かを伝えたいようだった・・・
「何、ミナギ?」
男の子は泣きそうになりながら聞いたけど、熱で声を出すのが辛かった小さい頃のミナギは話す事が出来なかった。
君に・・・ありがとうって・・・言いたかったんだよ・・・
側で見ていた今のミナギの幻影は、男の子にそっと話し掛けた。
「・・・・・・・・・っ!」
少しして、男の子が急に席を立った。
「君を死なせない・・・君の笑顔が見たいから」
男の子は小さい頃のミナギにそう伝えて、病室を出て行った。
小さい頃のミナギは笑顔で見送る事しか出来なかった・・・。
あの時は・・・無理だよ、でも・・・ありがとう・・・
その気持ちだけで・・・って・・・
そして、辺りが暗くなり始め病室には小さい頃のミナギが1人で窓から景色を眺めていた。
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小さい頃の自分を見ていられなくなり、今のミナギの幻影も病室の廊下に出ていた。
廊下のソファーでエリが泣きそうな顔でミナギの事を祈っていた・・・。
お姉ちゃん・・・そんなに、私の事を・・・
少しして、エリは別の場所へと移動した。
お姉ちゃん・・・・・・
エリの淋しそうな背中を今のミナギの幻影は見送った。
少し後、反対側の廊下から男の子が手にビンを持って戻ってきた。
あっ・・・
男の子は今のミナギの幻影を通り抜けて、小さい頃のミナギのいる病室に入っていった。
その後を今のミナギも追った。
「えへ・・・」
「ほらミナギ、薬だよ。これを飲んで元気になって」
男の子の手には、白く光る一粒の薬が入った小さなビンがあった。
「凄く、綺麗・・・」
あの薬が・・・男の子の・・・私への願い・・・?
小さい頃のミナギが男の子から薬を受け取って飲むと、小さい頃のミナギの体を不思議な感覚が包んだ。
「何だか・・・体が楽だよ」
小さい頃のミナギから、少しずつ笑顔が戻ってきて、声も出せるようになっていた。
「良かった。もう今日はゆっくり寝てね。俺はミナギが眠ってから帰るから」
「うん、ありがと・・・」
男の子は小さい頃のミナギが眠るのを待ってから、静かに病室を後にした。
まるで、昨日の事のように、今のミナギから記憶が戻っていった。
でもミナギの中で忘れてしまってるのか、肝心の男の子の名前の所で声が濁ってしまい聞き取る事が出来なかった・・・。
それから・・・3日後、ミナギはエリから1週間後にエリの住む町へ行く事を伝えられた。
「あっ、ミナギ。元気になって良かった。今日はどこに・・・」
「・・・・・・」
「ミナギ?」
男の子が小さい頃のミナギの顔を見ると、涙目になっていた。
「うっ・・・うわああぁー・・・」
小さい頃のミナギは、男の子に抱きついて泣き出した。
私、この時・・・凄く、悲しかったんだよ・・・
君と、離れ離れになるのが・・・
今のミナギは、2人の様子を見ながらあの時の思いを辿っていた。
「・・・何があったの?ミナギ・・・落ち着いて話して」
「ぐすっ・・・私、後1週間でこの町と君にお別れしちゃうよ・・・」
「えっ・・・」
男の子は何て言っていいか分からずに、小さい頃のミナギの頭を撫でた。
「嫌だよ・・・君と離れ離れになるの・・・折角友達になれたのに・・・」
「・・・・・・」
今のミナギは、その2人の光景を俯きかけたままで胸を押さえながら見ていた。
「私、君ともっと色んな所へ行きたい・・・君ともっと遊びたいよ・・・」
「・・・一緒に来て!」
男の子は、小さい頃のミナギの手を引っ張って走り出した。
今のミナギも、後を追った。
・・・・・・。
「はぁ、はぁ・・・」
「はぁ・・・」
一体、どれだけ走ったのだろう・・・?
気が付けば、森の奥の大きな木の前まで来ていた。
ここは・・・?
