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2008年10月

#6「空上~そらのうえ~」4

ゆっくりと翼をはためかせ、フォーとグライドは地面に降り立った。

「ふぅー・・・」

「はぁ・・・」

「よっと」

カイトは久しぶりの感覚に心が満たされていた。ミナギは初めて空を飛んで、言葉にならない程の感動を覚えていた。

「どうだった?ミナギちゃん、初めての空の散歩は・・・」

「えへっ、凄く良かったよ。本当に鳥になったみたい」

ミナギは、少し興奮しながら笑顔でハルに答えた。

「ミナギちゃんにそう言ってもらえると私も嬉しいよ」

「最初は少し怖かったけど・・・カイトのおかげで怖くなかったよ」

「ただ、大丈夫だよってミナギに言っただけだけどね」

ミナギはカイトの顔を見ながら嬉しそうにハルに話した。

「やっぱり、あんた達お似合いね・・・うふふ♪」

ハルにそう言われて、ミナギは恥ずかしそうに少しだけ顔を伏せた。

「いいよ、ハル・・・茶化さなくても・・・」

「あーらあら照れちゃって、もう・・・」

「くすっ」

「あはは・・・」

めったに味わう事のない空気に少し戸惑いながらも、こんな感じも悪くないかもとカイトは思った。

「それじゃ、私はもう1回行って来るね」

ハルはそうカイト達に言って、再びグライドと飛んで行った。

「ふぅー・・・」

カイトははハルの飛んでゆく姿を見送りながら、空を見上げていた。

「えへっ、カイトありがと」

「うん、ミナギが喜んでくれて俺も良かったよ」

「まさか本当に空を飛べるなんて夢みたいだよ」

ミナギは目を輝かせながらカイトに話した。

「フォー♪」

フォーも嬉しそうに答えた。

「うん、俺も久しぶりに空を飛べて嬉しかった・・・」

「カイト?」

「フォー?」

カイトの話し終えた時の感じが気になって、ミナギとフォーは呼び返した。

「え?どうしたのミナギ、フォー?」

「カイト、大丈夫?何か・・・」

「えっ、大丈夫だけど・・・どうしたの?」

「ううん、ならいいんだけど・・・」

「・・・?」

ミナギの少し心配そうな顔にカイトはどう答えていいか分からなかったが・・・

そういえば・・・少し、体の感じが・・・

「ミナギ、もう一度空を飛びたい?」

「うんっ、カイトも一緒に乗るんだよね?」

「うん、それじゃ準備をしよ・・・」

「カイト?」

「あっ・・・」

・・・どさっ。

一瞬だけ、時が止まった感覚に包まれた。

「え・・・?」

「フォー!?」

目の前に、さっきまで話していたカイトが倒れ込んだ。

「カイト!どうしたの?しっかり・・・」

ミナギがカイトに触れた瞬間、凍り付きそうな冷たさに襲われた。

「つ、冷たい・・・」

「フォー!」

「カイト、カイトー!?」

カイトの体は触れる事が辛いほど体温が下がっていた・・・

ミナギはとにかくカイトの体を温めようとしても冷たすぎて出来なかった・・・。

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#6「空上~そらのうえ~」5

・・・・・・・・・。

「・・・・・・・・・」

気が付くと、カイトの周りを薄暗い霧が辺りを包んでいた。

ここは一体・・・どこなんだろう・・・?

さっきまでミナギとフォーの側にいたのに、今は人の気配はどこにもなかった。

「ミナギー、フォー、ハルー、グライドー」

カイトは名前を呼んでみたが、返ってはこなかった。

「夢・・・なのかな・・・?」

カイトはさっきまでの状況を思い出そうとしてみるが、何かにかき消されるように思い出せなかった。

(・・・た・・・の・・・に・・・)

「えっ?」

不意にカイトの耳に掻き消えそうな声が聞こえた。

(・・・わ・・・た・・・の・・・に・・・おい・・・)

「誰?誰なの?」

(わた・・・しのと・・・ころに・・・おい・・・で)

その声は段々はっきりとカイトの耳に入ってきた。

「君は誰なの?」

(ふふっ、怖がらなくていいの・・・ただ、私の所まで来てくれたら・・・)

「どうして?」

(あなたはもう、何も考えなくていいの。私が側に・・・いてあげる)

「あっ・・・」

カイトはその声を聞いてる内に、なぜか心地の良い気持ちになっていった・・・

「・・・あなたの所へ行けばいいのですか・・・?」

(そう、何も怖がらなくていいの・・・)

「・・・・・・」

カイトは、声のする方へ引き寄せられるように歩いていた。

(ふふふ、さぁおいで。あなたはもう怖がる事はないから・・・)

「・・・・・・」

(そう・・・)

「・・・・・・」

(永遠に・・・)

「だめー!」

「えっ?」

カイトは不意に、別の声の叫び声を聞いたとたん我に返った。

「カイト、その人の声を聞いちゃ・・・」

「えっ?」

(おっ、お前、私の邪魔をしないでっ!・・・その子は私のもの・・・)

「お願い、カイト!私達の所に戻ってきてー!」

(き、貴様、邪魔を・・・)

「はぁーっ!」

(わ”-っ!?)

