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2008年9月

#4「願事~ねがいごと~」5

「それで、ある日父さんが母さんの病気を治す薬を買う為に外国に行ったんだ・・・」

「・・・・・・」

「その、途中で事故に遭って・・・亡くなったって手紙が・・・」

「そんな事が・・・」

ミナギは、何もかける言葉が見つからなかった。

「その手紙を先に母さんが読んでしまって・・・ショックで母さん寝たきりになって・・・」

「・・・うん」

ミナギは静かに頷いた。

「このままじゃ、母さんまで死んじゃうって・・・父さんが死んで、まだ吹っ切れてないのに母さんまで死んじゃったら・・・」

「・・・・・・」

ミナギは何も言葉が出なかった。

「そんな時、小さな頃に出会った事のある人で「もし、何か困った時に私の所へ来なさい」って言う話を思い出して・・・ここから大分離れてる人里離れた山奥に住んでる人に・・・すがる思いで行ったんだ」

「カイト、その人って・・・?」

ミナギは、不意に気になる事を聞いた。

「どんな願い事も叶えてくれる・・・『灰色の願い人』と、呼ばれる人・・・」

「あっ・・・」

カイトのその言葉に、ミナギは表情を曇らせた。

灰色の願い人・・・噂では聞いた事があった。

その人は、どんな願い事でも叶えてくれる・・・

でも、それと引き替えに払いきれないお金を請求されたり、引き替えに叶えた者の命が奪われたり、その願い人の手を借りた事で周りの人に不幸を招き入れたりなど・・・

その殆どが触れてはいけない噂話ばかりが色々な人達から流れていた・・・。

ミナギも、誰からかその話を聞いて夜、眠れなかった事があった程に・・・。

「ミナギも、やっぱり聞いた事があるんだね・・・灰色の願い人の噂話を・・・」

カイトは、表情1つ変えずにミナギに聞いた。

「うん・・・噂だけ」

ミナギは少しだけぎこちない感じで答えた。

そんなミナギを見てカイトは、何も聞かずに話を続けた。

「その人はアステルさんって名前で、最初は怖いって感じだったけど話してみたらとても優しい人だったよ」

雲がゆったりと流れていた。カイトは一息置いてから話を続けた。

「俺がアステルさんに「お願い、母さんを助けて」って話して、そうしたらアステルさんはついて来なさいと言って・・・俺が「願いを叶えるにはお金が必要なんですか?」って聞いたら「お金はいい」って言われて・・・アステルさんが「お前の心の欠片が必要だ」って言われて・・・」