今のミナギは、ここがどこなのかよく覚えていなかった。
「さっ、着いたよ」
「えっ・・・」
ここは昼間なのに少し薄暗い場所だった・・・辺りを見渡すと、蛍のような光がふわふわと浮かんで飛んでいた。
「わぁ・・・」
小さい頃のミナギは、今まで見た事の無い世界に言葉にならない気持ちになっていた。
「ちょうど良かったみたい・・・この光の風景は他の場所ではあまり見られないんだ・・・」
「綺麗・・・」
2人はしばらく、この幻想的な世界を見渡していた。
本当に、別世界に・・・行ったみたいだよ・・・
あの頃を思い出したのか、今のミナギの幻影もこの景色を目を潤ませながら見ていた。
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少しして、男の子は小さい頃のミナギの手を引っ張って大きな木の真ん中に2人が交互になるように立った。
「待ってるよ・・・君がこの町に戻ってくるのを」
「うん、きっと・・・この町に戻ってくるよ・・・君に会いに・・・」
「約束・・・だね」
「うん・・・」
2人はそっと、指きりを交わした。
光に願いを込めるように・・・
「また、遊ぼうね・・・ミナギ」
「うんっ、また遊ぼうね・・・・・・」
2人が約束を交わした直後に、弱い風が吹いて男の子の顔が見えた・・・
・・・カイト・・・
――・・・・・・
「えっ・・・?」
ミナギが気が付くと、辺り一面の花壇の風景が目に入った。
「気が付いたみたいだな・・・」
「ア、アステルさん・・・」
「少しは思い出したのかな・・・?」
アステルは、テーブルの反対側にある座椅子に腰掛けていた。
「・・・はい」
ミナギは静かに頷いた。
「では、ミナギへの願いは誰の心の欠片なのかな・・・?」
「・・・カイトだったよ」
・・・・・・。
「あっ・・・」
時を同じくして、家に戻っていたカイトの記憶も突然甦った。
「・・・・・・」
カイトは、机に置いていた包み紙を手にした。
「・・・・・・」
カイトは包みから黄色いリボンを取り出した。
「う・・・ううっ・・・」
カイトはリボンを握り締めながら、その場で座り込んだ。
「ごめん・・・ごめん、ミナギ、大切な約束・・・今まで忘れていて・・・」
カイトは甦った記憶を思い出し、今まで流れなかった涙が流れていた・・・。
ミナギへの願いを叶えたのは・・・
俺だったんだね、ミナギ・・・
本当に、ごめんね・・・・・・
・・・・・・・・・。
「カイトも忘れてました・・・あんなに大事な事を、私だけでなくカイトも忘れてるなんて・・・」
ミナギは、思い出した嬉しさと想像してなかった事に複雑な思いになっていた。
「恐らくは・・・後遺症」
「えっ?」
アステルは落ち着いた様子で、ミナギに話し始めた。
「カイトが3つ目の願い・・・つまりフォーを助ける為にかけた願いと引き替えに、最初にミナギを救った願いの記憶を無くしてしまった・・・」
「そんな事って・・・」
アステルは、話を続けた。
「カイトは優しい・・・だが、その優しさが自らの命を縮めてしまった・・・。私は何度も警告したのに・・・彼にもう少し自分を大事にする気持ちがあれば・・・」
アステルは話を終えて、そっと顔を上げた。
「でも・・・それがカイトだって思います。私・・・カイトがいなかったら、もうこの世界にはいなかったんだって思いますし・・・」
ミナギは少しだけ目を潤ませながらアステルに話した。
「ふふ、そうだな・・・」
アステルは鳥達を見ながら答えた。
「ミナギが記憶を戻したならきっと、カイトの記憶も戻っているはず・・・願いをかけた者とかけられた者の心が繋がってるはずだから・・・」
アステルは、そうミナギに話した。
「でも、嬉しいよ。大切な人がカイトだったなんて・・・」
ミナギは少し涙目で話した。
「でも・・・どうすればカイトを救えますか?・・・このままじゃカイトは・・・」
「フォーゥ・・・」
2人の話を聞いていたフォーが心配そうに近付いてきた。
「フォーちゃん・・・」
「・・・1つだけある。カイトを救う方法が」
アステルは少し重い口調で話した。
「えっ・・・?」
ミナギは驚いてアステルに聞き返した。
「今朝まで、本で調べてようやく見つかった・・・」
「どうすればいいんですか?」
ミナギはすがる思いでアステルに聞いた。
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「願いを叶えてもらった者が・・・願いを叶えた者に口伝いに願いを返す事・・・」
「それは・・・キスをするって事ですか?」
ミナギはその光景を思い浮かべて、少しだけ顔が真っ赤になった。
「形としてはそうだが、キスとは違う。人工呼吸・・・つまり命を吹き返す行為と同じ事をする事・・・1つの願いでも、カイトに返れば救う事が出来るだろう」
「カイトは助かるんですね・・・」
「フォー♪」
ミナギとフォーは少しだけほっとした。
「だが・・・」
アステルは一息置いて話を続けた。
「願いを返した者は・・・”願い”とゆう支えを失い・・・やがて、消滅する」
「え・・・」
ミナギはアステルの言葉に唖然とした。
「そっ、そんなのって・・・」
「今は、他に方法は無い・・・」
ミナギは言葉が出てこなかった。
「フォーゥ・・・」
そんなミナギを見て、フォーはミナギの頬に擦り寄った。
「フォーちゃん・・・」
「他の方法が見つかるまでは・・・この薬で何とか保たせるしかないが・・・」
アステルは、そう言ってミナギに薬を手渡した。
「もう・・・薬で誤魔化すのは限界だろう・・・後はお前達で決めるしかない・・・」