「うっ!」

一瞬、辺りが眩しい光に包まれた。

・・・・・・・・・。

「・・・・・・・・・」

「えへっ、良かった・・・無事で」

その声は、泣きそうな感じでカイトに話し掛けてきた。

「君は一体・・・どうして俺の名前を・・・?」

「ごめんなさい・・・今は話せません・・・」

その声はそれ以上カイトに答える事は無かった。

「えっ・・・?」

「ただ、私はいつでもあなたの側で・・・見守ってます」

「君にまた、会えるのかな・・・?」

「いつか、必ず・・・カイト、私の声の方まで・・・歩いてきて」

「うん、分かったよ・・・」

カイトは、その優しい声の方へ歩いてゆく・・・

そして、段々と意識が戻るような感じがした。

もうすぐ・・・・・・。

・・・・・・・・・。

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#6「空上~そらのうえ~」6

「・・・・・・」

・・・・・・・・・。

「・・・う・・・ん・・・」

・・・・・・。

「・・・あっ」

「フォー!」

「わっ、あははフォー、やめろって・・・」

カイトが気が付いたと同時にフォーが頬擦りをしてきた・・・

覚めたんだな・・・夢から。

「カイトー!」

「あっ、ミナギ」

ミナギは、カイトが気が付いた喜びで涙目で抱きついた。

「わっ!」

「ぐすっ、良かったカイト・・・気が付いてくれて」

余程カイトの事が心配だったのか、カイトの胸元で泣いていた。

「ごめんミナギ、心配かけちゃって・・・」

そう言って、カイトはミナギの頭を撫でた。

「カイト君ー!」

少しして、ハルが何かを持って駆け足で戻って来た。

手に持っていたのは救急箱だった。

「ハル・・・」

「良かった・・・カイト君、皆心配したんだから」

「皆、ごめん・・・俺は大丈夫だから」

今まで重かった空気が一気に晴れだした。

・・・・・・・・・。

「・・・ふぅ」

カイトは木の柵に寄り掛かっていた。

遠くでミナギとフォーが一緒に遊んでいる姿が見えた。

「・・・・・・」

カイトはふと、夢の中の声が誰なのか考えていた。

前にも一度、聞いた事のある・・・どこか優しげな感じの声・・・

いつでもそばで・・・見守ってます・・・か。

カイトは、空を見上げながらこうして生きてる事をありがたく思った。

「カイト君ー!」

少しして、ハルがカイトの所に戻ってきた。

「あっ、ハル・・・」

「はい、特製のココアを作ったから。これを飲んで元気出してね」

「ありがと・・・ハル」

カイトがココアを口にすると、ついさっきまで体が冷え切っていたとゆう事もあって、心の芯まで温まる感じだった。

「はぁー・・・」

「本当に大丈夫なの?カイト君・・・」

「うん、大丈夫。ごめん・・・心配かけて」

カイトは、本当に申し訳ない顔をしてハルに言った。

「もう、びっくりしたよ。フォーが悲しい顔で私の元に近付いてきて・・・何があったのかと思って戻ってみたらカイト君、いきなり倒れてるんだもん・・・」

あの時の状況をふと、カイトは想像してみていかに皆が心配してくれたのか痛い程に伝わった。

「あの時は大丈夫だったの?乗ってる時とか・・・」

「ハルがもう1回空に飛んでゆく時までは平気だったけどね・・・」

カイトはそう言いながら空を見上げた。

「でも、良かったよ。顔色も大分良くなったし」

「うん、さっきよりも気分はいいよ」

「あっもしかして、あの時も・・・」

ハルは、急に何かを思い出したようにカイトに聞いた。

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#6「空上~そらのうえ~」7

「え?あの時って・・・」

「ほら、学園祭の準備の時に・・・」

「あっ・・・」

ハルにそう言われて、カイトは思い出した。

学校に着いた辺りから、急に具合が悪くなった時の事を・・・。

「あの時は朝もちょっとだけ具合悪かったけど、学園祭まで日にちが無かったから・・・皆に会えば元気になるかなって思ってたけどね・・・」

「本当、皆びっくりしてたよ・・・あのままだったら倒れて学園祭どころじゃなくなってたよ」

「はは・・・そうだったかも」

「全く・・・まっ、そこがカイト君らしいんだけどね・・・」

ハルに呆れ顔で言われてカイトは苦笑いした。

「本当に大丈夫なんだよね??」

「大丈夫、大丈夫。今は気分はいいから」

ハルの心配そうな顔を見て、カイトは安心させようと元気な素振りを見せた。

「うん、それだけ元気なら大丈夫だね、えへっ」

「今度はグライドに乗りたいなぁ」

「それじゃ、行こうカイト君」

カイトとハルはミナギ達の所へ行った。

色々あったけど、皆と遊んで心から楽しかった・・・そうカイトは素直にそう思った。

・・・・・・・・・。

「それじゃ、カイト君、ミナギちゃん、フォー」

「今日は本当にありがとうハル」

カイトはハルに今日の事の感謝を伝えた。

「えへへ、どういたしまして♪」

「ハルさ・・・ううんハル、今度料理を教えてね」

「オッケー、今度連絡するね」

ハルはグライドに乗ってゆっくりと上昇した。

「また明日ねカイト君、ミナギちゃん、フォー」

夕日が周りを染めた頃にハル、グライドと別れた。

「さっ帰ろうかミナギ、フォー」

「うんっ」

「フォー」

夕日が赤く染めていた。

昼間とはまた違った草原の風景に思わず見惚れてしまいそうだった。

「ミナギ・・・」

「えっ、どうしたの?カイト・・・」

「ごめんな、色々心配かけちゃって・・・」

カイトは、倒れた事をミナギに改めて謝った。

「ううん、元気になって良かったよ・・・」

「ミナギ?」

ミナギは、話しながら少しずつ震えているような・・・

「凄く心配しちゃったよ・・・もし、このままカイトが目を覚まさなかったらって考えたら・・・」

カイトがミナギの顔を見ると、今にも泣きそうな顔で・・・でも、無理して笑っていた。

「ごめん、本当にごめん」

そう言って、カイトはミナギの頭を撫でた。

「カイト・・・まだ平気なんだよね?・・・死んじゃったりしないよね??」

「・・・うん、大丈夫、大丈夫だから」

・・・本当に大丈夫なのかは分からなかった。

でも、ミナギに余計な心配をかけたくなかったので、カイトはただ大丈夫と繰り返した。

「フォーゥ・・・」

その様子を見て、フォーも心配そうな表情で見ていた。

「フォーにも心配かけちゃったな・・・」

カイトはそう言いながら、フォーの頬をそっと撫でた。

「きっと見つかる・・・そう思ってる。俺だって死ぬのは嫌だしね」

「私に何が出来るのかな・・・?辛いよ、凄く・・・」

ミナギはそう言いながらカイトの右手を握った。

「俺に元気をくれるだけでいいよ。こればかりは俺自身の問題だし・・・ミナギのおかげで探す事に決めたし」

「うん・・・・・・」

ミナギは笑顔で答えた。

少しだけ涙を浮かべて・・・。

#6「空上~そらのうえ~」end.

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#7「雨宿~あまやどり~」1

カーン、コーン・・・

「はい、今日はここまでにします」

周りはやっと終わったと、それぞれの準備を始めた。

「さてと・・・」

カイトも教科書を鞄に詰め始めた。

「カイトー!」

「おっ、シンジ」

シンジが真っ先にカイトの方に寄ってきた。

「今日は暇かなって、思って・・・」

「えっ、何かやるの?」

カイトは、気になってシンジに聞き返した。

「サッカーでちょっと人手が足りなくて・・・どっかなって思って・・・」

「あっ、ごめんシンジ、俺、今日は行けないわ」

「あ、そっか、今日お前バイトだったっけ?」

「そっ、今日がバイトじゃなかったら行けたけどね・・・」

カイトは、少し残念そうな顔をして話した。

「まっいいよ。今度は来てくれよ」

「オッケー、今度は行くから」

そう会話を交わして、シンジは教室を出て行った。

シンジは去った後に、カイトは残りの教科書とノートを鞄に詰め終わった。

「それじゃ、また明日」

「明日ね、カイト君」

「おう、またな」

カイトは、皆に手を振って教室を後にした。

・・・・・・・・・。

「それじゃナツさん、先に上がります」

「うん、お疲れカイト君」

時計はすでに、夜の7時半を過ぎていた。バイトが終わったカイトは制服に着替えていた。

「いつもどうもね。カイト君のおかげでうちは助かってるよ」

「いえ、こっちこそこんな自分を雇ってくれて・・・」

カイトはナツにかしこまって話した。

「気にしなくていいよカイト君。学校もあって大変なのに」

「家、母さんがあまり外で働けないし・・・少しでも自分が出来る事を自分でしなきゃって思って・・・」

カイトは、なるべく疲れた表情を見せないように笑顔でナツに話した。

「お母さんは元気でやってるの?」

「今は歩けるまで回復はしました。まだ、外に出るのは辛いと言ってますけど・・・」

「大変ねぇ・・・カイト君のお母さん、早く外に普通に歩けるようになるといいね」

「はい」

ナツに励まされて、カイトは少しだけ元気をもらった。

「それじゃ、ナツさん」

「うん、カイト君またよろしくね」

カイトはナツに挨拶をして、バイト先を後にした。

「ふぅ・・・」

カイトはふと、空を見上げると今にも雨が降りそうな雲行きだった・・・。

「早く帰ろう・・・」

カイトは、急ぎ足で家路に向かった。

・・・・・・。

「わーっ!」

さっきまでの天気が嘘みたいに変わって、大雨を降らせていた。

傘を持っていなかったカイトは、途中の店のアーケードに逃げ込んだ。

「うわ・・・やっばいな・・・」

カイトはかなりビジョビジョになっていた。

でも、カイトの家はここからまだ遠かった。

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#7「雨宿~あまやどり~」2

カイトは、少し雨が落ち着くまでここにいる事にした。

「うー、さむー・・・」

空を見ても、雨が落ち着く気配がなかった・・・

カイトはどっちにしても、もうすでに雨で濡れていたのでこのまま走って家まで帰る事にした。

「いいや、このまま・・・」

カイトは、次のアーケード地点まで走り・・・

「カイトー?」

「えっ?」

ふと、名前を呼ばれてカイトは足を止めた。

「カイトー!」

ふと、カイトが声の方を向くと傘を差したミナギが立っていた。

「ミナギ?」

「カイト・・・凄いビジョビジョだよ。大丈夫?」

「はは・・・まさか雨が降るなんて思ってなくて・・・」

カイトは空を見ながら、ミナギに話した。

「どこに行ってたの?カイトは」

「今日、バイトでちょうど終わって帰るとこだったんだ」

「そっか、バイトだったんだね」

ミナギはカイトの隣で顔を向けて話した。

「傘を買おうと思ったけどね、もうずぶ濡れだったし・・・このまま帰ろうかなと思ってて」

「でも、カイト・・・それじゃ風邪引いちゃうよ・・・」

ミナギは心配そうな顔でカイトに言った。

「大丈夫だって、早く帰ってお風呂に入れば・・・」

「あっ、そうだカイト・・・」

「えっ?どうしたのミナギ・・・」

ミナギが何かを思いついたみたいで・・・

「私の家で雨宿りしよ、ねっ」

「えっ?」

カイトはミナギの提案に少し驚いた。

「やっぱり、そのままじゃ風邪引いちゃうし・・・ここからだったら私の家が近いと思うから・・・」

ミナギの言うとおり、ここからだとカイトの家よりミナギの家の方が全然近かった。

でも、こんな状態でお邪魔するのはさすがにあつかましいとカイトは思った。

「あっ、大丈夫、大丈夫。これくらいで風邪なん・・・くしゅっ!」

カイトは、言ってる側からミナギの隣でくしゃみをした。

「くすっ、ほらっ、ねっ。カイト、一緒に帰ろ」

ミナギは、笑顔でカイトに傘を寄せた。

「あはは・・・」

カイトは笑うしかなかった。

ミナギに促されて、カイトはミナギと帰る事にした。

考えてみたら、ミナギの家に行った事はあっても中に入った事は一度も無かったのでカイトは少しだけ緊張していた。

なるべく・・・普通にしていよう、そうカイトは思った。

「そういえば、ミナギはどこに行ってたの?」

「私は、お姉ちゃんに頼まれた買い物の帰りだよ」

ミナギの持ってる傘に2人で入っていた。

カイトがミナギの方を見ると、背丈の違うミナギが傘を少し高めにして持っていた姿がなぜか微笑ましかった。

「いいよミナギ、傘は俺が持つから」

カイトはミナギにそう言うと、ミナギは「ありがと」と、言ってカイトに傘を手渡した。

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#7「雨宿~あまやどり~」3

「何を買ってきたの?ミナギは」

「えっとね・・・」

カイトに聞かれてミナギは袋を覗き込んだ。

「えっと・・・お醤油とか野菜とか・・・」

「夕飯の材料?」

「うん。本当はお醤油だけだったんだけど、ついでにって」

ミナギは笑顔でカイトの方を見ながら話した。

「ヘぇー、そうなんだ・・・」

「あっ、ねぇ良かったら一緒に食べよ」

ミナギが嬉しそうな顔でカイトに聞いた。

「え?いや、それは悪いよ」

「えっ、どうして?