「心の・・・破片?」

ミナギは、不安定な気持ちを抑えながらカイトに聞いた。

「うん、母さんの病気が治るのなら・・・ってアステルさんにお願いして」

「そんな事って・・・」

「信じられないよね、そんな話・・・」

ミナギは、静かに首を横に振った。

「それで、俺の心の欠片と引き替えに手に入れた薬を母さんに飲ませたんだ。そしたら嘘みたいに良くなって・・・今は動けるまで回復したんだ」

カイトは、ミナギにそう話した。

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#4「願事~ねがいごと~」6

「カイトのお母さんはその事、知らないんだよね・・・?」

カイトは静かに頷いた。

「その薬・・・何て言ってお母さんに渡したの?」

「「父さんが買った薬がさっき届いたよ」って嘘吐いて・・・」

「カイト・・・」

ミナギは、カイトのその姿が痛々しくて真っ直ぐ見られなかった。

「母さんに話したらきっと・・・ショックでまた寝込んでしまうって思って」

「気持ちは分かるけど、でも・・・」

ミナギのその言葉にカイトは何も言わずに小さく頷いた。

「少しこの胸が冷たくなったけど・・・母さんが元気になってくれたから良かったって思って・・・」

「・・・たった1つの願いでそんなに冷たくなるなんて・・・」

「・・・・・・・・・」

ミナギがそう言うと、カイトは言葉を濁らせた。

「カイト・・・?」

「叶えてもらった願いは1つじゃないんだ・・・」

「えっ・・・?」

カイトのその言葉にミナギは言葉を失った。

「もう1つの願いは・・・フォーに」

「フォーちゃんに・・・・・・あっ」

ミナギは不意に、あの時の事が頭の中を過ぎった。

・・・死んでしまうフォーを助けなければと言う話の途中でカイトが言葉を詰まらせた事を・・・。

「あの時・・・カイトがフォーちゃんを助けるって親戚の・・・」

「うん・・・親戚に診てもらったっていうの・・・嘘なんだ」

「・・・・・・」

「フォーゥ・・・」

あの時の記憶が浮かんできたのか、フォーも悲しげな声で鳴いていた。

「アステルさんに「これ以上の願い事はお前自身の命を奪う」と、忠告されたけど・・・フォーを死なせたくなかったから・・・アステルさんに無理を言って願いを・・・」

「そんな・・・」

ミナギは、涙目でカイトを見つめていた。

「はぁー・・・」

カイトは一通り話して、ため息を吐いた。

「カイト・・・」

ミナギは、何て言っていいのか分からずにカイトの名前を呼んだ。

「願いを叶えてもらった後は、しばらくボーっとしてて・・・アステルさんに「お前は本当に無茶をし過ぎた・・・これで生きてるのは奇跡だ」って言われて・・・」

「カイト・・・本当に大丈夫なの?それは本当に・・・」

ミナギは、何を聞いていいのか分からずにただ、大丈夫とカイトに繰り返し言っていた。

「・・・アステルさんに「このままではお前の命の火が消えるのも時間の問題だろう」って言われて、アステルさんに薬をもらったんだ。「胸が苦しくなったり、体が急激に冷えてきたら飲みなさい」って・・・今はそれで何とか体は保ってるんだ」

「その薬を飲めば助かるんだよね?」

ミナギは、カイトの答えを待った。

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#4「願事~ねがいごと~」7

「・・・分からないよ。とりあえず、今は・・・」

「・・・・・・・・・」

「フォーゥ・・・」

辺りは再び、重い空気に包まれた。

「これで・・・俺が話せる事は全部だよ。ごめん、ミナギ・・・こんな話に付き合わせてしまって」

カイトは、空を見上げながらミナギに話した。

「カイト・・・私・・・」

「俺の事が、怖くなっただろ?・・・色々な人に恐れられてる灰色の願い人の助けを借りたこの俺を・・・」

カイトは空を見上げたまま、ミナギに話した。

それはどこか全てを受け入れるかのように・・・。

「カイト・・・、私はカイトの事信じるよ。カイトは大切に思ってる人を助ける為にしたんだって・・・その話を聞いて最初は怖かったけど、もし私もカイトと同じ立場だったら・・・きっと、私も・・・」

「ミナギ・・・」

ミナギのその言葉にカイトは呆然としていた。

「私は、例え他の人がカイトを怖がっても、一緒にいたい。カイトと笑っていたいから・・・」

「フォー・・・」

ミナギは、涙を抑えるようにカイトに話した。

「・・・・・・ありがとう」

カイトはそう言って、ゆっくりと歩き始めた。

「カイト・・・?」

「フォー・・・?」

ミナギとフォーの呼び声に振り向かずに・・・

「もう、俺には関わらない方がいいよ。こんな話、もし他の人に知られたら・・・一緒にいるミナギにまで辛い思いをさせてしまう・・・それに、ミナギの大切な人まで巻き込んでしまうから・・・だから・・・」

カイトはミナギとフォーに背中を向けたままで歩き・・・

「・・・・・・・・・・っ!」

ミナギはカイトの所まで走って、後ろから抱きついた。

「えっ・・・?」

そのあまりの出来事にカイトは一瞬だけ言葉を無くした。

「嫌だよ!私・・・」

「ミナギ・・・?」

「カイトだって、私の大切な人だよ・・・たとえ、その願い事の話が原因でカイトが嫌われても・・・一緒にいるよ」

「・・・・・・・・・」

「私じゃ、力になれないのかな?こんな私でも・・・」

カイトは、ミナギの思いもしなかった行動に驚いて言葉が出なかった。

「たとえ、力になれなくても側にいたい。私の我儘でも・・・」

「ありがと、ミナギ・・・」

カイトは、涙目になってるミナギの頭をそっと撫でた。

「えへっ」

「・・・・・・・・・」

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#4「願事~ねがいごと~」8

「フォー」

いつの間にか、目の前に立っていたフォーにカイトは頬擦りをされていた。

「あはは、フォー、くすぐったいよ・・・」

今までの重い空気が今、ようやく晴れた気がした。

・・・・・・・・・。

「ミナギ、今日は本当にありがとう。ミナギに話して良かったよ・・・これで怖がられるって思ってたから・・・」

「ううん、聞いてて辛かったけど・・・嬉しかったよ。こんな私に話してくれて」

いつの間にか、辺りは夕日に染まっていた。

色々な人から恐れられてる・・・灰色の願い人の噂・・・それは、自らの心の欠片を願い事に変えるとゆう・・・あまりにも現実から遠くかけ離れたものだった。

それでも、ミナギは信じてくれて、怖がるどころか側にいてくれると言ってくれた・・・

その気持ちだけでもカイトには嬉しかった。

だけど・・・

これから・・・

どうすれば・・・

カイトは、夕日で赤く染まった町を丘の上で座って見ていた。

その横でミナギとフォーも一緒に景色を見ていた。

カイトは、この景色をいつまで見ている事が出来るのだろうと・・・心の隅で思っていた。

きっと、もうそんなに長くは・・・

「ねぇ、カイト」

「ん、どうしたの?ミナギ・・・」

「きっと、カイトが助かる方法はあるよ。だって、カイトは・・・お母さんやフォーちゃんを助ける為に願いを・・・」

「ミナギ・・・」

ミナギは、無理して言葉を繋げて話してるように見えた。

でも、元気を出して欲しくて話してるんだってカイトはそう感じた。

「そうだね・・・きっとあると思う。そうだよな、諦めちゃダメだよな・・・ミナギ、ありがと」

「私、何にも出来ないかもしれないけど・・・きっと、きっと大丈夫だよ・・・」

「そうだね」

「フォー♪」

カイトとフォーとミナギは、それぞれの叶えたい思いを交わし別れた。

#4「願事~ねがいごと~」end.