アステルは、ミナギとフォーに背中を向けて話した。
「もう・・・行きなさい」
「ありがとう・・・ございました」
ミナギとフォーは急ぎ足でカイトの家に向かった。
・・・・・・。
バサッ、バサッとフォーはゆっくりとカイトの家の前で降りた。
「待っていてフォーちゃん・・・」
ミナギは駆け足で玄関前に行った。
「カイトー、いるのー?」
ミナギは扉を叩きながらカイトの名前を呼んだが、反応が無かった。
「カイト・・・どこに行ったの?」
ミナギは途方に暮れた。
もしかしたら、入れ違いでアステルの所に戻っているのかもと思った・・・
かさっ。
「えっ?」
ミナギが戻ろうとした時、紙が落ちたような音がした。
「これは・・・」
ミナギは落ちた紙を広げてみた。
『ミナギへ
ミナギを救った大切な人が俺だったって事・・・今まで忘れていたよ。
ミナギには何度謝っても、許してもらえないかもしれないね。
本当に、ごめんね。
もう俺の体は保ちそうに無いから、せめて、あの時の約束した事だけは守るから。
もし、この手紙を読んだら来てほしいんだ。
約束の場所へ・・・
カイト』
紙切れの中身はミナギへの手紙だった。
「カイト・・・」
ミナギは手紙を読み終えて、涙を零していた。
「・・・っ!」
ミナギは駆け足でフォーに寄った。
「フォー?」
「フォーちゃんお願い、今すぐ私を連れて行って!カイトと約束した・・・場所へ」
ミナギは泣きながらフォーにお願いした。
「フォー!」
フォーはミナギを背中に乗せて飛び立った。
「カイト・・・」
「フォー!」
フォーはミナギの話した場所・・・町外れの大きな森に向かった。
お願い、どうか・・・間に合って・・・
・・・・・・・・・。
同じ頃、カイトは森の真ん中辺りを歩いていた。
「もう少しで・・・あの場所に」
カイトは、足元をふらつかせながら奥の方にある大きな木を目指していた。
カイトの手には約束の日に渡す為に買った黄色いリボンの入った包み紙を持っていた。
「はぁ・・・はぁ・・・」
少ししてカイトは胸が苦しくなってきたので、ポケットに入ってる薬を飲んだ。
「うっ!」
・・・飲んだ瞬間、嘔吐したくなる気持ちに襲われすぐに吐き出してしまった。
「ああぁ・・・」
カイトは辛くなって地面に座った。
「あはは、もう薬も効かないや・・・」
カイトは涙を落としながら、再び立ち上がって歩き始めた。
その時に持っていた薬はその場に捨てた。
「体・・・保つかなぁ・・・?」
カイトの視界は不安定になっていた。
・・・・・・。
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その頃、ミナギとフォーはようやく森の入り口まで辿り着いた。
「うっ・・・」
ミナギはすぐにフォーから降りて走って行った。
「カイトー!」
辺りはまだ昼間を過ぎたばかりなのに、薄暗く足場も少し不安定だった。
でも、今のミナギには怖いとゆう感覚は無かった。
ただ、カイトに早く・・・
「あっ・・・」
ふと、ミナギはビンのようなものが落ちてるのを見かけた。
「このビンは・・・」
ミナギは落ちていたビンを拾ってみると、カイトの持っていた薬と気が付いた。
「カイト・・・」
ミナギは薬のビンをポケットに入れて、再び走り始めた。
「ううっ・・・」
ミナギは涙を堪えながら大きな木を目指した。
・・・・・・――
「約束だよ・・・ミナギ」
「うん、約束だね・・・カイト・・・」
――・・・・・・
ミナギは走りながら、あの時の事を思い出していた。
「あっ・・・」
ミナギは途中で木の根に躓いて転んだ。
「痛いよ・・・」
足を擦ってしまい、膝から血が滲んできた。
「カイト・・・」
ミナギはすぐに起き上がったが、足を挫いてしまい走れなかった。
・・・・・・。
足を引きずりながら、ようやく大きな木の近くまで辿り着いた。
「・・・カイト」
ミナギは大きな木の下で、座り込んでいるカイトを見つけた。
「・・・」
光が空中を舞っている場所・・・あの時と同じ風景だった。
ミナギは足を引きずりながらカイトの前に立った。
「カイト・・・」
「・・・」
カイトは、首を下に向けたまま動かなかった。
「カイト・・・私、来たよ。あの時の約束を守りに・・・大分時が経っちゃったけど・・・」
「・・・・・・」
「お願いだから目を開けて、カイト・・・悪い冗談はやめて・・・」
ミナギはカイトに近付いて触れると、信じられない程の冷たさに襲われた。
「あっ!」
その反動で、カイトが持っていた包み紙が落ちた。
ミナギがその包み紙の中身を見ると、黄色いリボンと一枚の紙切れが入っていた。
その紙には「ごめんね」の一行だけが書かれてあった・・・
「ぐすっ・・・ううっ・・・」
ミナギは黄色いリボンを握り締めて、カイトの側に寄った。
カイトの体は触れる事が辛い程に体温が下がっていた・・・でも、ミナギはカイトを抱き寄せた。
「やだ・・・やだっ・・・やだよ・・・」
「・・・・・・」
「嫌だぁー!!」
ミナギは、動かないカイトを抱き寄せながら泣き叫んだ。
「私の、大切な人・・・置いて行かないで・・・」
ミナギの涙の粒が、カイトの手の上に落ちた。
「・・・・・・」
その時、ミナギは心の中で決心した。
「えへへ・・・本当は私、ここにいるはずのない人間・・・カイト・・・私、カイトに出会えて良かったよ・・・だから・・・」
ミナギはカイトの口に唇を近付けた。
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(だめぇー!)