「俺の母さんも待っているし・・・それに、ミナギとお姉さんの夕食の邪魔しちゃまずいから・・・」

カイトは、さすがにそこまでお邪魔するのは申し訳ないと思った。

「うん、そうだね・・・」

納得したのかしないのか、ミナギは少し淋しそうな顔をした。

「あ、いや、決して嫌とゆうワケじゃないから・・・」

「うん、分かってるよ。カイトにだって家族があるんだし・・・」

2人は話をしながらミナギの家に向かった。

・・・・・・。

やがて、ミナギの家に辿り着いた。

カチャ。

「ただいまー」

ミナギは早々と靴を脱いで揃えた。

「ちょっと待っててね、カイト」

「うん・・・」

とりあえず、カイトは待つ事にした。

・・・・・・。

少しして、ミナギともう1人の女性が来た。

ミナギのお姉さんのようだった。

「えっと、初めまして」

カイトは、一先ず挨拶をした。

「いらっしゃい、カイト君ね?」

「あっ、はい」

「初めまして。私はミナギの姉で、名前はエリです。カイト君、そのままじゃいけないからお風呂に入って。じゃないと風邪引いちゃうから」

エリは優しい感じでカイトに促した。

「えっ、でも・・・そこまでしなくても・・・ただ、傘を貸してもらえれば・・・」

カイトはすぐに遠慮がちに慌ててエリに話した。

「うん、私もそうした方がいいよ。そのままじゃカイト本当に風邪引いちゃうよ・・・」

ミナギも心配そうにカイトに言った。

「あの、えっと・・・」

エリとミナギの心配そうな顔に、さすがにカイトは遠慮するのも悪いような気がした・・・。

「えっと・・・とりあえず家に電話してもいいですか?母さんに心配かけたくないから・・・その」

少し困った感じでカイトは2人に話した。

「そうね、お母さんに心配かけちゃいけないものね・・・」

エリはそう話した後に、バスタオルを取りに戻ってカイトに渡した。

「ありがとうございます、エリさん」

カイトは、雨で濡れた体をエリが渡してくれたバスタオルで拭き取った。

「カイト君、電話はそこにあるからね」

カイトは、エリの手の指す方向を見て電話の位置を確認した。

「えっと、お邪魔します・・・」

カイトは、少しだけ遠慮がちに入った。

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#7「雨宿~あまやどり~」4

・・・・・・・・・。

「あっ、カイト」

少し経って、カイトが広間に戻ってきた。

「どうも・・・」

「家にある服、小さくなかった?カイト君」

カイトは、エリに用意してもらった服を着ていた。

「少しだけ・・・でも、ありがとうございます」

「遠慮はいいよ。それにカイト君の服があんな状態じゃ・・・」

カイトがお風呂に入ってる間にエリが洗濯してくれたらしく、すぐに乾くように除湿機の所で乾かしていた。

「洗濯まで・・・何から何まで・・・」

カイトが畏まってると、エリはそんなに気にしなくてもいいよと笑顔で話した。

「カイト、似合ってるよ」

「うーん、そうかなぁ・・・?」

まだ、着慣れてないのか、カイトはぎこちない感じだった。

「うんっ、凄く似合ってる似合ってる♪」

ミナギは、なぜかとても嬉しそうだった。

「カイト君、夕飯は一緒に食べても大丈夫なんだよね?」

「あっはい、さっき母さんに電話で聞いて・・・いいって言ってましたから・・・」

「えへっ、良かった」

「何か嬉しそうだね、ミナギ」

カイトは、普段あまり見ないミナギの姿に少しだけ戸惑っていた。

「だって、この家いつもお姉ちゃんと2人だけだから・・・今日はカイトも一緒だしね」

ミナギの、終始喜んでいる姿を見てカイトはふと思った。

「・・・・・・」

いつも・・・姉と2人っきり・・・

父親も、母親も・・・・・・

ミナギは、どれだけ淋しかったのだろうと・・・

そんな事を考えて、カイトは少し悲しい気持ちになった。

「カイト・・・?」

「えっ?」

「どうしたの?カイト、何かボーっとしてるよ」

「あっ、ううん何でもない」

カイトは考え事をすると、周りが見えなくなるんだなぁと、改めてそう思った。

なるべく、人前では気を付けよう・・・。

「わぁ・・・」

「どうしたの?ミナギ・・・」

「雨がさっきより強くなってるよ・・・」

そう言われてカイトは窓から外を見ると、外の景色が見えない程に雨が強くなっていた。

「うわぁー・・・帰れるかなぁ・・・」

「もう少し弱くなってからでもいいと思うよ・・・カイト」

カイトがふとミナギを見ると、心配とゆうより淋しそうな感じがした・・・

俺にもう少し居てほしいのかな・・・?

「そうだね、もう少し雨が弱くなってからでもいいかな・・・?」

「うん、そうだよ。またずぶ濡れになったら・・・」

「ミナギー、カイト君、ご飯の支度出来たよー」

「はーい」

ミナギが話してる途中で、エリの呼ぶ声が聞こえた。

どうやら、夕飯の支度が出来たらしい。

「行こっ、カイト」

「あっ、う、うん・・・」

ミナギに手を引かれてカイトは一緒に台所へ行った。

夕飯は海老グラタンとサラダボウルだった。

今日はカイトが来たとゆう事で、いつもよりも頑張ったよとエリは笑顔で話した。

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#7「雨宿~あまやどり~」5

・・・・・・・・・。

夕飯を食べ終わったカイトとミナギは広間に戻った。

「ミナギのお姉さんって、料理上手いんだね」

「うんっ、私もお姉ちゃんの料理大好き」

ミナギは笑顔でカイトに答えた。

「あっ、そういえば前、ハルに料理を教わりたいって言ってたよね・・・」

カイトはふと、気になった事をミナギに聞いた。

「うん・・・」

「お姉さんには料理を教わったりしないの?」

「あ・・・えっと・・・」

「・・・?」

ミナギは、少し気まずい感じに話し始めた。

「前に私、お姉ちゃんがいない時に料理の練習をしようと思って・・・でも、上手く出来なくて・・・その・・・キッチンやフライパンをメチャメチャにしちゃった事があって・・・」