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#5「羽根~はね~」1

「ふぁ~・・・」

今日は少し曇りがちな天気だった。

昨日は色々な事があって、カイトはあまり眠れなかった。

「よっ、カイト」

「おっ、シンジ」

カイトとシンジはいつもどうりに挨拶代わりにハイタッチを交わした。

「ふぁ~」

「何だカイト、寝てないのか?」

「昨日はね、色々あってね・・・」

「もしかして、ミナギと・・・」

「違うって。昨日は朝から父さんの墓参りに行ったり、買出しに行ったりしてたかな・・・?」

「・・・そっか」

カイトの事情を大体知っていたシンジは、言葉少なめに交わした。

「疲れてたはずなのに・・・中々寝付けなくて本を読んでたんだ」

「本ってエッチなやつか?」

「ちーがーうーよっ!」

カイトは、ぽかっと軽くシンジの頭を叩いた。

「あっ、いてぇ・・・」

「お前と一緒にするなっての」

カイトは半ば呆れ気味にシンジの方を振り向いた。

「あーあ、相変わらずねぇ・・・2人は」

「あっ、ハルおはよー」

「よっ、ハル」

後ろからハルが呆れ顔で歩いてきた。

「何か、3人揃うって珍しいね」

「あっ、そーいえば・・・」

「そうね・・・」

普段は、1人か2人で朝から3人揃う事はあまり無かった。

短い登校時間だけど、カイトはその何気ない時間が大切に思えた・・・

何も、他愛も無い話をしながら間もなく3人は教室に着いた。

・・・・・・。

時を同じくして、1年のクラスで先生が転校生としてミナギを紹介していた。

・・・・・・・・・・・・。

間もなく、昼休みに入った。

カイトは学食に向かっていた。

「おーい、カイトー!」

「どうしたんだよシンジ?そんな慌てて・・・」

カイトは声の方に振り向くと、シンジが駆け寄ってきた。

「いや、何か1年で転校生が来たってゆうからさっ、見に行ってたんだ」

「お前、わざわざ何で1年の転校生の事、気にしてんのさ?」

カイトはシンジの呆れる位の行動に逆に感心してしまう程だった・・・。

「あれぇ、気になんない?」

「学年も違うしなぁ・・・」

カイトは、さらっと流すように言葉を交わした。

「まっ、それでな、誰が転校してきたと思う?」

「あっ・・・」

カイトは、シンジに言われて思い出した・・・

今日からミナギがこの学校に通うって事を・・・。

「あれ?お前知ってるの?」

「いや、全然・・・それで誰が転校してきたの?」

カイトはどうせ知ってると言えば、シンジに茶化されるのは分かってるのでさらっと言った。

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#5「羽根~はね~」2

「ほら、学園祭でお前と一緒にいた・・・」

「ミナギ?」

カイトは、今さっき気が付いたふりをして答えた。

「そっ。いやー、制服姿も可愛かったなぁ・・・それが今はもうカイトの恋人なんてな・・・」

ぽかっ。

「いってぇ・・・」

「何でお前は女の子と話してるだけでそう思うんだよ?」

カイトは、やれやれと言わんばかりに学食に向かった。

「カイト待てよー、俺も行くわー」

「いいよ、お前は1人で転校生を見に行ってろよ・・・」

「あー、冷てぇーなぁ・・・」

2人は何一つ変わらない感じのやり取りを交わしながら学食に向かった。

・・・・・・。

やがて、カイトとシンジは学食に着いた。

「えっと、俺はAランチ」

「俺はね・・・Cランチでいーや」

注文したものを受け取り、カイトとシンジは近くの席に座った。

「なぁ、カイト・・・」

「なーに、シンジ?」

「ほら、あそこ・・・」

「ん・・・?」

カイトはシンジの指差した所を見ると、1年生2人がランチを持って席に着いたとこだった。

「あ・・・」

ミナギだった。さっそく友達が出来たのか、仲は良いように見えた。

「カイト、ミナギを呼んでこようか?」

「いいよ、何でわざわざそんな事すんだよ?」

カイトはシンジの言葉に慌てて言葉を返した。

「だって、お前ミナギとつき・・・」

ぽかっ。

「いったぁ・・・」

カイトはシンジが言わんとしてる事を言い終わる前にツッコミを入れた。

「んだから、いつ付き合ってるって言ったんだよ?」

カイトは半分呆れ顔になっていた。

「ん~・・・どう見たってあの時の雰囲気は・・・」

シンジのしてやったりのにやけ顔にカイトは苦笑いをするしかなかった。

「まっ、仮に俺がミナギの恋人だったとしても、あの2人の邪魔はしたくないから」

カイトは、ミナギが友達と楽しそうに話してる姿を見てそう話した。

「あーあ、相変わらすだなぁ・・・お前も」

「な・・・何だよ?」

「そうゆうのに鈍感つうか・・・」

「あはは、ほっとけ」

カイトはシンジの見透かされたような言葉にカイトは、はいはいとシンジに手を振った。

「まっ、それがカイトらしいんだけどな・・・」

「・・・・・・・・・」

シンジのその言葉にカイトは笑うしかなかった。

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#5「羽根~はね~」3

・・・・・・・・・。

カーン・・・コーン・・・。

「はい、今日の授業はここまで」

「ふう・・・」

今日も無事に授業が終わった。

帰りの準備をしてる人、ほうきを持って掃除を始める人、部活の道具を持って教室を出て行く人・・・いつもの風景、何も変わらぬ日常・・・

カイトはノートを鞄に詰めながら安心していた。

「それじゃ、明日」

「ああ」

「明日ね、カイト」

カイトは教室を出て、真っ直ぐ図書室に行った。

・・・・・・。

「えっと・・・」

すでに何人かの生徒が来ていて、本を読んだり勉強をしていた。

「あった・・・」

カイトは前から探していた本を取り出した。

「さてと・・・」

図書カードに名前を書く為に受付に向かう途中、一冊の本が目に入った。

「あ・・・」

カイトはその本を取り出した。

「『羽をください』か・・・久しぶりに見ようかな・・・?」

カイトはその本を見て、あの時のミナギの姿が浮かんできた。

「・・・・・・・・・」

また、自分も泣いてしまうんだろうか・・・?