「えっ?」
ミナギは不意に誰かに呼び止められたと思ったら、急に宙に舞ったような感覚に落ちた・・・・・・
どさっ。
「・・・痛いよ」
ミナギは気が付くと、カイトのいた場所から少し離れた場所に倒れていた。
ミナギは何が起きたのか分からずに起き上がってみると、目の前にフォーが立っていた。
「フォー!」
「フォーちゃん・・・?」
ミナギがフォーの顔を見ると、涙を浮かべてるように見えた。
「フォーちゃん・・・どうして?」
ミナギがフォーに近付こうとした時、フォーは空に向かって鳴き始めた。
「フォーゥ・・・フォー!」
フォーが鳴き続けると、段々とフォーの体が光り始めた。
「わっ!」
そのあまりの眩しさにミナギは目を伏せた。
・・・・・・。
やがて、光が弱くなって・・・
ミナギが顔を上げるとそこにはフォーの姿は無く、小さな女の子が立っていた。
「え・・・?」
その女の子は笑顔でミナギに話し掛けた。
「えへ・・・良かった。やっと、人の言葉が話せるよ・・・」
淡い青色の髪の毛・・・優しい目・・・
黄色いマフラー・・・
「フォーちゃん・・・なの?」
ミナギは、人間の女の子になったフォーの姿を見て驚きの余り呆然としていた。
「ごめんね、ミナギ・・・突き飛ばしたりして・・・」
人間の女の子になったフォーは、涙を浮かべながらミナギに話した。
「フォーちゃん・・・」
「でも・・・ミナギは消えちゃだめだよ・・・消えるのは・・・私1人でいいから」
「え・・・?」
ミナギにそう話して、フォーはカイトに近付いた。
「フォーちゃん?そんな、待って・・・いっ!?」
ミナギはフォーの側に行こうとしたが、足を挫いていて歩けなかった。
「カイト・・・私への願い・・・カイトに返すね」
フォーはカイトにそう言うと、カイトの唇を合わせた。
「あっ・・・」
ミナギはようやく歩けるようになった時、フォーの体が再び光り始めた。
「・・・っ!?」
あまりの眩しさに、ミナギはまた目を伏せた。
・・・・・・。
やがて、光が消えてミナギが顔を上げると目の前にはカイトだけ横たわっていてフォーの姿はどこにも無かった。
「フォーちゃんー・・・」
ミナギはフォーの名前を叫んだが、返事は返ってこなかった。
・・・・・・。
「・・・・・・う」
「あっ・・・」
「えっ・・・ミナギ?」
「カイトー!」
ミナギは気が付いたカイトを泣きながら抱き寄せた。
「ぐすっ・・・カイト・・・良かったよ・・・目を開けてくれて・・・」
「俺・・・生きてるのか・・・?」
カイトはまだ意識が曖昧でよく状況が分かっていなかった。
「カイト・・・助かったんだよ・・・フォーちゃんのおかげで」
「フォーが・・・」
光がふわふわと浮かんでいる風景を見ながらカイトは話した。
「ミナギ・・・フォーは?」
カイトが辺りを見渡すと、フォーの姿が無かった。
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「・・・・・・」
「ミナギ?」
カイトにそう聞かれてミナギは、涙目で話し始めた。
「カイト・・・落ち着いて聞いてほしいの・・・」
「ミナギ・・・?」
・・・・・・。
「・・・そうなんだ・・・フォーが・・・」
「・・・うん」
一通り話を終えて、カイトとミナギは呆然としていた。
「フォーにはもう・・・会えないのかな・・・?」
「私、もう・・・何が何だか・・・」
2人は一度に力が抜けたかのように動く気力を無くしていた。
「もう一度だけ・・・会えるなら・・・」
カイトは叶わぬ願いと分かっていた。
フォーは俺の為に・・・
自分の中の願いを、俺の中に返して・・・
そして、フォーは・・・消えてしまった・・・
空を見ながら、カイトは行き場の無い思いを募らせた。
「・・・ォーゥ・・・」
「えっ?」
カイトはふと、フォーの泣き声が聞こえたような気がした。
「どうしたの?カイト・・・」
「今、フォーの声がしたような・・・」
カイトにそう言われてミナギは耳をすませてみたが、何も聞こえなかった。
「私には何も聞こえないけど・・・」
気のせいかとカイトは思った・・・
「フォーゥ・・・」
今度ははっきりと聞こえた、その時にミナギも気が付いたようだった。
「カイト・・・今、私にもフォーちゃんの声が・・・」
「うん、行ってみよう」
「うん・・・あっ!」
「どうしたの?ミナギ」
ミナギはついさっきまで、自分が足を挫いていた事を忘れていた。
その痛さで思わず足を押さえた。
「大丈夫?ミナギ」
「大丈夫・・・ちょっと足が痛いだけだから・・・」
ミナギはそう言って歩こうとしたが、歩く事さえ辛そうな感じだった。
「無理しないで・・・ミナギ」
「あっ・・・」
カイトはそう言って、ミナギをおんぶした。
「痛くない?ミナギ・・・」
「え・・・う、うん・・・」
ミナギは少しだけ恥ずかしかったが、温かくなったカイトの体温に少し安心していた。
・・・・・・。
「温かいね・・・カイトの体」
「俺はちょっと熱いかな・・・」
「今までが冷たかったんだよ・・・」
カイトは少し照れながら、フォーの声がする方へ歩いていった。
・・・・・・。