・・・要するに、それが原因でミナギはその日以来キッチンを使わせてもらえないとゆう事らしい・・・。

「あっ、あははは・・・」

カイトは、思わず苦笑いをした。

「う~・・・今度は、ちゃんとハルの言う事は聞いて作るから大丈夫だよ・・・」

・・・まぁ、本当に大丈夫なのか分からないけど、まぁ、ハルと一緒だったら大丈夫と思いたい・・・そうカイトは思った。

少しして、エリも紅茶を持って居間に戻ってきた。

ほんの少し、ゆったりとした時間が流れていた。

・・・・・・。

少ししてカイトが窓を見ると、少しだけ雨が落ち着いたように見えた。

カイトはそろそろ帰ろうかと思い始めた。

「エリさん、俺の制服はどうですか?」

カイトは、エリに制服の乾き具合を尋ねた。

「うーん、まだ乾きは良くないみたいだけど・・・」

「大丈夫です、後は家で乾かしますので・・・」

「カイト、帰っちゃうんだね・・・」

カイトとエリのやり取りを見て、ミナギは少し淋しそうに言った。

「うん、さすがにそこまでお邪魔するのは悪いし、それにもうこんな時間だし・・・」

時計を見ると、22時過ぎようとしていた。

「あっ、もうこんな時間なんだね・・・」

「うん、そろそろ帰らないと母さんも心配するからね」

「そうだね、カイト、玄関まで送るね」

「うん、ありが・・・」

と、突然辺りを光が襲った後に凄い音が響いた。

雷が近くに落ちたようだった。

「わぁー!」

雷の光と音に驚いたミナギが、思わずカイトに抱きついた。

「わっ!」

いきなりの事でカイトはびっくりしたがミナギを見ると、怖いのかカイトの胸でガタガタと震えていた。

「わぁぁ・・・」

「ミナギ、落ち着いて」

カイトは、ミナギを落ち着かせようとした瞬間に再び近くに雷が落ちた。

「うわ!」

ピカッと光った瞬間に、辺りの証明が消えた。

「ああぁぁあぁ・・・」

「ミナギ、大丈夫だよ・・・落ち着いて」

カイトは、ミナギの頭をそっと撫でようと・・・

「・・・いで」

「えっ?」

「・・・らないで」

「何?ミナギ・・・」

様子がおかしい・・・そう思ったカイトはミナギの顔を見た。

「・・・さわら・・・ないで」

「ミナギ、落ち着い・・・」

「い・・・いやあああぁー!」

ミナギは、叫ぶと同時にカイトを突き飛ばした。

「くっ!」

ミナギはカイトを突き飛ばすと、裏口の方へ走っていった。

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#7「雨宿~あまやどり~」6

「どうしたのー?大丈夫ー?」

エリがライトを持って戻ってきた。

「エリさん、ミナギが・・・」

「え?まさか外に・・・」

カイトは、何も言わずに頷いた。

突然の出来事に、エリも動揺していたようだった。

「俺、ミナギを連れ戻してくる」

そう言って、カイトはミナギが走っていった方向へ向かった。

「あっ、カイト君ー?」

エリが呼び止める間も無く、カイトは飛び出した。

カイトが外に出ると、さっきよりは雨が弱くなり、雷も遠くへ行ったようだった。

「ミナギー、ミナギー!」

走りながら、カイトはミナギを探していた。

まだ、そんなに遠くへは・・・

「あっ・・・」

家から少し離れた薄暗い木の下で、呆然とミナギが立っていた。

「ミナギ・・・」

「こな・・・いで」

「え?」

「来ないで!」

ミナギは、背中を向けたままカイトに叫んだ。

「・・・・・・」

その場から逃げ出そうとしたミナギを、カイトは走ってミナギの腕を掴んだ。

「いや、離して!」

さっきまでのミナギはここにはいなかった・・・

まるで、全てを拒絶してるようだった。

「いや、離さない絶対に」

カイトは、ミナギが逃げ出さないように強く抱きしめた。

「いや、いや、いやぁー!」

ミナギは、カイトの体を駄々をこねるかのように叩いた。

「ミナギ、落ち着いて・・・」

「嫌いだ、皆嫌いだ・・・私に近寄らないでー!」

ミナギは、カイトから離れようとしてカイトの胸辺りを叩き続けた。

「ミナギ、大丈夫、大丈夫だから」

「うっ、うわああぁぁー!」

「もう、大丈夫・・・だから」

カイトはそう言って、ミナギの頭をそっと撫でた。

「あっ・・・」

さっきまで暴れていたミナギが次第に大人しくなった。

「もう、怖がる事はないんだ・・・皆一緒にいるから・・・」

「えへっ・・・」

一瞬だけ、ミナギが笑顔になったような気がした・・・そして、力尽きたのかミナギはカイトに身を委ねた。

「すう・・・」

「ミナギ・・・」

どうやら疲れ切って、そのまま眠ったらしい・・・

カイトは、ミナギをおんぶして家に戻った。

・・・・・・。

「ただいま・・・エリさん」

カイトの声が聞こえたと同時に、エリが慌てて玄関へと来た。

「カイト君、ミナギは?」

「大丈夫です、眠ってるだけです」

エリがミナギの顔を見ると、元の安らかな寝息をしてる姿を見てほっとしたようだった。

「ありがとう、カイト君」

「いえ、それよりもミナギをお願いします」

「うん、部屋に連れて行くから。カイト君は居間に行っててね」

「あ、はい」

カイトは、居間の方へ少し思い足取りで戻った。

・・・・・・・・・。

「カイト君、おまたせー、私の特製スープよ。さっき外に出て体が冷えてるでしょ?」

ミナギの部屋から出てきたエリが、カイトの為にと特製のスープを作ってカイトに手渡した。

「ありがとうございます、エリさん」

「熱いから気を付けてね」

カイトは、エリから受け取ったスープ入りのコップを一口飲んでみた。

「熱っ!」

「くすっ、熱いからって言ったのに」

エリは笑いを抑えながら話した。

「はあー・・・」

さっきの事で体が冷めた事もあって、温かいスープが体全体に染み渡ってゆくようだった。

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#7「雨宿~あまやどり~」7

「本当にありがとねカイト君。雷が鳴った時に心配になったんだ・・・行こうと思ったら電気が切れちゃって・・・ごめんね」

「いいえ。それよりもエリさん、ミナギは大丈夫なんですよね?」

「うん、一応は・・・」

カイトの質問に、エリは少しぎこちない答え方をした。

「エリ・・・さん?」

「カイト君、ミナギからどうしてうちの両親がいないのか聞いた事ってある?」

「はい。でも、覚えていないって言ってました。側にいたはずなのにって・・・」

カイトがそう答えると、エリは急に目を合わせてきた。

「カイト君・・・私、カイト君にこの話を聞いてもらいたい・・・ミナギと一番仲が良いあなたに」

エリの真面目な顔に、カイトは少し背筋が伸びた。

「は・・・はい」

雷が鳴った時のミナギの急変ぶり・・・

何があっても驚かない・・・そうカイトは覚悟を決めた。

「・・・うちの両親、ちょうどこの雷の日に亡くなったの・・・ミナギの目の前で」

「えっ?」

ミナギの目の前で・・・その言葉にカイトはつい、驚きの言葉を出してしまった。

「私はその時、別の町で働いていたから・・・詳しい事は分からないけど、助けた人の話では雷が落ちた場所から離れた場所で倒れていたんだって・・・」

「はい・・・」

「ショックだったよ・・・ミナギの病気を治す為に出掛けていた両親が雷に撃たれて死んだって電話で聞かされて・・・でもミナギは無事だって聞いて、慌ててミナギの所へ行ったの」

「はい・・・」

カイトは、ただ頷いた。

「病院に着いて私、唖然としちゃった・・・ミナギの変わり果てた姿を見て・・・その時のショックでミナギはその時の記憶を無くして・・・後からミナギからどうして両親がいなくなったのか質問された時に、あなたが小さい時に亡くなったって言って・・・本当の事を言ったらきっと、あんな状態じゃ済まされないって医者に言われて・・・」

「全てを・・・拒絶してました。この俺でさえも」

カイトは、言葉控えめに話した。

「あの時のミナギはもう、誰の手にも負えなかったわ。私さえも・・・ミナギの病気も悪化して・・・もう皆で諦めていたの。もうあの子の好きにさせてあげようって、話になって・・・」

エリの衝撃的な話の内容に、カイトは言葉が出てこなかった。

「その、何日かしてかなぁ・・・?ミナギから笑顔が少しずつ戻ってきて、癇癪も起こさなくなって・・・どうしたのってミナギに聞いたらお友達が出来たんだって私に言ってくれたの」

「男の子ですか?」

カイトは、エリにそう尋ねた。

「うん、そう。名前は知らないけど・・・でも嬉しかった。やっと、いつものミナギに戻ってくれるって・・・あの男の子のおかげだって私も思うよ」

「でも、ミナギも名前を忘れてました・・・思い出そうとすると余計に忘れてしまいそうだって、言ってました」

カイトは、話していたミナギの事を思い出しながらエリに話した。

「私ね、後悔してるんだ。あの時に仕事の都合でこの町を出て行った事に・・・それでも私があの男の子から名前を聞けば良かったって・・・」

エリは悲しげな表情で話した。

「はい・・・」

「でも、どうして医者が治せなかった病気が治ったのかミナギに聞いてびっくりしたの。男の子が持ってきた白く光る薬を飲んだからって・・・」

「はい。ミナギからその話を聞いて、俺も驚いて凄いなって・・・」

「ねぇ、カイト君・・・」

「はい・・・」

「どうして私の家、私とミナギしかいないのにカイト君に貸してる男の子が着るような服を持ってると思う?」

「えっ、それは・・・」

エリの突然の質問に、カイトはどう答えていいか分からなかった。

「すいません、分からないです・・・」

「うん、それはね・・・」

エリは、一息置いてからカイトに話し始めた。

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#7「雨宿~あまやどり~」8

「弟が・・・いたの。私達に」

「えっ!?」

カイトは、思わず大きい声を出してしまった。

「実は、私もミナギと同じ病気を持ってたの。もう死ぬんだって覚悟を決めてて・・・ベッドの上で空しか見てなくて・・・その時に弟が持ってきてくれたの、その薬を・・・ミナギの話に出てきたものと一緒の」