カイトは受付で名前を書いてる時、そう思った。

「さ、どうしよっかな・・・?」

学校を出たカイトはゆっくりと歩き始めた。

「カイトー」

・・・と、聞き覚えのある声にカイトは後ろを振り返った。

「ミナギ?」

同じ時間に終わったのか、玄関からミナギが駆け足でカイトの側にやってきた。

「えへ、カイト一緒に帰ろっ♪」

「ああ」

2人はゆっくりと歩き始めた。

「ミナギ、どうだった?ここでの初めての授業は・・・」

「うん、学校で授業なんて1か月ぶりだったから楽しかったよ。まだ全然授業が追いつかないから大変だけど・・・」

カイトは、ミナギが笑顔で楽しそうに話してる姿を隣で歩きながら見ていた。

「まっ、それは友達や隣の人とかに聞けば何とかなるかな・・・?」

「うんっ、色々教えてもらってるよ」

「ミナギって友達作るの上手いよね。学食で見かけたけど、もうあんなに仲良しになってるし・・・」

カイトは、昼間の事を話した。

「う~ん、そうかなぁ・・・?」

「俺なんか、本当に仲良いのって、小さい頃からの付き合いが殆どだし・・・」

「そうなんだ・・・」

「俺って、そうゆうの得意じゃないんだ。今みたいに友達が出来たのも殆どシンジのおかげだし・・・」

「うん・・・」

ミナギは、カイトが少しだけ淋しい感じで話してる顔を見てミナギは少し言葉を控えた。

「あっ、その友達はどうしたの?・・・一緒じゃないんだ・・・」

「部活だって。「一緒にやらない?」って誘ってくれたんだけど、運動は苦手って断っちゃった・・・」

「そっか・・・」

カイトは、ミナギのそんな姿に言葉少なめに交わした。

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#5「羽根~はね~」4

「そういえば、カイトは部活をやってないの?」

ミナギは、ふと思った事をカイトに聞いた。

「うん、やってない。俺はバイトをやってるから」

「何か欲しいものがあってバイトしてるの?」

「えっと・・・」

カイトは、少し言い難そうにミナギに話し始めた。

「ほら、俺の家父さんいないし・・・母さんもあまり外で働けないから・・・」

「あっ・・・」

カイトにそう言われた、ミナギは気が付いた。

「えっと、その・・・ごめんねカイト・・・」

「いや、謝らなくてもいいよミナギ。そこから小遣いも手に入ってるし、結構楽しいんだ」

カイトは、申し訳なさそうな感じに話していたミナギをフォローするようにすぐに言葉を交わした。

「色々大変なんだね・・・カイトって」

「そうかなぁ・・・?まぁ、来年になったらあまりバイトも出来なくなっちゃうし、今のうちに受験料貯めとかないとって思ってて・・・」

「そっか、カイト来年受験生なんだね・・・」

「まあね・・・だから今のうちかな・・・?」

2人は、昨日までの出来事をまるで忘れてしまう位の笑顔で会話を交わしていた。

「今日はバイトが休みだから、図書室に行って本を借りてきたんだ。家に帰って見ようと思って」

「へぇー、どんな本を借りてきたの?」

「えっとね・・・医学の事についての本・・・医者になりたいって思ってて」

カイトは、そうミナギに話した。

「へぇー・・・カイトは医者になりたいんだね」

「うん、医者になって病気で困ってる人達を助けたいんだ」

「カイトって偉いね。私なんて将来何をやりたいのかあまり考えた事無いのに・・・」

「きっとミナギのやりたい事見つかるよ」

「うんっ」

ミナギは笑顔で答えた。

「あっ・・・そうだミナギ」

「ん、何?カイト・・・」

「ミナギの命の恩人・・・少しでも思い出したのかなって・・・」

ふと、カイトは前から聞こうと思ってた事をミナギに聞いた。

「ううん、あまり・・・一緒にいた事は覚えてるのに・・・その男の子の名前と顔が・・・思い出そうとすればするほど思い出せなくなりそうで、何だか怖くて・・・」

ミナギは、少し淋しい顔をしてして話した。

「・・・そうだね、無理に思い出そうとしない方がいいかもしれないね、ごめんミナギ」

「ううん、きっと会えるって信じてるから」