少し歩いて、霧が濃くなってきた辺りまで辿り着いた。
「フォーゥ・・・」
フォーの声がはっきりと聞こえてきた。
「前が・・・見えないや」
この先にフォーがいるのは間違いなかったが・・・
まるで、フォーの姿を隠すかのように霧が出ていた。
「ミナギ・・・しっかり掴まってて」
「うん・・・」
カイトは霧の中へ入ろうとした時、一瞬だけ暗闇に包まれた・・・
「あれ・・・?」
気が付くと、さっき立っていた場所に戻っていた。
カイトはもう一度、真っ直ぐに歩いて霧の中に入ったがまた同じ場所に戻っていた。
「何で・・・入れないんだ?」
フォーの声が悲しく霧の中で響いていた。
「フォー!俺達はここにいるよー!」
「フォーちゃん!」
カイトとミナギがフォーの名前を呼んでも、姿を見せる事は無かった。
まるで・・・入る者を拒むかのように、目の前の霧が濃くなっていった。
「どうしたらいいんだよ・・・?」
カイトは途方に暮れた。
「・・・カイト」
その時、背中からミナギが話してきた。
「えっ?どうしたのミナギ・・・」
「私、ここで待ってるから・・・カイト、行って来て」
「それは出来ないよ・・・こんな所にミナギを置いて行くなんて」
カイトはそうミナギに言うと、ミナギは首を横に振った。
「大丈夫だよ、カイトは必ず戻ってくるって信じてるから。だって、私達の心は繋がっているんだもの」
ミナギは、はっきりとした口調でカイトに話した。
「ミナギ・・・」
「それに、今のフォーちゃんの心を繋ぎ止められるのはカイトだけだって思うから」
ミナギは笑顔で、でもどこか背中を押してくれるような強さを持った声でカイトに話した。
「・・・分かったよ、ミナギはここで待ってて。必ず戻ってくるから・・・」
カイトは、ミナギをそっと腰掛けられそうな場所に下ろしてから霧の中に入った。
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・・・・・・。
「フォー!」
どこまで行っても真っ白くて濃い霧だけが辺りを包んでいた。
「フォー!いたら返事してくれー!」
どれくらい歩いたのだろうか・・・?
霧の中に、うっすらと人影のようなものが映った。
「誰かそこにいるの?」
「・・・カイト?」
どこかで聞いた事のある声・・・ミナギからフォーは人間の女の子になって助けてくれたと話を聞いていたカイトはもしかしたらと思い、名前を呼んだ。
「・・・フォー、なのか?」
「カイト・・・なんだね?」
「待ってて、今行くから」
カイトは人影の見える方へ走って行った。
やがて、ミナギより少しだけ背丈の小さい女の子の姿がはっきりと見えた。
「君は・・・フォーなんだね?」
「カイト・・・来てくれたの?」
フォーは、カイトの声が近くにある事が分かって笑顔になった。
「良かった・・・もう会えないんじゃないかって・・・」
「カイト・・・どこにいるの?・・・見えないよ」
フォーは声のする方に手を伸ばしてるが、まるで視点が合っていなかった。
「フォーお前、まさか目が・・・」
「えへへ・・・そうみたい」
フォーは涙を浮かべながらカイトに話した。
「フォー、俺が近付くからじっとしてて」
「うん・・・」
カイトは、ゆっくりフォーに近付いてフォーの肩に触れた。
「えへ、カイト・・・」
フォーはゆっくりと、カイトに身を委ねた。
「フォー、俺を助ける為に・・・ごめんね」
カイトはそうフォーに言うと、フォーは首を横に振った。
「私・・・嬉しかったんだよ。あの時、カイトに助けてもらった時から・・・いつか恩返しが出来たらって・・・こうしてカイトが助かって嬉しいんだよ・・・私」
フォーは視点の合わない目でカイトを見ながら話した。
「フォーだったんだよね?・・・夜にフォーと話して俺が眠った時に「大丈夫だよ」って言ってくれたのは・・・それに、俺が夢の中で誰かに連れて行かれそうになった時も必死に呼び止めてくれたのも・・・フォーだったんだよね?」
「うん・・・言葉が話せなくてあんな形でしかカイトと話出来なかったから・・・」
「ありがと・・・フォー」
カイトはフォーの頭を優しく撫でた。
「えへへ・・・カイトの手・・・優しいね」
「フォー、後どれくらいここにいられる?」
「・・・分からないよ。私はもっとカイトの側にいたいよ・・・」
フォーはそっと、カイトの背中に手を回した。
「私、夢だったんだよ・・・人間になって沢山おしゃべりしたいって・・・カイト、私どんな人間に見えるかな?」
フォーは、少し涙交じりの声で話した。
「とても・・・かわいいよ。背はミナギよりも少し小さいけれどその優しい目・・・とても綺麗な髪だよ」
「ありがと・・・カイト」
出来る事なら・・・いつまでもこうしていたい・・・
でも・・・いつまでもフォーがここにいられないのは分かってるから・・・
だって、もう・・・
消えてしまったはずの・・・命なのだから・・・
こうして、フォーと話が出来た・・・それだけで・・・
「あっ・・・」
「どうした、フォー?」
「もう・・・私、ダメみたい・・・」
フォーは、悲しい声でカイトに話した。