「エリさんも・・・」

カイトは、エリの話にただ頷く事しか出来なかった。

「その薬を飲んだら奇跡的に良くなったの。弟にあの薬どうしたのって聞いても答えてくれなかったけど・・・」

「それで弟さんは・・・」

「その半年後に、体が冷え切って亡くなったの・・・凄く悲しかった。死ぬ直前に私に言ってくれて・・・お姉ちゃんを助けたくて・・・それで願いをかけたって」

「・・・・・・・・・」

カイトは何も言葉が出なかった。

「私の為にって・・・悲しかった・・・でも、今は私の中で弟は生きてるってそう思ってるよ」

エリは涙目でカイトに話した。

「どうして、そんなエリさんにとって辛くて悲しい話をこんな俺なんかに話してくれたんですか?」

カイトは、気になった事をエリに聞いた。

「似ているの、カイト君・・・あなたを見てると、何だか弟といるみたいで・・・」

「俺が・・・?」

カイトはエリのその答えに少しだけ驚いた。

「カイト君、あなた何か隠し事とかしてない?」

「えっ?」

エリの突然の言葉にカイトは一瞬だけ固まった。

「どうして、そんな事聞くんですか?別に何も隠し事なんて・・・」

カイトは隠し事とゆう言葉に一瞬だけ焦ったが、なるべく表情を変えないように答えた。

「さっきね、カイト君がミナギを連れ戻してきてくれた時に私、少しあなたの胸の辺りに触れて普通じゃない位の寒気がしたの・・・あの時の弟と同じ冷たさで・・・」

「あっ・・・」

まるで、全てを見透かされてるように話すエリに、カイトは一瞬だけ言葉に詰まった。

「きっとそれは、雨に当たって体が冷えたからだと思います・・・」

「誤魔化さなくてもいいよ・・・そんな事でカイト君を嫌ったり怖がったりしないし」

エリは、優しくて落ち着いた表情でカイトに話した。

「・・・・・・」

「カイト君、こんな私でも良かったら話してくれないかな・・・?その冷えた胸の理由を・・・」

そこまで言われて、もう誤魔化すのは無理だとカイトは思い、静かにエリに話し始めた。

「俺、母さんを治したくて・・・願いを叶えてくれる人がいるって聞いて、それで・・・」

「ぐす・・・やっぱり私の弟に似てるよ、カイト君。その優しさも・・・」

エリは涙を流しながらカイトに話した。

「エリさん・・・」

「でも、感心しないよ・・・もし、それでカイト君が死んでしまったらカイト君のお母さんはどう思うかな・・・?」

「・・・・・・」

カイトは、エリの言葉に何も返す言葉が見つからなかった。

「あの時の男の子も、その願い事でミナギを助けたのかなって思ったら何だかとても悲しくなって・・・考えたくないけど、死んじゃってるかもって・・・」

エリは悲しくなって思わず顔を伏せていた。

「エリさん・・・俺・・・」

「ごめんね、カイト君・・・あまりこんな話、しなくても良かったね・・・」

エリは泣きながらカイトに話した。

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#7「雨宿~あまやどり~」9

「俺は、その男の子は生きているって思います。ミナギはその男の子に会いたいとゆう思いだけでここまで生きてきたって思いますし、その男の子もこの町でミナギの事をきっと待ってるって・・・ただの推測でしかないですけど」

カイトは、ミナギの強い思いを信じてそうエリに話した。

「うん・・・そうだね。まだ会えないからって、死んだって決め付けるのは良くないよね・・・」

エリは、カイトの言葉に笑顔で答えた。

「後は、ミナギが名前を思い出せば・・・」

「うん・・・そうね」

そう言いながら、カイトは時計を見るともう23時を過ぎようとしていた。

「わぁ、もうこんな時間・・・それじゃ、俺はそろそろ帰ります」

「あっ、待ってカイト君」

帰ろうと席を立ったカイトを、エリが引き止めた。

「エリさん・・・?」

「ミナギのあんな姿を見ても、これからも変わらずに仲良くしてくれるかな・・・?」

エリは、落ち着いた表情でカイトに尋ねた。

「もちろんです。こんな俺でも一緒にいられるなら」

「えへっ、ありがとね、カイト君」

カイトは自分の制服を持った・

「その服、良かったらカイト君にあげるね」

「えっ?これはエリさんの大切な・・・」

カイトがそう言いかけて、エリが首を横に振った。

「いいよ・・・ぜひカイト君にもらってほしいんだ。そうしてくれた方が私も嬉しいし、きっと弟も・・・」

「・・・ありがとうございます。こんな俺で良かったら喜んで」

カイトはエリにお礼を言って玄関へと向かった。

「あっ、カイト君・・・」

「はい?エリさん・・・」

「また、遊びに来てね。ミナギも喜ぶし、私も・・」

「エリさん?」

「・・・私もまた、腕によりをかけておいしい料理を作るから」

「は、はい」

カイトは、エリが何か言いかけてたような気がしたが、今は聞くのを止めようと思った。

カイトは、エリにお礼とさよならをして玄関を後にした。

外に出ると、いつの間にか雨は止んでいた。

・・・・・・・・・。

「ただいま・・・」

少し疲れた様子でカイトは家に帰ってきた。

「お帰りカイト・・・ちょっと遅かったのね」

「ごめん、母さん・・・」

「いいのよ、カイトがちゃんと無事に帰ってきてくれたから・・・明日も早いから早く寝なさいね」

カイトの母は、優しい眼差しでカイトに話した。

「はい・・・」

カイトは、すぐ自分の部屋に戻って寝巻きに着替えた。

寝る準備をした後、布団に潜ったカイトはすぐに眠りについた。

・・・・・・・・・。

次の日、ミナギの姿を見かける事は無かった。

きっと、大事をとってエリが休ませたのだろうとカイトは思った。

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#7「雨宿~あまやどり~」10

・・・・・・・・・。

ミナギの姿を見かけたのはそれから2日後の学食だった。

遠くからミナギと友達が楽しそうに話をしながら食事をしてる姿を見てカイトは安心した。

・・・・・・。

そして、今日も無事に授業を終えて帰ろうと、カイトは下駄箱で上履きに履き替えた。

「カイトー」

カイトは、誰かに呼ばれて振り向いた。

ミナギだった。飾りの無い笑顔でカイトの場所まで走ってきた。

「あっ、ミナギ」

「良かった、まだ校内にいて」

「ミナギ、元気になって良かったよ。昨日は見なかったから心配だったけどね・・・」

カイトは、ミナギの表情をみてもう大丈夫だと思った。

「えへ、一緒に帰ろっ、カイト」

「ああ、いいよ」

ミナギは急いで上履きに履き替えた。

・・・・・・。

「はい、ミナギ」

「わぁ、ありがとカイト」

少しして、町の広場に着いた。

カイトがおいしいアイスがあるからと、少しだけ寄り道をした。

「俺、ここのアイス凄く好きでよく買って食べてるんだ」

「うん、おいしい」

ミナギは、カイトからもらったアイスをおいしいそうに食べていた。

「ミナギって、ここのアイス食べた事あったっけ?」

「うん、あの・・・男の子と」

「そうなんだ」

ミナギの隣にカイトも座った。

「まだ、思い出せないんだよね・・・その男の子の名前」

ミナギは、少し淋しい顔をして頷いた。

「・・・でも私、きっと会えるって信じてるから」

「うん、そう強く信じていればきっと会えるよ」

カイトにそう言われてミナギは笑顔になった。

・・・・・・。

「ねぇ、カイト・・・」

アイスを食べ終わって少しして、ミナギが話し掛けてきた。

「えっ、何?ミナギ」

「この前はごめんね・・・私、また発作を起こしちゃって・・・」

ミナギが悲しげな顔をして話した。

「ううん、いいよ。ちょっとびっくりしちゃったけどね・・・」

「私・・・酷い事しなかった?・・・あの時の事、あまり覚えてなくて・・・」

「い、いや・・・雷の音と光に驚いていただけだったけど・・・」

言ったらきっと、悲しむだろうな・・・

ミナギの目の前で、ミナギの両親が雷に撃たれて死んでしまった事・・・

雷でのショックで、俺の事を拒絶していたなんて事を・・・

とりあえず・・・ミナギの気持ちが真っ直ぐに立ち直るまで黙っている事に決めた。

「そう、なら良かったけど・・・」

「気にする事はないよ、ミナギ。こうして俺の前で元気な姿を見せてくれたしね」

「えへっ、ありがと・・・カイト」

カイトの励ましの言葉にミナギは笑顔で答えた。

2人はしばらく町を眺めていた・・・色々な人が買い物をしたり、女の子と小さなドラゴンがじゃれあってたり、旅行客がいたりと、とても賑やかな光景だった。

「ねぇ、カイト」

「ん、何?ミナギ」

「何だか私達デートしてるみたいだね」

「えっ!?」

ミナギの言葉に、カイトは思わず驚いた。

「えへへ・・・」

「あ・・・えっと・・・」

今まであまりそんな事を意識してはいなかったけど、改めてミナギにそう言われるとカイトは急に恥ずかしくなってきた。

でも、こんな気持ちも悪くないかもとカイトは思った。

#7「雨宿~あまやどり~」end.