ミナギの強い思いさえ感じるその言葉にカイトは小さく頷いた。

「ねぇ、カイト・・・他に借りた本ってあるの?」

「えっと、もう1冊借りた」

「どんな本を借りたの?」

ミナギにそう言われてカイトは鞄から本を取り出してミナギに渡して見せた。

「あっ・・・『羽をください』・・・私、この話好き」

「何だか久々に読んでみたくなって・・・」

「思い出すと、また涙が出そうになっちゃうけど・・・」

「うん・・・ちょっと悲しいけどね」

カイトは、少しだけ無理して笑ってミナギに話した。

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#5「羽根~はね~」5

・・・・・・・・・。

「うーん・・・」

「よっと」

しばらくして、カイトとミナギは丘の上に着いた。

町を見下ろすと沢山の人が行き交い、ドラゴンが人と一緒に歩いてたり遠くの空を飛んでいた。

「ここっていい町だね。この丘から見た町の眺めもいいし・・・」

「うん、そうだね。俺はあまりこの町から出た事無いからあまり他の町は知らないけど・・・ここはいい町だって思うよ」

カイトとミナギは、そんな町の景色を眺めながら話した。

「私、お姉ちゃんからこの町に引っ越すって聞いた時にはとっても嬉しくて・・・それに、カイトや色々な人達に出会えて・・・この町来て良かったって・・・」

ミナギは余程この町に住める事が嬉しかったのか、終始飾りの無い笑顔でカイトに話していた。

「ミナギのお姉さんはどうして、この町に引っ越しを決めたの?」

カイトは、ふと気になった事をミナギに聞いた。

「私がこの町に住みたいって、何度も我儘言っちゃって・・・お姉ちゃんの都合も考えずに何度も困らせちゃって・・・それでも、お姉ちゃんが仕事先に頼んでこの町にしてもらったって・・・」

「ミナギは本当にあの男の子に会いたかったんだね・・・ミナギのお姉さんって凄いね」

強い思い・・・それさえあればいつかは叶えてしまうものなのだろうか・・・?

・・・話してるミナギを見てカイトはそう思った。

「えへっ、お姉ちゃんに大分迷惑かけちゃったけど・・・こうして今はあの男の子の住んでる町にいるし・・・お姉ちゃんにはとても感謝してるんだ」

「あっ・・・ミナギ」

「え、何?カイト・・・」

「そういえば、ミナギのお父さんとお母さんは・・・?」

カイトはふと、気になった事をミナギに聞いた。

「・・・・・・」

「ミナギ?」

ミナギは、少し空を見上げて静かに話し始めた。

「いなくなっちゃった・・・私が小さい頃に」

「えっ?」

カイトは驚いてミナギの方を向いた。

「いなくなったって・・・亡くなったって事・・・?」

ミナギは、何も言わずに静かに頷いた。

「私、お父さんとお母さんの側にいたのに、いなくなった時の事覚えていなくて・・・それで、後からお姉ちゃんに聞いて・・・」

「あっ・・・・・・・・・」

カイトは何て言っていいか分からなかった。

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#5「羽根~はね~」6

「・・・・・・」

「・・・・・・」

2人は空を見ていた。

カイトはミナギの触れてはいけない過去にまた触れてしまったと思い、話すに話せずにいた。

「ねぇ・・・カイト」

その沈黙を、ミナギが先に破った。

「え、何?ミナギ・・・」

カイトは少しぎこちない感じで答えた。

「空を飛べたらいいなって考えた事ある?」

「えっ?」

ミナギの唐突な質問に、カイトは一瞬だけ驚いた。

「私ね、もし空を飛べるならどこまでも飛んで行けるのにって・・・」

「・・・昔は飛んでみたいって思ってたけど、今はあまり考えないかな?」

「えっ?どうして?」

「俺は人間だし、羽根は無いから鳥やドラゴンのように自由に大空を飛べたらいいなって考えてたけど・・・今は違うのかなって思って。それは自分は飛ぶ事の辛さを知らない鳥やドラゴンじゃないからって思って・・・羽根を失ったら何も出来なくなる鳥やドラゴンじゃないからって・・今はそう思ってて・・・」