「行ってしまうのか?」
「うん・・・こうしてカイトと話が出来て幸せだよ・・・」
カイトは、フォーの体が段々と軽くなってゆくのが分かった。
もうすぐ、消える・・・
「フォー、ごめんな・・・お前を助けるどころかこんな形で別れる事になってしまって・・・」
「・・・もう、そんな事言わないで、カイト。私、カイトのおかげでカイトのお母さんやミナギにも会えたから。もう会えなくなるのは淋しいけれど・・・」
「フォー!」
カイトはフォーを強く抱きしめた。
まるで、小さな子供が親と離れたくなくて必死に抱きつくように・・・
「カイト・・・少し痛いよ」
「離したらフォーが消えてしまいそうだから・・・」
「えへへ・・・」
フォーは少し恥ずかしそうにカイトの胸に顔を寄せた。
「・・・ねぇカイト、私のお願い聞いて」
「どんな願いなの?こんな俺に出来る事なら・・・」
「私と・・・キスして」
フォーは、頬を少し赤く染めて言った。
「えっ!?」
フォーの言葉に、カイトは少し焦った。
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「えへっ、私の最後のお願いだよ・・・」
「・・・・・・」
カイトはゆっくりと自分とフォーの唇を合わせた。
カイトはとても恥ずかしい気持ちになっていたが、フォーの最後の願い・・・叶えてあげたかった。
「えへっ・・・」
フォーはとても嬉しそうな顔をした。
「・・・・・・」
カイトはどこか言葉に困っていた。
「私、忘れない。空の上でカイト達を見ているから」
「俺も・・・フォーがいた事を心の奥に刻んでおくよ」
「・・・・・・」
フォーの体が静かに消えてゆく・・・
「フォー!」
「ありがと、私の好きな・・・カイト」
「あっ・・・」
白い霧に混じってゆくように・・・
フォーは俺の前から、姿を消した・・・
・・・・・・。
「あっ・・・」
カイトを待っていたミナギの目の前の霧が晴れてゆき、ぽつんとカイトが姿を現した。
「カイト・・・」
「・・・・・・フォー・・・」
カイトは空を見上げていた。
フォーが行ってしまった空を・・・
「カイト・・・」
ミナギはそんなカイトを見て、今はそっとしておこうと思った。
・・・・・・。
それからカイトは、ミナギをおんぶして笑いながら色々な話をした。
今だけは、悲しい気持ち・・・消えていて・・・
そう、心の中で願いながら・・・
・・・・・・。
「ミナギ、足は本当に大丈夫?」
「大丈夫だよ。さっきより大分痛みは引いたから」
2人は、ミナギの家まで辿り着いていた。
辺りはもうすっかり日が沈みかけようとしてる所だった・・・
「うん、じゃっ、明日学校で・・・」
「あっ、待って・・・」
ミナギに引き止められたカイトは、わっと振り向いた。
「え?どうしたのミナギ・・・」
「色々あって、言うのを忘れてたよ・・・」
ミナギはそう言って、ポケットからリボンを取り出した。
「あっ・・・」
「カイト、ありがとね。似合うかどうか分からないけど今度、着けてくるね」
ミナギは、カイトから受け取った黄色いリボンを両手で大事そうに持った。
「大分前に買ったものだったから、ちょっとだけ痛んでるかもしれないけど・・・」
「ううん、凄く嬉しいよ」
互いに照れながら、2人は別れた。
・・・・・・。
カイトは家に戻り、自分の部屋のベッドに腰掛けた。
「・・・・・・」
カイトは今までの事を振り返った・・・
「・・・うっ・・・」
カイトは目の上にこみ上げてくるものを我慢していたが、手の上に落ちたものを見た瞬間、カイトは泣いていた。
「うっ・・・ううっ・・・わぁー!」
今まで抑えていたものが一度に零れるように・・・。
あれからカイトは呆れるほどに・・・もう涙は出ないんじゃないかとゆうくらいに泣き叫んだ。
すっかり泣き疲れて眠ったのはそれから1時間後だった。
・・・・・・・・・。
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「ふぁ~・・・」
翌朝、軽く朝食を食べて学校へ向かった。
今朝、鏡を見たら自分の顔かと疑う位に目の辺りが腫れていたが、何とか持ち直した・・・はずだとカイトは無理矢理言い聞かせた。
「カイトー」
後ろから名前を呼ばれて振り向くと、シンジがいつもの元気な声でカイトに駆け寄った。
「やっシンジ、この前はごめん・・・」
「いや、お前がそうやって元気になって出てきただけで・・・」
シンジがそう言いかけて、話が止まった。
「カイト・・・お前目が凄い腫れてるぞ・・・大丈夫か?」
「はは・・・ちょっとね・・・」
カイトはそそくさと先を急いだ。
「あっ、おいっ待てって・・・」
「急がないと遅刻するぞー、シンジ」
「まだ大丈夫だっての・・・待てって・・・」
カイトは逃げるように学校へ向かった。
・・・・・・。
カイトにとって三日ぶりの学校は、前よりも楽しいものになっていた。
生きてる事がこんなにも楽しいと素直に思えた。
今までの胸の苦しみを隠し通す辛さからやっと、解放されたんだとカイトは心から思った。
・・・・・・・・・。
キーン、コーン・・・