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#8「試験~しけん~」1

「ハルー!」

「あっ、カイト君、ミナギちゃん、フォーも。いらっしゃい」

今日は、ハルのドラゴンブリーダーとしての試験の日だった。

その応援にと、カイト達は特設の試験会場へとやってきた。

もうすでにシンジや他の友達、クラスの仲間も着いていた。

「よっ、カイト」

「おっ、シンジ」

カイトとシンジは、いつものようにハイタッチを交わした。

「こんにちはミナギ。カイトとはどう?」

「えっ・・・どうって・・・」

シンジの突然の質問にミナギはどう答えていいか困っていた。

コツッ。

「あたっ」

ミナギとシンジのやり取りを見て、カイトは即効軽いツッコミを入れた。

「あんま茶化すなよ、シンジ」

「あはは、わりぃわりぃ・・・」

あまり悪気があるようには見えなかった。

シンジは女の子は絡んでくると、面白がって真っ先に飛びつく事が多かった。

いつもの事だったので、カイトは全く気にする事無くさらっと話を流す感じでやり過ごした。

「皆、私の為にありがと」

ハルは、カイト達に感謝の思いを伝えた。

「この試験が受かればハルは、別の町に行っちゃうんだね・・・」

「そうだね、皆と別れてしまうのは辛いけど・・・小さい頃からの夢だったから」

「ハル、行っちゃうの?」

カイト達の会話を聞いたミナギが驚いて駆け寄ってきた。

「うん・・・」

ハルは、言い難そうにミナギに話した。

「せっかく友達になれたのに・・・」

「ごめんね、ミナギちゃん・・・でも、私の夢だから・・・ドラゴンブリーダーになる事が・・・」

「うん、そうだね・・・」

ハルの叶えたかった夢・・・引き止めちゃいけないのは分かってるけれど、別れるのは辛い・・・そんなミナギの姿を見て、カイトは辛くなりそうだった。

「受験者の皆さん、そろそろ試験を開始しますので準備を始めてください」

スピーカーから、試験開始のアナウンスが流れた。

いよいよ試験が始まるようだった。

「それじゃ、行ってくるね」

「落ち着いてね、ハル」

「ハル、頑張ってね・・・」

「いつもどうりのハルで行けよ」

他の友達やクラスの仲間から声援をもらって、ハルはありがとの代わりに笑顔で交わした。

そして・・・

試験が開始された。

最初は、ドラゴンとどれだけ意思の通じ合いが出来るか採点される。

今回、試験を受けるのは16人・・・

その中で受かるのは3人だけだった。

最初の試験を突破出来るのは10人・・・

カイト達は、スタンドでハルを見守っていた。

ハルは、少しだけ緊張していたようだったが、持ち前の器用さで難なくこなした。

こうして一次試験は終了した。

・・・・・・。

「ふぅー・・・」

「おつかれ、ハル」

「えへ、ありがと」

控え室にハルが戻ると、今までの空気が嘘みたいに軽くなった。

カイトの励ましの言葉にハルは笑顔で答えた。

「見てて何となく、危なっかしかったなぁ・・・」

「途中までは緊張してたけどね・・・皆が応援してくれてるって思ったら、何とか調子が戻ったよ」

ハルは、シンジに精一杯の笑顔で話した。

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#8「試験~しけん~」2

少しして・・・

「お待たせしました、一次通過者の発表です」

スピーカーから発表の知らせが来た。

廊下に出ると、張り紙が貼ってあった。

紙に書かれた10人の名前、そこにハルの名前は・・・

「あったぁー・・・」

そこには、ハルの名前がしっかりと書かれてあった。

「やったね」

「次も頑張ってね、ハル」

「うん、ありがと。次も頑張るね」

皆に励まされて、ハルは笑顔で話した。

・・・・・・。

いよいよ二次試験が始まった。

二次はドラゴンとのコンビネーションの審査だった。

二次で残るのは6人だった・・・。

カイト達が固唾を呑んで見守る中、ハルは無事に課題をこなした。

こうして、二次試験は終了した。

・・・・・・。

「ただいまー」

「お帰り、ハル」

「おつかれー、ハル」

「ハル、かっこ良かったよ」

「皆、ありがと」

少しだけ和やかな空気で包まれた。

たとえ、落ちたとしても後悔はしないからと・・・

試験の始めに話したハル・・・

夢に向かっているハルが、いつもより輝いていて・・・でも・・・

淋しい気持ちさえもあった・・・

皆と笑顔で話してるハルを見て、カイトはそう考えてしまった。

でも・・・引き止める事は出来ない・・・

それが、ハルの決めた道だから・・・

・・・・・・。

そして、二次試験の発表の知らせが来た。

ハル達は、発表を見る為に廊下に出た。

廊下に貼り出された二次通過者の名前・・・

二次通過者は6人・・・

「・・・・・・」

ハルは緊張の中、張り紙を見つめた・・・

「あったぁ・・・」

ハルは自然と笑顔が零れていた。

「いよいよ最終試験だね、ハル」

「いつもの調子で頑張れよ」

「ハル・・・頑張って・・・」

「ありがと・・・皆・・・私、頑張るから」

最終試験の前に、約1時間の休憩が入った。

ハルは今までの緊張を解すかのように、皆と話していた。

泣いても、笑っても・・・これが・・・

最後だから・・・

・・・・・・。

「あれ?ミナギちゃん」

「えっ、何?ハル・・・」

「カイト君は?」

ハルは、話してる途中でカイトがいなくなってる事に気が付いてミナギに聞いた。

「カイトは今さっき、洗面所の方に行ったよ」

「ありがと、ミナギちゃん」

ハルはそう言って洗面所に向かった。

・・・・・・。

「・・・はぁ・・・はぁ・・・」

誰もいない洗面所の奥で、カイトは苦しそうに首を下げていた。

「うっ、げほっ、げほっ・・・」

せめて、今日だけは保ってほしかったと思いながら、少し落ち着いた所でカイトはポケットから薬を取り出して一粒飲んだ。

「はぁ・・・」

ようやく気持ちが落ち着いたカイトは、洗面所を後にした。

「あっ、カイト君」

「わっ、ハル・・・」

カイトがちょうど出た所で、ハルにばったりと会った。

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#8「試験~しけん~」3

「カイト君・・・」

「えっと、どうしたのハル・・・?」

カイトは、いきなりハルに出会って少しだけ焦った。

「カイト君、何か顔色が・・・」

「え?う、うん、ちょっとだけ気分が悪くなっただけだから」

「大丈夫なんだよね?カイト君」

「う、うん」

カイトは、作り笑いで誤魔化した。

「カイト君・・・ちょっといいかな?」

「え?うん、いいよ」

カイトとハルは人気の無い廊下に移動した。

・・・・・・。

「いよいよだね、ハル」

「う、うん・・・」

「・・・怖くない?」

「少しだけ・・・かな?」

壁に寄り掛かっているカイトのその横で、ハルはしゃがんでいた。

「・・・これが受かったら本当に行ってしまうんだね?」

「・・・うん」

カイトの話にハルは静かに頷いた。

「いなくなっちゃうのは淋しいけどね・・・でも、ハルの夢だから・・・こんな俺に出来るのはハルの応援だけだけど・・・」

「うん、ありがと・・・カイト君。私、絶対合格するね」

「ハルならきっと、大丈夫だよ・・・」

ハルは小さく頷いた。

・・・・・・。

カイト達が見守る中、いよいよ最終試験が始まろうとしていた。

最終試験は実践だった。

ドラゴンと協力して目的地にある紋章を持ってここに戻ってくる事・・・

もちろん、行く手にはいくつもの難関が待ち構えている。

バーン!とゆう音と同時にそれぞれの空へと羽ばたいて行った。

少しして、モニターにハル達が映された。

1つ目の大地の関門、2つ目の湖上の関門と無事に突破し、3つ目の関門の高い空へと向かっていた。

そこには審査員のドラゴンが行く手を阻んでいた。

6対3だったが、束でかかっても適う感じではなかった。

「うっ!」

一体のドラゴンと受験者が吹っ飛ばされて地面に叩きつけられた場面を見てカイト達は目を反らしてしまった。

そして、もう一体のドラゴンと受験者が審査員のドラゴンに掴まれて地面の方へ投げつけられた。

ドラゴンブリーダーの道・・・

予想していた以上にハードな試験だった。

それでも・・・ハルはなりたいって言った。

モニターに映し出されたハル達の真剣な眼差し・・・

見守って応援する事・・・今はそれしか出来ないけど・・・

「うっ!」

その時、グライドが審査員のドラゴンに掴まれた。

「ハル、グライドー!」

大きさも二倍ほどある審査員のドラゴン相手に敵わず、ハルとグライドは投げ出されたが地面すれすれで留まった。

「いっくよー、グライド!」

ハルは反動で審査員のドラゴンに向かった。

グライドは審査員のドラゴンに近付くにつれて加速していった。

顔の辺りを掠り、一体のドラゴンが仰向けになって地面に倒れた。

やがて、倒された受験者も這い上がってもう一体の審査員のドラゴンに向かった。

そして、一体、もう一体のドラゴンが地面へと倒れていった。

スタンドから歓声の声が溢れた。

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#8「試験~しけん~」4

受験者達は目的地にある紋章を手にして後は、このグラウンドに戻るだけとなった。

後半戦は受験者達の戦いだった。

受験者はハルを含めて6人・・・

ブリーダーとしての資格を手に出来るのは僅か3人・・・

カイト達はモニターでただ、静かにハルの帰りを待った。

水辺を抜けて、森林を抜けると後は、長い崖を抜けるだけだった。