カイトは、空を羽ばたいてるドラゴンを遠くから見つめながらミナギに話した。

「・・・私、あの時自分が死ぬんだって分かった時に悲しかったけど、もし死んで天使になって羽根がもらえたら空の上にいるお父さんやお母さんにきっと会えるって・・・」

「ミナギ・・・」

カイトは、笑って話しながらも涙を堪えながら話してるミナギを見ていられなかった。

「・・・確かに、ミナギの父さんと母さんに会えるかもしれないけど・・・残されるミナギのお姉さんはどう思うのかなって・・・」

カイトは、なるべくミナギを傷付けないように言葉を選んで話した。

「うん・・・それはやっぱり間違いだったって、今は思うよ。今、こうして生きているから色々な人に出会えたし、男の子にだって・・・カイトにだって会えたし・・・」

「でも、ミナギの気持ちは分かるんだ。もし、俺もミナギと同じ立場だったらそう考えてたって思ってるし・・・」

「うん・・・」

カイトは、過去の自分自身にも当てはめるようにミナギに話した。

「俺もそんなに強くはないからね・・・父さんが死んだ時も部屋で1人泣き続けたし・・・母さんまで死んでしまったら・・・って考えたくもなかったし」

「えへっ、私達何か似てるね」

「そう・・・かもな」

2人は再び空を見上げた。

空を飛ぶ事が出来たら、どこまでも飛んでゆきたくなりそうな空だった。

「あっそうだ!」

「えっ、どうしたの?カイト・・・」

カイトの突然の声にミナギはちょっとだけ驚いた。

「今度、本当に空を飛んでみない?」

カイトはミナギに話を持ち出した。

「えっ?」

「今度の休みの日に」

「くすっ、カイトいきなり何言ってるの?・・・私達人間なのに」

ミナギはカイトが冗談を言ってると思い、思わず笑っていた。

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#5「羽根~はね~」7

「空の上に行く事は出来るよ・・・フォーと一緒に」

「えっ?」

「前に何回かフォーに乗せてもらった事があるけどね・・・最初はちょっと怖かったかな・・・?」

「う、うん・・・」

ミナギは、カイトの「怖かった」とゆう言葉に少し顔が引きつった。

「でも、怖いのは初めて乗った時だけで気が付けば空の上から町を見下ろしてて・・・凄く気持ちよかったんだ」

「へぇー・・・空の上、行ってみたいな・・・」

空を飛ぶ事が出来る・・・カイトの話を聞いてミナギは少しだけ胸がドキドキしていた。

「相手はフォーだし、フォーは優しいから大丈夫だと思うんだ」

「うん、そうだね。一度でいいから空の上から町を見てみたい」

「それじゃ、決まりだね?・・・後はその日が晴れで風が荒れてなければ大丈夫かな・・・?」

「うん、凄く楽しみ」

ミナギは笑顔でカイトに答えた。

「ミナギはこれからどうするの?」

「えーっとね・・・」

「カイト君ー」

「え?」

不意に名前を呼ばれたカイトは、後ろを振り向いた。

「やぁ、ハル」

「あっ、ハルさん」

カイトとミナギの姿を見て、ハルが少し含み笑いをした。

「あらあら、2人して何してるのかな~?」

「別に普通に会話してたよ」

カイトは素っ気無くハルに話した。

「相変わらずね、カイト君は」

「まぁね、ハルは部活は終わったんだ」

「うん、今日はね。ところで2人は何話してたの?」

ハルはカイトに聞いた。

「今度の休みに空を飛ばないかって・・・ミナギに話してた」

「うん」

カイトがハルに話した後で、ミナギが小さく頷いた。

「へぇー、そうなんだぁ・・・」

「なーに、にやけてるんだよ?ハル」

「ううん、べぇつにぃー♪」

カイトとハルの和やかなやり取りにミナギはくすっと笑っていた。

「あ、そうだ・・・ハル」

「えっ、何?カイト君」

「もし予定が無かったら、一緒に付き合ってほしいかなって思うんだけど・・・」

「えっ、私もいいの?」

カイトの提案にハルはちょっと驚いていた。

「うん、何となく俺だけじゃ不安なんだ。ハルの方がドラゴンの気持ち分かるしね」

「まっね♪」

カイトにそう言われて、ハルは少しだけ得意げに返した。

「へぇー、ハルさんってドラゴンの気持ちが分かるんですね・・・凄ーい」

「ハルは一人前のドラゴンのブリーダーを目指してるからね。ハルがいれば心強いって思うんだ」

カイトはそうミナギに話した。

「そうゆう事ならいいよ。何とか予定は空けとくね」

「うん、よろしくね。グライドにも久しぶりに会いたいなぁ・・・」

「もちろん連れてくるよ。あの子もカイト君やフォーに会いたがってたしね」

「それじゃ、日時が決まったら言うよ」

「うん、分かったよ。それからミナギちゃん」

ハルは、ミナギに話し掛けた。

「はい、ハルさん」

「私も”ハル”でいいよ。何か”さん”って付けられるとくすぐったいから・・・」

ハルは、少し気恥ずかしそうにミナギに話した。

#5「羽根~はね~」end.

