#9「冬始~ふゆのはじまり~」18
「・・・・・・」
「ミナギ?」
カイトにそう聞かれてミナギは、涙目で話し始めた。
「カイト・・・落ち着いて聞いてほしいの・・・」
「ミナギ・・・?」
・・・・・・。
「・・・そうなんだ・・・フォーが・・・」
「・・・うん」
一通り話を終えて、カイトとミナギは呆然としていた。
「フォーにはもう・・・会えないのかな・・・?」
「私、もう・・・何が何だか・・・」
2人は一度に力が抜けたかのように動く気力を無くしていた。
「もう一度だけ・・・会えるなら・・・」
カイトは叶わぬ願いと分かっていた。
フォーは俺の為に・・・
自分の中の願いを、俺の中に返して・・・
そして、フォーは・・・消えてしまった・・・
空を見ながら、カイトは行き場の無い思いを募らせた。
「・・・ォーゥ・・・」
「えっ?」
カイトはふと、フォーの泣き声が聞こえたような気がした。
「どうしたの?カイト・・・」
「今、フォーの声がしたような・・・」
カイトにそう言われてミナギは耳をすませてみたが、何も聞こえなかった。
「私には何も聞こえないけど・・・」
気のせいかとカイトは思った・・・
「フォーゥ・・・」
今度ははっきりと聞こえた、その時にミナギも気が付いたようだった。
「カイト・・・今、私にもフォーちゃんの声が・・・」
「うん、行ってみよう」
「うん・・・あっ!」
「どうしたの?ミナギ」
ミナギはついさっきまで、自分が足を挫いていた事を忘れていた。
その痛さで思わず足を押さえた。
「大丈夫?ミナギ」
「大丈夫・・・ちょっと足が痛いだけだから・・・」
ミナギはそう言って歩こうとしたが、歩く事さえ辛そうな感じだった。
「無理しないで・・・ミナギ」
「あっ・・・」
カイトはそう言って、ミナギをおんぶした。
「痛くない?ミナギ・・・」
「え・・・う、うん・・・」
ミナギは少しだけ恥ずかしかったが、温かくなったカイトの体温に少し安心していた。
・・・・・・。
「温かいね・・・カイトの体」
「俺はちょっと熱いかな・・・」
「今までが冷たかったんだよ・・・」
カイトは少し照れながら、フォーの声がする方へ歩いていった。
・・・・・・。
少し歩いて、霧が濃くなってきた辺りまで辿り着いた。
「フォーゥ・・・」
フォーの声がはっきりと聞こえてきた。
「前が・・・見えないや」
この先にフォーがいるのは間違いなかったが・・・
まるで、フォーの姿を隠すかのように霧が出ていた。
「ミナギ・・・しっかり掴まってて」
「うん・・・」
カイトは霧の中へ入ろうとした時、一瞬だけ暗闇に包まれた・・・
「あれ・・・?」
気が付くと、さっき立っていた場所に戻っていた。
カイトはもう一度、真っ直ぐに歩いて霧の中に入ったがまた同じ場所に戻っていた。
「何で・・・入れないんだ?」
フォーの声が悲しく霧の中で響いていた。
「フォー!俺達はここにいるよー!」
「フォーちゃん!」
カイトとミナギがフォーの名前を呼んでも、姿を見せる事は無かった。
まるで・・・入る者を拒むかのように、目の前の霧が濃くなっていった。
「どうしたらいいんだよ・・・?」
カイトは途方に暮れた。
「・・・カイト」
その時、背中からミナギが話してきた。
「えっ?どうしたのミナギ・・・」
「私、ここで待ってるから・・・カイト、行って来て」
「それは出来ないよ・・・こんな所にミナギを置いて行くなんて」
カイトはそうミナギに言うと、ミナギは首を横に振った。
「大丈夫だよ、カイトは必ず戻ってくるって信じてるから。だって、私達の心は繋がっているんだもの」
ミナギは、はっきりとした口調でカイトに話した。
「ミナギ・・・」
「それに、今のフォーちゃんの心を繋ぎ止められるのはカイトだけだって思うから」
ミナギは笑顔で、でもどこか背中を押してくれるような強さを持った声でカイトに話した。
「・・・分かったよ、ミナギはここで待ってて。必ず戻ってくるから・・・」
カイトは、ミナギをそっと腰掛けられそうな場所に下ろしてから霧の中に入った。
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