帰りのルートは複雑で、スピードを出し過ぎると衝突の恐れが強かった。

ハル達はギリギリのスピードの中、何とか障害をかわして行った・・・

「あっ!」

その時、1人の受験者が細い曲がり角を曲がり切れずに衝突してしまい地面に叩きつけられた。

「・・・っ!」

その場面をモニターで見たミナギは思わず顔を伏せた。

その衝突で、落ちてきた岩にもう1人の受験者のドラゴンに当たり、バランスを失って落ちてゆく・・・

その間を2人の受験者が抜けて、追うか追われるかの接戦を繰り広げていた。

そんな中、ハルも後をしっかりとついてきていた。

その時・・・

「えっ・・・?」

何か、地震のような揺れが向こうの方・・・ハル達の方向から大きな振動が来たようだった。

「わっ!」

やがて、その揺れは会場全体をも襲い、モニターは一瞬だけ乱れが走った。

揺れは止んでそして、この会場に待機していた審査員とドラゴンが一斉にハル達のいる場所へと向かった。

一転、辺りがざわめきだした・・・

「あの方向・・・ハル達は大丈夫かな?」

カイトの言葉にミナギは心配になってきた。

「カイト・・・」

「きっと、大丈夫だよ、きっと・・・」

カイトは、ミナギにただ、大丈夫と繰り返した・・・

ハルが笑顔で、皆が無事に戻って来る事を願って・・・

・・・・・・・・・。

「・・・・・・・・・う・・・」

「ハル・・・」

「・・・カイト君?」

「良かった、ハル・・・気が付いて」

意識を戻したハルを見て、カイトはほっとした表情でハルを見つめた。

「ここは・・・?」

「病院だよ。ハル達皆手当てをしてもらったんだよ」

「どうして・・・私、ここに・・・?」

まだ状況が分かってないらしく、ハルはカイトの腕にしがみついていた。

「ハル達が戻ってくる途中で大きな地震があって、その時に崖崩れがあって・・・」

「そうなんだ・・・」

ハルは小さくため息を吐いた。

「カイト君、試験は・・・どうなったの?」

「中断されたよ・・・こんな緊急な事態じゃ試験どころじゃないって話になって・・・」

「はは・・・」

ハルは泣きそうな顔で笑った。

「大丈夫だよ、ハル・・・また後日に改めて最終試験をやるって・・・」

「本当に??」

「先生から後で連絡があると思うけどね・・・」

カイトの言葉にハルは安心したのか、ハルは力が抜けたようだった。

「カイト君、グライドは大丈夫?」

「少しだけ怪我してたけど、今は眠っているよ。ハルも今日はゆっくり休んだ方がいいよ」

「うん・・・」

ハルがふと横を向くと、ミナギが小さい寝息を立てて眠っていた。

「ミナギちゃんも・・・」

「うん、俺と一緒にハルを看病したいって・・・」

「くすっ、眠ってるミナギちゃん、かわいい」

ハルは、眠ってるミナギを見ながら笑顔で話した。

「ほら、ハルも・・・あまり無理するといけないから・・・」

「うん、カイト君、ありがと・・・ミナギちゃんも」

ハルは静かに眠りについた。

・・・・・・・・・。

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#8「試験~しけん~」5

それから一週間後、最終試験に残った6人による再試験が開始された。

カイト達が見守る中、危なっかしい感じながらも何とか無事に全員グラウンドに戻ってきた。

後は・・・結果を待つだけだった。

・・・・・・・・・。

約1時間後、合格発表を知らせるアナウンスがされた。

押し潰されそうな緊張の中、ハルは名前を呼ばれるのを待った。

1人、また1人と、ゆっくりと名前を呼ばれ、残りあと1人だった・・・

「・・・・・・・・・」

祈るような思い、ハルの緊張がカイト達にも伝わるようだった・・・

そして・・・

「受験番号08、ハル」

「・・・・・・・・・あっ」

名前を呼ばれた瞬間、ハルは嬉しくて喜びよりも先に涙が流れていた。

「おめでとう、ハル」

「おめでと、ハル」

「やったな、ハル」

皆から祝福を受けて、ハルは言葉にならない程の喜びをもらっていた。

ハル・・・おめでとう・・・

これで、夢に一歩近付いたね・・・

離れてしまうのは淋しいけれど・・・

・・・・・・・・・。

それから二週間後、今日はハルの旅立ちの日だった。

ハルはグライドに荷物を乗せて、出発する準備をしていた。

「もう、お別れなんだねハル・・・」

「また、この町に帰ってくるから。・・・皆に会いたいし」

「ハル、頑張ってこいよ」

「うんっ」

別れを惜しむかのように、皆に笑って交わした。

決して泣かないように・・・。

「あれ?カイト君は・・・?」

ハルがふと、辺りを見渡すとカイトの姿が無かった。

「カイトはさっき、洗面所に行くって・・・」

「わたし、カイト君に会ってくるね」

「あっ、私も・・・」

ミナギがそう言おうとした時、ハルは右手でいいよと静止した。

「ごめん、ミナギちゃん。少し2人で話したいの・・・」

「う、うん・・・」

ハルは、ミナギにそう言って洗面所の方へ向かった。

・・・・・・。

「・・・カイト君ー」

ハルはカイトを呼んでみたが、反応が無かった。

「カイト君・・・?」

ハルが洗面所の中を覗いてみてもカイトの姿が無かった。

「・・・けほっ」

「えっ?」

ハルが別の場所を探そうとした時に、誰かが咳き込むような声がした。

「カイト君?」

ハルは洗面所の中に入っていった。

角を曲がるとカイトがいて、何かを飲んでる姿が見えた。

「カイト君・・・?」

「あっ、ハル・・・」

カイトは、突然のハルの登場に一瞬だけ焦った。

「どうしたの、カイト君・・・大丈夫?」

「あっ・・・うん、大丈夫。ちょっとだけ気分が悪くなって・・・」

そう言ってるカイトの表情を見ると、かなり顔色が悪かった。

「カイト君、大変・・・保健室に行った方が・・・」

「え?・・・いや、そこまでしなくても大丈夫だよ・・・」

カイトはとっさにハルとの距離を離した。

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#8「試験~しけん~」6

「だめだよ、そんな顔色じゃ・・・私が手を貸すから・・・」

ハルが心配してカイトに近付いて・・・

「もう大丈夫だよ、さっき薬を飲んだから・・・もう効いてくると思うから・・・ごめんねハル、余計な心配かけちゃって・・・」

カイトは、ハルが近付く前にそう説明した。

「そう・・・本当に大丈夫なんだよね?」

「うん、大丈夫。もう戻るから先に行ってていいよ、ハル」

カイトはハルにそう言って、先に出るように促した。

「うん、分かったよ。先に行っ・・・わっ!」

ハルが洗面所から出ようとした時、つまずいて仰向けに転びそうになった。

「危ない!」

カイトはとっさにハルの側に駆け寄った・・・

どさっ。

「あたた・・・」

カイトがクッションになるようにハルはその上に倒れていた。

「あっ、ごめん・・・カイトく・・・っ!?」

ハルが起き上がる時、ハルの右手がカイトの胸の辺りに触れてしまっていた・・・

「あっ・・・!?」

「カイト君・・・・・・何で・・・?」

ハルは、カイトの胸のあまりの冷たさに右手を押さえていた・・・ハルの右手は冷たさでまだ凍えていた。

「・・・・・・・・・」

「カイト君・・・どうして?・・・そんなに冷えてるの?」

カイトは、もうハルに隠すのは止めようと心に決めた・・・

もう、これで二度と顔を合わせられなくても・・・

「ごめん、ハル・・・これから君に、今まで言えなかったこの胸の事を話すよ」

カイトはゆっくりと起き上がって、覚悟を決めたようにハルに話し始めた。

・・・・・・・・・。

「はぁー・・・」

大体話し終えて、カイトは小さくため息を吐いた。

「そんな事が・・・あったなんて・・・」

ハルは、カイトに何て言っていいか分からなかった。

「皆に恐れられてる『灰色の願い人』の事・・・誰にも言えなくて・・・」

「お母さんとフォーの為に・・・」

カイトはただ、頷いた。

「私、そんな事があったなんて知らなかったよ・・・カイト君のお母さんの体調の事は知ってたけど、フォーにそんな辛い事が・・・」

ハルは、フォーの笑顔を思い出して余計に涙が零れそうになっていた。

「でも、後悔はしてないんだ・・・俺のこの心の欠片と引き替えにお母さんとフォーが元気になってくれた、それだけで・・・たとえ、俺が何を言われようとどうなろうとも・・・」

「・・・・・・・・・っ!」

カイトがそう言うと、ハルはカイトの胸に抱きついた。

「カイト君のばかっ!・・・カイト君の・・・・・・」

「ハル・・・」

ハルは泣きながら、カイトの胸の辺りを軽く叩いていた。

「何で、そう自分を大事にしないの?・・・そんな事で助かっても、カイト君が死んじゃったら・・・」

「ごめん、ハル・・・」

カイトはただ、ハルに謝る事しか出来なかった。

「ぐす、ごめんね、カイト君・・・取り乱しちゃった」

カイトは、小さく首を横に振った。

「それじゃ、学園祭の準備の時も、皆で大空を飛んだ日も・・・その胸が・・・」

カイトは、静かに頷いた。

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#8「試験~しけん~」7

「ミナギちゃんは、この事知ってるの?」

「うん・・・学園祭が終わった翌日の休日に父さんの墓参りに行ってた帰りにミナギとたまたま会って・・・」

「どうして、ミナギちゃんには話したの?」

ハルは涙を拭きながらカイトに尋ねた。

「ミナギとはまだ出会ったばかりだったし、忘れてくれるならって思って・・・自分で覚悟を決めて話したんだ。でも、ミナギは怖がるどころか側にいてくれるって、言ってくれて・・・」