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#6「空上~そらのうえ~」1

「えへっ、今日がいい天気で良かったよ」

「うん、そうだね」

「フォー♪」

待ち合わせで合流し、カイト達はハルの待つ草原まで歩いていた。

「俺も久しぶりに乗りたいなぁ・・・」

「カイトはあまりフォーちゃんに乗ってないの?」

ミナギはふと、気になってカイトに聞いた。

「高一まではよく乗ってた・・・高二になってから学費も稼ごうと思って、他のバイトも入れ始めてそれで・・・」

「そっか、カイトのお母さん外で働けないから・・・」

ミナギはカイトの家族事情を察して控えめに話した。

「まぁ・・・その無理が祟って、倒れちゃって・・・その後、学費は何とか親戚の人が出してくれるって話になったんだけど・・・あはは」

カイトはあの時の事を思い出し、苦笑いをしながら話した。

「カイトって、すぐ無茶するんだから・・・困った時には親しい人に頼む事も大事だよ」

「はは・・・そうだね。倒れた時にお母さんに凄く心配かけちゃったし・・・」

ミナギにそう言われてカイトは苦笑いしながら答えた。

「フォーもごめんな、あの時に全然構ってやれなくて・・・」

カイトがフォーに言うと、フォーは静かに首を横に振って答えた。

「あっそーだ、ドラゴンでの飛行で分からない事があったら俺よりもハルに聞いた方がいいかな?」

「うん、分かった」

「あんまし緊張する事ないと思うんだ。乗る方が緊張してるってドラゴンに伝わるとあまり上手くいかないって聞いた事あるから」

カイトは自分なりにミナギに伝わるように話した。

「うん、そうだね」

「まっ、相手がフォーならミナギも大丈夫だと思うけどね」

カイトはそう話しながらフォーの首元をそっと撫でた。

「フォー♪」

「うんっ、よろしくねフォーちゃん」

「フォー♪」

ミナギとフォーの姿を見て、きっと大丈夫だとカイトは思った。

そう話してるうちに、カイト達はハルの待つ草原に着いた。

その先でハルとドラゴンのグライドが待っていた。

「ハルー!」

カイトが呼ぶと、ハルはこっちに手を振った。

「行こうか、ミナギ、フォー」

「うんっ」

「フォー♪」

カイト達は駆け足でハルの元へ行った。

「おはようカイト君、ミナギちゃん。それにフォー、久しぶり」

「フォー♪」

それぞれの挨拶を交わし、ハルの簡単な説明が始まった。

「いい、ミナギちゃん・・・ドラゴンに乗る時はあまり手荒にしないでね。ドラゴンも私達と一緒でそれぞれの気持ちがあるから・・・」

「うん・・・」

ミナギはハルの話を聞きながら、フォーに優しく触れていた。

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#6「空上~そらのうえ~」2

「ミナギちゃんとフォーだったら大丈夫だと思うけどね・・・あまり緊張はしないでね。なるべく気持ちを落ち着けるようにね・・・普段どうりに接してあげればいいよ」

「うん・・・・・・」

「・・・・・・」

カイトがミナギの方を見ると、何となく少しだけ緊張してるように見えた。

「ハル、ちょっといいかな?」

「えっ?・・・何、カイト君・・・」

「飛ぶ前に少し遊ぼう。ミナギもフォー達と遊べば緊張も解れるだろうし、俺もグライドと会うのの久しぶりぶりだし・・・」

カイトは皆に提案した。

「うん、そうだね。いきなり飛ぶ所から説明されても疲れるよね・・・いいよ、少しだけ遊ぼう」

「ミナギ、行こうか?」

「うんっ」

少しだけ表情の硬かったミナギも、笑顔でカイトに答えた。

「行こう、フォー」

「フォー♪」

カイト達は心を解放するかのように、思いっきり遊んだ。

天気が良い事もあって夢中になっていて、気が付いた頃にはもう昼になっていた。

「みんなー、そろそろお弁当にしよう」

「うん、分かったよ」

「はーい」

ハルは皆にそう言いながら、持ってきたお弁当箱を出した。

「朝早く起きて作ったんだよ」

ハルはそう言ってお弁当箱のフタを開けた。

「おいしそう・・・」

「凄いね、ハル・・・」

「はい、あなた達のも用意したから」

「グォー!」

「フォー♪」

ハルの本格的なお弁当に皆、揃って笑顔になっていた。

「ハルってこうゆうの得意だね。俺はそうゆうの全然ダメなのに・・・」

「えへっ、私こうゆう事好きだからかなぁ・・・?作ってて凄く楽しいんだよ」