お昼の時間になり、皆それぞれの場所へ向かった。
「カイトー、学食へ行くか?」
「ああ、今行くから・・・」
カイトとシンジは学食へ向かった。
シンジからは、あの時に何があったのかきっちりと話してくれと言われてカイトは苦笑いしながら答えた。
学食は相変わらずの賑わいだった。
カイトはランチを食べながら、休んだ間の事の話をシンジに話していた。
「まぁ、それで・・・」
「そっか・・・」
少しして・・・
「カイトー」
話してる後ろからミナギがカイトを呼んだ。
「や、ミナギ」
「えへへ♪」
2人のやり取りをみてシンジはまた、にやけ笑いをした。
「ほほぅ・・・相変わらず仲が良いですな・・・」
いつものようにシンジは2人をからかった。
「えへ、そう見える?」
そうミナギは言って、カイトの腕に抱きついた。
「わっ!ミ、ミナギ?」
予想してなかったミナギの行動にカイトは少しびっくりした。
「お前たち・・・あの時に何があったんだよ?」
今までと全然違う、ミナギの積極的な行動にシンジも驚いていた。
「えへ、内緒♪」
ミナギはそう言いながら、カイトの腕を引っ張った。
「カイト、私と一緒に行こう、ね♪」
「ちょ、ちょっと、ミナギ、行くってどこへ・・・わっ」
ミナギに引っ張られるように、カイトは席を立った。
「ちょっと、まだお昼終わってないって・・・」
カイトは、ミナギとさっきまでシンジと座っていた席を交互に見ながら学食を後にした。
そのやり取りに周りが少しざわついていた・・・
その様子をシンジはただ呆然と見てるしかなかった。
#9「冬始~ふゆのはじまり~」end.
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やがて・・・
季節は巡り、春を迎えた。
ミナギは2年生、カイトは3年生になり、大学の受験を受けて何とか合格の通知をもらった。
4月から通う大学はここから少しだけ遠かった。
「ふぅー・・・」
カイトは草の上に仰向けになった。
「・・・・・・」
カイトは空を見上げた。
そして、空を見るたびに思い出していた。
あの・・・
「カイト」
「わっ!」
ミナギが急に顔を覗かせて、カイトは思わずびっくりした。
「何だよミナギ・・・驚かすなよ・・・」
「くすす、カイトがぼーっとしてるからだよ」
ミナギは悪戯っぽく笑った。
「全く・・・」
カイトは、半ば呆れ気味に返した。
「卒業おめでと、カイト」
「ありがと、ミナギ」
「何か、淋しそうだね」
ミナギはカイトの横に座った。
「まぁね、初めてこの町から離れるからかな・・・?」
「あっ、そっか・・・カイトの通う大学ここじゃないんだね・・・」
ミナギは少し淋しくなった。
「医者になるのが夢だから・・・受けるなら医療の事がちゃんと学べる大学にしようって・・・」
カイトはそうミナギに話した。
「でも凄いよカイト、本当にやりたい事に少しずつ近付いてるんだもん」
「まだまだなんだけどね・・・」
カイトは遠慮がちに言った。
「私は・・・どうしようかな?」
カイトの話を聞いて、ミナギは何がやりたいのか改めて考えてみた。
「まだ、何がやりたいのか決まってないんだ・・・」
「うん・・・」
「ミナギが一番興味ある事をやればいいんじゃないかな・・・?」
カイトにそう言われて、ミナギは考えてみた。
「私の興味ある事は・・・」
ミナギは少し考えて・・・
「お料理・・・かな?おいしい料理を作って皆を喜ばせたいな・・・」
ミナギは笑顔でカイトに答えた。
「いいと思うよ。まっ、ただ・・・もう少し上手に作れるようにならないと・・・」
「あー、カイトひっどーい・・・これでも頑張ってるよ、私は」
カイトの言葉にミナギは少し拗ねていた。
「そうだね、家で母さんと懸命に料理の勉強を頑張ってるもんな・・・調味料を間違える事をあまりしなければ・・・」
カイトはこの前の事をネタにした。
「あれは・・・その・・・うー・・・意地悪・・・」
ミナギはいじけて顔を伏せた。
「はは、ごめんミナギ」
カイトは、ミナギを宥めるようにそっと頭を撫でた。
「えへへ・・・」
「ミナギも頑張れば出来るよ、きっと」
「うん、頑張るね私!」
ミナギの心からの笑顔を見てカイトは安心した。
「もう、カイトとはあまり会えなくなっちゃうね・・・」
ミナギは、カイトに淋しそうに言った。
「なるべく週末には帰るようにするよ。俺もミナギに会えないのは淋しいし・・・まぁ遠いっても駅から5駅位だけどね」
「私も、カイトの所へ遊びに行くね」
「うん、待ってるよ」
・・・風が心地よく草木を揺らしていた。
2人はその風の心地よさに身を委ねていた。
「思い出すなぁ・・・あの原っぱでミナギに会った時の事・・・」
「私が大切な人に会いたいって空に願いをかけていた時だね・・・」
カイトとミナギは、丘からあの草原を見ていた。
「うん、あの時は初めて会ったはずなのに初めてじゃないって、そんな気がしてたんだ・・・まぁ、ミナギのおかげで初めて会った時の記憶を戻したけどね」
カイトは温もりを取り戻した胸に手を当てながら話した。