「・・・・・・」

ハルは少しだけ俯いていた。

「ハル・・・?」

「・・・・・・私にも、話してほしかったな・・・」

「ハル・・・」

ハルは少しだけ笑顔を見せながらカイトに話した。

「怖かったんだ・・・友達を失うのが・・・こんな自分を・・・恐れられてる灰色の願い人の力を借りたって皆に知られるのが・・・」

カイトはそう話しながらも、真っ直ぐにハルの目を見る事が出来なかった。

「カイト君・・・たとえ、色んな人に恐れられてる『灰色の願い人』の力を借りたとしても、カイト君の優しい気持ちは全然変わらないから・・・」

「・・・・・・」

ハルは、真っ直ぐな目でカイトを見つめながら話した。

「カイト君・・・死んじゃったりしないよね?」

「えっ?」

「お願い、それだけははっきり言って、そうじゃないと私、笑顔でこの町を飛び立てないよ・・・」

ハルは泣きそうな顔を伏せながらカイトに聞いた。

「大丈夫、だよ。俺はそんな事でいなくなったりはしないから」

カイトはそう答えると、ハルは笑顔で頷いた。

「・・・・・・」

「私、必ずこの町に帰ってくるから。いつになるかは分からないけど・・・」

「うん、待ってるよ」

ハルは、吹っ切れたような表情で話した。

「カイト・・・」

「え?何、ハル・・・?」

ハルは一息置いてから・・・

「私が帰ってくる前にいなくなったら許さないからね・・・もし、いなくなったら魂になってでもカイト君を連れ戻すから・・・私だけでなくミナギちゃんを悲しませる事なんて・・・絶対に」

「ハル・・・」

ハルはそう話した後・・・

「・・・・・・」

「えっ・・・?」

気が付いたら、ハルがカイトの頬にキスを交わしていた。

「私・・・カイトの事、好きだったんだよ・・・」

「え・・・・・・」

ハルは、笑顔でその場を後にした。

「・・・・・・」

カイトは、突然の事に少しだけ呆然としていた。

・・・・・・・・・。

ブリーダーの資格を持った3人と2人の先生が揃って、いよいよ出発の時が来た。

それぞれ別れの挨拶を交わしていた。

「ハル、また会えるよね・・・?」

「うん・・・」

「元気でな」

「うん・・・」

「皆で待ってるから・・・」

「うん・・・」

カイト達は目を潤ませながら、それぞれ挨拶を交わした。

「グライドも元気でな」

「グォー!」

グライドは、カイトに頬擦りをした。

「フォーゥ・・・」

「フォーも元気でね・・・」

「フォーゥ・・・」

「・・・・・・」

カイトはフォーの顔を見ると、とても淋しそうな顔をしているようだった。

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#8「試験~しけん~」8

「・・・なぁ、フォー」

「フォー?」

「お前、グライドと一緒に行きたい?」

「フォー?」

カイトは、フォーとグライドの様子を見て1つの思いを決めた。

「フォー、もしグライドと一緒に行きたいなら・・・お前が決めてもいいよ」

「カイト君?」

「カイト?」

カイトの突然の話に皆が驚いていた。

「カイト、お前フォーとはもう家族同然の存在じゃないのか?」

「そうだよ、カイト君・・・フォーだって・・・」

カイトは、一息置いてから・・・

「やっぱりフォーは人間と一緒よりも、より気持ちが分かる分かり合えるドラゴンと一緒の方がいいって・・・フォーを傷付けた同じ人間といるよりは、きっと・・・」

カイトは、あの時のフォーの痛々しい姿を思って、皆に話した。

「カイト・・・」

「カイト、まだそんな事を気にして・・・」

「カイト君・・・そんな事・・・」

ハルがカイトに言いかけた時、先生が前に出てきた。

「分かりました・・・この子に決めてもらいましょう・・・それで良いですね、カイト君?」

先生優しい眼差しでカイトに話した。

「フォーゥ・・・」

フォーは、少し悲しげな表情を見せた。

「前は俺の勝手でフォーと別れようとしたけど、今度はフォーが決めて良いよ・・・もし、俺といたかったらいてもいいんだ、フォー」

カイトの目は真剣だった。

「フォーゥ・・・」

フォーはハル達とカイト達を交互に見ていた。

そして・・・少し経って、フォーは動き始めた。

フォーはゆっくりと・・・

「フォー?」

カイト達の方へ向かって行った。

そして、カイトに近付いて頬擦りをした。

「フォー♪」

「あはは、フォー・・・本当にいいのか?俺と一緒で・・・」

「フォー♪」

フォーは嬉しそうな顔で返事をした。

「えへっ」

「うふふっ」

皆はカイトとフォーの姿を見て微笑んでいた。

・・・・・・。

「それじゃ、行ってくるね」

「ああ、元気でな」

「頑張れよ」

「気を付けてね・・・」

ミナギは泣きそうな顔をしていた。

「ミナギちゃんほら・・・泣かないで。必ず戻ってくるから」

ハルは、ミナギの頭を撫でながら言った。

「うん・・・」

「そろそろ出発しまーす。忘れ物は無いですか?」

「じゃっ!」

ハル達は飛び立って行った。

姿が遠くに消えても見送りを止める事は無かった。

・・・・・・・・・。

「行っちゃったね・・・」

「うん・・・」

「フォーゥ・・・」

カイトとミナギ、フォーは夕焼けを見ながらハルの事を話していた。

「フォー、ありがと。こんな俺だけどよろしくな」

「フォー♪」

「くすす」

カイトとフォーの微笑ましいやり取りに、ミナギは笑顔になっていた。

ハル・・・

立派になって、帰ってきてね・・・

皆で待ってるから・・・・・・。

#8「試験~しけん~」end.

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#9「冬始~ふゆのはじまり~」1

枯葉が落ち・・・

冷たい風が、冬の始まりを告げた。

授業が終わって、カイト達はほうきを持って掃除をしていた。

「ふぅ・・・」

冬の始まり・・・どこか、もの悲しい・・・気持ちになって・・・

「うっ!」

カイトは急に気分が悪くなってしゃがみ込んだ。

「げほっ、げほっ・・・」

「おい、カイト大丈夫か?」

カイトは、シンジに返事の代わりに手で交わした。

少し急ぎ足でカイトは教室を出た。

・・・・・・。

少しして、カイトは教室に戻ってきた。

「あはは、ごめん皆・・・」

「カイト、本当に大丈夫なのか?」

「だ、大丈夫大丈夫」

カイトは笑って誤魔化した。そして、何事も無かったかのようにカイトは掃除を再開した。

「・・・・・・」

シンジは、カイトの事が気になったが、様子を見て大丈夫そうだったので掃除を続けた。

・・・・・・。

「カイトー、一緒に帰ろうぜ」

「ああ、いいよ」

珍しく、カイトとシンジとで帰る事になった。

「なぁ、カイト・・・」

「ん、何?シンジ・・・」

シンジがカイトの方に首を向けながら話し始めた。

「お前、本当に大丈夫なのか?」

「え?な、何だよ?」

「いや、だってさ・・・最近、よく授業を途中で抜け出す事あるからさ・・・」

シンジは、気になってる事をカイトに聞いた。

「あ、まぁ・・・ちょっと調子崩してる事はたまにあるけど・・・大丈夫だって」

カイトは、何事も無いかのようにシンジに答えた。

「なら、いいんだけど・・・カイト」

「ん?」

「あまり無茶をするんじゃないぞ。学園祭の事もあるんだし・・・」

シンジは、いつもより真剣な表情でカイトに話した。

「うん、分かってるよ・・・お母さんの事もあるし」

「まぁ、何だ、お前は1人じゃないって事・・・何か困った事があったら、俺にでも相談してもいいんだぜ」

シンジがそう話すと、カイトは「はは、大きなお世話だって」と、照れ隠しのように笑って返した。

「おっと、俺はここで・・・」

「それじゃ、シンジ」

「また明日な、カイト」

そうして、カイトとシンジは角で別れた。

「・・・・・・」

カイトはゆっくり歩き始めた。

「・・・・・・はぁ・・・」

カイトは空を見上げた。

最近、胸の辺りが苦しくなる感覚が・・・短くなっている?

もう、隠してる事・・・ばれてしまうかな・・・?

「・・・・・・」

出来る事なら、シンジにだって打ち明けたい気持ちで一杯だった。でも・・・

シンジの友達思いの気持ちが、カイトには逆に辛かった・・・。

カイトは少し不安定な気持ちのままで家に着いた。

「フォー」

「ただいま、フォー」

「フォー♪」

家に着くと、フォーが笑顔で迎え入れてくれた。

「ごめん、フォー・・・今日はちょっと・・・」

「フォーゥ・・・」

カイトはそうフォーに告げて、静かに家に入っていった。

「ただいま」

「おかえり、カイト」

カイトは、母親にただいまを言った後、自分の部屋に向かった。

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