カイトにそう言われて、ハルはとても嬉しそうに答えた。

「私も・・・やってみようかな・・・?ハルさ・・・えっと、ハル・・・今度私にも教えてほしいな・・・」

ミナギは、少し恥ずかしそうにハルに話した。

「うん、いいよ。上手に出来たらぜひカイト君に食べさせてあげてね♪」

ハルは、カイトの顔をちらっと見てから楽しそうにミナギに話した。

「はは・・・ミナギはまだ普通に友達だって。いきなり・・・」

「あら~、照れなくてもいいのよカ・イ・ト・君♪」

「はは・・・」

ハルの中ではもう、ミナギとは恋人になっているらしい・・・カイトは笑うしかなかった。

こうして、お昼はあっとゆう間に過ぎていった。

・・・・・・・・・。

「それじゃ、準備はいい?・・・ミナギちゃん」

「うんっ、大丈夫」

昼食も終えてすっかり心も落ち着いたのか、ミナギは最初の時と比べて大分落ち着いていた。

「あっ、カイト君」

「えっ、何?ハル・・・」

ハルに急に呼ばれて、カイトはハルの所に行った。

「カイト君、ミナギちゃんの後ろに乗って」

「えっ、俺も乗るの?」

「うん、やっぱりドラゴンに乗るのが初めてのミナギちゃんだけじゃ危ないしね・・・」

「あっ・・・」

最初はこの場所で見守っていようと考えていたが、ハルにそう言われてカイトはハッと気が付いた。

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#6「空上~そらのうえ~」3

「そうだね、やっぱりミナギ1人じゃ危ないよなぁ・・・俺、フォーが一緒だからちょっと安心してて・・・」

「そっ、さすがに初心者はサポートがないと・・・てなワケでお願いね、カイト君」

ハルにそう言われてカイトは苦笑いをしながら答えた。

「うん、分かったけど・・・フォー」

「フォー?」

カイトはフォーに近寄って聞いた。

「俺も乗って大丈夫?フォー・・・」

「フォーゥ・・・」

カイトがフォーにそう話すと、フォーはゆっくりと腰を下げた。

「よっと」

カイトはミナギの後ろにそっと座って、命綱を握った。

「フォー、大丈夫?重くない?」

カイトがフォーに尋ねると、フォーはいつもの元気な声で「フォー!」と答えた。

大丈夫らしい。

「それじゃ行こっ。ミナギちゃんはしっかり命綱を持ってね。カイト君はミナギちゃんをよろしくね」

「うんっ」

「分かった」

ハルはグライドに乗って準備を整えた。

「グライド、フォー行くよ!」

「グォー!」「フォー!」

風が一瞬だけ止んだ・・・グライドとフォーは翼を大きく広げて地面を蹴った。

バサッ、バサッと音を立てて風を切り、カイト達は雲が近い場所まで一気に飛んだ。

「ミナギ、大丈夫?」

「・・・うん」

まだ怖いのか、ミナギは顔を伏せていた。

「そっと顔を上げてミナギ。俺がいるから」

「うん・・・」

ミナギは静かに顔を上げた。

「うわぁ・・・」

ミナギが辺りを見回すと、そこは見た事の無い世界が広がっていた。

「大丈夫?ミナギ・・・怖くない?」

カイトは心配してミナギに聞いた。

「うん、大丈夫・・・」

ミナギは少し下を見てしまい、一瞬だけ言葉が止まった。

「ミナギ、下を見ないで前だけ見てて。出来るだけ遠くを見る感じで・・・」

カイトはミナギの頭を撫でながら話した。

「・・・・・・」

少しして・・・ようやく落ち着いたのか、ミナギの手の震えが止まった。

「大丈夫ー!?カイト君、ミナギちゃん」

ハルとグライドが心配して少し近付いた。

「何とかー!」

「はーい!」

少しでも大丈夫な所を見せるべく、2人してハルに手を振った。

「ねぇ、そう少し上の方に行ってみないー?」

風が吹いていて聞こえにくいので、互いに叫ぶように会話を交わしていた。

「オッケー!フォー、このまま上昇して!」

「フォー!」

フォーが上昇するのを見て、ハルもグライドに言った。

「私達も行こっ!グライド!」

「グォー!」

グライドもフォーの後をついていった。

・・・・・・・・・。

「凄く・・・綺麗」

カイト達は雲の上を飛んでいた・・・一面に広がる白い雲はまるで雪のようだった。

滅多に見られない景色に、カイト達はしばらく見惚れていた・・・・・・。

・・・・・・・・・・。

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