#8「試験~しけん~」6
「だめだよ、そんな顔色じゃ・・・私が手を貸すから・・・」
ハルが心配してカイトに近付いて・・・
「もう大丈夫だよ、さっき薬を飲んだから・・・もう効いてくると思うから・・・ごめんねハル、余計な心配かけちゃって・・・」
カイトは、ハルが近付く前にそう説明した。
「そう・・・本当に大丈夫なんだよね?」
「うん、大丈夫。もう戻るから先に行ってていいよ、ハル」
カイトはハルにそう言って、先に出るように促した。
「うん、分かったよ。先に行っ・・・わっ!」
ハルが洗面所から出ようとした時、つまずいて仰向けに転びそうになった。
「危ない!」
カイトはとっさにハルの側に駆け寄った・・・
どさっ。
「あたた・・・」
カイトがクッションになるようにハルはその上に倒れていた。
「あっ、ごめん・・・カイトく・・・っ!?」
ハルが起き上がる時、ハルの右手がカイトの胸の辺りに触れてしまっていた・・・
「あっ・・・!?」
「カイト君・・・・・・何で・・・?」
ハルは、カイトの胸のあまりの冷たさに右手を押さえていた・・・ハルの右手は冷たさでまだ凍えていた。
「・・・・・・・・・」
「カイト君・・・どうして?・・・そんなに冷えてるの?」
カイトは、もうハルに隠すのは止めようと心に決めた・・・
もう、これで二度と顔を合わせられなくても・・・
「ごめん、ハル・・・これから君に、今まで言えなかったこの胸の事を話すよ」
カイトはゆっくりと起き上がって、覚悟を決めたようにハルに話し始めた。
・・・・・・・・・。
「はぁー・・・」
大体話し終えて、カイトは小さくため息を吐いた。
「そんな事が・・・あったなんて・・・」
ハルは、カイトに何て言っていいか分からなかった。
「皆に恐れられてる『灰色の願い人』の事・・・誰にも言えなくて・・・」
「お母さんとフォーの為に・・・」
カイトはただ、頷いた。
「私、そんな事があったなんて知らなかったよ・・・カイト君のお母さんの体調の事は知ってたけど、フォーにそんな辛い事が・・・」
ハルは、フォーの笑顔を思い出して余計に涙が零れそうになっていた。
「でも、後悔はしてないんだ・・・俺のこの心の欠片と引き替えにお母さんとフォーが元気になってくれた、それだけで・・・たとえ、俺が何を言われようとどうなろうとも・・・」
「・・・・・・・・・っ!」
カイトがそう言うと、ハルはカイトの胸に抱きついた。
「カイト君のばかっ!・・・カイト君の・・・・・・」
「ハル・・・」
ハルは泣きながら、カイトの胸の辺りを軽く叩いていた。
「何で、そう自分を大事にしないの?・・・そんな事で助かっても、カイト君が死んじゃったら・・・」
「ごめん、ハル・・・」
カイトはただ、ハルに謝る事しか出来なかった。
「ぐす、ごめんね、カイト君・・・取り乱しちゃった」
カイトは、小さく首を横に振った。
「それじゃ、学園祭の準備の時も、皆で大空を飛んだ日も・・・その胸が・・・」
カイトは、静かに頷いた。
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