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#9「冬始~ふゆのはじまり~」12

「お願い、私の事はほっといて」

小さい頃のミナギは冷たく男の子に言った。

「ううん、泣いてる女の子をほっとけないよ」

男の子は首を横に振って、小さい頃のミナギに話した。

「いいからほっといて・・・私、もうすぐ消えちゃう命だから・・・」

私・・・

「ここで待ってて、良い物持ってくるから」

男の子は小さい頃のミナギにそう言って、どこかに駆けてった。

「え・・・・・・」

小さい頃のミナギはただ、呆然としていた。

少しして、男の子が手に何かを持って戻ってきた。

「はい、ここのアイス凄くおいしいんだよ。これを食べて元気を出して」

男の子は、買ってきたアイスを小さい頃のミナギに手渡した。

「・・・ううっ!」

小さい頃のミナギは、男の子の差し出したアイスを手で払い除けた。

そのアイスは地面に落ちてしまった。

「あっ・・・」

「何で・・・私に構うの?私・・・死んじゃうんだよ?・・・もうすぐここからいなくなっちゃうんだよ?」

小さい頃のミナギは、顔を伏せたままで痛々しい声で男の子に言い放った。

私・・・酷い事、しちゃったね・・・

その様子を見ていた今のミナギは、見ていられなくなり目を反らしていた。

少しして、男の子が手に持っていたアイスを地面に落とし、小さい頃のミナギに話し始めた。

「君に、笑ってほしいんだ。君がいつまでも泣いてたら・・・周りの人まで悲しくなっちゃうよ・・・俺はただ、君の笑顔が見たい・・・ダメ・・・かな?」

「あっ・・・」

小さい頃のミナギが男の子の顔を見ると、涙を流しながら男の子が話していた。

こんな私でも・・・笑って、いいのかな・・・?

気が付けば、小さい頃のミナギは男の子の胸の中で泣いていた。

その様子を遠くから見ていた今のミナギの幻影も、あの頃を思い出して涙目になっていた。

それから・・・毎日、ここの噴水で小さい頃のミナギと男の子は待ち合わせをした。

2人で祭りを見たり、見た事の無い場所へ行ったりおいしいアイスや食べ物を食べたり・・・

本当・・・楽しかった・・・

男の子の顔は、ぼやけていて分からなかったが・・・あの頃の2人の飾りのない笑顔を見て、今のミナギも自然と笑顔になっていた。

でも・・・楽しい時は長くは保たなかった。

心からの笑顔になっていた明くる日の朝に、ミナギは高熱を出した。

「ミナギ、しっかりして!」

「えへへ・・・」

小さい頃のミナギは男の子に何かを言いたかったが、熱で喋る事が出来なかった。

・・・・・・・・・。

私、この時・・・

やっと、楽になれるって・・・

これで、お父さんとお母さんに会えるって・・・思って・・・

「ミナギ・・・ミナギ・・・」

男の子やエリ、お医者さんが見守る中、小さい頃のミナギは、男の子に何かを伝えたいようだった・・・

「何、ミナギ?」

男の子は泣きそうになりながら聞いたけど、熱で声を出すのが辛かった小さい頃のミナギは話す事が出来なかった。

君に・・・ありがとうって・・・言いたかったんだよ・・・

側で見ていた今のミナギの幻影は、男の子にそっと話し掛けた。

「・・・・・・・・・っ!」

少しして、男の子が急に席を立った。

「君を死なせない・・・君の笑顔が見たいから」

男の子は小さい頃のミナギにそう伝えて、病室を出て行った。

小さい頃のミナギは笑顔で見送る事しか出来なかった・・・。

あの時は・・・無理だよ、でも・・・ありがとう・・・

その気持ちだけで・・・って・・・

そして、辺りが暗くなり始め病室には小さい頃のミナギが1人で窓から景色を眺めていた。

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