「うん・・・私、空に願いをかけて良かったって思うよ。こうして再び会う事が出来たんだし」
ミナギはカイトの左手を握った。
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この町には沢山の思い出が・・・
ハルやシンジ達との出会い・・・
ミナギと出会い・・・フォーと出会い・・・
辛かった事も、悲しい事も、楽しかった事も・・・
みんな、この町に一杯詰まってる。
きっと、これからも・・・
「カイト・・・」
ミナギにそう言われてカイトが振り向くと・・・
「あっ・・・」
「・・・・・・」
ミナギの突然のキスにカイトは言葉を無くした。
「ミナギ・・・えっと・・・」
「えへへ・・・この前のお返し♪」
ミナギは悪戯っぽくカイトに微笑んだ。
「あ・・・・・・」
この前の事・・・
大学の合格通知が来たその日の週末にカイトがミナギを遊びに誘った時・・・つい・・・
「あ、っと・・・・・・」
カイトはその時の事を思い出して、顔が赤くなりそうだった。
「くす、カイト、顔が真っ赤だよ・・・」
ミナギにそう言われてカイトは「ほっとけ」と、笑って誤魔化した。
少し、空を見上げて・・・
「フォーは見ているかなぁ・・・?」
カイトは空を見上げながらミナギに話した。
「うん、きっと見てるよ」
ミナギも笑顔で話した。
「フォーが消えた日、信じられない位に涙が止まらなくなって・・・男のくせにみっともないって思ってても・・・」
カイトは、あの時の事を思い返し、少しだけ顔を伏せた。
「それはカイトがとてもフォーちゃんの事を大事に思っていたからだよ・・・男だからって泣いちゃいけない事はないよ」
「俺はフォーを助けるどころかあんな形で・・・フォーに余計辛い思いをさせた・・・」
カイトは悲しげに話した。
「カイト・・・フォーちゃんと別れた時・・・笑顔だったよね?」
カイトは静かに頷いた。
「フォーちゃんはとても幸せだったと思うよ。そうじゃなかったら、カイトの為に願いを返す事はしなかったと思うし・・・」
「・・・・・・」
ミナギの話に、カイトは何も言わずに聞いていた。
「それに、私がカイトに願いを返そうとした時にフォーちゃんに止められて・・・フォーちゃんに言われたの・・・ミナギは消えちゃダメだよって・・・」
「えっ!?」
ミナギのその話に、カイトは思わず驚いた。
「私の為にカイトが代わりに消えてしまうのが嫌だった・・・大切な人がカイトだって分かっただけでも私は嬉しかったから・・・」
ミナギは、その時の思いをカイトに打ち明けた。
「ミナギ・・・ごめんな、俺がやった事でミナギにも苦しい思いをさせてしまって・・・」
カイトは、ただミナギに謝った。
「誰もカイトのせいなんて思ってないよ。皆、そのカイトの優しさに救われたから・・・私だって・・・本当はもうここにはいないはずの人間だったはずだし・・・」
ミナギは涙を溜めながらカイトに話した。
「ミナギ、俺・・・」
「ただ、これだけは約束してほしいよ・・・命と引き替えにしてまで他の生き物や人達を助けたりしないでって・・・私、カイトがいなくなったら・・・」
ミナギは話し終えると、涙を誤魔化すようにカイトの左腕に顔を寄せた。
「分かったよ・・・もう、無理してまで命を救ったりはしないよ」
カイトはそっと、ミナギと指切りを交わした。
あの時の約束のように・・・
・・・・・・。
カイトとミナギは、自然と口付けを交わしていた。
これで3度目のキス・・・
でも、恥ずかしそうに交わした初めてのキスよりも体の中にまで温もりが伝うようだった。
フォーのいる空に、約束するよ・・・
俺はミナギに・・・悲しい思いはさせないと・・・
1つの・・・願いを乗せて・・・・・・。
「灰色の願い事~lost color of wish~」fin.
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本作品は最初、携帯用ブログサイト「Manblog」(05年11月にサイトオープン)にて、
05年11月~06年03月まで連載していたものを加筆、修正を加えて再編成したものです。
ちなみに元記事は08年9月26日の閉鎖で全て消えてしまいましたが・・・。
携帯ブログで書いていた当時は、1つの記事の文字数制限(500文字まで)や、当時の表現力の弱さもあって中々恥ずかしい部分もあったのですが・・・
改めて原稿に書き下ろしてみて、当時では表現できなかったハルやシンジのかけがえの無いやり取りのシーンも増加できて良かったって思ってます。
最初は、頭の中の妄想だけで作っていた物語が・・・
こうして1つの作品として表現できたとゆうだけで気持ちはいっぱいです。
いつになるかは分かりませんが、この「灰色の願い事」に関連したもう1つの長編モノも1つの形として生み出したいと思ってます。
その時まで。また><
05‘11~06‘03 (初出 Manblog
08‘07~08‘11 (改版 by Timo.(ティモ)
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